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術伝流操体 [2]ラクな寝方をすこし強調 (14)指先で皮膚操体、仰向け寝がラクなとき

指先で皮膚操体、仰向け寝がラクなとき

(1)はじめに

 今回は、仰向け寝がラクなときに、指先での皮膚の操体で利
用することの多いツボを紹介していきます。

(2)顔や頭のツボを使って

 顔や頭のツボに指先での皮膚の操体をする場合には、受け手
の頭の方から手を伸ばして、言葉で動きの操体を誘導すること
が多いです。が、指反らしなどを付け足す場合には、首の横の
辺りから手を伸ばした方がやりやすいです。

1.顔の横側

 顔の横側のコメカミから顎関節にかけての凹んだ所で、軽く
押して嫌な感じの所を見付けます。

 この辺りの皮膚は、皮膚に平行に比較的大きくズレやすいこ
とが多いので、一本の指先でズラすよりも、示指、中指、薬指
の3指を使って、普通の皮膚操体のように、縦横に皮膚をイイ
感じの方向に横にズラしてから、軽く捻る張り方が良いことが
多いようです(写真1)。

写真1

 しかし、ズレにくい場合や、ポイントをしぼって皮膚操体し
たい場合には、指2本使って押し手広げなどの張り方をしてみ
てもよいと思います。

 空いている手で、経絡的に相関の高い中指の指反らし(写真
2)や、前腕外側中央のライン(少陽経)を指先の方にズラす
皮膚操体を追加しても良いです。

写真2

 また、言葉が通じる人なら、言葉で指示して、膝倒しや足の
爪先上げや踵突き出しなどの動きの操体をしてもらっても良い
です(写真3)。

写真3

2.顔の正中線上

 顔の正中線上の眉間(写真4)、鼻頭(写真5)、上唇の上
(人中〔水溝〕、写真6)、下唇下(承漿、写真7)も皮膚に
平行にズレやすい(鼻の頭は動きやすい)所なので、イイ感じ
の方に皮膚を横にズラしてから、捻りやすい方に軽く捻ります。

写真4

写真5

写真6

写真7

 また、眉間は、押し手広げで、両側の眉の方に眉間を広げる
ようにする(写真8)のもイイ感じのことが多いようです。

写真8

 この辺りと経絡的に関係が深いのは拇指なので、拇指の指反
らし(写真8)を付け加えても良いですし、前腕前側(陽明経、
太陰経)を指先の方にズラす皮膚操体を付け加えても良いと思
います。受け手と相談し、イイ感じの方を選びます。

 また、言葉で指示して足の操体を付け加えても良いです。術
者が受け手の頭の方に座っている場合には、無理して腕の操体
を付け加えないで、声を掛けて足の操体をしてもらうと良いで
しょう。

3.頭のツボ

 頭の正中線、左右の目を通り正中線と平行な2つの線、耳を
通り正中線と頭の天辺で直交する線、計の4つの線の線上に凹
んだ所を見付け、押して嫌な感じの所を選びます(写真9、写
真10、写真11)。

写真9

写真10

写真11

 この辺りは、頭蓋骨に平行にはズレにくいことが多いので、
沈方向に張ってから捻りやすい方に軽く捻って皮膚を張る(写
真12)のが良いことが多いようです。

写真12

 頭のツボへ皮膚操体しているときの付け足しも、術者が頭の
方に座っていることが多いので、声を掛けて足の操体が良いこ
とが多いです。

(3)首や鎖骨

1.首の横側

 首の横側は、顎の付け根と中央の辺りにツボが出ていること
が多く、比較すると、沈方向と捻転のズラしが良いことが多い
ようです。

 付け足しは、中指・薬指の指反らし(写真13)や前腕外側
(少陽経)の皮膚操体が良いことが多いです。この場合の前腕
外寄りの皮膚操体は、少し後側(太陽経)を使うとイイ感じの
ことが多いようです。

