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累積:&counter()___ 昨日:&counter(yesterday) ___今日:&counter(today) ------ 術伝流操体・ラクな寝方をすこし強調 (3)仰向け膝立てない姿勢から動きの操体 &bold(){&size(24){&color(green){仰向け膝立てない姿勢から}}} &size(9){ } &bold(){&size(24){&color(green){  動きの操体}}} ------ #contents *1.はじめに  先回は、仰向け膝立ての姿勢から動きの操体を説明しました。今回は、 仰向け寝で膝を立てない姿勢からの動きの操体です。 *2. 仰向け膝立てない姿勢から、足をきっかけに  膝を立てない状態の方がラクな姿勢の場合の動きの操体で、まずは、 足をきっかけにするものから。  じつは、実際の臨床の場で、ラクな姿勢を強調するアプローチで操体 をしていく場合には、はじめの姿勢は、横向きかうつ伏せになることが 多く、そういう姿勢から操体をして仰向けになった場合には、膝裏など のシコリは取れてしまっていることが多くなり、仰向けになった場合に 膝立てのほうがラクということは少ないようです。  膝裏にシコリがあるので、そこを縮ませるのがラクだから、膝立てが ラクな姿勢になるのだと思います。  考えてみれば、仰向け膝立てというのは、そんなに自然な姿勢ではな いのかもしれません。  仰向け膝立てから操体をしていくと、横向きにちかい姿勢になったり、 途中でうつ伏せになったりすることがよくあることから考えても、本来 は、横向きやうつ伏せのほうがラクなのかもしれません。 **1.足の曲げ具合と治したい経絡  足を片方だけ伸ばして、片方は立てないけれど曲げた姿勢がラクとい うのは、よく見かけます。  これは、経絡的に見るととても面白い現象で、曲げている足の曲げて いる角度によって、体が、いま治したがっている経絡がほぼ予測できま す。  踵が反対側の足の足首近くのときは足太陰(写真12)、踵が膝近くの ときには足厥陰(写真13)、踵が大腿付け根近くのときには足少陰(写 真14)である可能性が高くなります。 &ref(so13p12h.jpg)写真12 &ref(so13p13h.jpg)写真13 &ref(so13p14h.jpg)写真14  それぞれ、そういう姿勢で伸ばしたがっている部分の経絡を治したがっ ている可能性が高いわけです。  この場合にも、もちろん曲げている足の膝裏にもシコリはあると思い ますが、同じ膝裏ちかくでも足の曲がり具合によって、上に書いた治し たがっている経絡上にツボやシコリが出ている可能性が高くなります。 **2.曲げている足の上側を伸ばす  こういう片足曲げて、片足伸ばしている場合には、曲げているほうの 足の伸ばしたがっているライン(とくに、大腿部)をより伸ばす操体が イイ感じなことが多いです。  膝を床などに近づけたり(写真15)、踵を少し持ち上げたり(写真 16)、踵が持ち上がっていくような足首捻りをしたりです。 &ref(so13p15h.jpg)写真15 &ref(so13p16h.jpg)写真16  そういう強調を少しして、息が深くなったり、イイ感じが増えていく ようなら、もう片方の足や手、首などをイイ感じが深まるようにゆっく り動かしてもらいます。  辛かったりしたら止めます。もう片方の足は伸ばしたり、伸ばすのが ラクになるように足首を捻ると気持ち良さが深くなる可能性が高いです。  両手を胴体の横に置いている場合には、足を曲げている側の手は、小 指が手の平側に回る手首捻転、反対側の手は小指が手甲の側に回る手首 捻転で気持ち良さが深くなる可能性が高いですが、手の場合には、おい ている位置や方向によって変わることがあるので、目で見て窮屈な感じ がないか確かめながら、言葉の通じる方なら会話で確かめながら、気持 ち良さが深まるようにしていくとよいでしょう。  受け手は強調しているところを支えにして動いていきますから、強調 しているところが緩んだり、逆に強過ぎたりしないように、ヤジロベエ 感覚でちょうどよい状態を保つように注意してください。  