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術伝流操体no.2 腰痛に横向き寝からの操体

[1]応急処置から学ぶ操体の基本  (2)腰痛に横向き寝からの操体

1.はじめに

 定番の操体は、仰向けやうつ伏せの寝方からはじめるものばかりです。
ところが、腰痛の人は、仰向けやうつ伏せで横になるのがつらい人が多
いです。

 ぎっくり腰の人のなかには、横向きで丸まった形以外は取れない人も
たくさんいます。また、腰の真ん中あたりが痛い人には、横向きにもな
れずに、丸めた布団に抱きつくように丸まった姿勢で固まっている人も
います。

 ですから、臨床の場ではそういう姿勢からでも始められるような操体
が必要になるわけです。

 今回は、腰痛の人にいちばん多い痛い側を上にした横向き寝で丸まっ
た姿勢からの操体を紹介します。実際にぎっくり腰で寝返りも打てない
人にもしてきて好評を得ている方法です。

 ぎっくり腰でなく他の症状の場合でも、ラクな姿勢が横向きである場
合には、そのまま使って効果が出せる方法なので、いろいろ試してヤジ
ウマしてみてください。

2.横向き寝からの操体の手順

1)ラクな横向きで寝てもらう

 痛い側を上にした横向きで寝てもらいます。

 もちろんそれがラクにできない場合は、これから説明する方法は、で
きません。痛い側を上にした横向き寝がラクだった場合にします。

(1) 指裏のしこりを痛くして逃げてもらう

 腰痛の人は、症状が重くてもけっこうがんばって無理をしているので、
そのとき寝ている姿がいちばんラクかというとそうでない場合もありま
す。たとえば、写真1のように寝ていることも多いです。

写真1

 ラクな姿勢か確かめるためには、上になっている足の小指や第4指の
指裏関節部の端にあるしこりを押してみます(写真2,3)。

写真2

写真3

 そうすると、痛くてがまんできないため、膝を曲げて逃げ出します。
そのまま手をはなさずにしこりを押してもあまり痛くない位置まで逃げ
てもらいます(写真4)。

写真4

 たいていの場合、胴体と大腿が120度前後の位置まで逃げると、指裏
のしこりが痛くなくなります。かなり下半身を丸めた状態です。

 本来は、この姿勢がいちばんラクな姿勢なのだと思います。丸くなっ
たほうがラクなのに無理して足を伸ばしていたのかなと思います。

(2) 指裏しこりは、骨がすこし太くなった感じ

 指裏のしこりは、指裏の関節部のシワの両端にあることが多く、直径
3mmぐらい、シジミの貝殻の片方みたいな形で、表面がツルツルして
いて骨にくっついているので、骨がすこし太くなった感じを受けます。

 腰痛の場合には、足小指の第4指よりと、第4指の小指よりにあること
が多いです。

 押すと痛いのですが、麻痺してしまっていて、しばらくもんで、よう
やく痛みが出てくる人もいます。

 操者の指先よりも手指関節の横側でもんだほうがもみやすいです。

2)イイ感じを探す〜お尻を膝のほうに動かす

 こういう痛い側を上にした横向き寝で丸くなった場合には、指裏のし
こりが痛くなくなるまで逃げてもらうと、上になっている足の膝が、下
になっている足の膝よりも前に出る場合がほとんどです(写真5)。

写真5

 したがって、ここではその状態からの操体を解説します。

 その姿勢からイイ感じを探していくわけですが、イイ感じを探すコツ
は「その姿勢をすこし強調する」ことです。このあたりが操体らしいと
ころです。

 普通の方法は、歪んでいる姿勢を元に戻そうとする動きをきっかけに
することが多いわけですが、そういう動きがつらいからこんな姿勢になっ
ているわけで、そういう動きは痛いことが多いです。

 私の次男も、リハビリでのそういう動きを痛がって逃げ回っていまし
た。

 そういう動きと逆に、その姿勢をすこし強調するとイイ感じがするこ
とが多いです。

 さて、痛い側を上にした横向きで下半身を丸めて上の膝が前に出てい
る姿勢を強調するにはどうしたらよいでしょう。もっと丸めたらとか、
膝をもうすこし前に出したらとかいろいろ考えられると思います。

