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鍼灸症例問答no.6 膝の痛み

(1)はじめに

 ペンネーム「母さんの鍼」さんの鍼灸症例6つめです。

(2)「風邪の引き後の体調」について

  • 主訴:風邪が治った後の体調を整える
  • 60代の女性

1.患者さんの症状

(1)仕事が忙しく、休みが取れず、疲れたまま風邪を引いた。
   漸く風邪が抜けたものの、夜中にゼコゼコし呼吸が苦しくなる。
   子どもの時に、肋膜を患って以来、風邪を引くとゼコゼコなる
   とのこと。

(2)足がいつも冷えている。

(3)時々下半身がかったるくなり、アリナミンを飲んでやっと寝る
   こともある。

2.患者さんの状態

(1)中肉・中背の方で、顔色が悪く、疲れている。

(2)普段から、本を読んだり、書き物をすることが多いため、頚か
   ら肩にかけてカチコチに凝っている。特に右頚の凝りが強い。

(3)時々下痢っぽくなることがある。

(4)歩き方が重く、動きがいつもより鈍い様子。

3.実際に行なったこと(鍼がダメな方で、提鍼で行なった)

(1)腹診
 ・上焦に僅かだが、熱感あり。
 ・右大腹が張っている。
 ・臍下の小腹はベコベコして虚している。
 ・両脚とも同等に冷えて弾力がなく、棒の様に突っ張った感がある。

(2)仰臥位
 ・右合谷に提鍼→右上腕内側に響きあり。
 ・右列けつに提鍼→ツボを取ると、非常に痛がった。
            同じく右上腕内側に響きあり。
 ・中府に提鍼→喉の方まで響きがあり、中府はかなり痛がる。
         右大腹を触診すると張りが緩んでいた。
         張り感がなくなって、ご本人も驚かれていた。
 ・右胸鎖乳突筋の起始部を、提鍼するが、かなり痛い為、手技で
  解す。
 ・鎖骨下縁も手技で、緩める。
 ・右胸鎖乳突筋の筋腹を、沈の操体+右手首背屈で緩める。
 ・右頚部付け根の圧痛点を沈の操体+右手首背屈
 ・漸くコリコリし出し緩んだところで、右後頚部・右側頚部の深部
  を手技で緩める。
 ・左頚部は右の半分程度解すことを意識して、手技に差をつけた。
 ・横に向いてもらい、後頭骨下縁のライン(天柱・風池・完骨)を
  提鍼。
 ・散鍼用の楊枝を持参しなかった為、頭部は髪を摘んで引っ張る方
  法で、散鍼の代用とした。
 ・手の甲1-2間、沢田流合谷に提鍼。(提鍼での施術はここまで)

(3)腹臥位
 ・腹臥位で、背面の肩部・肩甲骨と肩甲間部・腰部・臀部のツボを
  意識して、手技で全体を緩める。
 ・右腰部から臀部にかけて強張りが有る為、特に、膝裏と下腿は、
  よくほぐした。
 ・右風市を拇指で指圧すると、大変痛がり「そこがかったるくなっ
  て眠れないので、アリナミンを飲んで寝る」とおっしゃるので、
  痛キモになるまで続けた。

4.施術後の変化・感想

(1)顔が桜色になり、血行がよくなったのが、ひと目で分かり、表
   情がとても明るくなった。
   ご本人も、「顔がポッポして、身体中が温かくなった」と、喜
   ばれた。

(2)左右に首を回してもらうと、左に少し引っかかりがあるものの、
   「首がほぐれて、軽くなった」とおっしゃり、肩が下がり前か
   がみだった胸が開き、呼吸が楽になったようだ。

(3)起き上がって歩いてみると、次第に歩き方がしっかりしてきた。

(4)後から気が付いたが、腹臥位で、呼吸器系のツボに提鍼した方
   がより良かったのでは、と思った。

(5)身体全体の強張りが強い方で、提鍼と手技で施術した。
   手技だけでは、変化が実感出来にくい方だったが、提鍼を使う
   ことで、効果が現れ易かった、と思う。
   提鍼は、肌を晒さず出来るので、着衣のままツボを取ることを
   念頭において、今回のように風邪引き後などに、向いていると
   思う。

