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術伝流操体 【5】応用 [1] 按摩指圧などとくみあわせて 
(1) あお向けで按摩指圧と組み合わせ
あお向けで按摩指圧と組み合わせ

(1)はじめに

 先回まで、「操体で一通り治療する」と言うことで、操体で
治療する場合の基本的な方法を色々と書いてきました。

 今回からは、応用編で、操体を臨床で使っていくときに、他
の方法と組み合わせていくときにどうするかとか、特定の症状
のときにどうするかとか、書いていきます。

 その1回目の今回は、仰向けでの按摩指圧との組み合わせを
書いていきます。ただし、私の按摩指圧は、ちょっと変わって
いますので、その辺りも付け加えて書いていきます。

(2)先ず診察

 私は、時間が50分程は確保できるときには、按摩指圧と操体
を組み合わせた手技療法で臨床をしていくと場合でも、先ず、
問診、望診、脈診、舌診、腹診をします。

 その診察は、基本的に鍼灸の場合と同じで、左右の寸関尺の
脈を診て、舌の表裏を診て、その後に漢方古方派に由来する腹
診をしていきます(写真1,2,3,4)。

写真1

写真2

写真3

写真4

 この診察については、
術伝流一本鍼no.27
術伝流一本鍼no.28
術伝流一本鍼no.29
に詳しく書きましたので、参考にしてください。

 診察を終えたら、按摩指圧を始める前に、先ず
「姿勢を変えたくなったら、変えてもいいですよ。手や足や首
を動かしてもいいですよ。ただし、ゆっくりと動かしてくださ
い」
と声を掛けておきます。

 姿勢が大きく変わったら、その場で、その姿勢を少し強調す
る、動きや皮膚の操体をするためです。

(3)重さの操体

 左右の肩、左右の骨盤を順に押しこんでみて、差があれば、
重さを一番掛けたがっている所に、しばらく重さの操体をしま
す(写真5)。

写真5

(4)腹に皮膚操体、足の按摩指圧

4.1.左手を腹、右手で足を按摩指圧

 腹診で腹にツボや痼りが見付かれば、そこに手平や指腹を置
き、ズレやすい方に軽くズラす皮膚操体か、指圧をします。

 この後に、右足陽経側を按摩指圧するので、右腹から変えた
い所を選ぶと良いです。患者の右側に位置していますので、左
手でします。

 見付からないときには、左手の手平を下腹部の関元の辺りに
置きます。

 左手を腹に置いたまま、先ず、右拳骨の四指の骨空(近位指
関節甲側、写真6)で、右大腿部を、陽明、陽明と少陽の間、
少陽の順で、腹の方から膝の方へ按摩指圧していきます(写真
7)。

写真6

写真7

 右肘から前腕小指側で、按摩指圧することもあります。肘指
圧・肘揉みについては、次回解説します。

 腹に左手を当てたまま、次は、右示指骨空(近位指関節甲側、
写真8)で、右下腿部を、陽明、少陽の順で、膝の方から足首
の方へ按摩指圧していきます。

写真8

 示指骨空で按摩指圧するときには、拇指関節部で、示指の爪
と遠位指関節の間をしっかり押さえ、示指をしっかり固定する
のがコツです。

 陽経側を四指や示指の骨空で按摩指圧するのは、陽経側は硬
く痼っていることが多く、拇指指腹よりも骨空の方が軽い圧で
弛みやすいからです。

 また、下腿を四指骨空でしないで示指骨空でするのは、下腿
のツボは細かく、示指骨空の方が入りやすいからです。

 それから、もし、腹に当てた左手を移す必要があれば、移し
ます。この後に左足陰経を按摩指圧するので、左腹に出ている
ツボや痼りの中で変えたい所が有れば、そこに移した方が変化
しやすいです。

 移した所の皮膚をズレやすい方にズラす皮膚操体か、指圧を
しておきます。

 そして、左手を腹に当てたまま、右拇指で、左大腿部を、太
陰、厥陰、少陰の順で、足の付け根の方から膝の方へ按摩指圧
していきます。

 次は、右親指で、左下腿部を、厥陰、太陰、少陰の順で、膝
の方から足首の方に按摩指圧していきます(写真9)。

写真9

 拇指で指圧按摩するときには、拇指指関節部を示指基節骨部
で固定すると、指を痛めにくいです。

4.2.右手で腹、左手で足を按摩指圧

 患者さんの左側に移りながら、腹に当てた左手を離すと同時
に、右手を腹に当てます。当てる場所は、この後に右足陰経を
按摩指圧するので、右腹に出ていたツボや痼りの中での変えた
い所です。

