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単発講座報告 歯科患者塾で操体

1.はじめに

 先日は、歯科患者塾によんでいただき、ありがとうございました。

 初めて行くところだったので、いちおうインターネットで調べていっ
たのですが、会場が青山通りに面していると思っていたので、すこし
迷ってしまいました。

 外は寒かったのですが、会場は暖房が大変きいていて熱く、すぐ大
汗をかいてしまいました。

 始まる前までに汗がひくか心配していたのですが、なんとかなりま
した。汗をかいたので緊張がほぐれ、結果的には、かえって良かった
かもしれません。

2.実際にしたこと

2.1.まず言葉の誘導で一人操体

 操体は原始感覚を大切にするので、言葉による説明からはいるより
も、まず動いてもらったほうが良いと思い、はじめに声をかけて動い
てもらう操体をしました。

 座った姿勢から、手首の動きをきっかけにする操体と、体重移動を
きっかけにする操体。

 それから、寝た姿勢から、足の動きをキッカケにする操体と、皮膚
をズラすことをキッカケにする操体。

 会場の広さにくらべて大勢の方に集まっていただいたので、寝た姿
勢からの操体は、2組に別れてしてもらいましたが、それでも狭くて
きにくそうでした。すみません。

2.2. 一通り説明

 そのあと、一通り言葉で説明しました。

2.2.1. イイ感じのことをすると治る

 操体の基本的考え方は、以下の通りです。

①気持ち悪い、イヤな感じのことをし続けると体が歪むのが病気の出
 発点

②気持ちのいい、イイ感じのことをすると体の歪みがかるくなるのが
 治療の出発点

 どうしてそうなるのかは、あとでくわしく説明します。

 さて、操体、つまり体を操作するという名前がついているくらいな
ので、気持ちのよい、イイ感じのことの中でも、体を動かすことで気
持ちのよい・イイ感じのものを探していくことが、操体の中心になっ
ています。

2.2.2. 一人操体は、アクビを楽しむこと

 簡単に言ってしまうと、上に書いた一人操体のような自分一人で動
いていく操体は、アクビやノビのなかからイイ感じのものを探してい
くという感じです。

 アクビやノビを楽しむという感じですると、うまくいきやすいと思
います。私がいままで見てきたなかで、いちばん見事だなと思ったの
は、6ヶ月のころの長男のノビでした。

 大人になるとなかなか体の感じに素直にしたがうのが難しいからか
もしれません。一人操体は、赤ちゃんのアクビやノビのマネなんだと
思ってください。

2.2.3. 二人操体は、ふれあいを楽しむこと

 それに対して、このあとに説明する二人組での操体は、ふれあいを
楽しむ感じですると、うまくいきやすいように思います。

 つまり、動物、とくに、けもの(哺乳類)のお母さんが赤ちゃんを
なめているのに、よく似ているといます。つまり、二人操体は、犬や
猫のお母さんが赤ちゃんをなめまわしていることのマネなんだと思っ
てください。

2.2.4. 原始感覚をみがくのが、操体のコツ

 どちらも、とても原始的な行動です。つまり、操体というのは、あ
たらしく技術をおぼえていくというよりも、赤ちゃんや動物のころに
はできていたことを思い出していくという感じのほうが強いというこ
とを、よく心にきざんでおいてください。

 操体をはじめた橋本敬三先生は「原始感覚」という言葉をのこして
られます。原始感覚(勘)をみがき育てていくことが操体に上達する
コツです。

2.2.5. イイ感じになりやすい動きの例

 とはいっても、大人になってしまったので、初めはどうしたらイイ
感じなのか分からない方も多いと思いますので、3つほど、気持ちよ
さやイイ感じが生まれやすい動きを例としてあげておきます。

①逆モーション・バック運動:つらい動きと反対の動きをキッカケに
 する

②コっているところをより縮める動きをキッカケにする

③ラクな姿勢からイイ感じを探す動きをキッカケにする

 ①の「逆モーション・バック運動」というのは、文字通り、つらい
動きと正反対の動きをキッカケにするということです。たとえば、右
に向きにくいときには、左を向く動きをキッカケにします。右手をあ
げにくいときに、左手をあげるのをキッカケにしたりもします。

 ②の「コっているところをより縮める動き」というのは、コってい
るところは、そこの筋肉が縮んだまま硬くなっていて伸ばそうとする
と痛いので、それと逆に、そこの筋肉をより縮める動きをキッカケに
するということです。

