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タワメの間の息

操体もくもく・操体の自然則 (13) タワメの間の息

1.はじめに

 前回までは、操体にかかわる自然則のなかでも、「動」について、
操体をしながら思いついたことを書いてきました。

 今回から「息」について書いて見たいと思います。

2.タワメの間では、息が深くなる

 今から20年以上前だったと思います。操体をしていてタワメの間が
長い人は、そのタワメの最中の息が深くなることに気が付きました。

 パッストン系の瞬間脱力をしたあとに、脱力したまま休んでいると
きと同じような深い息をしたまま、ずっとタワメの間を続けているこ
とに気が付いたわけです。

 そのご、操体をするたびに観察していると、タワメの間が長いとき
には、深さの程度の差はありますが、息が深くなる人がおおいことが
わかりました。

 おなかで深い息をしている、つまり、自然に深い腹式呼吸になって
いることがわかりました。

 すこしタワメの間がつづいても息が深くならないときは、動き出し
て、つぎのタワメの間の姿勢をさがすような感じで、ゆっくり動いて
いく人がおおかったです。

自動運動は、タワメの間をさがすため

 そんな経験を何度もしているうちに、私は、自然に動き続ける、い
わゆる「自動運動」というのは、その運動自体に体の歪みをとる効果
があることよりも、つぎのタワメの間をさがすために動いていること
のほうがおおいのではないかと考えるようになりました。

 自動運動だけで終わってしまうときよりも、新しいタワメの間がみ
つかって、そのタワメの間のあいだじゅう、深い息を続けた人のほう
が満足度も高く、体の歪みや痛み・つらさがよくなることもおおかっ
たからです。

息を深くなる姿勢をさがすことをキッカケに

 それで、20年くらい前には、息が深くなる姿勢をさがすことをキッ
カケにして操体をするという、一人操体の方法を思いつき、練習して
いました。

 そのときの自分の息を観察して、その息をするために体がどういう
動きをしているかを観察し、その動きをすこし大きくしていくという
やり方です。

 そうすると、それに合わせて息が深くなっていきました。

ラクな姿勢を強調したり、体重を移したりのほうが簡単

 これは、これで、気持ちよかったのですが、このごろはあまりして
いません。

 このごろは、自分が、いま、どんな姿勢がラクかなと、ちょっと姿勢
を変えてさがして、その姿勢をすこし強調したり、体重をすこし移した
りしたほうが、自然に息が深くなることがわかったからです。

 呼吸にあわせて姿勢を変えていくよりも、そのほうが無理なく自然に
息が深くなり、気持ち良さも深く、私にとっては、めんどうがすくなく
て、簡単にできることもわかりました。

 いまでは、操体や鍼灸をしたり、後輩にそれらを伝えたりという仕事
の合間にも、パソコンにむかったり、家事をしたり、電車にのったり、
歩っているときにも、ラクな姿勢を強調する一人操体をしてます。

 つまり、いろいろなときに、そのときラクな姿勢をすこし強調したり、
体重を移しやすいほうに移したりして、息が深くなるのをまつという形
で、一人操体をしょっちゅうしています。

 クセになっています。

3.指圧・按摩、鍼灸でも息が深くなる

 そのご、指圧・按摩や、鍼灸などでも、そのときしていることが効果
的なら、息が深くなることに気が付きました。

 自己免疫力が活性化しているときに特徴的な息のようです。

指圧でも、息が深くなる

 指圧でも、押している時間を長くすると、タワメの間と同じように、
息が深くなります。

 一押し5秒くらいだと深くなりませんが、受け手の体の状態にあった
ところを1分ちかく押し続けると、タワメの間と同じような深い息をし
だす人がおおいです。

 ただし、5秒押しでも、リズミカルに続けると息が深くなることがし
ばしばあります。

 5秒押しをくりかえすのが指圧と考えている人から見れば、1分も押
しつづける私の方法は、指圧ではないかもしれません。親指をあまり使
わず、肘から前腕、拳骨、指関節、膝などをおおく使いますし。

 肘は、とくによく使いますが、受け手の体にあたる面積が、親指より
も広くて当たりがやわらかく、肩からの関節の数が少ないので、長いあ
いだ押してもぶれにくいようです。

 つまり、肘指圧は、強さというか圧を一定にたもちやすいようです。

 そのため、気持ち良さがとぎれることなく続くようで、受け手の息も
深くなりやすく、満足度も高いようです。

 そういうわけで、操体的な視点で見れば、こういう、1分以上押し続
けるやり方でも良いのではないかと思い、実行しています。

按摩でも息が深くなる

 ゆっくりとした揉みをまぜてマッサージふうにすることもあります。

 按摩ふう操体というか、そんな感じで、しているあいだは、受け手の
息がより深くなるように、圧し方、揉み方、リズム、力のいれ具合、力
をいれる方向などを、すこしずつ変えていきます。

