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術伝流操体 【3】操体で一通り治療 [3]自動運動への対処 
(2) 立位やナンバ歩きでの手のひら感覚みがき

立位やナンバ歩きでの手のひら感覚みがき

(1)はじめに

  今回は、操体中にどんどん動いていってしまう人の動きを追いなが
ら、適度なタワメの間(ま)やイイ感じを保ち続けるために役立つ技術
の2回目です。

 先回は、座位や袴歩きで、手のひらの感覚を磨いていく方法でした。
今回は、立位やナンバ歩きしながら、手のひらの感覚をみがいていく方
法を解説していきます。

(2)立位での手のひら感覚練習

 立位で向かい合い、互いに手を合わせ、動きを追い合います。

1.手のひら同士を合わせてから

 自分の右手を相手の左手に、左手を相手の右手に合掌させるように合
わせてから(写真1)、手のひらに感じる動きに合わせて、ゆっくり追
い合っていきます(写真2)。

写真1

写真2 

 これも、初めは分かりにくいかもしれませんが、だんだんどちらが先
に動いているのか分からない感じになっていくことがおおいです。

2.手を組んでから

 右手を相手のに組み、もう片方も組み合わせてから(写真3)、手の
ひらに感じる動きに合わせて、ゆっくり追い合っていきます(写真4)。

写真3 

写真4

 手を組んでいる分、合掌している場合よりも動きが制限されますが、
密着した感じは強くなるように思います。

3.手のひらを重ねてから

 手のひらを上にむけて、相手の手のひらを上に重ねてもらったり
(写真5)、相手に手のひらを上にむけてもらったりして(写真6)、
それをきっかけにするのも、またすこし感じが違って、おもしろいで
す。

写真5

写真6

 片方を上向き、片方を下向きにして、相手にそれに合わせてもらって
もよいです(写真7)。 左右を逆にした組み合わせでもよいです。

写真7

 そういういろいろな手のひらを合わせた状態から、互いの動きを追い
合っていきます(写真8)。

写真8

(3)立位の足さばき、ナンバ歩き

 立位でも、立って足をあまり動かさないだけではなく、歩いていきな
がら追いあう練習もします。そのときは、いわゆるナンバ歩きをすると、
相手を追いやすいです。

 ふつうは、前に出す足と反対側の手を前に出して歩きますが、ナンバ
は、前に出す足と同じ側の手を前に出して歩きます。

1.ナンバ歩きは、腰で捻らない

 ナンバ歩きは、 前に出す足と同じ側の手を前に出すので、腰で捻れま
せん。そのため、着物が着崩れないので、江戸時代までは一般的な歩き
方だったそうです。

 ただ、私は、ぜんぜん捻っていないわけではなく、首では捻れている
ように思います。そして、着物を着るときに、首の後側にゆとりをもた
せるのは、首が捻れやすくするためではないかなと思っています。

 現在では、日常的に着物を着ている人は少ないので、ナンバ歩きは身
につけるのがむずかしいといわれることもあります。しかし、日本のお
おくの人は、ふだん、なにげなくしている動作ではないでしょうか?

 たとえば、引き戸をとおるときや、のれんをくぐるときのことを思い
出してください。

2.ナンバ歩きは、日常で現在もしている

 引き戸を開けてとおるときに、大きく戸を開け、開けた手の反対側の
足から戸のなかにはいっていきますか?

 ふつうは、体のとおる幅くらいに開け、開けた手と同じ側の足から、
はいっていると思います。

 ノレンをくぐるときも同じです。ノレンを横によせた手と同じ側の足
をノレンの内側にいれていきませんか?

