累積: - ___ 昨日: - ___今日: -

操体症例問答no.5 操体あらマッサージ

(1)はじめに

 遊風の操体掲示板にのせた操体症例4つめです。

 仙台のコーン先生がなさっている症例報告風に書いてみた例です。

(2)操体あらマッサージ

マッサージを頼まれたけど

 このあいだ、腰と膝が悪いと言う婆ちゃんにマッサージを頼
まれた時の例を、コーン先生の操体ライブ風に書いてみました。

 そしたら、お茶を飲んでいる時間も含めて、せいぜい40分
から50分位のことなのに、長くなってしまいました。

 私は、操体などをしているときには、自分の意識も半分位は、
飛んでしまってボッとしていることが多いので、思い出すのが
大変でした。

実際には

私「お婆ちゃん、何処が辛いの?」

婆「膝と腰だね」

 辛いのか、ちょっとブッキラボウ。

私「左と右で違いがある?」

婆「わしゃ、全部左、何処も左なんだよ」

私「片側の腰や膝が悪いときは、
  そっちを上にしてマッサージした方が
  されているときラクだと思うよ。
  ちょっと、横向きに寝てみて、ラクな格好を探してみよ」

 婆ちゃんは、もぞもぞと横になる。
うーん、動きはゆっくり、少し、ぎこちない、
これは、確かに悪そうだなと思う。

 婆ちゃんの後ろに回って、

私「上になった足はもう少し前の方がラクじゃない?」

 と言いながら、
下になっている右足の膝の前に、左足の膝を置く。

婆「うーん、そうかな、そうみてえだな」

 腰の上に成っている部分を左膝の方へ押しながら

私「こうすると、もう少し、イイ感じかな?」

婆「うん、良さそう」

 お婆ちゃんの腹に息が入ったのを目で確かめながら、
腰を押すのを手から立てた左膝に代える。

 この時点で、もう、横向き寝からの重さというか、動きとい
うかの操体に入っているわけです。

 これは、お分かりのように、仰向け寝からの膝倒しの変形版
の操法になっています。

私「肩の方はどうかな?」

 と言いながら、右手で上に成っている左肩を動かしてみる。
ほんの少し動かしただけで後ろ側にスーッと動いていく。左腰
から左膝にかけてと並行で、向きは逆、つまり、この婆ちゃん
の体は、今、捻じれたがっているのが分かる。

 こういう場合には、このような姿勢になる場合も有りますが、
肩も前の方へ動かしたがる場合も有ります。

 ほんの少しの力では動かなくなったところで止めて、触れて
いる部分の皮膚を少し今まで動いて来た方向にズラす。

 ここまでで、3分位かな。

 腹の息が深いのを目で確かめた後、チラッと顔を見ながら

私「こっちの方がイイみたいだねぇ。これでイイかな?」

婆「うん、それイイ」

私「じゃあ、ラクな姿勢になれたから、
  これからマッサージしていくけど、
  痛かったり、逆に、物足りなかったりしたら言ってね。
  合わせるから。
  あと、姿勢を変えたくなったら言ってね。
  同じ姿勢だと、辛くなることもあるから。」

私「それで、腰や膝が痛いときに、
  そういう痛いところからマッサージを始めるよりも
  足の指から始める方が辛くないことが多いから、
  足の指からやってみるね。
  腰や膝の痛いときは、
  足の小指や隣の指に痼りが出ていることが多いんだ」

 実際に、寝返りも打てないほどのギックリ腰のときには、そ
の人が固まっている姿勢から施術するのは、もちろんのこと、
足の指揉みから始めないと、痛がって、患部の腰に触れないこ
とすら有ります。

 そう言いながら、腰を押す膝を右に代え、左手で婆ちゃんの
左足の小指の指裏の関節の隣指側を押す。

 右手は肩の辺りの皮膚をズラす皮膚の操体をしたまま。腰を
押す膝を変えたのは、力を入れる方に操者の体の正中腺を向け
るため。

婆「イタた、ホントだ」

 隣の指の小指側の指裏関節部も押す。

私「こっちも痛いでしょ」

婆「おー、ホントにイテェや」

私「ここの指と指の間も痛いことが多いんだよね」

 と言いながら、指の間の水掻き状の部分を押す。

婆「おー、イテェ、よく分かるね」

私「まぁ、この辺りは、
  腰や膝の悪い人は、たいてい痛いからね」

 と言い、痛い動きで少し姿勢が変わったのに対して、右膝や
右手に感じる圧を一定にするよう、加えている力を調節しなが
ら、足指に加えた圧を弱め、軽く、小指と隣指の裏や、それら
の間の水掻きを、しばらく、揉む。