受け手が気持ち良さを感じられなくなったり、腹へ深くはいっていた 息が普通に戻ったり、受け手が大きく姿勢を変えたり休みたくなったり したら終わりにしてよい合図です。  受け手にそのとき感じられるラクな寝方で休んでもらいます。臨床の 場では、そのラクな寝方を強調する次の操体に移ります。  また、仰向けに寝て足を両方とも曲げて倒した姿勢がラクな方には、 片足ずつ、大腿部上側を伸ばすことをきっかけにする操体をします。  足の曲げ具合が両方同じで足の裏を合わせるように近づけている人に は、両方同時にやった方が気持ち良いという人が多いようです(写真 17)。 &ref(so13p17h.jpg)写真17  この操体を一人でするときには、曲げている足の踵の下に座布団をた たんだものやクッションを入れて少し持ち上げます(写真18)。 &ref(so13p18h.jpg)写真18  また、尻を少し高くしてから膝に座布団2〜3枚や毛布をたたんだもの などを乗せてもよいと思います。  反対側の足や首や手をイイ感じになるようにゆっくり動かして気持ち 良さが深くなるように工夫します。 **3.足を伸ばしていても  どちらか曲げて、どちらか伸ばしていればすぐにわかりますが、初め は両方とも伸ばしていることのほうが、操体に慣れていない人には多い です。  こういう場合でも前回(no.13の「 2.仰向けから足をきっかけに」 の項目中の「1)足を伸ばすか膝立てか」で書いた方法で、とくに足先 を同じ力で動かしてみて動きやすいところが親指側だったときには、 足はほんとうは曲がりたがっていることになります。  足の親指と第2指の間の水掻きをつまんだり、足の親指裏のシコリを つまんで、少し痛くして逃げてもらうといくらか逃げたところでシコリ の痛みが少なくなります。そのときの曲げ具合が、そのときの体にとっ てラクな姿勢であることが多いです。  その姿勢から、曲げている足の大腿部上側を伸ばす操体をすると、気 持良さを味わってもらえることが多いです。 **4.伸ばしている足を伸ばす  次は、足を伸ばしたがっている場合です。足先を同じ力で動かして小 指側がよく動く足は伸ばしたがっています。  定番の操体では、仰向けで足を伸ばしている姿勢からは、足首のとこ ろで足の長さを比較して、長い方の足の踵を受け手に突き出してもらい、 操者がそれに抵抗するという方法でします。  ラクな寝方を強調する方法では、より伸ばしているように見える足を 操者が引っぱることをきっかけにします。  伸ばし方には、定番と同じように踵を突き出すように伸ばす方法と、 足の親指を足裏側に回す足首捻転をしながら伸ばす方法があります。踵 を突き出す方は足裏を伸ばすことになり、足首捻転をしながらの方は足 の表側(腹側)を伸ばすことになります。  どちらがよいかは、受け手に聞いてみてもよいですが、言葉の通じな い人の場合には、足首を立てている感じのときは踵突き出しがよいこと が多く、足首が寝ている感じのときは足首捻転のほうがよいことが多い です。  また、かるく足を反らしてみた感じとかるく捻ってみた感じをくらべ てみる動診をしてもわかります。かるい力で動くほうがよいことが多い 、つまり、かるい力で動くほうが受け手の体がしたがっているほうです。 **5.足裏を伸ばす  踵を突き出すように足を引っぱる場合には、まず踵の下に手を入れて かるく引っ張りながら少し横に動かして、どの方向が引っ張りやすいか 調べます。  足裏を伸ばす場合には、高さは床にスレスレがよいことが多いので、 おもに、胴体との角度を閉じ気味にするか開き気味にするかで方向を決 めていきます。  足が胴体から抜けてくるような感じのところがよいことが多いです。  言葉の通じる人には2つか3つの方向をいって、一番イイ感じのする方 向を決めてもらうとよいと思います。  方向が決まったら、少し足首を反らす方向で足首を決めてから踵の骨 に手の小指側を引っかけるように当てて、足裏を伸ばします(写真19)。 &ref(so13p19h.jpg)写真19  小指側を反らしたほうがよいときと親指側を反らしたほうがよいとき があります。言葉の通じる人なら両方試して聞いてもよいですが、少な い力で反らせられるほうがよいことが多いです。  気持ち良さが感じられたり、腹に息が深く入るようなら続けます。