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術伝流操体 【3】操体で一通り治療
[2]ラクになれない人への対処 (1) 対処法1.末端をラクに

末端をラクに

1.はじめに

 先回までで、操体で一通り治療する手順を説明し、その例を
4つ出しました。ラクな寝方からの連続操体をして、その後に、
仕上げとして、座位での重さの操体などしてから、手の指揉み
をするという手順です。

 その方法が上手く行くためには、受け手にラクな寝方になっ
てもらう必要があります。しかし、ラクな寝方になってくださ
いと言われても良く分からない人がいます。

 また、体が歪んでいるので違う寝方がラクなはずなのに、仰
向け大の字に近い格好で寝るのがラクだと言う人もいます。

 今回から、そういうラクな寝方になれない人への対処法を書
いて行きます。今回は、その1回目で、主に、末端を切っ掛け
にすることを書きます。

 ところで、ヒトは地球という星の上で重力の影響の下で暮ら
しています。それで、ラクな姿勢と言うのは重力の影響を受け
てもラクということに成るように思います。

 立った姿勢では、背骨を重力線の方向にしていますが、寝た
姿勢では背骨を重力線に直角にしています。

 畳などに付けた面が、重力の影響、つまり、体の重さを引き
受けることになるということです。痛みや凝りがある側を畳に
付けない方がラクな可能性が高いということを頭に入れておい
てください。

2.だらしない格好になってもらう

 仙台の今昭宏先生のように、そういう人には、

「できるだけ不真面目なダラしない格好で寝てみてください。
 皆さんは普段の生活でキチンとしたマジメな格好をし過ぎて
 疲れていることが多いのです。それで、そういう疲れを取る
 ために操体するので、操体するときには、できるだけ一見ダ
 ラシがない、不マジメに見える格好の方が疲れが取れやすい
 んですよ」

というと、本来のラクな寝方になる人もいます。

「ダラシがない格好がイヤだったら、赤ちゃんがノンビリ機嫌
 良くしている時の格好でも良いんですが」

と言っても良いです。

 でも、それでも、どう見ても窮屈そうな寝方で寝ている人も
います(写真1)。

写真1

 今回は、そういうラクな寝方に成れない人に、どうしたら少
しでもラクな寝方に近い状態になってもらえるかと言う話です。

3.末端を切っ掛けに

3.1.足の指揉みをして逃げてもらう

 今までも書いてきたように、こういうときに、先ず初めに実
行することが多いのは、足の指揉みです。

 足の指裏関節部の痼りを少し痛くして逃げてもらい、その痛
みが減る姿勢を探してもらうと、その姿勢がラクな寝方に近く
なることが多いです。

 足の指裏の痼りの特徴は、手の場合が指裏の皺の両端に有る
ことが多いのに比べると、両端だけで無くて皺の中程にも有る
ことです。足の指裏関節部の皺の部分を色々な角度で触って、
一番痛い部分を見付け、少し痛くして逃げてもらってください。

 どの足指を揉むかは、10本の足指を軽く押して調べてみて、
痼りが一番大きそうな指を選びます(写真2)。

写真2

 また、受け手の状態が分かっている場合には、そこから足指
を予測することも可能です。腰痛など背中側が辛い場合には、
4指、小指。腹など前側が辛場合には、親指、2指など。

 そうして選んだ指を少し痛くして逃げてもらいます(写真3)。

写真3

 どこまで逃げていいか分からない人の場合は、幾つか例を挙
げて選んでもらうとよいと思います(写真4、5)。

写真4

写真5

痛くする程度など、ちょっとしたコツ

 余り痛くしすぎると、どう逃げても痛くて、痛みが減る格好
が分からないなんて言うことも有ります。それで、押す力を加
減して丁度良く逃げられるよう工夫してください。 

 足の指裏を痛くしても、余り逃げないで、充分ラクな姿勢に
成ったと思えないときも有ります。そういう時には、その足の
指裏と経絡的に関係するツボを探して、そこを強めに押して少
し痛くして逃げてもらって、ラクな姿勢にな成ってもらうこと
もします。

 足甲や足首の周り、膝裏から脹脛などに出ているツボが使わ
れることが多いです。

 この場合には、胴体などのツボは余り使いません。慣れない
うちに胴体などのツボを痛くすると、逃げずに体全体を硬くし
て耐えてしまうこともあり、そうすると体を弛ませにくくなっ
てしまうからです。

