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術伝流操体 【5】応用 [3] 言葉で導く 
(1) 言葉をかけて操体を誘導
言葉をかけて操体を誘導

1.はじめに

 今回は、今までと少し違った視点からの操体を紹介します。体にふ
れずに、言葉で操体を誘導する方法です。

 大勢の人に一度に操体をしてもらうときに便利です。そのため、一
般向けの操体講座では、毎回はじめにこれをすることがおおいです。
すると、その日の大雑把な歪みがとれますし、日常の煩わしさで興奮
したり固まったりしていた心も、ほぐれるし落ち着きます。そのため、
操体の稽古にひたりこみやすくなります。

 同じ言葉で誘導しても、ひとりひとり違う操体になるように、言葉
かけに工夫をしています。つまり、その人のその日の状態にあった操
体になるように、配慮しているわけです。この点が、ほかの大勢です
る運動(たとえばラジオ体操や気功)とちがう、操体らしいところで
す。

2.基本的な手順

 基本的な手順は、今までと同じです。

(1) ラクな姿勢から
(2) きっかけを選ぶ
(3) イイ感じを付け足す
(4) イイ感じを味わう
(5) 終えたら休み、次へ

 よく行うのは、以下です。

①立位か座位で、手をきっかけに
②立位か座位で、体重移動をきっかけに
③寝た姿勢で、足をきっかけに
④寝た姿勢で、皮膚操体をきっかけに

①~④を終えたら、しばらく休んでもらいます。というか、①~④を
順番にしていくことで、体の歪みをとり、だんだん、ゆっくり休める
状態にもっていっているということもできます。

2.1.立位から、手の動きをキッカケに


 ラクな立位になってもらいます。座位でもよいです。

 以下のような声かけをしながら実演し、参加者にも動いてもらいま
す。

(1)ラクな姿勢、いーかげんにえらぶ

「なんとなくイイ感じの格好をえらんでください。ボワァンと力が抜
けた感じ」そういう言葉かけをして、立ったり座ったりしてもらいま
す(写真1,2)。

「これから、いろいろえらんでいきますが、あんまり考え込まずに、
なんとなくイーカゲンにえらんでください」

写真1

写真2

(2)キッカケの手をきめる

「手を合わせるか、組むか、どちらかイイ感じのほうをえらんでくだ
さい」(写真3,4)

写真3

写真4

「その手を左右上下に動かして、イイ感じのするところで止めてくだ
さい」(写真5)

写真5

「その手を顔に向けたり足に向けたりしてイイ感じの向きに向けてく
ださい」

「手を左右にねじってみて、イイ感じのほうにユックリねじっていっ
てください」(写真6)

写真6

(3)付け足してイイ感じをふやす

「その動きを肘から肩へ、そして、背骨へ、伝えていってください」
(写真7)

写真7

「それから、体重を移しやすいほうに移してみてください」(写真8)

写真8

「気持ち良さが深くなる姿勢をさがしてユックリユックリ動いていっ
てください」(写真9)

写真9

(4)イイ感じを味わう

「はじめの動きはきっかけなので、新しくイイ感じの動きがうまれて
きたら、それにのって動いてかまいません。ただ、できるだけユック
リ動いてください」(写真10)

写真10

「なんとなくイーカゲンにヤジウマする感じで、ユラユラ動くといい
ですよ」

「動きが止まってしまったら、大きなアクビをしてみましょう」

(5)終えたら休む

「イイ感じが消えたら、ユックリとラクな姿勢になって休んでくださ
い」

「動きたくなったら、つぎの操体をします」

 手を組むのは、動きがまとまりやすいからです。

 捻転をキッカケにするのは、捻転の動きがいちばん連動しやすい、
つまり、体の遠くまで動きが伝わりやすいからです。

2.2. 立位から体重移動をキッカケに

 つぎに、立位から体重移動をキッカケにした操体を、言葉で誘導し
ます。

 座位でもよいのは同じです。

(1)ラクな姿勢で

「何となくイイ感じの格好をえらんでください。フニャーと力が抜け
た感じですね」

 「手を腰にするか、膝におくか、どちらかイイ感じのほうをえらん
でください」(立位の場合)(写真11,12,13)

写真11

写真12

写真13

(2)体重移動をキッカケに

「体重を左右前後4方向にうつしてみて、イイ感じのほうをみつけて
ください」

「ためしに移動してみて、なんとなくイイ感じのほう、テキトーでい
いんですよ」(写真14)

写真14

(3)付け足してイイ感じをふやす

「体重をうつしやすいように、膝やおしり、背骨や頭、手を動かして
いってください」

「そして、イイ感じが深くなる姿勢をさがすつもりで、ユックリユッ
クリ動いていってください」(写真15,16)

写真15

写真16

(4)イイ感じを味わう

「新しい動きが生まれてきたら、それにのって動いていってもかまい
ません」

「でも、なるべくユックリ動くほうがイイ感じが深くなりやすいみた
いです」

「なんとなくイーカゲンにヤジウマする感じで、フンワリ動くといい
ですよ」

(5)終えたら休む

「イイ感じが消えたら、ユックリとラクな姿勢になって休んでくださ
い」

「休んでいるあいだに、おおきなアクビをしてみましょう」

「動きたくなったら、つぎの操体をします」

 体重移動をキッカケにするほうが、手をキッカケにするよりもわか
りにくいですが、まとまりやすいです。

2.3. 臥位から足をキッカケに

 ラクな姿勢で寝てもらい、足の動きをキッカケにする操体を言葉で
誘導します。

(1) ラクな姿勢で

「ラクな格好で寝てください。あお向け、うつ伏せ、横向き、なんで
もいいです」

「手足も曲げても伸ばしてもいいです」

「なるべく、グータラに見えたり、だらしなく見えるような格好のほ
うがラクなことがおおいですよ」(写真17,18)