 片手で皮膚の操体、片手・片肘で按摩指圧というのも、よくします。

 ゆっくりとなら、動きや重さの操体と組み合わせることもできます。

 前にも書きましたが、シコりを押したり、はさんだりしながら動きや
重さの操体をするとタワメの間がみつけやすくなります。

 そういう感じで按摩していると、受け手のそのときの体の状態にあっ
ていれば、やはり、自然に息が深くなります。

鍼灸でも、息が深くなる

 それから、鍼灸でも、効果を上げているときには、息が深くなること
がおおいことに気がつきました。

 片麻痺の人の指にかたくひねった灸をして、熱さを感じて逃げてもら
うようなタイプの方法では、息は深くならないことがおおいですが、ゆっ
くりあたためるようなお灸をしていくときや、ゆっくり時間をかけて鍼
を刺していくときには、息は深くなることがおおいです。

 また、熱さを感じて逃げる動作を誘導するようなお灸をしたあと、息
が深くなっていることもあります。パッストン系の瞬間脱力をしたあと
のような感じで。

4.タワメの間へ瞬間脱力で誘導

 また、タワメの間にはいりつつあるのだけれど、うまくはいれないで
まごまごしている感じのときには、伝え手のほうがかるくフッと瞬間脱
力をすると、そのとたんに、受け手の息が深くなり、それをキッカケに
タワメの間にはいっていくこともよくあります。

 このときの瞬間脱力は、ごくごくわずかで、受け手には気づかれない
くらいがよいのですが、脱力する速さがゆっくりでは息は深くなりませ
ん。

 ごくごく短く、しかも、できるだけ速い瞬間脱力をする必要がありま
す。

 いろいろためしてみたのですが、伝え手の息というか、おなかを利用
するのが速いことがわかりました。

 息をすいながら下腹をふくらませ下腹に力をいれていき、大きくふく
らんだら、フッと一瞬、下腹の力をぬきます。

 こうすると、誘導・抵抗・支えを作っている手などで瞬間脱力するよ
りも、速く短い瞬間脱力ができます。

 同じくらいの速さの瞬間脱力としては、アクビのときに「あーあーあ」
と口を開けていき、フッと閉じるときの瞬間脱力がありますが、こちら
のほうは、瞬間脱力がうまく支え・抵抗・誘導を作っている手などに伝
わりません。

 そのため、受け手の体にも伝わりにくく、受け手の深い息を誘導する
ときには使いにくくなります。

アクビの終わりの口の閉じ方は、瞬間脱力の良い見本

 余談になりますが、このアクビのときの瞬間脱力は、本当に瞬間脱力
らしい瞬間脱力だなぁと思うので、瞬間脱力の説明をするときに、よく
例に出します。

 脱力の速さも、瞬間的な速さだし、脱力している時間は、本当に瞬間
的な短さで、脱力した後に歯と歯がぶつかるようなことはありません。

 歯と歯がぶつからないというのは、この瞬間脱力が「急速反転運動」
にはなっていないということだと思います。

 この二つが、とても瞬間脱力のポイントをあらわしていて、説明がし
やすいです。

 私は、瞬間脱力は早くて短いのがポイントだと思っていますので。

ふっくにゃぁ系脱力の「ふっ」は、ごく小さな瞬間脱力

 誤解をされるといけないので、付け加えておきますが、ふっくにゃぁ
系のときには、こまかく言えば、「ふっ」の部分で、すごく短くすご
く速い瞬間脱力をしているのだと考えています。

 その直後に深い息になり「ぽわわん」としたタワメの間になること
もありますし、体全体の力がぬけた状態で、しばらく深い息をつづけ
ることもあります。

操体の気持ち良さを味わってもらうのが先

 話をもどします。

 伝え手のほうが瞬間脱力をするのは、操体は自力という考え方に反
するのではないかという意見もあるようです。

 私は、まず受け手に操体の気持ち良さ、とくに、タワメの間の気持
ち良さや、脱力したあとの気持ち良さを味わってもらうほうが先だと
思います。

 それで、タワメの間にはいれないでもぞもぞしている感じをうける
ときには、あいている手で動きを誘導したり、手が届かないときには、
声をかけて、受け手に新しい動きをためしてもらったりします。

 それでも、もうすこしだなと感じたときに、下腹を利用した瞬間脱
力をします。

 すると、その直後から受け手の息が深くなり、ぽわわんとしたタワ
メの間にはいっていくことがおおいです。

 もう、すくなくとも15年以上こういうことをしているので、いまで
は、なかば無意識にしているようです。

 それに、はじめたころも意識してしていたというよりも、なかば無
意識でやっていて、結果的に受け手の息が深くなって、あ、こうする
と良さそうと気づいたという感じです。

 いつごろからやりはじめたのかはっきりしないのは、そのあたりに
理由があります。

自力の意味を考える

 操体でいう自力というのは、伝え手の言うとおりの動きを、受け手
にしてもらうことなのかなという疑問があります。

 受け手に、受け手自身の体の状態をよく感じてもらい、体がのぞん
でいることを理解して、ためしにやってみてイイ感じがしたり、気持
ち良さが出てきたら、味わってもらうのが、自力なのではないでしょ
うか?

