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術伝流一本鍼no.33 (術伝流・養生の一本鍼・運動器編(2))

腰の養生、補の灸&灸頭鍼

(1)古いツボには灸・灸頭鍼

 慢性期の養生は、先回までのように、基本的に、慢性期の型を中心
に治療していきます。が、鍼のみでは変化に時間がかかる古いツボが
出ていることもあります。

 今回は、鍼のみでは変わりにくい古いツボが見つかったときの処置
です。そういう古いツボは、灸や灸頭鍼をすると、それをさかいに大
きく変化していくことがよくあります。

(2)古いツボが出やすいところ

 慢性期の型で診察刺鍼をしながら古いツボをみつけてください。古
いツボは、表面はペコペコで、押すとしばらくフニャフニャしていて、
ずっと奥に非常に硬いシコリがあるという形をしています。

 腰痛の場合には、腹、腰〜殿部、膝裏〜脹ら脛の3カ所を中心にさ
がします。また、下半身の古傷、つまり、昔した打撲・捻挫などのケ
ガの影響によることもあります。

 腹側では、腹診のときに説明した、臍まわりの上下左右肓兪、章門、
五枢・維道がまず候補になります。その中では、比較すると、ヘソよ
り足側のツボが関係していることがおおいです(写真1)。

写真1

 それ以外では、正中線上の関元あたり、鼡径部から恥骨にかけての
衝門・急脈・気衝・横骨などに出ることがあります。関元あたりは、
臍から恥骨へ指をすべらせてさがし、もっとも凹んだところをとりま
す。鼡径部から恥骨にかけては、腰骨の腹側から指をすべらせてさが
し、押して痛みが強いところをとります。

 腰から殿部では、大腸兪、環跳、臀央のあたりにおおいですが、腰
徹腹、足徹腹や仙骨まわり、腰椎3〜5番の華陀経にも出ます(写真2)。
仙骨まわりは、 上仙・腰兪、次髎、仙腸関節陵などです。

写真2

 腰徹腹は、腸骨の外端から背骨のほうに腸骨上縁にそって指をすべ
らせ、脊柱起立筋の外縁を横から押してとります。足徹腹は、承扶か
ら内側へ殿部下縁にそって指をすべらせ、靱帯の内側をとります。

 仙骨まわりでは、正中線上の上仙・腰兪は正中線上を指をすべらせ
てとりますが、一つずれて腰陽関・長強に出ることもあります。八髎
穴の次髎や仙腸関節陵なども仙骨孔や関節陵にそって指をすべらせて、
ペコペコと凹んでいて押すと痛みが強いところをとります。

 膝裏から脹ら脛にかけては、下委陽と飛揚・外丘によく出ます。ま
た、内側の下陰谷と築賓や、正中線上の承筋・承山に出ることもあり
ます。それぞれ、まず、膝裏の委陽、陰谷、委中をとり、そこから足
首方向に指をすべらせて凹んでいて押すと痛みが強いところをとりま
す(写真3)。

写真3

 上記3カ所にみつからないときは、昔のケガのことを聞いて、その
あたりを調べてみる必要もあります。昔の下半身のケガ捻挫打撲など
をよく聞きます。とくに、足首捻挫、足甲打撲など。また、靴など履
物による足指の圧迫、ウオノメなどが関係していることもあります。

(3)補の灸

 古いツボには補の灸をします。補の灸は、10壮以上すえてやっと温
かさを感じるぐらいの弱刺激で、ゆっくりじっくり温めます。体全体
の力がクニャーとぬけ、気持ちよくホンワカ、ポワーンとなるぐらい
まで温めることを目的にした施灸法です。

 2、3壮で熱くなる刺激では、皮膚表面だけ熱くなって、奥の硬いシ
コリにまで熱がとどかないので、古いツボを変えることはむずかしい
です。よわい刺激でゆっくり温めることを目的にしているので、モグ
サも点灸用のいちばん良質なモグサを使います。

 まず、灸点紙を2枚かさねて、皮膚につける側から鍼柄の太さのも
ので穴をほんのすこし広げます(写真4)。

写真4

 灸点紙をツボにはりつけ、胡麻粒を縦に半分にしたぐらいの大きさ
で、ほとんどひねらないフンワリしたモグサを、広げた穴のまわりの
毛羽だった部分に引っかけるように置いて、火をつけます(写真5)。

