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「体は自然」が東洋的身体観の基本

体は自然、臨床は対話 【1】体は自然 [1] 「体は自然」が基本
(1)「体は自然」が東洋的身体観の基本

1.はじめに

 私が東洋的な身体観に興味を持ってから40年以上経ちまし
た。これから、東洋的な身体観・病気観の中で私が色々な経験
を通して実感できたものについて説明していきます。

 具体的な個別の症状の治療法に入る前に、東洋的な身体観・
病気観の概要を理解していた方が個別の症例を理解しやすいと
思いますので。

2.人は動物、体は自然

 東洋的(漢方的、伝統医学的)な身体観・病気観としては、
「体は自然」ということが基本になると思います。

 難しい言葉でいえば、「天人合一思想」、つまり「天と人は
同じと見なす考え方」ということになるのかなと思います。

 要するに、「人は動物、体は自然であり、人はロボットでは
ないし、体は機械ではない」ということだと思います。

 それに比べて、臓器移植に代表される西洋医学の考え方は、
体を機械に近いものとして見ているように思います。

3.自然側が大切

 「体は自然」ですので、病気になったり治ったりするのも、
雨が降ったり雷が鳴ったり風が吹いたりする、あるいは、それ
らが止んだりするのと同じ自然現象と見るわけです。

 そして、雨が降ったり雷が鳴ったり風が吹いたりするのには、
自然としての必然的な理由があるでしょう。それと同じように、
病気になるのも体という自然なりの理由があると考えます。

 操体で有名になった橋本敬三先生は「鍼灸を含む東洋的物療
で大切なのは自然則」という言葉を残してられます。そういう
自然としての必然的な理由を自然則と呼んで、それを理解する
ことが大切だと言われたわけです。

 余談ですが、橋本敬三先生は、1920年代に函館で毛鍼の
名人から鍼を学んだ鍼灸の達人でもあり、戦中や戦後60年位
までは鍼灸の方がどちらかと言えば多かったようです。

 1937年に発表された「力学的の構想」にも鍼灸の話が沢
山出てきますし、1965年には医歯薬出版から『鍼灸による
即効療法』という本を出されています。また、1980年代に
一緒にいた今昭宏先生の話ではその頃も鍼灸治療をしていたそ
うです。

 これから、そういう体という自然についての自然則で、私が
生活や臨床を通して実感できたものを順に取り上げ解説してい
きます。

4.実践していることの共通点を納得しやすく

 できるだけ今の若い人にもガッテンして納得していただける
内容にしたいと思いますので、鍼灸の古典などに詳しい方から
見れば、ずいぶん違うことを書いていると思われる話も書いて
いきますが、ご容赦願います。

 若い人や、鍼灸以外の東洋医学をされる人、他職種、例えば
医師や、患者さんなど一般の人にも同じ説明をして、ガッテン
して納得していただきたいので。

 「体は自然」ですので、その体という自然の原則が分かれば、
色々な達人の先生の実演のときに、先生の実践していることと
患者さんの反応を見て、実践していることの意味が分かる可能
性が高くなるように思います。また、直ぐに真似できる可能性
も高くなると、少なくとも真似しやすくなるのでは…と思って
います。

 皆さんがそういう風になれるような説明ができたらいいなと
思います。

 達人の先生が実際に患者さんに実践していることの中で、患
者さんの治療に役立つと言うか、自己免疫機能を活発にさせる
ことに限れば、そう違いは無いように感じています。鍼灸操体
だけでなく按摩指圧なども含めて。

 「体の自然」についての基本的な原則を知っていれば、後は、
施術する側の得意なことや夢中になれる方法を磨いて、患者さ
ん一人一人のその時の体や心の状態に合わせて丁度良いことが
できれば良いと思います。

 違うのは、説明というか、「心に言葉で描かれた物語」。そ
の違いの大きさに初心者は面食らってしまうわけです。

 そういう「物語」をできるだけ省いた所で言えることを色々
な達人の先生の実践していることの共通点を中心に、体の自然
則を書いていくよう心掛けていきます。

5.病気になるのも自己免疫機能

 体は自然なので当たり前ですが、病気も自然現象として見ま
すので、病気観も西洋のものとは結構違ってくるように思いま
す。

 西洋医学的な病気観は、病原体病源説に代表されるように病
気を克服すべき対象と考えているように思います。病原体病源
説というのは、細菌やウイルスなどのような病原体が病気の原
因であるという考え方です。

 それに比べると、東洋的な病気観には、病気も体の養生シス
テムの一つとしてとらえる見方があります。つまり、「病気の
症状は、体が発する「無理のしすぎ」という警報で、それを切っ
掛けに養生すれば、病気になる前よりも生命力の高い状態に成
れる」という病気観です。

 無理、つまり、理が無い、自然則に合わないことを実践し過
ぎたと体が感じたときに、それを意識させるために、また、そ
の状態を健康な状態に戻すために、病気の症状と言うのが出て
くるし、それを切っ掛けに体を元に戻すように養生していけば、
病気になる直前の状態よりも生命力の高い健康な体に成れると
いう考え方です。

 一般に、病気の症状は出ていないが、既に無理して体が歪ん
で、いつ病気の症状が出ても可笑しくないと言うか、もう少し
無理が重なると病気の症状が出そうな状態のことを未病と呼び、
東洋医学の治療では、病気の症状を消すだけでなく、未病を治
すことが大切と考えられています。

 要するに、病気に成るということも体という自然が持ってい
る恒常性維持機能の一つ、極論すれば、病気に成るのも自己免
疫機能の一部という考え方です。

 そういう理由で、東洋医学では、病気の症状を消すだけでは
なく、病気になる前よりも生命力の高い状態にすることが求め
られています。このことを覚えておいてください。

図1

 この辺りのことは、整体の野口晴哉先生の『風邪の効用』
(ちくま文庫)などにも書かれています。野口先生は鍼灸はさ
れませんでしたが、上記の病気観でカゼという病気を観察した
ことが詳しく書かれていますので、一度読んでみることをお勧
めします。

6.東洋医学は、病人治療が基本

 さて、体は機械ではないので、人間が作った仕様書通りに作
られているわけではありません。ですから、治す方も人間が作っ
たマニュアル通りにやっても治せないときもあります。

 また、一人一人の遺伝子は基本的に異なっているので、ヒト
は一人一人違っているわけです。また、遺伝子が同じ一卵性双
生児でも全く同じ環境で全く同じ行動を取っているとは限りま
せん。ですから、一人一人のその時の体という自然の状況は異
なっています。

 そして、自然の状況ですから、同じ人でも、診る時に因って
違います。

 ですから、東洋医学の治療は、基本的に病名治療ではなく、
目の前の人の今現在の状態に合わせていく病人治療になります。

 要するに、目の前の人の体という自然に今現在の時点で起き
ている現象を把握し、自然則を使って理解し、それに基づいて、
その人の体の現時点での状態に合わせて治療していくというこ
とになります。

 「東洋医学は、病人治療が基本」ということも覚えておいて
ください。

7.おわりに

 「体は自然」という東洋医学的な身体観から、「病気になる
のも自己免疫機能の一つ」という東洋医学的な病気観、「目の
前の人の体のその時のの状態に合わせる」という治療観までを
説明しました。

 納得していただけたでしょうか?


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最終更新:2017年05月28日 10:48
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