 伝え手というのは、その手伝いをする役割だと思います。

 体が感じていることや希望していることがわからなければ、こうで
はありませんかとアドバイスをし、そのためにどこをどう動かすかが
わからなければ、こういう動きやズラしはどうですかとアドバイスし
ていく役目だと思います。

 この、操体で言う自力とは何かという点については、いずれまた、
くわしく書きたいと思いますが、いまは、そういう気がするので、私
自身は、伝え手が瞬間脱力することも操体に取り入れているというこ
とにしておきます。

5.効果を出すには、息が深くなることが必要

 また、話をもどします。

 私は、いままで書いてきたような経験をつみかさねているうちに、
受け手の体がよろこび、受け手が満足するためには、息が深くなるこ
とが必要なのではないかと、考えるようになりました。

 受け手の体がよろこび、受け手が満足すれば、歪みがへって、体が
ととのう、もっといえば、結果として痛みやつらさがすくなくなるこ
とがおおいので、そういうためにも、息が深くなることが必要なので
はないかと思っています。

 前にも書いたと思いますが、これには、子供がカゼを引いたときの
状態を添い寝しながら観察したことも関係しています。

カゼで寝ているときに、深い息をしていた

 子供が小さいころ、外から帰ってきて、頭が痛い、カゼをひいたみ
たいだから寝たいというので、作業を中断して布団をしいて寝かせま
した。

 作業が一段落した30分くらいあとで、皮膚の操体でもできるかなと
ちかづいたら、タワメの間の息よりももっと深い息をすでにしていた
のです。

 小さいころからのことをふりかえってみると、そういえば、たいて
い、こういうふうにカゼをひいて寝ているときは、息が深くなってい
たなと思いました。

 しばらく、呆然と、深い息をつづける子供をながめていました。

 このままでも何とかなりそうだなとも思いつつ、皮膚の操体をすれ
ば、もうすこしラクにしてあげられるかなと、背骨をたどったり体を
さわってみたりして、ツボが出ているところに皮膚の操体をしました。

達人の先生方の治療中の患者さんの息などを観察

 なんとなく、息が深くなることと、効果が出て受け手が満足するこ
とが、関係ありそうだなと気づいてから、自分がカゼをひいたときな
どは、息の変化を中心に、体の症状の変化を観察しつづけました。

 また、操体をはじめ鍼灸・指圧按摩などの達人の先生方が実演して
くださったり、治療を見学させてくださったりするたびに、受け手の
息の深さを観察してきました。

 そんなことを20年ちかく続けてきて、息が深くなれば、すくなくと
も80%以上の確率で、効果が出て受け手が満足するというがわかりま
した。

 息が深くなることとの相関関係が、ほかのこととの相関関係よりも
抜群に高かったのです。

 操体でいえばパッストン系のような時間の短い素早い方法では、そ
の直後に、息が深くなることがおおいです。

 ふっくにゃぁ系のような時間が長いユックリとした方法では、その
最中に、息が深くなることがおおいです。

 それで、こういう、橋本敬三先生が東洋的物療とよんだ方法では、
受け手の息が深くなるかどうかを判断基準にするのが、ほかのことを
判断基準にするよりも、的確に、そのときの受け手の体にぴったり合っ
たことができるように思っています。

息が深くなるかどうかを判断基準に操体

 それで、いま、私は、タワメの間で息が深くなるかどうかを判断
基準にして、操体をしています。

 また、操体をはじめ鍼灸按摩などをふくめて、後輩に伝えていくと
きには、施術中には、つねに受け手のお腹を見て、息の深さを観察し、
息が深くなるように工夫をしなさいとすすめていますし、工夫の仕方
も伝えています。

 そして、そういうやり方で伝えると、上達が早いように思います。

 たぶん、受け手の体のそのときの状態や、そのときに受け手の体が
のぞんでいることに適切に合わせていくことができるようになるから
だと思います。

息は、体の状態をリアルタイムに反映している

 受け手の体がのぞんでいることは、一つの操体の最中にも刻々と変
わっていきます。

 それにいちばん早く同調する、いまの言葉でいうとシンクロするの
が、息のようです。

 それで、息の深さを見ていると、刻々と変化していく体ののぞみに
いちばん合わせやすいように思います。

 ほかの判断基準では、即時即応、つまり、リアルタイムに合わせて
いくことがうまくできないので、「途中で気持ち良さが途切れてしまっ
た」とか、「気持ち良さが連続しなかった」とか言われる確率が高く
なるように思います。

6.おわりに

 今回は、タワメの間のあいだの受け手の息の深さについて書きまし
た。

 次回は、一つの操体での受け手の息の変化していく様子や、息の自
然則として橋本先生が書き残している事の関係などを書いていきたい
と思います。(ちょっと遅れています、すみません)


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最終更新:2010年08月21日 16:42