私「小指と隣の指を揉むと、腰や膝の痛いのが軽くなるからね、
  自分でもやると良いよ」

 指裏が弛んだころ、まだ、姿勢を変えたがっていないことを、
右手と右膝に受ける圧の変化で確認した後に、腰を押す膝を左
に変え、左手で、腰の肋骨と骨盤の間を軽くマッサージしなが
ら、状態を調べていく

 この時に必要に応じて、肩の皮膚をズラす手を左手に変えて、
右手で腰をマッサージした可能性もあるが、操体をしていると
きは、こちらの意識も半分ボッとしているので、よく覚えてい
ない。

 こういう場合には、骨盤に近い側の脊柱起立筋に痼りが有る
ことが多い。見付かった痼りに手を当てて、骨盤に押し付ける
ような圧力を掛ける。

 少し強めに圧を掛け、目を腹から顔に移して(痛さを確認す
るとき以外は腹を見ていることが多い)

私「ここ痛いかな?」

婆「おー、そこそこ」

 先程と同じように、痛い動きで少し姿勢が変わったのに対し
て、左膝や肩に当てた手に感じる圧を一定にするよう、加えて
いる力を調節しながら、腰に加えた手の圧を少し弱め、指圧と
いうよりも、皮膚の操体の「沈」方向というか、奥の方の凝っ
ている筋肉に対する重さの操体という感じで、圧を加えていく。