 以上、宜しくお願い致します。 

(3)遊風のコメント

「風邪の引き後の体調」について         
 ・主訴:風邪が治った後の体調を整える
 ・60代の女性
1.患者さんの症状
(1)仕事が忙しく、休みが取れず、疲れたまま風邪を引いた。
   漸く風邪が抜けたものの、夜中にゼコゼコし、呼吸が苦しく
   なる。子どもの時に、肋膜を患って以来、風邪を引くとゼコ
   ゼコなるとのこと。

遊)私の次男も、保育園時代は、冬中ゼコゼコしてたのを思い出しま
した。呼吸器系の慢性症状というか、呼吸器に関係する慢性的な歪み
のある方に特徴的な状態かな。

(2)仰臥位
 ・右合谷に提鍼→右上腕内側に響きあり。
 ・右列けつに提鍼→ツボを取ると、非常に痛がった。
          同じく右上腕内側に響きあり。

遊)「長引く咳に上尺沢」と深谷先生が書かれているので
上尺沢でも良かったかな。

  • 中府に提鍼→喉の方まで響きがあり、中府はかなり痛がる。
       右大腹を触診すると張りが緩んでいた。
       張り感がなくなって、ご本人も驚かれていた。

遊)・お見事です。

  • 風邪の場合には、檀中のすぐ横の肋間にも圧痛があり、
肋骨1本上がる毎に外よりにツボが出て、最後に中府
というツボの出方が多いように思っています。

  • 右胸鎖乳突筋の起始部を、提鍼するがかなり痛い為手技で解す。
  • 鎖骨下縁も手技で、緩める。
  • 右胸鎖乳突筋の筋腹を、沈の操体+右手首背屈で緩める。
  • 右頚部付け根の圧痛点を沈の操体+右手首背屈
  • 漸くコリコリし出し緩んだところで、右後頚部・右側頚部の深
 部を手技で緩める。

遊)このあたり、もうすこし太い提鍼か、石鍼(大理石、水晶、ト
ルマリンなどの石の角を丸めたもの)で、沈の操体ができれば、も
うすこし早くゆるめられたかなとも思います。

  • 左頚部は右の半分程度解すことを意識して、手技に差をつけた。
  • 横に向いてもらい、後頭骨下縁のライン(天柱・風池・完骨)
 を提鍼。
  • 散鍼用の楊枝を持参しなかった為、頭部は髪を摘んで引っ張る
 方法で、散鍼の代用とした。

遊)髪の毛引っ張るの、結構使えますね。

  • 手の甲1-2間、沢田流合谷に提鍼(提鍼での施術はここまで)
(4)腹臥位
  • 腹臥位で、背面の肩部・肩甲骨と肩甲間部・腰部・臀部のツボ
 を意識して、手技で全体を緩める。
  • 右腰部から臀部にかけて強張りが有る為、特に、膝裏と下腿は
 よくほぐした。
  • 右風市を拇指で指圧すると、大変痛がり「そこがかったるくなっ
 て眠れないので、アリナミンを飲んで寝る」とおっしゃるので、
 痛キモになるまで続けた。

遊)・この方の場合、顔が向いているほうの肘上げ操体が効果的かな
という感じがします。つまり肩甲間部の華陀経がこっているかな。

  • あとは、肩貞から大包までの脇にもツボが出ていたかも。

  • 風市に出ていたら、脹ら脛のおわるあたりの外よりの飛揚〜外丘、
その延長の踵の骨のアキレス腱よりの下昆侖

  • カゼが長引いた場合には、
「腸恥隆起(とくに左側)に圧痛があるので、仰向け膝抱え込み操体
がよい」と橋本先生が書かれています。結構目にします。

4.施術後の変化・感想
(1)顔が桜色になり、血行がよくなったのが、ひと目で分かり、
   表情がとても明るくなった。
   ご本人も、「顔がポッポして、身体中が温かくなった」と、
   喜ばれた。
(2)左右に首を回してもらうと、左に少し引っかかりがあるもの
   の、「首がほぐれて、軽くなった」とおっしゃり、肩が下が
   り前かがみだった胸が開き、呼吸が楽になったようだ。
(3)起き上がって歩いてみると、次第に歩き方がしっかりしてきた。