 たくさんの人にいろいろヤジウマさせてもらってイイ感じを探してき
たのですが、今のところ、もっとも好評なのが、お尻を膝のほうに動か
すことです(写真5)。9割ぐらいの人にイイ感じが増えるようです。

写真5

 こうすると膝が前に出ていることがすこし強調されます。

 手がすべらないように操者の掌底を大転子か腰骨にあて、ゆっくりと
お尻の上の部分を膝のほうへ、すこし、そう3cmほど動かしてみます。

 受け手の人が言葉の通じる人ならイイ感じがするか聞いてみます。イ
イ感じがするなら続けます。

 わからない場合や、言葉の通じない人の場合は、つらくないようなら
しばらく続けてみます。

 お腹に息が深くはいっていくようになら、体は気持ちよさを感じてい
ることが多いです。

 操体にかぎらず按摩でも指圧でも鍼灸でも、そのときしていることが
体に合っていれば自然に深い腹式呼吸になります。この息を読めれば、
つまり目で見て手でさわって判断できれば、いましていることが適切か
どうかを判断できます。

 読めない人は、じっくり練習して読めるようになりましょう。

3)イイ感じを付け足す〜肩は2通り

 ラクな姿勢からイイ感じが1つ決まったら、ほかにイイ感じがないか
探して、見つかったら付け加えます。

 腰痛で横向き寝の場合には、肩の動きを付け加えるとイイ感じが深く
なることが多いです。

 ただ、下半身とちがって9割こうだというのはなくて大きく分けて、
2通りになります。

 体全体で見ると、捻れていくタイプ(写真6)と丸まっていくタイプ
(写真8)です。

 その2つのタイプのどちらか判断するには、肩を軽く前後に動かして
みます。肩が胸側に動きやすいなら丸まるタイプ、肩が背中側に動きや
すいなら捻れていくタイプです。

 言葉の通じる人にはどちらがイイ感じか確認してみてください。

(1) 捻れていくタイプ(写真6)

写真6

 捻れていくタイプの場合には、腕を大腿と平行に背中側に伸ばすか、
肩を通り大腿の延長線と直行する線上の背中側に伸ばすかすると、イイ
感じが深くなることが多いです。

 そして、大腿と直行するほうに腕を伸ばした場合には、その手の小指
側を手のひら側にすこしねじると、もうすこしイイ感じが深くなること
が多いです(写真7)。

写真7

 言葉の通じる人には声をかけて、わずらわしくなければ自分ですこし
捻転してもらうのもよいと思います。ついでに首もねじりやすいほうに
ねじってもらうともうすこしイイ感じが深くなるでしょう。

 受け手の人には言葉をたくさんかけてほしい人と、できるだけ黙って
いてほしい人がいます。

 そのあたりの判断も臨床の場では大切になります。声をかけてほしがっ
ていない場合には、できるだけ言葉を少なくして操体できる腕を身に付
けましょう。

(2) 丸まっていくタイプ(写真8)

写真8

 丸まっていくタイプの場合には、肩をすこしお腹よりに動かすとイイ
感じが深くなることが多いです(写真8)。

 また、手を肩甲間部に移し、背中の丸みをすこし強調する感じで肩甲
間部を押すとイイ感じが深くなる人もいます(写真9)。

写真9

 声をかけても大丈夫そうなら、目をお腹のほうにむけてもらったり、
手の小指側を手のひら側にまわしてもらったり、足の甲をすこし反らし
てもらったり(爪先上げ)すると、イイ感じが深くなりやすいと思いま
す。

4)十分イイ感じを味わう

 イイ感じが深くなったら、十分に、そのイイ感じを味わってもらいま
す。

5)姿勢を変えたくなったら終わり

 どちらのタイプも姿勢を変えたくなったら、その操体を終わりにしま
す。

 イイ感じが消えたり、お腹の息が浅くなるのも目安になりますが、姿
勢を戻したくなるというのが、いちばんわかりやすいと思います。

 言葉の通じない人の場合には、押している操者の手のひらに受ける圧
で判断します。

 腰や肩を動かしている手が引き込まれるように感じるときは、もうす
こし余分に動かすか、もうすこし続けてほしいということです。

 手を戻そうとする圧を感じたときには、すこし動かしすぎているので
ほんのすこし戻したほうがよいか、その操体を終わりにしたくて姿勢を
変えたいときです。

 なれてきたら、手のひらに感じる圧を判断基準にすると、1つの操体
をしている最中も刻一刻と変わっていく受け手の人の体の要求に合わせ
ていくこともできるようになります。