写真13

 受け手が足をモゾモゾ動かしているようなら、声を掛けて足
の操体を誘導しても良いと思います。

2.鎖骨の周り~肩井の胸側

 鎖骨の首側というか、鎖骨と首の間の窪みに指を入れて首の
根本を押すと、痼りが見付かります。

 また、そこから少し肩の方に移動すると、肩井のツボを胸側
から押すこともできます。

 この二つは、ツボの芯の方向に深く差し入れてから捻りやす
い方にズラすのが良いことが多いようです。

 鎖骨奥の首の根元の場合は、拇指を反らす(写真14)付け足
しが良いことが多く、肩井の胸側は、肘を持ち上げ表面の筋肉
を弛めると、ツボの芯にしっかり指が届きます。

写真14

 肘を持ち上げることと同じ効果の皮膚操体でも良いです。

(4)胸

1.中府横捻り+親指(写真15)

写真15

 ここは、比較的大きくズレやすい所なので、四指の先を使っ
て、普通の皮膚操体のように、縦横に皮膚をイイ感じの方向に
横ズラししてから、軽く捻るように張る方法が良いことが多い
です。

 付け足しは、拇指や示指を反らしたり、前腕などに皮膚操体
したり、手足をイイ感じの格好に変えてもらったりします。

2.膻中

 前回も書いたように、うなされている子供に私が良く使った
のは、胸骨中央の辺りの膻中と手平中央の労宮の組み合わせで
す(写真16)。

写真16

 どちらも、その辺りで凹んだ所を選ぶのがコツです。

 膻中の方は皮膚に平行にズレやすい所なので、先ずは、皮膚
に平行なズラし方で、縦方向と横方向に皮膚に平行にズラして
みて、イイ感じの方向を見付け、その方向にズラします。それ
から、捻りやすい方に軽く捻るのを付け加えます。そういう張
り方が効果的なことが多いようです。

 この場合の縦横については、横が左右で、縦の上方向が頭の
方、縦の下方向が足先の方を指します。

 労宮は皮膚に平行にズレにくいことが多いので、「少し沈方
向に張ってから、捻りやすい方向に軽く捻るのを付け足す」…
そういう感じの張り方が効果が上がりやすいようです。

 労宮の方は、薬指を軽く反らし気味にすることに代えても良
いです。どちらも膻中と経絡的に関係しているようです。

3.肋間沈捻り+手足の操体

 肋骨の間にもツボが出ていることがあります。特に、横側の
中程の大包の辺り、鎖骨中央から少し腹側の屋翳の辺り、その
延長の腹近くの肋間の期門の辺りなどです。

 肋間は狭いので、沈方向に少し張ってから、捻りやすい方に
軽く捻るのが良いことが多いようです(写真17)。

写真17

 付け足しは、手足などをイイ感じの格好にしてもらい、経絡
的に関連する指を反らしたり、目標のツボを引っ張ることに通
じる皮膚操体を付け加えたりするのが良いようです(写真18)。

写真18

(5)腹

1.鳩尾から中脘と手足のツボ

 鳩尾から正中線上の中脘に掛けてもツボが出ていることが多
く、指を滑らせて凹んだ所を押してみて、嫌な感じの強い所を選
びます。

 ここも少ししかズレないことが多いので、沈方向と捻転の組
み合わせが良いことが多いようです。

 付け足しとしては、腕の内側中央(手厥陰)の内関、上尺沢、
同じく手厥陰の手平中央の労宮などを皮膚操体したり、指圧し
たりします。

 また、経絡的に関連する足の親指や2指を反らしたり(写真
19)、大腿の前面から外側に掛けて(太陽~少陽)が硬く凝っ
ていることが多いので、そこを拳骨で強めに指圧するのも良い
です。