写真5

 それから、ほんのすこしずつ大きな灸をすえていきます。残った灰
は取り去らず、その灰をつぶさないように、次のモグサをフワーッと
いう感じで乗せていくのがコツです(写真6,7)。

写真6

写真7

 灸点ちかくに熱さを感じたら、いったんすこし小さめをすえてから、
またすこしずつ大きくしていきます。あるていど灰がたまれば大きく
するスピードを早くしても大丈夫です。

 底面が灸点紙からはみださないで倒れる心配のない、底面直径5mm
高さ2、3cmぐらいまでに大きくなったら、大きさを変えずにすえて
いきます。体全体の力がクニャーとぬけ、ホンワカ、ポワーンという
感じの独特の気持ちよさが味わえるまですえます(写真8)。

写真8

 この灸のあと鍼を刺してもよいです。奥の硬いシコリがゆるみやす
くなっているのがわかると思います。

(4)補の灸頭鍼

 補の灸頭鍼は、鍼体をとおして熱を奥深くまで届けて、奥の硬いシ
コリをゆるめます。そのため、まず奥の硬いシコリに当たるまで鍼を
深く刺します(写真9)。

写真9

 それで、場所によって鍼の長さをえらびます。そのときに、下に骨
や肺がある場所では、古いツボでも比較的浅いこともありますので、
注意してください。

 とくに、肺のあるところでは、奥の硬いシコリがゆるんで灸頭鍼を
はじめる前よりも鍼が深く刺さってしまっても、胸腔をつつむ膜には
届かない長さの鍼をえらんでください。今回は腰なので、あまりそう
いうところにツボが出ていることは少ないと思いますが。

 つぎに、できるだけ皮膚表面に近いところでモグサをもやし、鍼を
とおして奥まで熱を伝えたいので、ちょっとした工夫をしています。

 あらかじめ鍼柄がとおる太さに穴を開けた直径5cmぐらいの厚紙
(葉書の厚さ)をおき(写真10)、その上に鍼柄のとおる穴を開け
たアルミケースをおきます(写真11)。

写真10

写真11

 それから、缶ビールのステイオンタブをおりたたんだものなど、
台座とのすきまをあけるものをおきます(写真12)。その上に、
灸頭キャップの上の部分を広げ鍼柄を素通りするようにしたものを
おきます(写真13)。

写真12

写真13

 そして、直径2cmぐらいに丸めた灸頭鍼用モグサを二つにわり、
鍼柄につけます(写真14)。

写真14

 炭化モグサ用のキャップと炭化モグサでもよいです(写真15,16)。

写真15

写真16

 そして、点火します(写真17)。

写真17

 熱すぎたら、紙とアルミのあいだに花びら型の緩和用の厚紙をいれ
れば、加減ができます(写真18、19)。

写真18

写真19

 体全体の力がクニャーとぬけ、ポワーンという感じの独特の気持ち
よさが味わえるまで繰り返します。

 灰処理は、アルミケースごとすれば簡単です。取り去ったあと、十
分あたたまったか確認してください(写真20)。

写真20

 奥の硬いシコリがゆるみ鍼がしずんで、鍼柄が皮膚について火傷す
ることがありますので、そうならないように注意してください。

 厚紙の下にアルコール漬けにしたビワの葉をおいたり(写真)、ビ
ワの葉のアルコール抽出液をスプレーしたりすると、ゆるみやすくな
ります。

写真21

(5)手順

 慢性期の型をして、うつ伏せ、あお向けそれぞれ2、3カ所の古いツ
ボをえらびます。そして、うつ伏せあお向けの順で、補の灸・灸頭鍼
をします。臍まわりなど鍼が痛いところは灸をし、それ以外は灸頭鍼
をします。

 仕上げに、手の指の骨空か指端に熱い灸をします。糸状灸(写真22)
か、手指用糸モグサ(写真23)か、どちらかです。

写真22

写真23

 この灸には、ノボセ止めと目覚ましの効果があります。これをして
おくと、眠気がとれますし、足元がふらついたりしません。そのため、
施灸後、そのまま、しばらく眠れる場合には、省略してもかまいませ
ん。

 以前の治療で古いツボが見つかっているときや、時間がなくて診察
中に古いツボが見つかったときには、手の陰陽に引き鍼したあとで、
補の灸・灸頭鍼にうつってもよいです。このときは、あお向け〜うつ
伏せの順でもかまいません。この場合も、手の骨空への灸で仕上げま
す。


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最終更新:2017年02月25日 12:42