 そして、軽く皮膚操体か、指圧をします。変えたい所が無け
れば、下腹部関元あたりに手平を置きます。

 右手を腹に当てたまま、左手拇指で、右大腿部を、太陰、厥
陰、陽明の順で、足の付け根の方から膝の方へ按摩指圧してい
きます。続いて、下腿も、厥陰、太陰、少陰の順で、膝の方か
ら足首の方へ按摩指圧します(写真10)。

写真10

 この後に、左足陽経側を按摩指圧するので、左腹に出ていた
ツボや痼りの中で気になる所が有れば、右手を移し、軽く皮膚
操体か、指圧をしておきます。見付からないときには、右手の
手平を下腹部の関元の辺りに置きます。

 右手を腹に当てたまま、先ず、左拳骨の先の四指の骨空(近
位指関節甲側)で、左大腿部を、陽明、陽明と少陽の間、少陽
の順で、腹の方から膝の方へ按摩指圧していきます(写真11)。

写真11

 左肘から前腕小指側で、按摩指圧することもあります。

 次は、左示指骨空(近位指関節甲側)で、左下腿部を、陽明、
少陽の順で、膝の方から足首の方へ按摩指圧していきます。

 この時、写真12のように膝を立てたり、姿勢が変わってしま
うこともありますが、腹のツボと経絡的に関係する足のツボを
見付け指圧按摩していきます(写真12)。

写真12

 そして、腹のツボの変化具合によっては、動きの操体に移る
こともあります(写真13)。

写真13

 また、その結果で違う姿勢になったら、その姿勢から操体を
したり、腹のツボと経絡的に関連する足のツボの按摩指圧をし
たりもします(写真14)。

写真14

(5)足からの定番操体

 患者さんの足の方に座わり、仰向けでの定番操体をしていき
ます。

5.1.膝裏痼り取り

 膝を立ててもらい、膝裏の痼りを探し、少し痛くして逃げて
もらい、その姿勢をしばらく維持します。

 痼りが弛んだら、元の姿勢に戻り、戻った姿勢でも痛みが減
っていることを確認します。痼りが2,3有れば繰り返します。

 腹のツボやそれに関連する足のツボが見付かったら、そこに
指圧しながら、動きの操体を続けることもあります(写真15)。

写真15

5.2.膝倒し

 膝立の姿勢から左右に膝を倒し、倒しやすい方に軽く倒した
状態で、大腿中程の皮膚を膝の方にズラします。十分にしたら、
戻し、反対側にも倒しやすくなっていることを確認します。

 腹のツボに手を当てながら、この操体をしたりもします(写
真16)。

写真16

(6)足の指揉み、揺らし

 患者さんの足の方に座り、足指裏の痼りを探します。その痼
りを揉みながら、揺れが胴や頭に伝わっていく様子を観察しま
す(写真17)。

写真17

 揺れが伝わりにくい所が歪みが大きいことが多いです。

 痼りが幾つか有れば、順番にしていきます。

 腹の痼りと足の痼りの相関を考えて、足の痼りを探しても良
いですね。

 また、足甲などの皮膚を足首の方にズラしたり戻したりを繰
り返して、その揺れを胴や頭に伝えていくのも良いと思います
(写真18)。

写真18

(7)患者さんの頭の方から操体、按摩指圧

 患者さんの頭の方に移動します。

7.1.首の動きの操体

 首を左右捻転しやすい方、前後屈しやすい方、左右側屈しや
すい方、つまり、いわゆる3軸のやりやすい方を3つ組み合わ
せ、その格好をしばらく維持し、イイ感じを十分に味わっても
らいます(写真19)。

写真19

7.2.首肩の按摩指圧、皮膚操体

 先ずは、拳骨四指側を布団の上に置き、拇指を伸ばし、鎖骨
の首側の奥の方に拇指を入れ、首の付け根を按摩指圧します
(写真20、21)。

写真20

写真21

 弛みにくい所が見付かったら、経絡的に関連する手の拇指か
示指の指反らしや指揉みを加えたり(写真22)すると、弛み
やすいです。

写真22

 それから、凝った所の筋溝を顎の方に辿り、凝った所を見付
け、按摩指圧します。近視乱視はじめ目の悪い人は、顎と首の
境目に硬い痼りがあります。頭の方へ押し付けるように按摩指
圧します。

 肩井の辺りの前側も凝ってることが多いです。肩井は、上か
ら布団に向かって、拇指の指腹で押し付けるように按摩指圧し
ます。重さの操体のように操者の体重を乗せていく感じがイイ
感じのことが多いです。

