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術伝流一本鍼no.34 (術伝流・養生の一本鍼・運動器編(3))

肩の慢性期の養生

(1)はじめに

 肩まわりの応急処置をして、痛みつらさや可動域制限などを軽減
できたけれど、復活してしまうこともあります。そういうときは、
肩まわりだけではなく、全体の歪みが関係していることがおおいです。

 たとえば、心臓に負担がかかりやすい人は、右利きなのに左肩コリ
で、とくに肩胛骨の内側縁の下半分がこっていることがおおいです。
また、瘀血が左下腹にある人は、首左側真横の付け根の肩との境目に
コリが出ることがおおいです。そのほか、目の疲れ、下半身の歪みな
ども関係していることもあります。

 そういうときには、慢性期の型と組み合わせて体全体の歪みを少な
くしていく必要があります。

(2)全体の流れ

 腰痛と同じように、あお向けやうつ伏せでは、慢性期の型の手順で、
診察刺鍼をしてゆきます。

 座位での治療になったら、肩、肩胛骨、首のまわりをくわしく観察
して、ツボが出ていれば刺鍼します。それから、脇の下から上腕陰経
をしらべ、ツボが出ていれば刺鍼します。

 また、この部分が関係する動作制限があれば、動作鍼もしておきま
す。そのうえで、ほかの可動域制限があれば、ほかの動作鍼もします。

 可動気制限がなくなったら、慢性期の型にもどり、頭の散鍼・手甲
への引き鍼をして、後始末します。

 診察をあお向けでするので、あお向けになれることが前提です。腰
痛とちがい、あお向けになれないことは少ないと思います。が、もし
なれないときには、応急処置をして、あお向けになれる程度には症状
を軽減してから、慢性期の型と組み合わせるようにしてください。

(3)くわしい手順

 まず、脈診(写真1)、腹診(写真2)などの慢性期の診察をして
いきます。

写真1

写真2

 その結果をふまえ、左右どちらからはじめるか決めます。腹の古い
ツボの状態を中心に決めますので、肩こりのひどい側と一致しないこ
ともあります。

 頭など肩甲骨・鎖骨から上の表位をさわってみて(写真3)、表位
に症状が出ていれば、左右で症状の強い側の手甲に引き鍼をします
(写真4)。表位に症状がなければ省略します。

写真3

写真4

 腹診で決めた側の手の陰経、陽経の順で刺鍼します(写真5,6)。

写真5

写真6

 つぎは、腹部で、横腹、下腹部、上腹部の順で刺鍼していきます
(写真7,8,9)。

写真7

写真8

写真9

 そして、足も、陰経(写真10)、陽経(写真11)の順で、刺鍼しま
す。

写真10

写真11

 あお向けでの刺鍼をおえたら、ゆっくり、うつ伏せになってもらい
ます。

 うつ伏せでの刺鍼でも、大腿部までは、肩の症状はあまり意識せず
に、腹を中心に体全体をととのえるつもりで刺鍼していきます。

 うつ伏せでは、胸椎7、つまり、肩胛骨の下縁あたりから腰側の背
中にツボをさがして刺鍼します。胸椎部は、華佗経におおいです(写
真12)。腰は、痞根(写真13)、腰椎部華佗経(写真14)、腰徹腹
などにおおいです。

写真12

写真13

写真14

 また、臀部や大腿部も、ツボが出ていれば刺鍼します。

 膝から下、脹ら脛ちかくのシコりは、肩甲間部と相関関係がすこし
あるようです。立姿勢で足の付け根を境目とした上下対応の相関関係
では、大腿部が腰臀部、下腿部が横隔膜から上の背中、足首から先が
首から上と対応するとされています。

 とくに、脹ら脛の下部外側の飛揚〜外丘あたりは、出ていることが
おおいので、ツボをさがして刺鍼します(写真15)。外踝や踵ちかく
に出ることもあります。

写真15

 さて、いよいよ座位です。首肩背中をさわってみて熱いところがあっ
たら、散鍼して熱を散らしておきます。

 そして、このあたりでツボの出ることのおおいところをしらべてい
きます。首の付け根から肩井をとおり肩峰までのライン、肩胛骨の上
から内側のライン、大椎まわり〜胸椎部華佗経のライン、後頭骨下縁
のライン、頸椎に平行で筋肉が太いところのライン、首の真横のライ
ンなどです。そういうところに指をすべらしてツボをさがし、出てい
たら刺鍼します。