写真19

2.臍の周りのツボ+手足のツボ

 臍の周りの斜め左右上下2,3cmの所にもツボが出ている場合
が多いです。

 この臍周りのツボは全身の歪みを反映していることが多く、
臍の左上は左上半身、右上は右上半身、左下は左下半身、右下
は右下半身の歪みが現れていることが多くなります。

 ここのツボは細かいので、沈と捻転の組み合わせで張るのが
良いことが多いです。

 付け足しは、対応する手足を皮膚操体したり、指圧したり、
指反らしたりします。左下のとき(写真20)は左足と組み合わ
せ、臍の左上のときには左手と組み合わせる(写真21)という
ことです。

写真20

写真21

3.横腹のツボ+膝倒し

 脇腹の肋骨と腰骨の間にもツボが出ていることが多く、肋骨
に近い側は上半身の歪みを反映し、腰骨に近い側は下半身の歪
みを反映しています。

 ここは比較的皮膚がズレやすい所なので、4指の先を差し入
れて、手平での皮膚操体のように、大きく皮膚をズレやすい方
向にズラしてから、捻りやすい方に軽く捻るのが良いようです。

 ここも関連する手足で付け足しをしても良い(写真22)の
ですが、皮膚操体している側の脇腹の方に膝倒しをするのも良
いことが多いようです(写真23)。

写真22

写真23

4.章門+上尺沢(内関、労宮)

 肋骨の腹側を、鳩尾から指を滑らして、横腹に近い辺りで凹
んだ所(章門の辺り)を見付けます。

 ここも比較的皮膚がズレやすいので、四指で皮膚操体するこ
とが多いです。

 手の内側中央の経絡(手厥陰)との組み合わせ、特に肘から
少し上腕よりの「上尺沢」と併用すると効果が出やすいようで
す。

5.五枢~維道

 腰骨の前上部から腹側を数㎝恥骨の方に滑らせ、腹側から腰
骨に押し付けるように押すと圧痛のあることがあります。

 左右同じ側の下半身の歪みを反映していることが多く、特に
女性の生理痛など瘀血証関連の歪みのあるときに多く見られま
す。

 ここは、押して痛い方向を見極め、その方向に沈の皮膚操体
をしながら捻転しやすい方に軽く捻転する張り方が良いことが
多いです。

 付け足しは、同じ側の大腿への内側への操体などとの組み合
わせが良いことが多いです。

 同じ側の大腿をラクな位置で曲げて、大腿内側が上を向くよ
うにします。

 そして、大腿内側中央(足厥陰)を押していくと、痛いツボ
が見付かります。そこを軽く押すのを組み合わせる(写真24)
と効果が出やすいです。

写真24


 また、大腿内側中央が伸びるように、大腿の皮膚を膝の方へ
ズラす皮膚操体(写真25)と組み合わせでも良いです。

写真25

 そして、大腿を伸ばした方がラクな場合には、大腿前面(足
陽明)から外側側面(足少陽)に掛けて、硬く凝っていること
が多いので、拳骨指圧を組み合わせます(写真26)。

写真26

6.関元~中極

 臍から正中線を足の方に指を滑らして凹んだ所を見付けます。

 ツボで言うと、関元や中極、また、臍下丹田とも言われる所
です。

 ここは、4指を深く差し入れて、呼吸に従って押し返してく
るかを診ます。押し返して来ないときには、生命力が衰えてい
ると判断します。漢方の「臍下不仁」の証です。

 軽く沈方向に皮膚を張り、捻りやすい方に捻るか、手平で温
めるように包み込むような皮膚操体をします。

 付け足しは、経絡的に関連する足の陰経、つまり、足の内側
(内踝側)に皮膚操体や指圧をしたり(写真27)することが
多いです。

写真27

(6)ラクな寝方の上腕大腿の延長

 ここまで、良く使うことの多い所を挙げてきましたが、ラク
な寝方で寝ている人を見て、だいたい、どの辺りにその姿勢で
体が変えたがっている所があるか、つまり、その時に体が変え
たいツボが何処に出ているかを判断する方法があります。