辛 かったりしたら止めます。  このときにも注意する点は同じで、反らしている踵の反り具合をヤジ ロベエのように釣り合った状態に保つことです。  長くなっても疲れないように足首に当てている操者の手が床について いるようにします。  反対側の足や両方の手や首を気持ち良さが深くなるようにゆっくり動 かしてもらいます。赤ちゃんなどには、操者の反対側の手で、反対側の 足や届くほうの手を動きやすいほうに動かしてあげます。  気持ち良さを感じられなくなったり、腹の息が普通に戻ったり、大き く姿勢を変えたくなったり休みたくなったりしたら終わりにしてよい合 図です。  受け手にそのとき感じられるラクな寝方で休んでもらいます。臨床の 場では、そのラクな寝方を強調する次の操体にいきます。 **6.足表を伸ばす  足の表側を伸ばす場合には、胴体との角度だけでなく足の床との高さ も関係してきます。  足首を親指が足裏側の回るように軽く捻って固定し、まず、横、左右 に動かして引っ張りやすい方向を決めます。  次に、床スレスレがよいか少し持ち上げたほうがよいか足を引っぱる 高さを決めます。  このときに、大腿の方向の延長線上に体が治したがっているところが あることが多いです。  肩が辛い場合には床スレスレの高さになりますし、腰が辛い場合には、 3〜40cmくらいの高さになります。また、伸ばしている足と同じ側が 辛い場合には閉じ気味になり、反対側が辛い場合には開き気味になりま す。  足首を捻る程度をヤジロベエの釣り合った状態に維持しながら、決め た方向に足を引っ張ります(写真20)。 &ref(so13p20h.jpg)写真20  気持ち良さが感じられたり、腹に息が深くはいるようなら続けます。 辛かったりしたら止めます。反対側の足や両方の手や首を気持ち良さが 深くなるようにゆっくり動かしてもらいます。  気持ち良さを感じられなくなったり、腹の息が普通に戻ったり、大き く姿勢を変えたくなったり休みたくなったりしたら終わりにしてよい合 図で、受け手にそのとき感じられるラクな寝方で休んでもらいます。  以前は、この操体をよくしていたのですが、けっこう長いこと気持ち 良さが続き操者がくたびれてしまうので、このごろは大人にはあまりし ません。これと同じ効果のある皮膚の操体をすることのほうが多いです。 皮膚の操体のところで説明します。 *3.仰向けから、首をきっかけに  さて次は、仰向けから首を動かすことをきっかけにする操体です。 **1)動かしやすいほうに動かす  まず、首がほんの少しでも横に傾いていないか捻れていないか観察し ます。言葉の通じる人なら首をあちこち動かして動かしやすい方向を決 めてもらってもよいです。  受け手の頭のほうに座り、操者の両手を受け手の首の下にいれて手の ひらで後頭部をつつむようにしてから、ゆっくり決めた方向にほんの少 し余分に動かしていき、軽い力では動かなくなったところで止めます (写真21)。 &ref(so13p21h.jpg)写真21  その状態をヤジロベエの釣り合った状態に保ちながら、両手両足をイ イ感じのするほうに動かしてもらい、気持ち良さが深くなる姿勢を探し てもらいます。辛かったりしたら止めます。続けたい気持がしたり、腹 の息が深くなったら続けます。  気持ち良さを感じられなくなったり、腹の息が普通に戻ったり、大き く姿勢を変えたくなったり休みたくなったりしたら終わりにして、受け 手にそのとき感じられるラクな寝方で休んでもらいます。 **2)首のシコリに指を当てながら  首にシコリがある場合には、基本的にそのシコリのあるところがもっ とも縮むような方向が効果が出やすい方向になります。首を触って、シ コリがわかれば自然に方向は決まってきます。  逆に、方向が決まったら、そのとき首の姿勢でもっとも縮むラインの もっとも縮もうとしているところを探ると、奥のほうにシコリが見つか ると思います。  そのシコリにかるく温めるような感じで指の腹を当てながら、首を動 かしてもらうと、いくらか動かしたところで急にシコリがフッと消えま す。膝裏のときと同じで、緊張してくる筋肉のなかに埋没するように消 えていきます。  そのときがちょうどよい動かし具合のところで、そのままタワメの間 に入っていきます。ですから、シコリに指が当てられると確実に効果が 出せるようになります。  