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タワメの間の姿勢と操体の焦点

操体もくもく・操体の自然則 (7) タワメの間の姿勢と操体の焦点

1.はじめに

 先回は、操体では、背骨に伝わる動きが近いものは、似たような効
果が出る、とくに、手足の左右差がある動作制限に対しては、やりや
すいほうをすこし強調するとやりにくかったほうが改善するというこ
とを書きました。今回は、その続きです。

 操体をして、ある特定のタワメの間になったときに、その影響は、
背骨のどのあたりに伝わるでしょうか、胴体のどのあたりに効果的な
のでしょうか。

 それは予測可能です。予想する方法について書いていきます。

2.タワメの間から焦点を予測する

 結論から先に書きます。

 基本的には、あるタワメの間の姿勢になったときに、その操体で、
おもに動かしている手足の上腕・大腿から胴体に働いている力の方向
に、そのときに体が操体の効果を出したがっているところがあります。

 単純な動作のときには、上腕・大腿の延長線上か、または、延長線
と直角で手足の付け根をとおる直線の延長上になります。

 胴体にねじれる力がくわわっているときには、その二つのラインに
平行なラインも候補になります。

上腕・大腿の延長線上に焦点はある

 くわしく説明していきます。

 タワメの間で、おもに動かしている手足の上腕・大腿部の長いほう、
というか、上腕骨、大腿骨と同じ方向、いいかえれば、胴体から肘・
膝までのラインにそうう方向に力がくわわっている状態なら、その延
長線上に効果が現れる可能性が高くなります。

 つまり、上腕骨大腿骨の方向に伸ばしたり縮めたり、また、それと
同じ効果の皮膚ズラしをしたりしていれば、その延長線上に胴体部分
に効果が現れる可能性が高くなります。

 簡単な例ですと、手を頭の上のほうに伸ばしているときには、その
伸ばしている腕の上腕部中央のラインを、そのまま胴体のほうに延長
したライン上に、そのときに、体が操体の効果を出したがっていると
ころがある可能性が高いわけです。

上腕・大腿と直行するラインも候補になる

 そして、タワメの間で、おもに動かしている手足の上腕・大腿、つ
まり、胴体から肘・膝までのラインに垂直な方向に力がくわわってい
るなら、手足の付け根をとおる、その垂直なラインと平行な延長線上
に効果が現れる可能性が高くなります。

 たとえば、上腕に左右捻転の力がくわわっているときや、膝たおし
のときです。

 こういう現象が成り立つのは、骨にそう形で伸縮させる運動のむき
と、捻転運動のむきが、基本的に直角に交わることから来ています。

 膝たおしのときには、骨盤をねじる動きが生まれることから来てい
ます。

腕垂らし手首捻転の場合

 簡単な例では、腕などをたらした状態で手首を捻転しているときで
す。

 捻転運動の力のむきは、腕を伸ばした状態では、上腕部の骨と直角
になる方向です。

 それで、肩から伸ばした腕と、肩を起点に直角の方向の胴体部分に、
そのときに体が操体の効果を出したがっているところがある可能性が
高いわけです。

膝たおしの抵抗は、上腕の延長と直行の二つのラインが候補

 上に書いた二つの腕の動きの例、つまり、腕を上に伸ばす動きと、
たらした腕をねじる動きは、あお向け膝たおしで、たおれていく膝に
対して、たおれていくほうと反対側の腕で抵抗を作るときに、よく使
われる動きです。

 腕を伸ばすほうをくわしく書くと、たおれていく膝の大腿部と平行
で、逆向きの方向に、つまり、腕を肩よりすこし斜めに上げたほうに
腕を伸ばして抵抗を作るやり方です。

 また、捻転のほうは、一つ目のやり方とちょうど直角に上腕部がな
るように腕を肩より下げて、小指側が手のひら側に回転する方向に手
首を捻転させるやり方です。

 この二つの抵抗では、捻転と伸展の両方を使うことがおおいですが、
一つ目のときには、まず手首を捻転させ、しっかりきめた状態にして
から、伸ばしたほうが効果が出やすいです。

 二つ目のときには、まず腕をかるく伸ばして、しっかりきめた状態
にしてから、手首を捻転させます。

 ねじってから伸ばすか、伸ばしてからねじるかのちがいで、どちら
も、あとのほうの動きが胴体に伝わります。

 どちらも似たような効果をあげますが、どちらがより効果をあげる
か、受け手が気持ち良さを感じられるかは、受け手の体の状態によっ
て、ことなります。

延長と直行に平行なラインも候補になる

 さて、胴体に捻転の力がくわわるときには、上腕や大腿をそのまま
延長するラインとそれらと直行するライン、その二つのラインの組み
合わさった力以外にも、候補があります。