 たとえば、肩がコっているときには、首の後ろ側、首から腕にかけ
て、肩甲骨のあいだの3カ所が縮んで硬くなっていることが多いので、
頭を反らし、肩を首に近づけ、腕を外向きにねじります。 それぞれ、
3カ所が縮む動きになってます。

  頭を反らすと、首の後ろ側は縮みます。肩を首に近づけると、首か
ら腕にかけての筋肉が縮みます。腕を外向きにねじる、つまり、小指
側が手のひらにまわるように腕をねじると、肩甲骨のあいだが縮みま
す。

 ③の「ラクな姿勢からイイ感じの動きをさがす」というのは、とく
に、寝た姿勢からすると効果が出やすいです。初めは分かりにくいか
もしれませんが、二人組で操体するときには、いちばん基本的で、い
ちばん効果があがりやすいものなので、身につけるようにしてくださ
い。

 勘のいい方はすでに気がついているかもしれませんが、じつは、①
と②と③は、実際には、同じことを言い換えただけです。

 つらい動きをしない姿勢というのがラクな姿勢です。コって縮んで
いるところを伸ばそうとするとつらいから、それと反対の逆モーショ
ン・バック運動というのは、そこを縮めようとする動きです。

 また、コって縮んでいるところを伸ばそうとするとつらいので、そ
れをしないで逆に少し縮め加減にした姿勢がラクな姿勢です。

2.2.6. つけたしてイイ感じをふやす

 3つのキッカケだけでも結構イイ感じになり、効果があがることが
おおいのですが、少しつけたすとイイ感じがふえることが3つほどあ
ります。

①手首、足首、首など、体のはじをイイ感じのほうに動かしてみる

②胴体の左右捻転、前後屈、左右側屈を組み合わせて、イイ感じのほ
 うに動かしてみる

③体重をイイ感じのほうに移動してみる

 ①は、手首、足首、首などを、左右にねじったり、左右に曲げたり、
前後に曲げたりしてみて、イイ感じの組み合わせをさがし、それをつ
けたすということです。

 前後に曲げるのは、正確には、手首の場合は掌屈背屈、足首の場合
は底屈背屈といいます。

 たとえば、手を上にあげたりすることをキッカケにしたときには、
その手首を左右どちらかにねじることをつけたすとイイ感じがふえる
ことがおおいです。

 ②は、胴体を左右にねじたり、左右に曲げたり、前後に曲げたりし
てみて、イイ感じの組み合わせをさがし、それをつけたすということ
です。

 たとえば、手を上にあげることをキッカケにした場合には、胴体を
そちらにねじって、上にあげた手を見るように少し胴体を後屈すると、
イイ感じが増えることが多いです。

 胴体といっても、中心になるのは、腰椎のあるところです。腰椎の
ところは、首と同じように、背骨に他の骨がついてなくて、ねじった
り曲げたりしやすいからです。胸椎や仙骨には、肋骨や骨盤がついて
いるので、ねじったり曲げたりはしにくくなります。

 ③は、体重をあちこちに移動してみてイイ感じの方向を見つけ、そ
の方向にしばらく体重を移したままにしておくということです。たと
えば、手を上にあげることをキッカケにした場合には、同じほうの足
に体重を移すと、イイ感じが増えやすいです。

 この3つをするとイイ感じが増えやすいのは、キッカケの動きが体
全体の動きになるからです。これを操体では、キッカケの動きを全身
に連動させるとよんでいて、気持ちのよい操体をして効果をあげやす
くするコツになっています。

 ①は、体のハジを動かす動き、②と③は体の中心を動かす動きなの
で、この3つをつけくわえると、体全体が連なって動くことになるわ
けです。

 とくに、①の体のハジの手首、足首、首の動きをつけくわえること
と、③の体重移動をつけくわえると、イイ感じが増えやすいように思
います。

 ②の胴体の捻転・前後屈・側屈が省略されやすいのは、キッカケと
なる動きによっては、つけたしにくいことも多いからです。

 また、③の体重移動をつけたすと、その操体を終わりにしてよいタ
イミングが分かりやすいです。体重移動というのは長い時間つづける
のが難しいことだからです。つまり、体重をもどしなくなったら、そ
の操体は終わりにしてよいということです。