 また、肘を頭の方へ移動する動きの操体を組み合わせたりす
る(写真23)と、弛みやすいです。肩井の部分を縮める動き
になっているからだと思います。

写真23

 それから、横頚部を付け根の方から頭の方に向かって、拳骨
(四指骨空)で按摩指圧します。弛みにくい痼りが見付かった
ら、そこに沈の指腹皮膚操体をしながら、関連する指の指揉み・
指反らしをすると弛みやすいです(写真24)。

写真24

 その後に、拳骨から拇指骨空(近位指関節甲側)を立て(写
真25)、小指側を布団の上に置き、上になった拇指骨空を後頚
部に差し入れ、拇指骨空で後頚部を少し持ち上げ、下から患者
さんの頭の重さを利用して、後頚部を指圧按摩します。

写真写真25

 拇指骨空で按摩指圧するときは、拇指先端を示指近位指関節
で固定するとよいです。

 天柱、風池など後頭骨下縁は、操者の方に引くようにして按
摩指圧します。

 横頚部や後頚部を四指骨空や拇指骨空で按摩指圧するのは、
その方が軽い圧で弛みやすいからです。

(8)腕と胸、腕と背に張る筋肉の按摩指圧

 次は、脇の下の周りの按摩指圧。脇の下の胸側、つまり、腕
と胸の間に張っている筋肉を拇指と四指で挟み、痼りを探し、
按摩します。

 このとき、もう片方の手で、同じ側の拇指や示指の指揉み・
指反らしを加えたり、手首を捻転する動きの操体を加えたり
(写真26)すると、より、弛みやすいです。これは、座位で
の操体の応用です。

写真26

 そして、脇の下の背中側、腕と背中の間に張っている筋肉の
中にも痼りを探し、見付かったら指圧按摩します。こちらは、
拇指と四指で挟むだけでなく、脇の下の側から布団に押し付け
るように指圧してもよいと思います。

 同じ側の小指や薬指の指揉み・指反らしも加えたり、手首を
背屈してから捻転する動きの操体を加えたり(写真27)する
と、より、弛みやすいです。これも、座位での操体の応用です。

写真27

 利き手側を中心にしますが、凝っていれば利き手でない側も
しておきます。

 これで、仰向けでの施術を終え、ゆっくり、うつ伏せになっ
てもらいます。

(9)変化した姿勢を強調する操体をする

 最初に書いたように、「姿勢を変えたくなったら、変えても
いいですよ。手や足や首を動かしてもいいですよ。ただし、ゆっ
くりと動かしてください」と、施術を始める前に声を掛けてお
くと、けっこう姿勢を変えてくれるというか、手足や首を動か
してくれます。

 そしたら、その姿勢を強調する皮膚や動きの操体をします。
そして、その姿勢の関連するツボが出やすい所にツボを探して、
指圧按摩をしていくと、その時のその患者さんにあった養生に
なりやすいです。

 手順通りに流していくだけでなく、その患者さんのその時の
体の状態に合った適切な按摩指圧になるよう、心掛けていきま
しょう。

 逆に言えば、こういう風に腹診を中心にする診察から始め、
按摩指圧をしていきながらも、その途中でラクな姿勢に変えて
いったり手足や首をラクな方に動かしてもらえれば、そこから
操体を付け加えていくことも可能ということです。

 患者さんに違和感を感じさせないために、そのラクな姿勢を
少し強調する皮膚操体や重さの操体をしていくのが良いと思い
ます。

 どんな姿勢になったら、どんな操体を付け加えれば良いかは、
今まで書いてきた以下の仰向け寝からの操体を参考にしてくだ
さい。

術伝流操体no.13:仰向け膝立てた姿勢から動きの操体
術伝流操体no.14:仰向け膝立てない姿勢から寝動きの操体
術伝流操体no.15:仰向け膝立てた姿勢から皮膚の操体
術伝流操体no.16:仰向け膝立てない姿勢から皮膚と重さ
術伝流操体no.25:指先で皮膚操体、仰向け寝がラクなとき

 揺らしについては、術伝流操体no.36を参考にしてください。

 ラクな格好に成れそうで成れない人に対する声掛けなどは、
術伝流操体No.33~No.35を参考にしてください。

術伝流操体no.33:対処法1.末端をラクに
術伝流操体no.34:対処法2.中心をラクに
術伝流操体no.35:対処法3.イイ感じを味わってもらうために


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最終更新:2017年02月25日 14:22