 それら延長と直行の二つのラインと平行なラインにも、体がそのと
きに効果を出したがっているところがある可能性があります。

 たとえば、あお向け膝たおしのときには、大腿に直行するライン上
の力も胴体に伝わりますが、胴体をねじる力もうまれ伝わります。

螺旋的な力の変わり目も候補になる

 胴体に対して大腿と垂直なラインを中心に、胴体を膝のたおれてい
く方向、つまり、大腿と平行の方向にねじる力、ネジのような螺旋を
えがく力が、はたらいています。

 この螺旋的な力には、かならず、どこか途中で反対むきに作用する
螺旋的な力があり、その向きの変わり目のライン上に、体がそのとき
操体の効果を出したがっているところがあります。

 二つの反対むきの螺旋の力が交わる変わり目のラインにいちばん力
がはたらくからです。

 反対むきの螺旋の力が、かならずあるのは、ないとタワメの間がで
きないからです。タワメの間とは、互いの逆の二つの力が釣り合った
状態ですから。

あお向け膝たおしと螺旋的な力

 あお向け膝たおしのときの反対むきの力は、さきに書いたように、
たおれていく反対側の腕で作ります。

 腕をあげた状態でも、さげた状態でも、作り出す力の方向は、大腿
と平行で、向きが反対になります。

 そして、大腿のラインと、腕の作る力のラインのあいだ、腹から腰
にかけての肋骨・骨盤のない腰椎のラインあたりが、反対向きの螺旋
の力の変わり目になります。

 そのなかでも、あお向け膝たおしのタワメの間のときに上になる脇
腹あたりが、螺旋的な力の変わり目です。

 雑巾をしぼったときを思い出してください。

 そして、その脇腹のなかでも、そのときに体があお向け膝たおしの
効果を出したがっている変わり目のラインは、大腿とほぼ平行になり
ます。

あお向け膝たおしと、ほぼ同じ効果の横着な皮膚操体

 二つの螺旋的な力の変わり目が脇腹ですから、それを利用して、あ
お向け膝たおしと、ほぼ同じ効果をあげる皮膚の操体のバリエーショ
ンができます。

 おそらく、いちばん横着というか、伝え手の動きのすくないバリエー
ションです。

 ラクなほうを上にした横向き寝になってもらった受け手の脇腹の皮
膚を、骨盤にちかいほうはおなか側にズラし、肋骨にちかいほうは背
中側にズラすという形です。

 ズラす方向は、大腿の向きと平行がよいことがおおいです。

 やってみたことがなかったらヤジウマしてみてください。気持ちよ
いと言ってもらえることがおおいです。

3.操体の効果が出やすいポイントを予測する

 いままで書いてきたことを利用すると、タワメの間の姿勢を見れば
その操体で効果が出やすいポイントを予測することができます。

 もっといえば、タワメの間の姿勢から、その操体を利用して、体が
効果を出したがっているポイントを予測することができます。

延長か直行か平行か先に胴体があるライン上に焦点はある

 タワメの間で、おもに動かしている手足の大腿や上腕の位置をみて
いくと、おおよそ、そのときに、体がその操体の効果を出したがって
いるあたりがわかります。

 大腿や上腕の延長か、それらと直行するラインをまず思いうかべれ
ばよいわけです。

 それに、延長方向にしても、直角方向にしても、そのラインを伸ば
していった先に胴体部分がないと、効果が出るところがないことにな
りますから、どちらかのラインを伸ばした先に胴体部分があるほうが
効果をあげている方向になります。

 言い方をかえれば、大腿と上腕の向きをそのまま延長したラインと、
付け根をとおりそれに直行するライン、そしてそれら二つに平行なラ
インを参考にしながら、その操体で、力が胴体にどう作用しているか
を見ていけばよいわけです。

 力の作用するラインと、その延長上に、体がそのときに治したがっ
ているところがあります。

手足の二つの方向からポイントが決まってくる

 また、そのタワメの間を作るのに手足の両方が関係していれば、胴
体部のどのあたりに効果がおよんでいるか、見当をつけることができ
ます。

 手足の動きというか、上腕と大腿の位置が作りだしている二つライ
ンが交差するあたりになるからです。

 胴体にねじれをうむ力がはたらいてないときには、大腿や上腕から
力が伝わるラインの延長に、直接、体が治したがっているところがあ
る可能性が高いです。

 胴体にねじれをうむ力がくわわっているときには、その力が直接は
たらく延長のラインのほかに、ねじれをうむ二つの螺旋の力がはたら
いてできる変わり目のあたりにも、体が治したがっているところがあ
る可能性が高くなるわけです。