3.2.五首などをラクにしてもらう

 足指は体の末端です。操体は、立位で重力負荷を受ける下半
身から整えるのを原則にしているので、ラクな姿勢を見付ける
場合も、体の末端の中では足の指を先ず始めに痛くしました。

 その次としては、体の末端の残りの部分を動かしてもらい、
よりラクな姿勢になってもらいます。

 残りの末端というと、膝、足首、手首、首、目です。首、両
手首、両足首を合わせて五首と言います。

 末端としては首と言うより頭なんですが、頭自体は首の筋肉
を使って動かしています。首の筋肉を動かしてもらうときには、
「顔をどっちに向けるとラクか」という聞き方をすることが多
いので、顔ということもできます。

顔をラクな方に向けてもらう

 試しに顔を左右に向けてもらい(写真6,7)、ラクな感じの
方を選んでもらいます。

写真6

写真7

 丁寧に言葉で誘導するなら、

「首の向きはどうですか?
 左右に捻転して、どちらが良いか、畳を見たり天井を見たり、
 臍の方を見たり、あるいは、顎を反らしたりしてみて、より
 イイ感じの向きを見付けてください」

 とか声を掛けます。が、人によっては、色々と試してみるの
を嫌がる人もいるので、そういう人には、

「右を見るのと、左を見るのと、ごちらがイイ感じですか?」

 とかにしておきます。

 どちらを見るのがイイ感じかどうかという問いかけもできま
す。が、じっくりイイ感じを味わいたいときには、目は瞑(つ
ぶ)る方が良いことも多く、そういう場合には、顔をどちらに
向けるかの方が試してもらいやすいです。

 その後に、足の位置などがラクな場所が変わる場合もあり、
そういう場合には、よりラクな位置に変えてもらったりもしま
す(写真8)。

写真8

 また、反対側の足も底屈背屈などを試してもらい(写真9)、
良い方を選んでもらいます(写真10)。

写真9

写真10

 先に反対側の足首を動かしても良いのですが、この人の場合
には、首の方が窮屈そうに見えたので、首の方から先にラクな
位置を探してもらいました。    

 右足は底屈した方が良いとのことでしたが、こういう場合に
は、右足は伸ばしたがっている可能性が高くなります。

手をラクにしてもらう

 次は、五首のうち残っている手です。

 丁寧に声掛けする場合には、

「手はそこで良いですか?
 もう少しラクにならないか、色々と動かしてみてください。
 手平も畳に向けるのと天井に向けるのを試してみてイイ感じ
 の方を選んでください」

 とかかなと思います。

 手の場合には、指先が頭の方を向いているか、足の方を向い
ているかで、手首を捻転した場合などの体への連動が逆に成る
場合が多いです。また、指先が左右どちらを向いているかでも
違うし、自分に向いているか逆かで、また違います。

 それで、事前に可能性を列挙するよりも、その場で、今、指
先が向いている方向だとどうなるか考えた方が早いです。

 ですから、足首や首が決まってから手首を決める方が簡単に
決まりやすいです。

 それに、足と首を先に決めた方が、中心である背骨がラクな
位置に決まりやすいということも関係していると思います。足
の次に手を決めた場合には、首をラクにした場合には中心であ
る背骨がラクな感じが変わるので、それに伴って、手のラクな
感じが変わりやすいということです。