写真17

写真18

(2)足首の背屈をキッカケに

「なんとなくでイイですから、気になるほうの足をえらんでください」

「よく分からないときは、エイヤァで決めちゃってください」

「えらんだ足の爪先を上げてみてください、むずかしい言葉でいうと、
足首の背屈ですね」(写真19)

「親指側と小指側のどちらをより反らすとイイ感じか確かめてくださ
い」

「反らすのがイイ感じでなければ、足裏のほうに曲げても、ねじって
もイイですよ」

写真19

(3)付け足してイイ感じをふやす

「いろいろ動かしてみて、イイ感じの足の動きを膝に伝えてみてくだ
さい」

「それから、膝から腰に、腰から背骨をとおって、首や頭、肩から腕
にも伝えていってください」

「そして、イイ感じが深くなる姿勢をさがして、ユックリユックリ動
いていってください」(写真20,21)

写真20

写真21

(4)イイ感じを味わう

「はじめの動きはきっかけですから、あたらしくイイ感じの動きが生
まれてきたら、それにのって動いてかまいません。ただ、できるだけ
ユックリユックリ動くようにしてください」

「なんとなくイーカゲンに、ホニャホニャーという感じで動くといい
ですよ」

(5)終えたら休み、つぎへ

「イイ感じが消えたら、ユックリとラクな姿勢になって休んでくださ
い」(写真22,23)

「動きたくなったら、つぎの操体をします」

写真22

写真23

 足首を背屈するのは、それがいちばん体のあちこちに連動しやすい
からです。ただし、しにくいこともありますので、そういうときには、
やりやすい動きをキッカケにします。

2.4.臥位から皮膚操体をキッカケに

 ラクに寝た姿勢から、皮膚操体をキッカケにする操体を、言葉で誘
導します。

(1)ラクな姿勢で

「ラクな姿勢で横になってください。あお向け、うつ伏せ、横向き、
なんでもいいです」

「手足も曲げても伸ばしてもいいです」

「なるべく、グータラに見えるような、だらしなさそうな格好のほう
がラクなことがおおいですよ」

(2)皮膚操体をキッカケに

「体のなかで、なんとなく気になるところに手のひらか指をあててく
ださい」

「テキトーでいいんです、わからなかったら、おへそに手のひらをあ
ててください」

「手や指をあてたところの皮膚をイイ感じのほうにすこしズラしてみ
ます」(写真24,25)

「左右上下にズラしたり、右ねじり左ねじりにズラしたり、筋肉のほ
うに沈めたりして、イイ感じのものをえらんでください」

「わからなかったら、手や指をあてておくだけでもいいですよ」

写真24

写真25

(3)イイ感じをふやす

「そこから小さな波が体中に広がっていく様子を思い浮かべてみま
しょう」

「静かな水面に小さな石を落としたときに、波が広がっていくような
感じで」

(4)イイ感じを味わう

「それから、体のなかで起こっているいろんなことをながめてみま
しょう」

「筋肉がブルブルふるえてゆるむような感じ、あたたかい風がゆっく
り吹き抜けていくような感じ、電気のようなものが走っていく感じ、
ぬるま湯がジワーッと広がっていくような感じ、小さな渦が渦巻いて
は消え、渦巻いては消えていくような感じ、そんな感じを持つ方がお
おいみたいです」

「体の外側の動きが出てきた方は、それにのって動いてもかまいませ
ん、が、できるだけユックリ動いたほうが気持ち良さが深くなりやす
いみたいですよ」(写真26)

写真26

(5)終えたら休む

「イイ感じが消えてしまったら、ユックリとラクな姿勢になってくだ
さい」

「これで、言葉を聞いて動く操体はおわりですので、しばらくゆっく
り休んでください」(写真27,28)

写真27

写真28

「休んでいるあいだに姿勢を変えたくなったら変えてもかまいません、が、ゆっくり動くようにしてください」(写真29)

写真29

 このまま、しばらくのあいだ休んでもらいます。10分くらい休んで
も起き上がってこないときには、静かな声をかけて、おきあがっても
らうようにします。静かな声をかけるのは、びっくりさせないためで
す。

 皮膚操体のほかに、シコリをすこし痛くしたり、髪の毛をイイ感じ
の方向に引っ張ったりすることもキッカケにすることもできます。

3.付け足しの誘導について

 ここでは、ラクな寝方から皮膚操体のときに、「付け足し」や「味
わう」で、イメージによる誘導を書きました。が、立位での体重移動
をキッカケにするときと同じように、動きを誘導することもできます。
また、はじめに動きを誘導し、動きが止まった段階で、イメージによ
る誘導にうつることもできます。

 そして、立位での体重移動をキッカケにする操体を誘導するときな
どにも、イメージで誘導することもできます。また、上に書いたのと
同じように、はじめに動きを誘導し、動きが止まった段階で、イメー
ジによる誘導にうつることもできます。

4. 注意すること

 言葉による操体の誘導で気をつけたいのは、あまり催眠術のような
言葉遣いにならないようにすることです。とくに、イメージで誘導す
るときに気をつけてください。

 言葉は独り歩きします。受け手の心のなかで、どんなイメージに変
化していくか予想することはできません。そのあたりもふまえて、言
葉かけに注意をはらうようにしてください。

5.おわりに

 言葉で操体が誘導できるようになると、指圧や鍼灸をしながら、必
要に応じて操体を誘導できるようになります。

 鍼灸の場合は、運動鍼の延長みたいなものになります。運動鍼より
も、受け手のそのときの状態にあわせた動きになりやすいので、効果
が出やすくなります。

 次回くわしく説明します。 


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最終更新:2017年02月25日 14:37