遊)良かったです。

(4)後から気が付いたが、腹臥位で、呼吸器系のツボに提鍼した
   方がより良かったのでは、と思った。

遊)そうですね。
とくに、上に書いた胸部分の華陀経や脇のツボには。

(5)身体全体の強張りが強い方で、提鍼と手技で施術した。
   手技だけでは、変化が実感出来にくい方だったが、提鍼を使
   うことで、効果が現れ易かった、と思う。
   提鍼は、肌を晒さず出来るので、着衣のままツボを取ること
   を念頭において、今回のように風邪引き後などに、向いてい
   ると思う。

遊)・そうですね。提鍼は、手技よりも邪気を外に出すのは早いです
ね。

  • 全体として、風邪のあとの呼吸器系慢性症状なので、もうすこし、
少陽病的視点というか、呼吸器系の慢性期に出やすい古いツボに、
目がいくと良かったかなという気もしますが、結果がこれだけ出れば
充分ですし、患者さんも喜ばれたことでしょう。

(4)「母さんの鍼」さんの返信

 早速のコメント、ありがとうございます。

 今回の報告は、後半大雑把に書いてしまい申し訳ありませんでした。

 漸く風邪が抜けたものの、夜中にゼコゼコし呼吸が苦しくなる。
 子どもの時に、肋膜を患って以来、風邪を引くとゼコゼコなる
 とのこと。
遊)私の次男も保育園時代は冬中ゼコゼコしてたのを思い出しまし
た。呼吸器系の慢性症状というか、呼吸器に関係する慢性的な歪み
のある方に特徴的な状態かな。

K)そう言えば、腹臥位になった時、左右の肋骨の高さに差がありま
した。

(2)仰臥位
  • 右合谷に提鍼→右上腕内側に響きあり。
  • 右列けつに提鍼→ツボを取ると、非常に痛がった。
         同じく右上腕内側に響きあり。
遊)「長引く咳に上尺沢」と深谷先生が書かれているので
上尺沢でも良かったかな。

K)なるほど。どちらかと言うと、列缺は表位の急性症状の時ですか。

  • 中府に提鍼→喉の方まで響きがあり、中府はかなり痛がる。
       右大腹を触診すると張りが緩んでいた。
       張り感がなくなって、ご本人も驚かれていた。
遊)・お見事です。
  • 風邪の場合には、檀中の直ぐ横の肋間にも圧痛があり、
肋骨1本上がる毎に外寄りにツボが出て、最後に中府
というツボの出方が多いように思っています。

K)それも考えたのですが、着衣でツボが分かりにくい上、肋間に
  提鍼では痛いと思い省略しましたが、軽くでもやっておいた方
  が良かったかなと、今は思います。

  • 右胸鎖乳突筋の起始部を提鍼するが、かなり痛い為手技で解す。
  • 鎖骨下縁も手技で、緩める。
  • 右胸鎖乳突筋の筋腹を、沈の操体+右手首背屈で緩める。
  • 右頚部付け根の圧痛点を沈の操体+右手首背屈
  • 漸くコリコリし出し緩んだところで、右後頚部・右側頚部の深
 部を手技で緩める。
遊)このあたり、もうすこし太い提鍼か、石鍼(大理石、水晶、ト
ルマリンなどの石の角を丸めたもの)で、沈の操体ができれば、も
うすこし早くゆるめられたかなとも思います。

K)おしゃる通りです。頚部は凝っている方が多いので、こちらも
色々取り揃えておく必要性を感じます。深部の凝りは、なかなかです
ね。

  • 散鍼用の楊枝を持参しなかった為、頭部は髪を摘んで引っ張る
 方法で、散鍼の代用とした。
遊)髪の毛引っ張るの、結構使えますね。

K)はい、患者さんにとっても、頭皮の適度な刺激にもなりますね。
  頭のスカルプマッサージでも、この手技がありました。

(4)腹臥位
  • 腹臥位で、背面の肩部・肩甲骨と肩甲間部・腰部・臀部のツ
 ボを意識して、手技で全体を緩める。
  • 右腰部から臀部にかけて強張りが有る為、特に、膝裏と下腿
 はよくほぐした。
  • 右風市を拇指で指圧すると、大変痛がり「そこがかったるく
 なって眠れないので、アリナミンを飲んで寝る」とおっしゃ
 るので、痛キモになるまで続けた。
遊)・この方の場合、顔が向いているほうの肘上げ操体が効果的
かなという感じがします。つまり肩甲間部の華陀経が凝っている
かな・・・。

