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術伝流鍼灸text 【Ⅲ】応用実践 no.9 片麻痺

箇条書き解説

(1) 基本的に

① 脳梗塞など中枢神経性疾患による麻痺

② 時間がかかるし、脳神経の破損量が多いと難しい

③ 基本的治療手段

 ⒈ 指先を刺激する
  (早い時期からすると効果的、
   刺激から逃げる動作が出たらシコりをみつけ改善)

 ⒉ 首を中心に肩や鎖骨まわりなどもふくめ脳への血流を妨げるシ
   コりを取り除く

 ⒊ 皮膚表面の温度差、感覚の有無のさかい目の中枢よりにツボが出て
   いることがおおい

 ⒋ 脳神経が破損したところに近い頭の表面から邪気が出ていることが
   おおい

 ⒌ 腹のシコりなど慢性期の古いツボの出やすいところも調べ、ツボが
   出ていたら刺鍼

 ⒍ 脳梗塞の場合には、悪血を排出する漢方薬や食養も大切

(2) ツボが出やすいところ、ねらい目


① 手足の指先
 ⒈ 足:指端、井穴、骨空、節紋、指裏横紋中央、着地曲、失眠など
 ⒉ 手:指端、井穴、骨空、節紋など

② 指先の灸で逃げて痛みが出たところ
 ⒈ 足指先の灸で逃げて痛みの出た腰~大腿~下腿
 ⒉ 手指先の灸で逃げて痛みの出た肩~上腕~前腕

③ 首など脳への血流に関係するところ
  後頚部、横頚部、前頚部、鎖骨まわり、(肩、脇の下、肩甲間部)

④ 皮膚表面の温度差、感覚有無の境目の中枢より

⑤ 脳障害部位の近くとその該当経絡
 ⒈ 脳損傷部位に近い頭の表面
 ⒉ ⒈に経絡的に関係する手甲や足甲1~2間

⑥ 手指の動き:指を動かす筋の筋腹
  前腕のもっとも太い部分におおいが親指は手のひらも(母指球)

(3) 手順:基本的には、慢性期の型+指先の灸

 ① ツボを考慮して慢性期の型をして全身状況を把握
  (あお向けになりにくいときは省略も可)
  ⒈脳への血流を考え首まわりを丁寧に
  ⒉頭の損傷部位の近くへの刺鍼や関連する引き鍼

 ② 指先に灸して逃げる動作を誘導
   →逃げる動作が出たら制限か所の刺鍼
  ⒈ 足がまるで動かないときには、患側を上にした横向き
   (重力に逆らわない)
  ⒉ 少し動くようになったら、仰向け
   (少し重力に逆らう)
  ⒊ もう少し動くようになったら、座位
   (重力に逆らい、歩くときと同じ姿勢)

 ③ 逃げる動作が出ないときには、皮膚表面の温度差や感覚差を
   しらべ対処

 (*) 仕上げに手指の指先に再度直接灸

文章による解説

(1)基本的に

 片麻痺は、脳梗塞など中枢神経性疾患による症状なので、急性期は
もちろん救急医療だが、症状が落ち着いたら、指先への刺激だけでも
はじめたほうがよいことがおおい。

 ただし時間がかかるし、脳内細胞の破損量がおおいと、途中で改善
が停止することもある。

(2)ツボが出やすいところ、ねらい目

1.指先
 指端や、井穴、骨空、節紋、指裏横紋中央など、患者さんの姿勢に
あわせて、灸しやすい指先ちかくのツボに熱い透熱灸をして逃げる動
作を誘導する。足の場合には足裏の着地曲、失眠なども使う。

 患側を中心にすることがおおいようだが、脳の損傷部位は逆側だし、
巨刺的な意味もあるせいか、健側にもしたほうが変化が早いように思
う。

 足がまるで動かないときには、患側を上にした横向き寝で重力の影
響を受けない状態で灸をして逃げてもらう。ある程度動くようになっ
たらあお向けで、重力にさからって逃げるようにしていく。よく動く
ようになったら座位で、重力にさからって逃げるようにしていく。

2.指先の熱さから逃げて痛みの出たところ
 指先の灸で熱さから逃げる動作が出ると、今まで動かなかったとこ
ろを動かすせいか、その動きによって痛むところが自覚できるように
なることがおおい。

 痛みが出たちかくを調べ、ツボをみつけて刺鍼。足の場合には、腰
~大腿~下腿など足の動きに関係する筋。手の場合には、肩~上腕~
前腕など手の動きに関連する筋。

 このツボは深く、骨のすぐ上にあることがおおく、ツボの底のシコ
りは硬いゴムのような感じをうける。すこし刺さるが下や横に逃げや
すく、ゆるみにくい。撚鍼などしてシコりに鍼を刺し入れてから、灸
頭鍼をすると比較的ゆるみやすい。

 ツボがゆるむと指先の灸で逃げる動作が少し大きくなり、別の場所
に痛みを感じるので、ツボをさがしてゆるめる、この繰り返し。

 患者さんが痛みを自覚しない場合には、逃げて止まった姿勢をよく
観察し、動作鍼の要領でツボをさがして刺鍼する。

3.脳への血流の改善
 首やそのまわりなど脳への血管が通っているところにシコりがある
と、脳への血流が少なくなるようだ。また、静脈血の還流も関係する
ようだ。

 そのあたりを調べツボが出ているようなら、その奥のシコりをゆる
める。

4.皮膚の温度差や感覚差の少し中枢より
 皮膚をさわり、皮膚表面温度がちがう境目や、さわられている感じ
がわかるところとわからないところの境目をみつけ、その少し中枢よ
りにツボをさがし、奥のシコりをゆるめると境目がすこし中枢よりに
移動する。

 また、ツボをさがしてゆるめるを繰り返す。

5.脳損傷部位の頭の表面
 脳損傷部位にちかい頭の表面から邪気が出ていることがおおいので、
そこに刺鍼して邪気を散らし、関連する手甲などに引く(頭頂部は足
厥陰が関連経絡)。

 邪気が感じられない場合は、CTやMRIの図から損傷部位にちか
い頭の表面を推定する。

6.手指を動かす筋の筋腹
 改善がすすんでも、手指の動きの悪さがのこった場合には、手指を
動かす筋の筋腹にツボが出る。

 指をすこし他動的に動かしながら、指を動かす筋の筋腹にツボをさ
がす。前腕の太い部分におおいが、親指の場合には手のひらの母指球
にも出る。

(3)手順

 おもいときは、指先灸で逃げる動作を誘導することが中心。すぐに
逃げる動作が出なくても根気よく続ける。

 あお向けになれるなら慢性期の型で腹のシコりをゆるめる。

 脳への血流をかんがえ首まわりにも刺鍼し、頭の損傷部位ちかくへ
刺鍼し、手甲へ引き鍼。

 動きが出たら、痛みのところを鍼や灸頭鍼で改善。

 動きが出なくても皮膚の温度差や感覚差がわかったら、ツボをさが
して刺鍼。

 仕上げに手の指先に灸。

 長い治療となるので、根気よく取り組む。

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最終更新:2010年11月02日 13:48