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歪みは筋肉に記憶される

体は自然、臨床は対話 【1】体は自然 [1] 「体は自然」が基本
(4) 歪みは筋肉に記憶される

1.はじめに

 (2)で書いたように、鍼灸の名人でもあった操体の橋本先生
は、「気持ち悪いことをすると体が歪む」のが病の出発点とさ
れています。

 今回は、その体の歪みというのは、具体的にどういうことか。
どういうことが体のどの部分に起こっているのかを考えていき
ます。

2.体が歪むのは、筋肉の機能性病変(機能性疾患)

 体が歪むというのは、どういうことでしょう。

 患者さんが動いているのを見たり、じっとしたまま動かない
のを観測したり、患者さんの言い分を聞いたりして、歪みを見
付けていきますね。

 見た目に左右差が有ったり、他の人との差が大きかったり、
動きにギコチない感じが有ったりすると、歪んでいるなと思い
ますね。

 そして、上手く行けば、鍼灸などをした後には、左右差や他
の人との差や動きのぎこちなさが少なくなっています。このと
き、患者さんの体には、どういう変化が起きているのでしょう。
どこが変わったのでしょう。

 私は、筋肉が変化したのだと考えています。ヒトは、体の筋
肉を伸ばしたり縮めたりして動いています。骨や皮膚は筋肉に
引っ張られて動いているだけで、骨や皮膚が単独で動くことは
ありません。筋膜(ファシア)もそうですね。

 (下の方に詳しく書きましたが、「短時間に自分で動く仕組
を持っているのは、組織では筋肉だけ」と、鍼灸学校の生理学
の授業で習いました。短時間に変化する組織を生理学では興奮
性組織と呼び、筋肉の他は、神経と腺とのことでした。)

 ある特定の動作をするときに、ある特定の筋肉が基本的に縮
みます。その動作を止めれば縮んでいた筋肉は伸びます。

 そして、同じ動作を続けると同じ筋肉が縮み続けます。それ
が長い間に繰り返されると、その動作を止めても縮んだまま伸
びれない部分が筋肉の中に現れます。それが痼りです。

 そして、その縮んだまま痼りになった状態が続くと、今度は
筋肉は伸びきって、縮む必要のあるときにも縮めない状態にな
ります。

 このことは、生理学において、カエルの筋肉を使って実験さ
れ確かめられていることだそうです。鍼灸学校の生理学の授業
で習いました。

 つまり、

(1)筋肉に負荷を掛けると筋肉は縮み、負荷を取り去ると筋
   肉は弛んで伸び、元の長さにもどる。(正常)

(2)筋肉に負荷を掛け続けると、ある限度を超えた所で、負
   荷を取り去っても筋肉は縮んだまま、短い状態のままに
   なる。(過緊張)

(3)(2)の段階の筋肉に負荷を掛け続けると、ある限度を
   越えた所で、筋肉は元の長さよりも長い状態に伸びきっ
   てしまう。(過弛緩)

(4)(3)の状態の筋肉から一度負荷を取り去った後に、再
   度負荷を掛けても筋肉は縮むことはない。

 また、生理学的に、ヒトの体の中にある組織で、興奮性のも
の、つまり、比較的短時間(秒分の単位)で変化する組織は、
三つだけ、筋肉の他には、神経と腺だそうです。この中で、長
さが変わるものは、筋肉だけです。

 つまり、体が動くというような短い時間で変化する組織の中
で、長さが変わるもの、治療する時間(比較的短い時間です)
の中で変化して動きがスムーズになったりするのに関係するの
は、筋肉だけなんだなぁと思いました。

 そうです。鍼灸などをして、歪みが少なくなったり、動作が
スムーズになるのは、鍼灸などをすることで、筋肉の縮んだま
まや伸びきったままの状態が改善されるからなんだなと思いま
す。