K)おっしゃる通りです。詳しく記載しなかったのですが、手技で
肩甲間部の華陀経と1行線はやりました。肘上げをしながら、やっ
てもよかったですね。

  • あとは、肩貞から大包までの脇にもツボが出ていたかも。

K)肩貞と、特に天宗は痛がっていました。肩甲骨回りは、いつも
凝っている方なので、肩甲骨内側縁と棘上筋、大・小円筋は意識し
て解しました。

  • 風市に出ていたら、脹ら脛の終わる辺りの外寄りの飛揚〜外丘、
その延長の踵の骨のアキレス腱よりの下昆侖

K)書き忘れましたが、飛陽と下崑崙は、提鍼でやりました。
  これらのツボは1セットですね。

  • カゼが長引いた場合には、
「腸恥隆起(時に左側)に圧痛があるので仰向け膝抱え込み操体
がよい」と橋本先生が書かれています。結構目にします。

K)そうですか。膝抱え込み、今度機会があれば、試してみます。

4.施術後の変化・感想
 手技だけでは変化が実感出来にくい、提鍼を使うことで効果
 が現れ易かった提鍼は肌を晒さず出来るので、着衣のままツ
 ボを取ることを念頭において、今回のように風邪引き後など
 に、向いていると思う。
遊)・そうですね。提鍼は、手技よりも邪気を外に出すのは早い
   ですね。
  • 全体として、風邪のあとの呼吸器系慢性症状なので、もう少し
 少陽病的視点というか、呼吸器系の慢性期に出やすい古いツボ
 に目がいくと良かったかなという気もしますが、結果がこれだ
 け出れば充分ですし、患者さんも喜ばれたことでしょう。

K)次回の講習は、いよいよ少陽病なので、先生のおしゃるような視
点でツボが取れるように学んでいきたいと思います。

 ありがとうございました。

(5)遊風の再コメント

遊)「長引く咳に上尺沢」と深谷先生が書かれているので
   上尺沢でも良かったかな。
K)なるほど。どちらかと言うと、列缺は表位の急性症状の時で
  すか。

遊)「頭項は列缺」でしたっけ、檀中あたりから上の、体の内側の前
よりの、急性症状に効果があります。

 表位でも本当に皮膚表面に近いほうは陽経側で対処します。

遊)・あとは、肩貞から大包までの脇にもツボが出ていたかも。
K)肩貞と、特に天宗は痛がっていました。肩甲骨回りはいつも
凝っている方なので肩甲骨内側縁と棘上筋、大・小円筋は意識して
解しました。

遊)カゼが長引いた場合には、肋骨のある体の真横、淵腋と大包を
始めとする肋間にツボが出ていることがおおいです。

筋肉が薄いところなので、軽くしか押せませんが。

私も昨日肺炎の方を診たのですが、そのあたり非常に痛がっていま
した。

(カゼも長引くと、小陽病の要素もまじってくるせいかなと思います)

  • 風市に出ていたら、脹ら脛の終わる辺りの外寄りの飛揚〜外丘、
その延長の踵の骨のアキレス腱よりの下昆侖
K)書き忘れましたが、飛陽と下崑崙は、提鍼でやりました。これ
らのツボは1セットですね。

遊)そうですね。

遊)・そうですね。提鍼は、手技よりも邪気を外に出すのは早い
  • 全体として、風邪のあとの呼吸器系慢性症状なので、もう少し
少陽病的視点というか、呼吸器系の慢性期に出やすい古いツボに
目がいくと良かったかなという気もしますが、結果がこれだけ出
れば充分ですし、患者さんも喜ばれたことでしょう。
K)次回の講習は、いよいよ少陽病なので、先生のおしゃるような
  視点でツボが取れるように学んでいきたいと思います。

遊)・病の時間的変化を見る『傷寒論』的な意味での少陽病と
経絡的な意味での少陽経絡病証が一致していることが多いのは
面白いなと思ってみています。

  • 4期でする「古い病、古いツボ」というところで、病が古くなっ
たときのツボの変化をまとめています。それも参考にしてください。

(6)おわりに

 6回目の症例報告ですが、なれてきた感じがしました。

 以前は、4期制で、1期:運動器系急性期、2期:運動器系慢性期、
3期:病証(内科系慢性期急性期)、4期:応用という形でした。


   >>>つぎへ・・・鍼灸症例問答no.7



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最終更新:2010年08月26日 06:43