シコリの探し方を身に付けましょう。  首のシコリは、まず、鎖骨の首側のくぼみに肩のほうから中指を入れ て、首の根元に押しつけるように押して痛いところを探します。そして、 そこから顎のほうに筋肉の溝をたどっていき、ヘコんだ感じのところを 押してみて痛くて、奥が硬くなっているところを見つけます。  首の後ろ側は、後頭骨下縁の首側を探って、ヘコんで奥が硬いところ を見つけ、そこから背中のほうに筋肉の溝をたどっていき、ヘコんで奥 が硬く押して痛いところを見つけます。  いくつか痛いシコリが見つかったら、その中でいちばん痛かったり、 イヤな感じのするシコリを選びます。  同じくらいのシコリが二つあったら、表面がズブズブしているシコリ をまず選びます。ズブズブしているシコリの方が古い可能性が高く、古 いシコリをゆるめたほうが少ない時間で効果が上がる可能性が高いから です。  選んだシコリに指を当てながら首の操体をしていると、膝裏の場合と 同じように、そのまわりが温かくなったり、脈を打つようにドキドキし てくることがよくあります。シコリやそのまわりの筋肉の血の流れがよ くなったためで、しばらくするとシコリがゆるんでいきます。  シコリがいくつかあったときには、次にイヤな感じのするシコリを選 んで、シコリに指を当てて、その部分が縮むような動きをきっかけにす る操体をしていきます。 **3)首の操体は首から上の症状に効く  橋本敬三先生が書かれているように、首の操体は首から上の症状に効 果があります。首から上の症状があったら、試しにやってみるとよいと 思います。症状の出ている患部を触らないでも、意外な症状にも効きま す。  先日も、顎関節症の人にかるく足もみ足ゆらしをしたあと、首の操体 をしたら、それだけで、顎関節症がなくなっていました。  ただし、下半身の歪みがひどいと消えにくいし戻りやすいので、下半 身の歪みを取ってから、とくに、膝裏のシコリを取ってからするとよい と思います。  でも、ラクな寝方を強調するアプローチの場合には、言葉の通じる人 なら、首のシコリに指を当てて首をすこし曲げたり捻ったりした状態か ら、声をかけて、膝たおしや足首そらし、踵つきだしなどの中からイイ 感じのする動きを選んで、その操体をしてもらうこともできます。  そうすると、首のシコリに関係する下半身の歪みは消えやすいので、 それだけで、効果が出ることが多くなります。  とくに、操体に慣れている人で辛い症状が首から上の場合には、仰向 けに寝てもらってすぐに、首のシコリに指を当てて首の操体をしながら 足の操体をしてもらうと、それだけで、辛い症状が消えることがよくあ ります。  これは、首のシコリに指を当てていると、下半身の動きの操体がうま く決まりやすいためだと思います。  そんなわけで、言葉で書くと簡単だし、練習もそんなに大変ではなく、 簡単に感じるかも知れませんが、シコリの見つけ方や曲げ具合、捻り具 合、ヤジロベエ感覚、声のかけ方などをしっかり身に付けて、また工夫 していきましょう。そうすれば、思いがけないほど効果が上げられます。 *4.おわりに  前回の前編と今回の後編の2回にわたって、仰向けからの動きの操体 をラクな寝方を強調するという視点から解説しました。  次回は、仰向けがラクな寝方の場合の皮膚の操体と重さの操体です。 皮膚の操体では、今回の動きの操体とほぼ同じ効果の皮膚の操体を取り 上げていきます。    つぎへ>>>[[術伝流操体no.15]] ------ *お知らせとお願い **術伝流鍼灸操体講座で患者さん役を募集  術伝流鍼灸操体講座は、実践面を重視しています。実際に症状が出て いる方の治療を見たほうが勉強になります。そこで、講座で患者さん役 をしてくださる方を募集しています。  くわしくは、[[術伝流のモデル]]をみてください。  症例を少しずつ増やして、ゆくゆくは深谷先生の「お灸で病気を治し た話」の写真入り版のような感じにしていきたいと思っています。  よろしくお願いします。 **感想など  感想などありましたら、[[「術伝」掲示板>http://jutsuden.bbs.fc2.com/]]に書いてください。  また、「術伝」掲示板でも、旧掲示板「養生の杜」と同じように、 養生についての雑談や症例相談などもしていきたいと思っています。  