2.3. 二人組で症状別の操体

 説明のあと、具体的に症状別に二人組での操体を実演していきまし
た。

 膝の痛くて正座できない方、腰が痛くて前屈がしにくい方や左右に
振り向くのがしにくい方、手を挙げるのがつらい方などに出てきてい
ただき、それらを解消する操体を伝えていきました。

 みなさん初めて操体をするとは思えないほど上手で、どんどん改善
していって、見ている方々から歓声があがり、うれしかったです。

 以下に、おもだったものをあげておきます。

2.3.1.腰痛

.1.横向き寝から上半身を捻ったり丸めたり×足首背屈

.2.横向き寝からヒモを使って足指揉み

.3.横向き寝で、膝裏シコリを押しながら、首をイイ感じのほうへ
 ×足首背屈

.4.振り向けないときには、痛い方向と反対向きに捻る×手首捻転
 ×体重移動

.5.前屈できないときには、反る:鴨居につかまって一歩前へ

2.3.2.肩こり

.1.腕返し

.2.頭の後ろで手を組んで、手のひらを天井へ

.3.肩を上げ天井を見る×手首背屈&尺屈×体重移動
 (机などを背にして立ち、机で手首背屈)

.4.肘を後ろにしながら肩を上げてから瞬間脱力

.5.裏腕立て伏せ

2.3.3.膝の痛み

.1.親指で膝裏シコりを押しながら、首をイイ感じのほうへ
 ×足首背屈×体重移動

.2.もう少しで正座:脹ら脛の皮膚を外側にズラしながら座る

.3.足首の上の皮膚をイイ感じのほうに回すようにズラす×首の捻転
 ×体重移動

2.3.4.指もみ、指そらし

.1.指をそらす:外より、内より、中の3とおり

.2.水掻きをもむ:八邪とその両側

.3.爪の根本をもむ:井穴=経絡の末端

2.3.5.症状のないときにも重さの操体

.1.テーブルぐらいの高さのものに手をつき、イイ感じのほうに体重移動
 (指をそらしてみて、いちばんピリピリビリする指を反らしながら)

 これらについては、術伝HPの術伝流操体で写真入りで解説しています
ので、興味のある方は、のぞいてみてください。


(「術伝」や「術伝流操体」をGoogle検索してもいけます)

2.4. 質問と解説など

 そのあと、質問をしてもらい解説を加えました。時間が少なくて、
十分にお答えできなくて申し訳ありませんでした。

 症例相談は、メーリングリストでも受け付けていますので、興味の
ある方は、参加してみてください。


 それから、私が操体にいちばん感謝していることについて話しまし
た。

 私の次男は、626gの超未熟児で生まれて、脳性麻痺でした。操体
のおかげで、その子の酸素ボンベが外れたり、歩けるようになったり、
字が書けるようになったり、自転車にのれるようになったり、海で遠
泳できるようになったりしました。

 これについてもくわしいことは、術伝HPの「操体もくもく」などに
書いてありますので、興味をもたれた方は、読んでみてください。

3.気持ちよいとなぜ治るの?

 さて、はじめに書いた、「気持ちが悪いことをしつづけると体が歪
むのが病気の出発点、気持ちのよいことをすると体の歪みがかるくな
るのが治療の出発点」ということについてですが、何で、気持ち悪い
ことをすると体が歪み、気持ちよいことをすると歪みが取れるか、書
ける範囲で書いてみます。

 操体では、気持ち悪いことをすると体が歪み、そして、なんとなく
変なイヤな感じの不定愁訴になり、それから、検査に異常の現れる機
能異常の状態になり、続いて、器官が破壊されるという順番で病気が
進行するとされています。

 治る順序は、逆で、気持ちよいことをすると体の歪みが取れ、する
と、不定愁訴が消え、次の日くらいに機能異常が改善され検査結果が
変わり、しばらくして、器官破壊も可逆変性出来る範囲では改善され
るとされています。

 さて、気持ち悪いことをしているときの姿勢をよく思い出してみま
しょう。あまり良くない姿勢をしていることが多くありませんか?