 あと、盆踊りのときの足さばきもナンバですね。浴衣を着て踊ること
が多いので、当たり前ですが。

3.ナンバ歩きの有利な点

 ナンバ歩きは、素早く動けます。それで、格闘技など、間合い三間
(げん)くらいで、早く動くものを相手にするときには、有利です。日
本の武道だけではなく、フェンシングなども、ナンバですね。卓球やバ
トミントンも、基本的にはナンバです。

 ナンバが有利なのは、もう一つ、坂道や階段です。階段を駆け下った
り、2段飛ばしくらいで駆け上がったりするときは、ナンバのほうが、
だんぜん速いですし、疲れません。山道も急斜面になればなるほど、
ナンバのほうが速いし、疲れません。

 これは、操体でいう「体の連動」ということを考えると、理由がわか
ります。

 右足を上げながら前に出す動きが、背骨に伝わると、腰椎右側を前に
出しながら上に上げる動きになります。そのときに、反対側の左手を前
に出すと、その動きが背骨に伝わったときには、胸椎左側を前に出しな
がら上に上げる動きになります。

 結果的に、胸椎右側を後ろに引きながら押し下げる動きになってしま
います。つまり、左手の動きは、右足を上に上げようとする動きに抵抗
する動きになってしまいます。背骨に伝わる螺旋運動が逆になってしま
うからです。

 また、歩きながらしゃがんだり立ったりするのも、ナンバのほうが速
いし疲れません。

 障害物競走で、跳び箱とんで、ハシゴを潜(くぐ)り、平均台を跳び
こえて、網を潜るというような高低が交互になるような場面では、ナン
バが有利です。

 普通の走り方では、上に跳んだり、下を潜ったりするまえに、止まる
かスピードを落とさないとむずかしくなります。ナンバだと、あまりス
ピードを落とさずに、跳んだり潜ったりに移れます。

 ですから、ハードル競技が、1段おきに跳んだり潜ったりする競技だっ
たら、ナンバが有利だと思います。

4.ナンバ歩きの不利な点

 逆に、ナンバ歩きは、重いものを持ったり、力を入れたりするのには、
向きません。

 相撲で四つに組んだ場合も、ナンバ型の半身は、不利とされています。

 また、テニスのフォアハンドも、ナンバではないです。これは、卓球
やバトミントンよりもボールに力を入れて打つ必要があるからかなと思
います。

 手作業でも同じで、餅つきをナンバでしたら、1回キネでついただけ
で、腰を痛めます。長時間座って作業する場合も、利き手側と反対側の
足を前に出していないと、腰痛になりやすいです。

 また、平地を歩くときも、普通の歩き方のほうが、有利なことがおお
そうに思いますが、いかがでしょう。

5.自動運動に対処するにもナンバ歩きが有利

 操体しているときに自動運動が出て歩き出したりする場合には、ただ
歩いていくだけではなく、姿勢が高くなったり低くなったりになること
もあるし、歩きながら急に方向が変わったりすることもあります。

 これまで書いてきたようなわけで、そういうのを追っていくには、ナ
ンバ歩きのほうが有利になります。

 また、自動運動が出やすい人の中には、寝たり、座位になったり、立っ
たり歩いたりと、いろいろ動いていく人もいます。そういう人を追うと
きには、袴歩きとナンバ歩きを組み合わせて追っていく必要も出てきま
す。

 時間があったら、そのあたりも稽古して身につけるようにしていきま
しょう。

(4)ナンバ歩きの練習

 ナンバ歩きは、引き戸を開けながら、ノレンをくぐりながら、歩いて
いるときの歩き方ですので、左右交互にそういうことをするつもりで歩
いていくと、すぐできるようになります。

