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背中と脚裏の負荷分担

体は自然、臨床は対話 【1】体は自然 [2] 動作負荷の分担原則
(4) 背中と脚裏の負荷分担

1.はじめに

 これから、脳性麻痺の次男と側湾の人を例に、縦切り相関の
中でも、背中と脚裏の負荷分担について考えたことを書いてい
きます。

2.肺呼吸の負荷と脳性麻痺の姿勢

 先ず、次男の例から。

 肺呼吸の段階にない状態で生まれたことと、いわゆる脳性麻
痺特有の姿勢に関係があるのでは…と思っています。

 もちろん、脳性麻痺では、腹筋に比べると背筋が優位なので、
背中側に反りやすいのですが、それだけではなく、肺呼吸の負
荷との関係もあるように思います。

 生まれて直ぐ6ヶ月入院して帰ってきた次男は、後頭骨下縁
から尾骨まで弓なりに前に反り、胸部で後湾がなく、胸部も前
湾していました。

 つまり、肺呼吸の段階にない状態で生まれたことで肺に異常
な負担が掛かり、その負荷を分担するため、横輪切りの背中側
が大変緊張し、そのため、胸部後湾が無くなってしまったとい
う面もあるのではないかな…と思います。

 胸部後湾が無くなるほど胸を反らしてみると、当然、腰も反
り返りますから、その姿勢のまま立ち姿勢を維持しようとする
と、尻を出っ張らせ、鼡径部(腹と足の境)を後ろに曲げ、踵
を上げないと上手く立てないことが分かりました。

 つまり、ハイヒールを履いたような格好です。余談ですが、
ハイヒールというのは、元々は寝室用の履物で、バストとヒッ
プを強調するためのものという話を聞きました。

 次男は、3歳近くまで歩けず、歩いたときは踵と両手を挙げ
た、脳性麻痺児特有の歩き方で、5歩歩くと転ぶという状態で
した。

 小学校入学までは長い時間は歩けなく、保育園の先生もベビー
カーに乗せて移動していました。そして、未だ、胸部後湾が無
く胴を前に曲げられないので、マット運動の前転ができません
でした。

 それで、この頃に病院のPT(理学療法)の訓練で前転をす
ると、背中が曲げられないので戻ってしまったり、勢いを付け
ると背中でなく尻からドスンと落ちるような動きで前転してい
ました。戻ってしまうことの方が多かったです。

 クスグったり灸したりしていたら、だんだん、胸部後湾がで
きていきました。保育園の頃は、冬の間ずっとゼロゼロした感
じで呼吸器の状態が悪かったのですが、胸部後湾ができ始めた
小学1年生の冬からは、余りゼロゼロしなくなりました。

 動きの操体で好きなモノは、仰向けで親指側を足裏の方に回
しながら足を伸ばすものでした。とても気持ちいいと言ってま
した。つまり、脳性麻痺児特有の内反尖足を強調する動きです。

 それも、初めは、背中全体を反らすように伸ばすのを気持ち
良いと言うので、背中を反らしていました。つまり、胸部後湾
が無いこと、胸部前湾を強調する姿勢です。

 しばらくして、ほぼ真っ直ぐに引っ張るのが気持ち良いと言
いだし、中学生になると、座っている私の肩に踵を乗せて引っ
張られるのが気持ち良いと言うようになりました。

 なんとなく、力の作用点が、だんだん背中上部から腰の方へ
降りてきているような感じを受けました。

 胸部後湾ができましたが、中学前半までは、腰の前湾や鼠径
部の後湾が強く、つまり、腰が前に大きく反り、鼠径部が後ろ
へ反っている状態でした。

 今(2007年5月現在)高校2年生ですが、中学生の頃に
比べると、腰や鼡径部の反りが少なくなり、歩幅も大きくはなっ
ています。

 その代わり中学後半からは足先の内反は大きくなっている感
じで、歪みが下腿に集中してきているような感じを受けます。

 もう高校生なので大きく変化はしないかもしれないし、時間
はすごくかかるでしょうが、今だに少しずつ変化しているよう
です。1ヶ月単位では変化が分からず、1年単位で何とか分か
る程度なの変化なのですが。

 色々やってきて、後ろ(背中)側の筋肉の負荷の分担により、
肺のある胸の負担を庇った結果、また、胴体部分が背筋優位で
ある結果として踵が上がっている可能性が大きいと思っている
わけです。

 猿回しの猿は2本足でも歩けますが、その猿の立ち姿勢での
横からのレントゲン写真を見てみると、いわゆるS字カーブ、
つまり、胸部後湾がちゃんとあります。普通の猿にはS字カー
ブはありません。

 猿回しの人が小猿の頃にマッサージをして背中や腰の筋を弛
め、S字状のカーブを描くようにしないと、2本足で歩けるよ
うにはならないそうです。

 この猿回しの猿のレントゲンの例からも、背骨が綺麗なS字
カーブを描くことと直立2足歩行とが関係あるように思えるの
です。

3.側弯症と脹脛

 次男の例は、立ち姿勢での体の前後のバランスに関係する負
荷分担の例ですが、左右バランスの負荷分担が関係しているの
では…という例にも出会いました。

 30代半ばで側弯があり、脹脛の左右差が大きい人がいまし
た。

 片方の足の脹脛の腓腹筋がズブズブで張りや厚みがなく、腓
腹筋が殆ど無いように見えるほどだったのです。

 足の左右の力の入り具合というか、踏ん張ることができる程
度に応じて胴体の左右の重さを変えるために、背中上部で背骨
が左右に曲がった可能性が大きいのでは…と思いました。

 負担の差が大きいので、できるだけ上部で重さに左右差を付
けた方が少ない左右差で負担を平均にできるが、頭が曲がって
揺れるのは良くないので、背中上部で左右差を付けた可能性が
高いのではないかな…と考えています。

4.おわりに

 このように、「立ち姿勢や直立2足歩行での重心バランスは、
胴体部分に影響を与える」し、逆に、「胴体部分の内蔵の病の
影響が、立ち姿勢や直立2足歩行にも影響を与える」という、
双方向の関係があるのだなと思います。

 次男のリハビリで胴体と足の動きのバランスで考えたことは、
他にもあるのですが、長くなったので、別の機会にしたいと思
います。

 また、この2足歩行と胴体の重心配分の関係からも、昔の人
が経絡の中でも、縦切りを正経12経として重視したのも、必然
性があることなのだなぁと思います。

 12というのは、前横後ろで3,体の内外で2,手足で2で、
組み合わせると、3×2×2=12になります。


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最終更新:2017年02月23日 05:06