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足の経絡は全身に関係

体は自然、臨床は対話 【1】体は自然 [2] 動作負荷の分担原則
(3) 足の経絡は全身に関係

1.はじめに

 さて、いよいよ、足の経絡の話です。
 足は全身に関係しているので重要なのですが、足を後にした
のには理由があって、手よりも少し複雑なところがあるのです。

 1つは、体の内側を担当するのが足裏だけでなくて、親指や
内踝(うちくるぶし)の周りも体の内側を反映していることで
す。これは、普通に立った状態で、足親指や内踝は体の中心線
上、つまり、天から見て体の内側と重なる所にあるためだと思
います。

 また、下腿の内側だけ、前・横・後ろの対応がズレています。
後ろは同じなのですが、前と横が逆になっています。

 このこと自体は、とても面白い現象なのですが、説明は後回
しにして、大雑把に言えることを先に説明します。

2.2本の足が合わさって胴体になる

 足という2本の丸太を合わせて間の胴体ができていると想像
してみてください。

 足の外踝(そとくるぶし)側が胴体の外(表面)側、足の内
踝側が胴体の内側になることが思い浮かぶと思います。

 これが治療中に思い浮かべられると、結構、役に立ちます。

図1

左膝裏の外寄りのツボは、左背中側の外寄りに関係

 例えば、膝裏のツボでも、左膝裏の外寄りのツボは、胴体の
左半分で体の外で裏側、つまり、左背中側の外寄りに関係して
います。多くの場合には、左腰の外寄りにツボが出ています。

 そして、左の外踝の辺りや左足小指4指の辺りにもツボが出
ている可能性が高いです。

 右膝裏の外よりの場合も同様です。

 ですから、腰痛の場合には、膝裏の外寄りにツボがでます。
詳しく言えば、膝裏の絵を描くときには「上下が短いH」字型
を描くことが多いですが、その「H」の外側で脹ら脛側の端と、
外踝の後ろ側を結んだライン上に腰痛に効果的なツボが並んで
出ていることが多いです。


 腰は体の前横後ろの3分類で言えば後ろ側ですから。

左膝裏の内側のツボは、腹の左側に関係

 同じ左膝裏のツボでも内側にある場合には、胴体の内側の左
外寄りの状態を反映しています。胴体内側のその部分にツボが
出ていれば、前に書いたツボの第一原則の横輪切りの体表面に
ツボが出やすいので、結局、腹の左側にツボが出やすくなりま
す。

 女性では、左下腹から左腸骨にかけてツボが出ていることが
多いです。生理痛を初めとする生殖器関連疾患の人に見られま
す。そういう人は、左足の内踝の周りや親指の周りにもツボが
出ている可能性が高いです。

 右膝裏の内寄りにツボが出ていても同じなのですが、女性の
生殖器関連疾患の場合には2/3ぐらいは左側に出るようです。

3.体の内側と足の内側でも、前・横・後ろ同士で関係

 体の内側と足の内側との関係も、だいたい、前・横・後ろに
対応しています。

 体の内側で比較すると腹の表面に近い部分には、胃腸などの
消化器があるので、足の内側の前の経絡(足太陰)と関係が深
いです。手術する時にも、腹側から手術する部分ですね。

 生殖器や肝臓は、体の内側の中心に近い部分にあるので、足
の内側の横(真ん中)の経絡(足厥陰)と関係が深いです。

 体の内側の後ろの方には、腹膜後器官の腎臓や膀胱と背骨が
あります。手術のときには背中側からする器官です。ですから、
足の内側の後ろの経絡(足少陰)は、腎臓や膀胱や副腎と、脊
髄や延髄などの中枢神経系と関係が深いです。

4.頭頂部は、足の内側の横(足厥陰)と関係

 面白いのは、この足の内側の真ん中の辺り(つまり、前・横・
後ろの横、足厥陰)の状態が、頭頂部に関係することです。

 古典にも「頭頂部の頭痛は足厥陰が担当する」と出ています。

 これは、鉛筆を思い浮かべると納得が行くと思います。

 足という2本の丸太が合わさって胴体や首や頭ができている
とすると、内側の横、つまり、内側の真ん中は、鉛筆の芯に相
当し、それは、そのまま上に辿れば、頭頂部になります。

 ですから、頭頂部が痛かったり熱かったりするときには、内
踝や足親指の周りにもツボが出ます。

 頭の前が痛いときには、足の前側、2指の辺りにツボが出ま
す。頭の横が痛い偏頭痛の場合には、外踝の前寄りや足の3趾
と4趾の辺りにツボが出ます。また、後頭痛のときには、外踝
の後ろ寄りや足の小趾(5趾)や4趾にツボが出ます。

