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小さな「できた」を積み重ねる

体は自然、臨床は対話 【2】臨床は対話 
(8) 小さな「できた」を積み重ねる

1.はじめに

 今回は、「できなかった」を何回も繰り返してもできるよう
になるのは難しいから、小さな「できた」を積み重ねましょう
という話です。

 要するに、一つのことを幾つかに分けて、その分けた小さな
一つずつをできるようにしていこうということ。逆に言えば、
できるようになるまで、細かく分けてみようということです。

2.できて、始めて、身に付く

 少なくとも、先生から言葉を聞いた後の実習で、聞いたこと
を体で感じることができて、その内容を頭で理解でき、心でも
納得できて、しかも、ある程度は効果を上げられたという経験
ができないと、技や術は身に付いていきません。

 先生の言葉は理解できたし、実演は見せてもらったけれど、
自分の体では感じられなかったし、やっても効果は出せなかっ
たという状態では、いくら習っても腕は上達していきません。

 「できなかった」ことを何回も積み上げてもできるようには
なりません。

 逆に、小さな「できた」を積み重ねていけば、技や術は自然
と身に付いていきます。

 「受け手の体の状態を感じられた」、「その理由を合点して
納得できた」、「それに基づいて鍼灸操体などをしたら、効果
がでた」という実感を、ささいなことでもよいから毎回積みあ
げていけるような工夫していきましょう。

 そして、鍼灸で治療するときや鍼灸を伝えるときには、受け
手に、そういう小さな「分かった、できた」を毎回一度は味わっ
てもらえるように工夫していきましょう。

3.できるまで動作を分ける

 そのための一つの方法は、できない一つの動作を、幾つかの
動作に分けてみることです。

 数個に分けた動作の一つ一つのステップをできるように練習
していきます。

 私は、脳性麻痺の次男の、文字を書くこと、計算、水泳、自
転車乗りなどの練習に付き合ったときに、ずっと、この方法を
使ってきました。

 もっとも、次男の場合には、数個に分けた中の一つのステッ
プの動作にまたできないものがあって、それをまた数個のステッ
プに分けて…ということを何段階か繰り返す必要がありました
が。

 中学生になって手先もだいぶ動くようになり、中学1年の2
学期の課題の木版画をしたときには、1段階のステップ分けで
何とかなりました。

 木版画のときのステップを書いてみます。

(1)自画像の版画だったので、先ず本人の写真を撮り、その
   写真を版木の大きさに拡大コピーしました。

(2)写真の拡大コピーをクリアファイルに入れ、フェルトペ
   ンで輪郭線を書かせます。このとき、シャツの皺も書か
   せます。

(3)輪郭線をコピーし裏返して、版木の上にカーボン紙、裏
   返しのコピーの順で置き、なぞらせて、輪郭線を版木に
   写させます。

(4)輪郭線を濃い鉛筆で幅5mmに太くさせます。

(5)(4)の輪郭線の周りを三角刀で彫らせ、輪郭線が5m
   mの幅で残るようにさせます。

(6)写真の拡大コピーの明るい所と暗い所を数段階に分類さ
   せ、その境界線を赤いフェルトペンで書かせます。

(7)(6)の左右反転させたものを作り、版木に明暗の数段
   階の輪郭を濃い鉛筆で書かせます。

(8)数段階に分けた明暗を、彫刻刀でどう区別して彫るか、
   練習させます。

(9)(8)で練習した方法で、明暗を彫らせます。

 大雑把に書くと、こんな具合でした。

 プロのイラストレーターや漫画家が、正確な動作説明図を描
くときの方法を応用してみました。実写とアニメやCG(コン
ピュータ・グラフィックス)を組み合わせた映画を作るときに
も似た方法が使われているようです。

 一般に、手足が普通に動く方なら、初めに分けた1段階目の
動作のステップを一つ一つできるように練習していけば、でき
るようになってしまうことが多いです。

 もう100人以上の人に鍼灸を伝えてきましたが、初めに分
けた1段階目の中の一つのステップを、もう一度、数個に分け
ないとできなかった人は、数人だけでした。

4.体との対話を積み重ねていこう

 ただ、そういう風に小さく分けた動作を一つ一つ身に付けて
いくこと自体が好きでない人や、講習仲間との体と体の伝え合
いを楽しめない人は難しそうでした。

 小さく分けた動作を一つ一つ身に付けていくことは、言い換
えれば、自分の体との対話ですから、どうも体のような自然の
ものと対話するのが好きでない人は難しいようです。