 伝わったかなぁ。わかりにくいところがあったら質問してください。

あお向け足のばしでは、どこに効果が出やすいか

 こういう予測がなりたちやすい例は、いままであげた以外にも、た
くさんあります。

 たとえば、足のカカトをつきだしたり、足を伸ばすのが気持ちよい
という操体でも、床にほぼ平行に伸ばしたいときと、床から40cmく
らい高いところに伸ばしたいときとでは、受け手の体がその操体で焦
点をあてたいところは、ちがいます。

 ほぼ平行なときには、肩など上半身が悪いときがおおいです。

 高いときには、腰など下半身が悪いときがおおくなります。

 上半身のときには、伸ばそうとしている足の大腿部のラインを延長
していけば、右肩が悪いか左肩が悪いかも、ほぼわかります。

 高さだけでなく、伸ばそうとしている方向の全体の向き、いいかえ
れば、大腿骨を天から見たときの方向の延長線上に、治したがってい
るほうの肩がありますから。

 つまり、先ほどは、床と大腿の角度を見ていたのですが、今度は、
背骨と大腿の角度を見るわけです。

4.似た操体のなかから、そのときの受け手の体にあったものを

 先回の背骨に伝わる動きが同じ操体は似たような効果という自然
則を使うときも、今回のタワメの間の姿勢から操体の焦点がわかる
という自然則を組み合わせると、そのなかでも、そのときの受け手の
体により合った操体をみつけていくことができます。

 今回の自然則をまとめておくと、以下になります。

 タワメの間の姿勢で
 大腿・上腕の延長方向か直行する方向を中心に、
 その操体で胴体にはたらく力の方向を見ていけば、
 その方向の延長線上に
 そのときしている操体の焦点がある

 つまり、似た操体のなかから、今回の自然則から見つけたポイント
にいちばん焦点があたりそうなものをえらべば、喜んでもらえること
がおおくなるということです。

 受け手から「ほんのちょっとちがう感じ」と言われたり、息の深ま
り具合がいまいちなときなどに、応用して操体をすこし変化させると、
喜んでもらえる可能性があがると思います。

肩などの調子が悪い人の微調節の例

 たとえば、肩の調子が悪い人を寝た姿勢で操体するときに、寝た姿
勢での大腿の向きを延長した方向か、直行するラインを延長した方向
に悪いほうの肩が来るように、大腿の向きをすこし変えてもらったら、
「あ、ピッタリ」と言ってもらえる可能性が高くなります。

 そして、反対側の足や両腕も、痛いほうの肩に力が働きやすいよう
な位置にしてもらうと、より深い気持ち良さを味わってもらえる確率
が高くなります。

 この点については、次々回くわしく書く予定です。

 また、膝がたおれているときには、螺旋をえがく力が胴体にはたら
いているのを思いうかべると、理解しやすいと思います。寝ている姿
勢によっては、その調整がむずかしくなるかもしれませんが。

 まだ、ためしていなかったら、ヤジウマしてみてください。

5.ある手技がある症状に効果が出る理由がわかる


 今回の自然則が役に立つ例は、ほかにもあります。

 操体でも、ほかの手技運動療法でも、たとえば、内蔵系の病などに
こういう方法が効果があるという情報があったときにも、その方法で
効果が出るときの姿勢に注目すると、その方法が効果を出せる理由が
納得できることが、よくあります。

姿勢から体が治したがっているところがわかる

 また、重度の障害で、ある特定の姿勢にしかなれない人をみていく
ときにも、赤ちゃんや認知症の人など言葉が通じにくい人が、特定の
姿勢を取りたがるときにも、今回の自然則は使えます。

 そういう姿勢での大腿・上腕の向きを観察していくと、その人の体
の悪いところ、というか、そのときにその人の体が良くしたがってい
るところが見えてくる可能性があるということです。

 ヤジウしてみてください。

6.おわりに

 今回は、タワメの間の姿勢で、力がはたらく先に、体が治したがっ
ているところがあるということを書きました。

 次回は、膝裏のシコりなど目標にしているしこりがあるときに、タ
ワメの間でそのシコりはどう変化しているかという話から、ちょうど
よいタワメの間をみつける方法について書きます。


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最終更新:2010年08月21日 16:36