5.足の内の横(足厥陰)は、目にも関係

 もう一つ面白いことに、この足の内の横(真ん中)の経絡
(足厥陰)は、目の病にも関係しています。

 これは、目の裏側、つまり、目の奥は、立ち姿勢での頭の横
輪切り面の中心近くに達しているせいだと思います。

 麦粒腫(モノモライ)や目のゴミなど、目の表面の問題は、
手の拇指や示指、つまり、手の外の前の経絡(手陽明)が担当
します。

 が、目を動かす筋肉や網膜などが関係する近視や網膜剥離な
どは、足の内の真ん中の辺(足厥陰)が関係しています。

 この例は、橋本敬三先生の『生体の歪みを正す』p87に
「患眼同側大腿内側下3分の1、四頭股筋の内縁」と出ている
のを始め、他の本も含め沢山出てきます。

 眼のツボは、正中線と平行な目を通る線上で頭頂部付近の左
右2か所にも出るのですが、真後ろは横輪切りの原則だなと分
かるが、何故ここにも出るのだろうと長いこと考えていました。

 しばらくして、結局、要するに、天から見ると下に目の奥が
ある、つまり、これも天から見て重なる所にツボが出る例なん
だと分かりました。

6.足三里が腹と関係する理由

 さて、足の前側は、前頭部以外にも体の前側に対応している
のですが、ここで有名なのは、いわゆる三里のツボです。膝の
皿の外側から少し足首寄りにあります。

 ここは、体の前側、つまり、腹側の表面近くと関連します。
ツボの出方の第一原則で書いたように、そこには、腹の内側の
状態を横輪切りの原則で反映したツボが出ますので、三里のツ
ボは、腹の状態を反映することになります。

 ですから、結局、腹が痛いときには、足の趾では、親趾と2
趾の周りにツボが出やすいことになります。

 詳しく言えば、親趾は直接的に腹の内側と関係し、2趾は、
腹の内側と関係のある腹表面のツボと関係していることになり
ます。

7.大雑把には、前・横・後ろで、足の親指は体の内側

 手と同じで、他の歪みとの関係で、隣の指に出ることもあり
ます。でも、「だいたい前・横・後ろ」で、「足の親趾は体の
内側」と直ぐに頭に思い浮かべられれば、鍼灸の治療のときに
役に立つと思います。

 つまり、だいたい、「足の2趾3趾は、体の前側」、「足の
3趾4趾は、体の横側」、「足の4趾小趾は、体の後ろ側」と
いう対応があります。頭に入れておいてください。

 古典では、足の4趾と小趾の間は、足の外・横の経絡(足少
陽)が通るとされていますが、腰痛・座骨神経痛など体の後ろ
側に症状が出ているときには、必ずと言ってよいほど、足甲の
4趾小趾に繋がる骨の間にツボが出ています。

 それで、臨床に生かすためには、足4趾と小趾の間は、体の
後ろ側にも対応すると思っていた方が役にたちます。

8.喉(のど)と土踏まずの関係など

 もう一つ興味深い対応があります。喉が腫れているときには、
内踝の近くでも、土踏まずの中央の辺りにツボが出ていること
が多いです。

 これは、喉の部分で腫れるのは後ろより、つまり、立ち姿勢
での横輪切り面で見ると、かなり後ろになるからだと思います。
土踏まずの辺りは、足の内側でも後ろ側の経絡(足少陰)が通
るとされています。

 また、冷えているときには、足甲の3趾と4趾の間にもツボ
が出ることが多いですが、足の外の横の経絡(足少陽)の膝外
側大腿の辺りに「寒府(沢田流)」という奇穴があり、その直
ぐ近くの足陽関に「寒風」という別名があることに関係してい
るような気がします。

 また、冷えているときには、足甲の3趾と4趾の間の裏側の
足の中央の窪み、湧泉とか足心とか呼ばれる所も反応があるこ
とが多いですね。これは、足甲と裏側の相関関係が関係してい
るのかも知れません。

9.おわりに

 長くなってしまいましたが、要するに、足は、「内踝側が、
胴体や頭の内側と関係」、「外踝側が、胴体や頭の外側と関係」
していて、それぞれ、前・横・後ろという関係もあるというこ
とです。


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最終更新:2016年11月21日 13:49
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