 この人の場合のように、仰向けの姿勢で、手平が両方とも畳
に付いている場合は(写真11,12)、腕と胸の間の筋肉が緊張
している場合が多いです。

写真11

写真12

 それを解消するには、その部分を縮める操体をしていけば良
いのです。が、ここでは、今の時点でのラクな姿勢を決めてい
くため、それはしませんでした。

4.細かな注意点

 細かく書くと、それぞれの関節の4種八方向、つまり、左右
捻転、左右側屈、前後屈のいわゆる3軸と伸縮です。

 手首や首や左右捻転が中心です。

足首の背屈・底屈から取りやすい姿勢

 足首は、いわゆる爪先上げ、つまり、反らし(背屈)が多く、
小指か親指かどちらを中心に反らすかで、捻転が混じります。

 足首背屈の場合には、膝も曲げたい場合が多くなり、仰向け
なら、膝抱え込み(写真13)や、膝曲げ倒し(写真14)がラ
クなことが多くなります。

写真13

写真14

 足首背屈が良い場合で、横向き寝なら、膝抱え込み(写真15)
がラクなことが多くなります。

写真15

 足首背屈が良い場合で、うつ伏せ寝なら、カエル足(写真16)
がラクなことが多くなります。

写真16

 仰向けの場合には、足首を背屈しながら膝を曲げたくない場
合もあり、そういうときは、足裏を伸ばす(写真17)のがラク
なことが多いです。

写真17

 足首を伸ばす、つまり、底屈が良いと言う人もいます。

 足先の親指側を足裏側に回したがっているか、小指側を回し
たがっているかもポイントの一つです。親指側を足裏に回す底
屈がイイときには足を伸ばした方がラク、特に前側を伸ばした
(写真18)方がラクなことが多いです。

写真18

 小指側を足裏に回す底屈がイイ感じなときには、膝を少し曲
げた姿勢(写真19)が良い場合が多いです。

写真19

膝の位置、曲げ方など

 末端とは言えないかも知れないけれど、操体では、膝の位置
も重要です。

 膝は曲げと倒しが良い場合が多いです。が、倒しは、正確に
言うと、膝関節の動きでは無くて、股関節の動きです。

 曲げでは、どの位まで深く曲げたいか、どの位まで曲げると
ラクかがポイントです。

 特に、膝を倒した状態で曲げたい場合には、踵が反対側の足
のどの辺りに来るかのがラクかを調べると、体が治したい経絡
が予測可能です。それぞれ、そういう格好で上を向きやすい経
絡になります。

 踵を、反対側の足首の辺りに置くのがラクなら、足太陰です
(写真20)。

写真21

 踵が、膝の辺りなら、厥陰です(写真21)。

写真21

 踵が、大腿の脚の付け根の近くなら少陰です(写真22)。

写真22

 膝を倒さずに曲げるのがラクなときには、仰向けやうつ伏せ
では、いわゆる膝立ての姿勢(写真23,24)がラクな場合が多
くなります。

写真23

写真24

関節の伸縮

 関節の伸縮というのは、関節自体が伸びるか縮むかです。

 操体の場合には、「関節押し込み」という方法があり、縮め
る方を使う場合が多いです。周りの筋肉が緊張して硬くなって
いて関節が縮んだ状態になっているので、それを強調するのか
なと思います。

 足首や手首の捻挫の場合などに頻繁に使われますが、ラクな
姿勢を見付けるときには余り使われません。受け手に質問して
も分からないことが多いせいだと思います。

どれから試していくか?

 手、肘、足、膝、股関節、首の全部の関節の4種8方向を、
全て試してみればラクな姿勢になりやすいとは思います。が、
一々全て試していると沢山の時間が必用です。

 ラクな姿勢になってもらい、その姿勢から操体することが目
的なんで、必要な所を見分けることが大切になります。

 前にも書いたように、手は指先の向いている方向で違ってく
るので、非常に多くのバリエーションがあります。そのため、
首か足首を先に決めた方が良い場合が多いです。

 普通の人は、 普段は、 歩いたり立ったり座ったりという、
背骨を立てた状態で生活しています。そのため、その土台と成
る足首から決めた方が早くラクな姿勢になる可能性が高いです。

 そして、これも繰り返しになりますが、次には、首を決める
方が、中心である背骨が決まるせいか、手を決めた後に首や足
を決め直すことが少なくなります。

 また、動かす、つまり、変えるのが必要なのは、ラクでない
所です。ラクでない場所は、窮屈そうに見えることも多いです。
初めは分からないないかも知れませんが。

 上手くなってくると、受け手が窮屈そうな感じの場所が分か
るようになるので、そこを「**を動かしても良いですよ」と
声を掛けるだけで、動いてもらえるようになります。

 そうすると、その実演を見ている人には、操者に催眠術みた
いなものを掛けられているように見え、受け手が操者の言葉に
従って動いているように思ってしまいがちです。

 しかし、実際には、受け手も窮屈に感じている所を動かして
も良いと言われるので、動いているだけのことが多いです。

 窮屈そうな所は何処かなということを、受け手の体を観る度
に観察するようにしていくと、だんだん分かるようになってい
きます。

5.おわりに

 今回は、ラクな寝方が分からない人への対処法の1回目で、
末端から決めていく方法を説明しました。

 次回は、中心を決める方法です。

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最終更新:2017年02月25日 13:53