 自分の体と対話ということについて付け加えると、鍼灸を自
習するときも、人工的なものに刺すよりも、できるだけ自分の
体に刺す方が上達しやすいと思います。

 先ずは、自分の足三里に色々な鍼を刺せるようになっていき
ましょう。

 私自身、初めは、自分にはディスポの1番しか刺せませんで
した。銀鍼は刺せず、ディスポの2番は痛かったです。

 少しずつ練習して、今では、銀の霞(かすみ)から30番まで
を自分の足三里に刺せるようになりました。

 灸も色々な大きさを自分にできるようになりましょう。

 そして、手足の甲、灸の場合には指もですが、自分で鍼灸し
て自分の体調を整えられるようにしていくと、どんどん上達し
ます。

 手足の指の周りの状態を調べたり、自分の症状との経絡的関
係を考えたりしていくと、自分の症状に合ったツボが見付けや
すいです。

 操体も、一人操体を色々工夫していけば、どんどん上達しま
す。

 「体は自然」に書いたことを参考にしてください。こういう
のも自分の体との対話だと思います。

5.自然素材のものに鍼を刺してみよう

 自分以外のものだと、猫に刺したという人もいましたが、ひっ
かかれる可能性もあるので、植物の方が無難かなと思います。

 サボテンなどの多肉の観葉植物始め草や木の葉や実とか。

 料理素材でも良いですね。野菜や果物、魚、肉。あるいは、
それらから作られたもの、豆腐、蒟蒻、パン。それらを料理
したもの、茹でたジャガイモなどの野菜、ゆで卵、焼いたり
煮たりしたモチ、豚バラの固まりを焼いたり煮たりしたもの、
焼いた鳥のモモや、豚足を茹でたものとか。

 そういえば、外科医は、豚足で皮膚縫合の練習をするそう
です。

 ゆで卵は、固ゆでと半熟では違うし、モチも、焼いたもの
と茹でたものでは違うし、搗きたてのモチでは、また少し違
います。

 餃子みたいなものは中身を色々に変えたものを作り、刺し
て、その違いが分かるか試してみると面白いです。

 要するに、鍼枕よりも自然なものに刺して練習した方が楽
しいし上達すると思います。

 操体も動植物にしてみたら、面白いかもしれませんね。

6.自然のものとの付き合いを多くしよう

 ですから、鍼灸をする以外で、鍼灸の腕を上げていくのに役
立つことは、自然との触れ合いを多くすることだと思います。

 自然の中でも、植林された林や野菜や家畜などよりも、人の
手の余り加わっていない物の方が役に立ちます。

 植林された林は、植える間隔を始め、人が決めていることが
多いですし、野菜や家畜は人の役に立つように品種改良されて、
野生の物とは大きく異なっています。

 人間は、品種改良されていない野生動物です。

 都会にいる動物の中では、品種改良されていない度合として
はカラス程度でしょう。野良犬よりは、はるかに品種改良され
ていません。まぁ野生動物に鍼灸するのは難しいですが。

 天気の変化なども、体が病になっていくときや治っていくと
きの変化に似ているなと思います。

 特に、軽いカゼや腹痛などのときの変化は、天気が崩れ回復
していくときの変化に良く似ています。

 若い頃に沢登りをしていて、初めて出会った滝の下に立って
滝を眺めながら登るルートを予測したり、山スキーで、初めて
見る斜面を上から眺めてスキーで滑るルートを予測したりとい
う経験を沢山しました。

 その経験は、体を眺めてツボが出ているラインを予測するの
に、とても役に立っています。

 恋をしたり、子育てしたりするのも役に立つと思います。ど
ちらも野性的な行為ですし、体と体のリアルタイム・コミュニ
ケーションが多いですし。

 でも、そういうことが楽しめないと難しいです。

 ですから、逆に、赤ちゃんや子供に関わる人には、ぜひ鍼灸
や操体を身に付けてほしいと思います。

 鍼灸や操体ができれば、言葉の通じない人と、体と体のリア
ルタイム・コミュニケーションを楽しむことができますから。

7.おわりに

 鍼灸や操体って、体と体のリアルタイム・コミュニケーショ
ンだと思います。

 ですから、杉山和一検校も

鍼刺すに 心で刺すな 手で引くな 引くも引かぬも 指にまかせよ

と言ったのではないかなと思っています。


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