よろしくお願いします。 **間違いなど  間違いなど見つけた方は、[[術伝事務局>jutsuden-jmkk@yahoogroups.jp]]あてにメールをください。  よろしくお願いします。 **「術伝」症例相談用メーリングリストの参加者募集  「術伝」では症例相談用メーリングリスト( [[術伝ML(muchukand)>http://groups.yahoo.co.jp/group/muchukand/]])の 参加者を募集しています。  よろしくお願いします。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
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 それぞれ、そういう姿勢で伸ばしたがっている部分の経絡を治したがっ ている可能性が高いわけです。  この場合にも、もちろん曲げている足の膝裏にもシコリはあると思い ますが、同じ膝裏ちかくでも足の曲がり具合によって、上に書いた治し たがっている経絡上にツボやシコリが出ている可能性が高くなります。 **2.曲げている足の上側を伸ばす  こういう片足曲げて、片足伸ばしている場合には、曲げているほうの 足の伸ばしたがっているライン(とくに、大腿部)をより伸ばす操体が イイ感じなことが多いです。  膝を床などに近づけたり(写真15)、踵を少し持ち上げたり(写真 16)、踵が持ち上がっていくような足首捻りをしたりです。 &ref(so13p15h.jpg)写真15 &ref(so13p16h.jpg)写真16  そういう強調を少しして、息が深くなったり、イイ感じが増えていく ようなら、もう片方の足や手、首などをイイ感じが深まるようにゆっく り動かしてもらいます。  辛かったりしたら止めます。もう片方の足は伸ばしたり、伸ばすのが ラクになるように足首を捻ると気持ち良さが深くなる可能性が高いです。  両手を胴体の横に置いている場合には、足を曲げている側の手は、小 指が手の平側に回る手首捻転、反対側の手は小指が手甲の側に回る手首 捻転で気持ち良さが深くなる可能性が高いですが、手の場合には、おい ている位置や方向によって変わることがあるので、目で見て窮屈な感じ がないか確かめながら、言葉の通じる方なら会話で確かめながら、気持 ち良さが深まるようにしていくとよいでしょう。  受け手は強調しているところを支えにして動いていきますから、強調 しているところが緩んだり、逆に強過ぎたりしないように、ヤジロベエ 感覚でちょうどよい状態を保つように注意してください。  受け手が気持ち良さを感じられなくなったり、腹へ深くはいっていた 息が普通に戻ったり、受け手が大きく姿勢を変えたり休みたくなったり したら終わりにしてよい合図です。  受け手にそのとき感じられるラクな寝方で休んでもらいます。臨床の 場では、そのラクな寝方を強調する次の操体に移ります。  また、仰向けに寝て足を両方とも曲げて倒した姿勢がラクな方には、 片足ずつ、大腿部上側を伸ばすことをきっかけにする操体をします。  足の曲げ具合が両方同じで足の裏を合わせるように近づけている人に は、両方同時にやった方が気持ち良いという人が多いようです(写真 17)。 &ref(so13p17h.jpg)写真17  この操体を一人でするときには、曲げている足の踵の下に座布団をた たんだものやクッションを入れて少し持ち上げます(写真18)。 &ref(so13p18h.jpg)写真18  また、尻を少し高くしてから膝に座布団2〜3枚や毛布をたたんだもの などを乗せてもよいと思います。  反対側の足や首や手をイイ感じになるようにゆっくり動かして気持ち 良さが深くなるように工夫します。 **3.足を伸ばしていても  どちらか曲げて、どちらか伸ばしていればすぐにわかりますが、初め は両方とも伸ばしていることのほうが、操体に慣れていない人には多い です。  こういう場合でも前回(no.13の「 2.仰向けから足をきっかけに」 の項目中の「1)足を伸ばすか膝立てか」で書いた方法で、とくに足先 を同じ力で動かしてみて動きやすいところが親指側だったときには、 足はほんとうは曲がりたがっていることになります。  