私「この痼りは大きめだね。
  ここは腰の悪い人のポイントだから、
  すこ〜し、時間を掛けるよ。」

 この方法は、一般的な指圧と違って時間が長く、指圧は5か
ら10秒ですが、1分以上は圧を掛けます。

 痼りの状況に応じて、圧を掛ける方向や圧の強さを、刻々と
変化させていく所にも特徴が有ります。

 橋本敬三先生から操体を習ったことのある増永静人先生の医
王会に経絡指圧を習いにいったときに、直接習ったお婆ちゃん
の先生に、この方法をやったら、

「とっても気持ち良いけど、貴方のは指圧じゃないね」

と言われてしまい、さすがプロだなと思いました。

 でも、普通の人、素人の人には分からないし、「とっても気
持ち良い」そうなので、操体的には良いかなと思って、やって
います。

 分かる人でもたいていは大丈夫です。

#「あんたのはちょっと変わってるね」

私「操体っていうのを入れてるんですよ。
  気持ち良くないですか。
  良くなければ普通のにしますから」

#「いや、気持ち良いから続けて」

という感じが殆どです。

 指でも、手平でも、肘でも、膝でも可能です。

 マッサージ風や按摩風な味付けをしたいときには、加える圧
は、そのままに、当てていない所を振ります。

 肘を当てているときは、手首や指、指を当てているときには、
手首や肘を振ると、受けている感じはマッサージや按摩のよう
になります。

 スポーツ・マッサージ系の強揉み好きの人から

#「ちょっと物足りねぇな」

と言われたら、肘の先を当てて体重を掛け、手首を早めに振り
ます。

 腰痛のある人は、あと二つ、よく痼りが出る所が有るので、
そこも見ていく。それは、腰骨と大転子を結んだ線から、少し
後ろ側の窪みと、お尻の中央。

私「ここはどうかな」

婆「痛いねぇ」

 腹の息を見ながら、その二つの所にも、一見は指圧風、実は
重さの操体をしていく。

 その辺りの痼りが、ある程度は弛んだ頃、まだ、姿勢を変え
たがっていないことを、左膝や腰に当てた手に受ける圧の変化
で、確認しながら、腰を押す膝を右に変え、

私「次は膝だけど、
  膝って、お皿の側が痛いように感じてても、
  ホントは裏側の方が痛いことが多いんだよ」

 と言いながら、膝裏の痼りを探る。親指側にも、小指側にも、
痼りを見付け、

私「ほら、こことここが痛いでしょう」

婆「ホントにイテェな」

私「そうするとね、
  ここの所から脹ら脛の方まで、ず〜っと、
  痛い所が繋がっていることが多いんだ」

 と言いながら、そのスジというか、筋肉と筋肉の間の溝を指
圧風に押しながら辿っていき、脹脛が終わる辺りの痼りを押す。
拇指側と小指側のラインを二本、順にする。

私「ここも痛いでしょ」

婆「うー、イタた」

私「この辺りの痼りを取らないと
  膝の痛みって取れないことが多いんだよ」

婆「そうけ、わしゃ〜、膝の前ばっかりサスッてたよ。
  それで、良くならなかったんだ」

私「後でやり方教えるからさ、自分でもやってみてよ」

 と言いながら、指圧風の皮膚操体をしばらく続ける。つまり、
強さや方向を少しづつ変化させながら圧を加え続ける。

 膝裏の2,3cm脹脛よりと脹脛の終わる辺りの、それぞれ拇指
よりと小指よりの計4か所にする。

 ある程度は弛んだ頃、手平で大きく脹脛全体を掴んで、膝の
方から足首の方へ、ゆっくり、揉んでいきながら、弛み具合を
確認する。

 マッサージを依頼された場合には、このように、痼りを見付
けたり、弛み具合を確認する手段として、いわゆるマッサージ
の手法を使うことが多いです。

 これに対して、操体を頼まれたときには、手や指を皮膚の上
で、軽く滑らすように動かして探すことが多いです。

 また、指圧風操体を普通の皮膚操体にします。体の状況によっ
ては、了解を得た上で、圧を強めに加えることもありますし、片
手で皮膚操体、もう一方では指圧風という組み合わせもします。

 膝裏の痼りが弛んだことを確認したのと、ほぼ同時に、右膝や
右手に受ける圧の変化で、婆ちゃんが姿勢を変えたがっているこ
とを確認し、また、腹への息の入り具合が浅くなっていることも、
目で確かめながら、

私「だいぶ良くなったみたいだね。
  ちょっと確かめてみましょう。
  直ぐじゃなくて良いからさ、
  少し休んで起きあがれそうだったら、
  ゆっくり起きあがって見て」

 横向きに寝た姿勢が決まってから、ここまでせいぜい15分位。

 婆ちゃんは、しばらく動かないでいてから、もぞもぞと動き
始める。起きる動きがちょっと速いので、

私「ゆっくりね」

 辛そうな様子を見せずに立てたのを確認して、

私「じゃぁ、ゆっくり、いろいろ動いてみて。
  前に曲げるのはどうかな」

 婆ちゃんは、ゆっくり前に曲げていく。指先が足首の辺りま
でいく。

私「前は、それくらい曲がれば良いか、後ろはどうかな」

 後ろにも曲げて

婆「できるね」

私「他はどうかな、
  体を捻じったり、横に曲げたり、ゆっくり、やってみて」

 一通りやってみて

婆「なんともネェ〜、みんな、できる」

私「じゃあ、歩いてみて、ゆっくり」

 5歩ぐらい歩いてから

婆「なんともネェだ、膝痛かったのに、
  歩くのが辛くて外に行けねぇから、来てもらったのに」

 と、嬉しそう。始めた頃と声の調子が違う。

私「正座はどうかな」

 ヒョイッと座って

婆「なんともネェだ」

 辛い動きがあったら、立ち姿勢での動きの操体や、重さ操体、
それでもダメそうなら、もう一度寝てもらって、定番の操体な
ども、試そうと思っていたのだが・・・。

私「じゃ、良いのかな、肩とかは大丈夫」

 肩を回しながら

婆「肩は、何ともネェだ。
  うん、もう治ったみたいだから、もう良いよ。
  ま、お茶でも飲んでって」

 スタスタサッサッと台所に消える。

 お茶をいただきながら、

婆「わしゃ、お風呂で、膝の上ばっかり擦ってたよ。
  裏だったとわなぁ」

私「お風呂でさ、今度は、こうやって
  両手の親指で、膝の裏から脹脛にかけて、
  押していくと良いよ。」

 と、やって見せる。真似しながら

婆「こうかな」

私「そのときさ、痛いところがあったら、押しながら
  首をどっちかに回してみると痛くなくなるから。
  今も、少し痛いところが残っているでしょう。
  ちょっと、やってみて」