3.仰向けやうつ伏せになれたら定番操体や按摩・指圧

 この操体でぎっくり腰など腰痛がだいぶ良くなるので、仰向けやうつ
伏せになれるようになることがおおいです。なれたら、その姿勢での定
番操体をしてもいいし、按摩や指圧をしてもいいと思います。

 なれてくれば、今回紹介した操体をしながら按摩や指圧ができるよう
になります(写真10)。

写真10

 膝で腰を膝のほうに動かし、片手で肩を動かし、空いている手で、上
になった大腿側面や膝裏からふくらはぎを指圧や按摩したりもできます。

 起き上がって動けるようならいろいろ動いてもらい、可動域制限が残っ
ているようなら、それを改善する操体をしていきます。それは次回に説
明します。

4.この操体がイイ感じしないなら

 この操体がイイ感じがしない人には、いろいろ試してイイ感じを探し
ていけばいいと思います。

 たとえば、膝をお尻のほうに動かすのがイイ感じの人の場合には、姿
勢がすぐに変わって、仰向けに近い格好や、逆向きの横向きになったり
する人が多いです。

 ただ、まずは、いちばん多いタイプをしっかり身に付けたほう
が臨床の場で効果を上げやすいと思います。

 少ないタイプもある程度まとめてあるので、機会があれば解説します
が、それよりもいろいろなタイプに共通する操体の自然則を先に身に付
ければ、めずしいタイプのイイ感じもある程度予測できるので、術伝流
操体を解説しながら、操体の自然則も解説していきたいと思っています。

5.今回の操体は定番操体を横向き寝にしただけ

 今回紹介した操体は、実を言うと、有名な定番操体を横向きにしたも
のです。わかりますか? 

 捻れていくタイプは、仰向け膝たおし(農山漁村文化協会刊『万病を
治せる妙療法 操体法』40ページ)(写真11)を横向き寝にしたもので
す。

写真11

 仰向けでベッドなどに背中をつけた姿勢から、膝と胴体の角度を変え
ずに、背中を上げて大腿側面をベッドなどにつけた姿勢に変わっている
だけです。

 丸まるタイプは本にはのっていませんが、仙台の今昭宏先生が一般む
け講習会のはじめによくする仰向けからの膝の抱え込み(写真12)を横
向きにしたものです。

写真12

 このように、定番の操体のタワメの間の形をいろいろな寝方でしてみ
ると、ある特定の姿勢がラクな人に効果的な操体を作っていくことがで
きます。

6.横向き寝がラクならいろいろな症状に効く

 今回紹介した操体は、ぎっくり腰でなく他の症状の場合でも、ラクな
寝方が横向きのときには、そのまま使って効果が出せる方法なので、い
ろいろ試しヤジウマしてみてください。

 たとえば、以前に、障害が重くて片方を下にした横向きでしか寝ない
人がいました。家族や医療関係者がいろいろ反対向きに寝かせようとし
てもすぐ同じ向きになってしまうとのことでした。

 その人に今回紹介した操体を試みたところ、丸まるタイプでした。

 数分してみて手のひらに押し返す感じを受けて終わりにしました。し
ばらくしたら、自分で反対側を下にした横向き寝になりました。

7.操体の基本手順

 今回書いた以下の手順は、ほかの姿勢でも同じです。

(1)ラクな姿勢になってもらう
(2)目立つところをすこし強調してイイ感じを探す
(3)ほかにイイ感じがないか探し、あったら付け足す
(4)息が深くなったら続け、イイ感じを味わう
(5)姿勢を変えたくなったら終える

8.1人で行う方法

 今回の操体は1人でもできます。

 ラクな寝方が横向きなら、膝をすこしお腹のほうによせ、上になった
大腿の上に座布団1,2枚乗せ、手を後ろに伸ばしたいようなら伸ばして
体を捻ってイイ感じを探し、手を前にしたほうがよければ、少しうつむ
いてイイ感じを探していけばよいのです。

9.おわりに

 次回は、上にも書いたように、腰の動作制限に効果のある操体です。


   つぎへ>>>術伝流操体no.3



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最終更新:2010年08月21日 11:22