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術伝流一本鍼no.42 (術伝流・養生の一本鍼・病証編(1))

未病と発作、経絡、気血水

(1)はじめに

 先回の終わりに書いたように、上衝が症状の原因のことも
多く、慢性期の養生では、腹の邪毒や虚の改善が必要です。
そのため、東洋医学的な病証の把握も大切になってきます。
特に、内科系の養生をしていくときには、重要です。

 そこで、今回は、東洋医学的な病証について、私の見方を
大雑把に解説していきます。と言っても、難しいことは言い
ません。東洋医学的な病証で、最も基本的と私が思う3つの
ことを取り上げます。「未病と発作」、「経絡病証」、「気
血水病証」の3つです。

 「内科系にも応用(術伝流一本鍼no.19)」や、「術
伝流は、腹診中心(術伝流一本鍼no.27)」にも、書い
てきたこともありますが、もう一度まとめて説明しておきま
す。

 一つ目の「未病と発作」は、病の慢性期と急性期を見てい
ます。

 二つ目の「経絡病証」は、体を縦切りに見ています。立位
で体を前・横・後ろに3分類するのが基本で、前・横・後ろ×
内外×手足で12経絡になります。体の外側を中心にした病
気に良く当てはまります。

 三つ目の「気血水病証」は、体を横輪切りに見ています。
立位の頭首胴で、肩胛骨・鎖骨から上が「表位」、その下で
横隔膜までが「上焦」、横隔膜から臍までが「中焦」、臍か
ら下の胴体部分が「下焦」です。体の内側に関係する病気に
良く当てはまります。

(2)未病と発作


 東洋医学的な病証の見方として、慢性期は未病、急性期は
発作と言うのが、先ずは基本になります。

 未病というのは、病が動いていない状態のことです。動い
ていないから、症状は、余り明確には出ていません。が、体
に歪みは有りますし、瘀血や水毒も有り、そこから少しずつ
邪気が漏れているのが普通です。

 瘀血や水毒などが沈静化していて、そこから出ている邪気
の量も少ないので、症状が顕在化しないわけです。

 体の恒常性維持機能が働いていて、歪んだなりに何とかバ
ランスを保っている状態です。

 そういう未病の体に、耐えきれないストレスが掛かると、
体は邪毒を取り入れ増やし、発作的な急性症状の状態になり
ます。また、体は、未病の状態よりも、生命力は少し落ちた
状態になります。

 発作的な急性症状になったときに、安静にしていたり適切
な治療を受けると、体から邪毒が排出されます。そして、体
は、元の未病の状態よりも少し生命力が高い状態でバランス
します。

 発作的急性症状になったときに、また、ストレスが掛かっ
たり、誤治を受けたりすると、体は、邪毒を取り入れ増やし
ます。そのため、症状が消えても、元の未病の状態よりも少
し生命力が低い状態で、体はバランスしてしまいます。

 こういう未病と発作が、いつも繰り返されていると考える
のが、基本の見方だと思っています。

(3)経絡病証



 経絡病証は、体を縦切りに見ています。つまり、直立2足
歩行するヒトの体に掛かる重力負荷を分担していることを反
映した分け方です。立位での重力線の方向である縦に連携す
る筋肉同士で、重力負荷を分担し合っているということです。

 立ち姿勢でのヒトの姿を、「前」から見たとき、「横」か
ら見たとき、「後ろ」から見たとき、その3つのときに見え
やすい部分に分けたということです。

 これに、体の内外の区別(2)と、手足の区別(2)を組
み合わせると、12経絡(3×2×2)になります。

 大雑把には、足という2本の丸太の内側同士が合わさって
胴体ができていると考えるとよいでしょう。ですから、体の
内側も、大雑把に、「前」、「中〜横」、「後ろ」、この3
つに分けられます。

 つまり、「内側」で「前側」が、「太陰」の担当分野です。
「内側」で「中〜横」が、「厥陰」の担当です。「内側」で
「後ろ側」を、「少陰」が担当しています。

 そのため、腹筋の直ぐ下にある胃腸は、内・前の足太陰の
範囲になります。また、腹膜後器官で背中側から手術する腎
臓が、内・後ろの足少陰になることも分かりやすいと思いま
す。そして、子宮は、体の中央にあるので、内・中〜横の足
厥陰に属することになります。

 ですから、体の横輪切りの解剖図を見れば、だいたい、ど
の経絡が担当するか見当を付けることができます。

 例えば、目の奥の病、網膜剥離や近視乱視が足厥陰に関係
するのも、目の高さの横切り解剖図で、網膜や近視乱視に関
係する目を動かす筋肉が内側の中ほど(内・横〜中)にある
からだと思います。

 また、頭のてっぺん、頭頂部の頭痛が厥陰の頭痛とされる
のも、内側の真ん中、つまり、鉛筆で言えば芯に当たる所が
頭に出たらどうなるか考えれば、納得しやすいと思います。

 下腿から下の足陰経は、前・横・後ろの対応が少し違って
います。が、説明していると長くなるので、以下を読んでく
ださい。下腿陰経で経絡が交差するのも直立2足歩行と関係
があります。そのため、下記を読めば、重力不可と経絡の関
係がより分かりやすくなると思います。


 この経絡病証は、体幹部、つまり、頭・首・胴の症状を
「手足に引く」ときに、よく使われる関係です。

(4) 気血水病証



 気血水病証では、体を横輪切りに見ています。つまり、肩
甲・鎖骨から上を表位、その下から横隔膜までを上焦、横隔
膜から臍までを中焦、臍から下の胴体部分を下焦と分けてい
ます。

 未病のときには、表位や上焦は邪気が多く、中焦は水毒が
多く、下焦は瘀血が多いとされます。気は軽く、血は重く、
水はその中間なので、病が動かない未病のときには、より重
いものが下になっているのかなと思いました。

 濁醪(どぶろく)を作って冷蔵庫に静かに放置しておくと、
上からガス、その下に清酒、そして、底の方には澱(おり)
が溜まるのと似ていると思います。

 発作のときには、腹の邪毒から頭に向かって邪気が突き上
げる上衝という現象が起きます。腹の水毒や瘀血が悪化、つ
まり、菌やウイルスが増殖したり、老廃物や化学合成物の残
骸が増加した状態になり、そこから発生した邪気が頭を衝く
そうです。

 腐った水、つまり菌などが繁殖した水からメタンガスが湧
くようなものかなと考えると分かりやすかったです。

 放置した濁醪を暖かい所に暫く出しておき、少し揺すって
から栓を開けると泡と共に吹き出します。上衝という現象は、
濁醪が吹き出す様子にも似ているような気がしています。

 それで、私は、未病のときには気血水が静かに3つに分か
れ、発作のときに混ざって上衝する現象を「濁醪モデル」と
呼んでいます。

 また、この病証は、寝た姿勢での重力負荷分担に関係して
います。寝た姿勢では、重力不可は、体の横輪切り方向に掛
かるからです。

 そして、この気血水病証は、頭首胴の症状をその背中側に
引く、つまり、「陽に引く」のによく使われる関係です。

(5)大雑把に掴(つか)もう

 病証については、先ずは今回解説した位のことを大雑把に
把握することが大切です。臨床の場では、大雑把な分類を思
い浮かべる方が、細かなことを考えるよりも役に立ちます。

 目の前の人が、だいたい大雑把に分類すると、どういう状
態か把握する勘を養い、その把握したことに合わせて、ツボ
や手順や技法を選んでいくことが大事です。細かな知識を覚
えるよりも、大雑把な分類から判断できる勘を磨いていきま
しょう。


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最終更新:2018年07月05日 14:24