 このあたりの肩まわりのツボのでやすいところについては、術伝流
一本鍼no.6「肩まわりの痛みの応急処置の基本」を参考にしてくださ
い。

 つぎは、肩の慢性期でのポイントとなる脇の下から上腕陰経です。
経過が長いときには、この部分が重要で、とくに、真横、つまり、腕
を胴からはなす方向に少ししか挙げられない場合には、ここがポイン
トになります。

 腕をつらくない範囲で真横に上げて、脇の下から上腕の陰経側を観
察すると、溝が腕と平行に走っているのが見えます(写真16)。

写真16

 その溝を脇の下のほうにたどり、終点で肩のほう押しつけるように
押して痛いところをさがします。ツボが出ていたら、刺鍼します。つ
ぎに、脇の下のツボから溝を肘のほうにたどっていき、ヘコみが大き
いあたりで、押して痛いところをみつけます。ツボが出ていたら、刺
鍼します。

 この刺鍼は、あお向けに寝てもらい、座位と同じ角度に腕を挙げた
姿勢になってもらい刺鍼していくと、ラクにできます(写真17)。

写真17

 挙上制限があるときには、脇の下のほうから肘にむかって1か所刺
鍼するたびに、腕がすこしづつ上に挙がるようになっていきます。溝
が2本出ているときには、順に刺鍼します。

 脇の下の背中側の、腕と背中に張っている筋肉にツボが出ているこ
ともおおいです(写真18)。ツボを見つけ刺鍼します(写真19)。
2,3か所みつかることもあります(写真20)。

写真18

写真19

写真20

 脇の下から上腕陰経の動作鍼や、腕と背中に張っている筋肉の中の
シコリへの刺鍼をおえると、水平までの挙上制限はなくなっているこ
とがおおいです。が、残っていれば、陽経側をします。前方挙上制限
なら手太陽、後方挙上制限なら手陽明にツボが出ていることがおおい
です。

 水平以上に腕が挙がるようになると、肩甲骨まわりにも、動作制限
の原因となるツボがみつかることがあります。ツボを見つけたら刺鍼
します(写真21)。

写真21

 挙上制限がなくなったら、ほかの動作制限に対する動作鍼をします。

 挙上制限のつぎにおおいのは、小指が手のひら側に回っていくよう
な手首捻転の制限です。このとき、ツボは、肩峰から胸にかけて、肩
峰で上腕と直角にまじわるライン上に出ます。痛い一歩手前の姿勢で、
そのライン上をしらべ、ツボをみつけ、刺鍼します(写真22)。

写真22

 一度もどしてから捻転すると、前よりもすこし余分に捻転できるよ
うになります。そして、また、痛い一歩手前の姿勢でツボをさがすと、
ツボは、先程よりもすこし肩から遠ざかるところに出ます。このよう
に、肩に近い側から順に刺鍼すると、一鍼するごとに動作制限が改善
され、手首がラクに捻転できるようになっていきます。

 ほかの動作制限があれば、それにあわせた動作鍼をします。

 肩まわりの動作鍼については、以下を参考にしてください。



 また、首肩腕を動かしてもらい、痛みつらさがのこっていれば刺鍼
します。

 それから、首の前側や鎖骨まわりに痛みつらさがあれば、刺鍼しま
す。熱いところがある場合には、その前に散鍼することをわすれない
でください。

 仕上げとして、頭の熱いところに散鍼し(写真23)、ツボが出てい
れば刺鍼し、手甲に引き鍼して(写真24)、後始末します。

写真23

写真24

(4)変わりにくいツボがみつかったら

 慢性期の型と動作鍼を併用しても変わりにくい古いツボがみつかる
こともあります。そういうときには、腰痛の場合と同じように、その
古いツボに、灸や灸頭鍼をして変化をうながします。

 次回説明します。


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最終更新:2017年02月25日 12:45