婆「ここが痛いな、首を回すっと、
  こっちかな、あっこっちだ、
  ホントに痛みがすこし減るだ」

私「その痛みが減る格好をしばらく続けるといいんだよ。
  首を戻したくなるまで。
  場合によっては、
  首回すだけじゃなくて、
  上げたり下げたりするのが良いこともあるから、
  工夫してみて」

婆「ふーん、おもしろいね」

私「仙台のお医者さんが始めたやり方でね、
  操体って言うんだ。
  すこし痛いぐらいの膝の痛みなら取れるからやってみて。
  あと、小指と隣の指を揉むのもついでにやると良いよ。
  膝は、いま、痛くなくなったけど、
  家事したり無理したりすると、
  また、痛み出すかもしれない。
  ちょっと、痛くなったかなというときに
  お風呂でやると良いよ。
  それでも駄目なら電話して。」

婆「うん、やってみる。
  イーこと聞いただ。得したな。
  腰はどうするね」

私「腰は、おばあちゃんの場合は、
  はじめに横向きに寝た、あの姿勢で、
  手をこういうふうに伸ばしたら、
  いい感じがしたでしょう。
  あの格好をしてみるといいよ。
  姿勢を変えたくなるまで。
  腕を伸ばす方向がちがう場合もあるから、
  どっちにしたらイイ感じになるか、いろいろ工夫してみて。」

 やってみせながら。

 マネしながら

婆「あ、これね、へー、
  それで腰痛く無くなるのかね」

私「すこし痛くなりかけたら、やると良いよ。
  あんまり無理して溜めちゃうと、
  それだけじゃダメになるから。
  それに、小指や隣の指を揉むのは、腰にも良いよ」

婆「やってみる、イ〜こと聞いただ」

 マッサージの依頼でいって、操体を教えて帰ってきたという、
とても上手くいった例です。

 定番じゃないし、操体とは言えないかも知れない操法ですが、
この婆ちゃんの場合には、これが良いと思ったので、勧めまし
た。

 その人が、既にやっていることを少し操体風に変えてみると、
実行してくださる可能性が高くなります。

 その人のその時の体の状態に合った操体が見付からないとき
は、立ち姿勢での重さの操体、特に、テーブル位の高さのもの
に手を付いてする中腰尻振り運動を伝えることが多いです。

 家の中には、この高さの物が多くて、何処ででも実行しやす
いし、直立2足歩行するヒトにとって基本的なバランス調整だ
と思うからです。

 この婆ちゃんのように、自分でやってみようという気のある
人には教えやすいです。

(3)おわりに

 この婆ちゃんからは、2年後位に電話がかかってきました。
ご本人は、伝えた操体を続けて元気だそうですが、隣の人が具
合が悪いから来て診てあげて欲しいとのことでした。

 一度伝えたことを実行し続け元気でいるというのが凄いなな
と思いました。

 質問などは、術伝事務局にメールをください。よろしくおね
がいします。


   >>>つぎへ・・・操体症例問答no.6



   >>>目次ヘ・・・・・・・・・症例問答

   >>>このページのトップヘ・・操体症例問答no.5

   >>>術伝HPトップへ ・・・・トップページ

術伝HP内検索:上の@wikiメニューの「wiki内検索」



お知らせとお願い


感想など

 感想などありましたら、術伝事務局までメールをください。

よろしくおねがいします。

術伝事務局メルアド :jutsuden-jmkkあまググどこ
(この行は無視してください。akwba、laemfro、thgosewibe)
(「あま」を「@」に、)(以下無視kuaniu、nteyu、lPpkiumo)
(「ググ」を「googlegroups」に、)(以下無視mesiun、kiuen)
(「どこ」を「.com」に変えて送信してください。)
(面倒をおかけし申し訳ありません。迷惑メール対策です)

術伝流鍼灸操体講座で患者さん役を募集

 術伝流鍼灸操体講座は、実践面を重視しています。実際に症状が出て
いる方の治療を見たほうが勉強になります。そこで、講座で患者さん役
をしてくださる方を募集しています。

 くわしくは、術伝流のモデルをみてください。

 よろしくおねがいします。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

   >>>術伝HPトップへ ・・・・トップページ

最終更新:2017年01月25日 08:05