 ここでは、引き戸を開ける形で練習しますが、ノレンでも同じです。
ノレンの場合は、盆踊りとよく似た感じになります。

1.引き戸を開けながらナンバ歩きで前へ

 引き戸を左右交互に開けながら前に進む練習をします。

 たとえば、まず右手で引き戸を開けるつもりで歩くと、つられて右足
が前に出ます(写真9)。

写真9

 つぎに,左手で引き戸を開けるつもりで歩くと、つられて左足が前に
出ます(写真10)。

写真10

 また,右手で引き戸を開けるつもりで歩くと、つられて右足が前に出
ます。これを繰り返していきます。

2. 引き戸を開けながらナンバ歩きで後ろへ

 引き戸を左右交互に開けながら後ろに進む練習をします。

 たとえば、まず右手で後ろの引き戸を開けるつもりの動作をしながら
で、右足を後ろに出します(写真11)。

写真11

 つぎに,左手で後ろの引き戸を開けるつもりの動作をしながらで、左
足を後ろに出します(写真12)。

写真12

 また、右手で後ろの引き戸を開けるつもりの動作をしながらで、右足
を後ろに出します。これを繰り返していきます。

3.ナンバ歩きと袴歩きを組み合わせて

 ナンバ歩きで右足を前に出した姿勢から(写真13)、左足を前に出し
ながら体重を落とし(写真14)、右つま先と右膝をつき左膝を立てた状
態でしゃがみ(写真15)、左膝を大きく左に開いていく(写真16)と袴
歩きになります。

写真13

写真14

写真15

写真16

 右膝を左膝の前によせてから(写真17)、袴歩きをつづけます(写真
18)。

写真17

写真18

 そして、左の足を前に出しながら足裏をついて膝を立ててから(写真
19)、左膝をすこし左に開きながら体重を左足にのせ(写真20)、右足
を前に出しながら立ち上がり(写真21)、ナンバ歩きに戻ります(写真
22)。

写真19

写真20

写真21

写真22

(5)ナンバ歩きで手のひら感覚練習

  立ち姿勢で手を合わせ(写真23)、ナンバ歩きしながら動きを追い
ます。(写真24)。 この場合は、逃げるほうが手のひらを上にしてヘソ
の前におき、追うほうが手のひらを重ねた状態から始めます。

写真23

写真24

 逃げるほうの手を動かす範囲を制限します。そうしないと、体で追い
合う練習にならないからです。横幅は、自分の腰幅、高低の幅は、自分
のお腹の範囲で、手を動かすことを条件にします。そして、歩いたりしゃ
がんだりしながら逃げて行き、それを追っていきます(写真25)。

写真25

(6)ヘソを向け近づくことがコツ

 ナンバ歩きのときのように大きく動いていってしまう相手を追ってい
くコツは、ヘソを相手の背骨に向けることです。しかも、なるべく近づ
けることです。そのほうが、手首から先にゆとりが生まれ、追いやすく
なります。

 武術的な場面では、ヘソを相手の背骨に向けながら、相手のヘソから
自分の背骨を外したほうが有利になるような気がしていますが、いかが
でしょう?

 私は武術はしませんが、試合などを見ていると、相手の背骨にヘソが
向いている時間が長いほうが勝つことが多いように思います。

 ただし、かるい用具を持つフェンシングや剣道、空手など素手打撃系
では、ナンバでしかもヘソを相手に向けることが多いように思いますが。

 こういうヘソを相手の背骨に向けたり、手首から先にゆとりができる
ように近づけるということを、二人で操体をしているときにも意識して
いくと、操体がしやすいし、効果が上がりやすいように思います。

 膝や足首などを横から操体する場合には、ヘソを背骨に向けるのは無
理になる場合もあります。そういう場合には、ヘソを操体しているとこ
ろに向けます。受け手の体に手をかけているところにヘソを向け、しか
も、手首から先がゆとりがあるように、なるべく近づけます。

(7)おわりに

 この練習も、本当は、週1で毎回30分くらいを1年くらい続けると、
身についていきます。

 が、そこまでいかなくても、ヘソを相手の背骨に向けたり、手首から
先にユトリができる程度に近づくということの重要性がわかるだけでも
よいと思います。ですから、一度でもよいからヤジウマしてみることを
おすすめします。


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最終更新:2017年02月25日 06:21