 今までも書いてきたように、ラクな姿勢で寝ているときの上
腕や大腿の延長方向や直交する方向に、そういうポイントがあ
ることが多いです。

 左右の上腕、左右の大腿を眺めていると、その4つの示す方
向の組み合わせから、だいたい、どの辺りがポイントか分かる
場合が多いです。

 腕が肩より下がっている場合には、上腕の延長に胴体は無い
ので、肩を通り上腕と直交する線上にツボが出ていることが多
くなります。その線上に指を滑らせて凹んだ所を見付け、押し
て痛い所を選びます。

 そのツボに指での皮膚操体をしながら、経絡的に関連する指
の指反らしを付け加えると改善しやすいです(写真28)。

写真28

 手首の捻転や背屈、上腕捻転代わりの皮膚操体、腕のツボへ
の皮膚操体や指圧でも良いこともあります。

 受け手と相談して、一番イイ感じのものを付け加えます。

 可能なら2つ3つ付け加えても構いません。

 腕が肩よりも上がっている場合には、上腕の延長に胴体が有
るので、上腕の延長にツボが出ていることが多くなります。

 見付けたツボに指で皮膚操体をしながら、腕のツボへの皮膚
操体や指圧、指反らし、手首捻転背屈などを付け加えます(写
真29)。

写真29

 写真の場合は、頭の後ろで手を組んでいるので、前腕の手首
側のツボに指圧しています。やりやすいからです。

 仰向けでラクな姿勢のときは、大腿の延長にツボが出ている
ことが多いです(写真30)。

写真30

 そのツボに皮膚操体しながら、爪先上げ(足首背屈)、足指
反らし、足のツボへの皮膚操体や指圧を付け加えます。

 大腿上面皮膚を張る感じで膝の方に皮膚をズラしたりするの
もよいです。

(7)よく使うもの

 私自身が、近頃、良く使うのは、何と言っても、ラクな姿勢
から、その時に、受け手の体が変えたがっているツボを見付け、
そこに皮膚操体するものです。

 ラクな姿勢になるように、足指を痛くして誘導して、それで
も窮屈そうな所は声を掛けてラクな姿勢を探してもらいます。

 そのラクな姿勢を眺めて、大腿と上腕の位置から判断して、
その時の格好、つまり、ラクな姿勢で受け手の体が変えたがっ
ている所を目で見て、だいたい予測して、その辺りを手で触っ
てみて凹んだ所を探して、ツボを見付けます。

 もちろん、今まで書いてきた仰向けの場合にツボが出やすい
場所や受け手の訴える症状も考慮します。

 ツボの出方には、自然の法則があるので、それと、受け手の
訴える症状や受け手のラクな姿勢を組み合わせてみると探しや
すいです。

 ツボの出方に興味のある人は、「鍼術覚書」の「ツボ」の
「ツボの出方の自然則」を読んでみてください。

 そのツボの出ている場所が、大きくズレるようなら、手平や
四指(三指)で皮膚操体します。小さくしかズレないようなら、
1,2本の指を使ってツボの上の皮膚を張る操体をします。

 また、ピンポイントで効果を出したい場合にも、指先での皮
膚操体の方を使います。

 そして、手足のツボへの皮膚操体や指圧按摩を組み合わせた
り、動きの操体を組み合わせたりします。

 動きの操体は、言葉で誘導することも多いです。

 皮膚操体や按摩指圧で使う手足などのツボは、

①経絡的関連:臍より上なら、手が候補
       横隔膜より下なら、足が候補
       横隔膜から臍までは、手足両方が候補

②左右上下対角対称点

③動作時連動筋肉内

などを考慮して選ぶことが多いです。

(8)おわりに

 もっと細かくツボの解説をした方が良いのかも知れませんが、
長くなりましたので、ひとまず終えて、次回は、うつ伏せでの
指先での皮膚操体を解説します。


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最終更新:2016年08月30日 05:53