 極端な言い方をすれば、目と手だけ気持ち悪いことに向いていて、
それ以外はそっぽ向いている姿勢をしていませんか?たいていは、手
首は甲を反らせる方向に折れるような感じで曲げて、肘はできるだけ
体から気持ち悪いものを遠ざけるように伸びていて、肩は上がってい
て、腰は曲がっていて、顔はそっぽ向いて、体の正中腺もそっぽ向け、
目だけ横目で気持ち悪いものを見ている、つまり、手先と目以外は気
持ち悪いことから遠ざける姿勢、そんな姿勢じゃないですか?

 実際に極端な例をやってみると、ああ、なるほど、これでは、長い
時間この姿勢でいたら体が歪むだろうなと納得できますので、やって
みてください。

 逆に、気持ちよいことしているときは、気持ちよいものをできるだ
け自分の体に近づけ、体の正中腺の前にもってきて、手首はあまり曲
がらず、肘は少し張り気味、肩は降り、手首・肘・肩・背中が一つの
円を描き、腰から仙椎にかけは反っていて、頭や目は気持ちよいもの
に向いているという姿勢をしていませんか?

 こういう姿勢だと長い時間やっていても疲れにくいです。いわゆる
良い姿勢に近いですね。操体も、この姿勢でできるようになると効果
が出やすくなります。

 さて、そういう気持ち悪い姿勢を続けていると体が歪みますので、
体は自然にそれを改善しようとする行為をしはじめます。いわゆる、
アクビやノビです。

 アクビは体をそらせて上を向くことが多いですが、その前には、体
を前に折り曲げたり、下を向いていることが多いと思いますが、いか
がでしょう。

 私は、操体をはじめ、ヨガ、気功、整体など、体を動かす運動療法
は、みな、アクビの様式化ではないかと考えています。民族の違い、
体形の違い、好みの違いによって、いろいろな形や方法への変化が起
きているだけで、また、心に言葉で描かれた物語がちがうだけで、本
質は、みんな同じに見えます。

 アクビのときに、はじめに体がフワーと動いていくことを中心に様
式化したのが気功で、そのあとにしばらく動きが止まる姿勢(操体で
いう「タワメの間」)を中心に様式化したのがヨガで、つぎに、口が
フッと瞬間的に脱力するのを中心に様式化したのが整体やカイロなん
じゃないかなと思えるのです。

 ついでにいえば、そのあとの大きく息を吐き出した状態のあとを様
式化したのが自律訓練法かもしれません。

 私は、ヨガや気功や整体をやっているときには効果が出せても、な
ぜ効果が出せるかわかりませんでした。操体をやって、理由がわかっ
たように感じました。

 みんな、アクビの様式化なんだ。体が自然にやっていることを様式
化しただけなんだ・・・と。

 忘れられない思い出があります。生後半年ほどの長男がアクビとノ
ビをしていたのを見てびっくりしました。それまで見た、どんな気功
の名人よりも、整体の名人よりも、操体の名人よりも上手な見事な動
きをしていたのです。

 本当にびっくりしました。理にかなっていて、自然で、文句の付け
ようのないほど、見事な動きでした。

 それ以来、こういう体を動かす健康法は、アクビの様式化で、新し
くおぼえるというよりも、赤ちゃんのころはできていて、成長にした
がって忘れてしまったことを思い出せば良いだけなんだなぁと思うよ
うになりました。

 操体は、そのなかでも、アクビにふくまれる全ての要素がそろって
いて、やっている人の「なんとなくホンワカとした気持ちよさ」とい
う、原始的な快感覚を大切にしている点が好きです。

 なにせ、アクビやノビの様式化だと思っているわけですから。

 しかも、やっている人のその時その場での状態にあわせるように、
今も工夫が続けられている点も気にいっています。

 創始者のはじめた型の伝承におちいりがちな方法がおおいなかで、
実際に、気持ちのいい、体にとって本当に必要なものは何だろう、い
まの時代の方の体の歪みにとって良い方法は何だろうと改良が続けら
れている点がすごいなと思います。

 橋本敬三先生は「これをすると一生飽きないよ」とおっしゃってた
そうだけれど、本当に面白くて工夫するのに飽きることがありません。

4.おわりに

 長くなりましたので、このへんにしておきます。

 歯科患者塾によんでくださった草の根歯科の会のみなさん、当日会
場にきてくださったみなさん、ありがとうございます。

 また、いっしょに操体のできる日のくることを楽しみにしています。


 質問などは、「「術伝」掲示板」のほうにおねがいします。


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最終更新:2010年08月29日 08:34