 話を戻すと、体の中に筋肉が伸びない部分や縮めない部分が
出現するから、ヒトの体は歪んで見えるわけですし、動作がス
ムーズで無くなるわけです。

 例えば、伸びない部分や縮めない部分が左右で違えば、左右
の歪みとして見えるでしょう。伸びない部分を伸ばそう、縮め
ない部分を縮めようとする動作をすれば、その動作はスムーズ
には見えないでしょう。

3.ツボと筋肉の機能性病変

 一般的に、縮んだまま伸びなくなった状態を「実の凝り」と
呼び、伸びきって縮めなくなった部分を「虚の凝り」と呼びま
す。

 そして、いわゆるツボというのは、皮膚に近い所が虚、つま
り、筋肉が伸びきったままの状態(過弛緩)、奥の方が実、つ
まり、筋肉が縮んだままの状態(過緊張)になっています。

 また、できたての新しいツボは、フニャフニャした過弛緩の
部分が少なく、比較的浅い部分に柔らかめの過緊張部分がある
という形をしていることが多いです。

 それに比べて、できてから時間がたった古いツボは、フニャ
フニャした過弛緩の部分が多く、ずーっと奥まで過弛緩の部分
が続き、その底に非常に硬い過緊張の痼りがあるという形をし
ています。また、古いツボの表面は目で見てわかるほど凹んで
いることが多いです。

図1

 そして、そういうツボができて、体が歪んでいくと、動作が
しづらくなりますので、そのまま生活して活動を続けていくと、
動作に無理が生まれます。そのため、痼りのなかった筋肉にも、
正常の状態よりも余分に負担が掛かります。

 そうすると、それまで正常だった筋肉にも凝りができていき
ます。そうして、歪みがますます酷くなり、ツボは増えていき
ます。

 もちろん、この過緊張や過弛緩は、一時的機能的なものであっ
て、永続的器質的なものではありません。ですから、鍼灸など
をすると自在に伸びたり縮んだりする正常な状態に戻るわけで
す。

 ただ、お年寄りなどの古いツボが変わりにくいのは、一時的
機能的なものも長く同じ状態が続くと、だんだん永続的器質的
なものに近付いていくせいかなと思っています。

4.筋肉の機能性病変を映像にできたら

 ところで、レントゲン検査(X線撮影)には、筋肉は写りま
せん。

 筋肉の三つの状態、つまり、自在に伸び縮みする状態(正常)、
縮んだまま伸びなくなった状態(過緊張)、伸びきって縮めな
くなった状態(過弛緩)を、筋肉を切らず触れずに、レントゲ
ンのように調べられ、写真やビデオに見れるような仕組みを作
れないものかなと考えています。

 そうすれば、鍼灸をはじめ指圧按摩や操体などの治療の根拠
を発見していけると思います。

5.心の緊張も筋肉の機能性病変をおこす

 また、心にストレスが掛かった場合にも、体を緊張させて耐
えますね。

 例えば、肩を上げ、手を握りしめます。そのときには、たい
てい足の趾(指)も握りしめて、つまり、足裏の方に曲げてい
ます。

 その状態が長く続けば、心の緊張も筋肉の中に痼りを作って
いきます。心の緊張は脳に記憶されるだけでなく、筋肉にも記
憶されると言ってもよいかなと思うほどです。

 逆に、心の緊張する姿勢に関わるツボを弛めていけば、心の
緊張を解すことも可能です。ヒトは肩を下げ手足の指をフンワ
リ開いた状態で心を緊張させることはできないからです。

6.おわりに

 色々と書いてきましたが、まとめてみます。

 ある特定の動作をし続けると、ある特定の筋肉が縮んだまま
の状態や伸びきったままの状態になる、それが体が歪むという
こと。そういう伸び縮みができない状態になった筋肉の部分が、
ツボと呼ばれる…ということです。

 この筋肉の機能性病変という考え方は、加茂整形外科の加茂
淳先生の『トリガーポイントブロックで腰痛は治る!』(風雲
舎)にも、書かれています。一読をお勧めします。



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最終更新:2019年05月18日 09:10
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