足の親指と第2指の間の水掻きをつまんだり、足の親指裏のシコリを つまんで、少し痛くして逃げてもらうといくらか逃げたところでシコリ の痛みが少なくなります。そのときの曲げ具合が、そのときの体にとっ てラクな姿勢であることが多いです。  その姿勢から、曲げている足の大腿部上側を伸ばす操体をすると、気 持良さを味わってもらえることが多いです。 **4.伸ばしている足を伸ばす  次は、足を伸ばしたがっている場合です。足先を同じ力で動かして小 指側がよく動く足は伸ばしたがっています。  定番の操体では、仰向けで足を伸ばしている姿勢からは、足首のとこ ろで足の長さを比較して、長い方の足の踵を受け手に突き出してもらい、 操者がそれに抵抗するという方法でします。  ラクな寝方を強調する方法では、より伸ばしているように見える足を 操者が引っぱることをきっかけにします。  伸ばし方には、定番と同じように踵を突き出すように伸ばす方法と、 足の親指を足裏側に回す足首捻転をしながら伸ばす方法があります。踵 を突き出す方は足裏を伸ばすことになり、足首捻転をしながらの方は足 の表側(腹側)を伸ばすことになります。  どちらがよいかは、受け手に聞いてみてもよいですが、言葉の通じな い人の場合には、足首を立てている感じのときは踵突き出しがよいこと が多く、足首が寝ている感じのときは足首捻転のほうがよいことが多い です。  また、かるく足を反らしてみた感じとかるく捻ってみた感じをくらべ てみる動診をしてもわかります。かるい力で動くほうがよいことが多い 、つまり、かるい力で動くほうが受け手の体がしたがっているほうです。 **5.足裏を伸ばす  踵を突き出すように足を引っぱる場合には、まず踵の下に手を入れて かるく引っ張りながら少し横に動かして、どの方向が引っ張りやすいか 調べます。  足裏を伸ばす場合には、高さは床にスレスレがよいことが多いので、 おもに、胴体との角度を閉じ気味にするか開き気味にするかで方向を決 めていきます。  足が胴体から抜けてくるような感じのところがよいことが多いです。  言葉の通じる人には2つか3つの方向をいって、一番イイ感じのする方 向を決めてもらうとよいと思います。  方向が決まったら、少し足首を反らす方向で足首を決めてから踵の骨 に手の小指側を引っかけるように当てて、足裏を伸ばします(写真19)。 &ref(so13p19h.jpg)写真19  小指側を反らしたほうがよいときと親指側を反らしたほうがよいとき があります。言葉の通じる人なら両方試して聞いてもよいですが、少な い力で反らせられるほうがよいことが多いです。  気持ち良さが感じられたり、腹に息が深く入るようなら続けます。辛 かったりしたら止めます。  このときにも注意する点は同じで、反らしている踵の反り具合をヤジ ロベエのように釣り合った状態に保つことです。  長くなっても疲れないように足首に当てている操者の手が床について いるようにします。  反対側の足や両方の手や首を気持ち良さが深くなるようにゆっくり動 かしてもらいます。赤ちゃんなどには、操者の反対側の手で、反対側の 足や届くほうの手を動きやすいほうに動かしてあげます。  気持ち良さを感じられなくなったり、腹の息が普通に戻ったり、大き く姿勢を変えたくなったり休みたくなったりしたら終わりにしてよい合 図です。  受け手にそのとき感じられるラクな寝方で休んでもらいます。臨床の 場では、そのラクな寝方を強調する次の操体にいきます。 **6.足表を伸ばす  足の表側を伸ばす場合には、胴体との角度だけでなく足の床との高さ も関係してきます。  足首を親指が足裏側の回るように軽く捻って固定し、まず、横、左右 に動かして引っ張りやすい方向を決めます。  次に、床スレスレがよいか少し持ち上げたほうがよいか足を引っぱる 高さを決めます。  このときに、大腿の方向の延長線上に体が治したがっているところが あることが多いです。  肩が辛い場合には床スレスレの高さになりますし、腰が辛い場合には、 3〜40cmくらいの高さになります。また、伸ばしている足と同じ側が 辛い場合には閉じ気味になり、反対側が辛い場合には開き気味になりま す。  足首を捻る程度をヤジロベエの釣り合った状態に維持しながら、決め た方向に足を引っ張ります(写真20)。 &ref(so13p20h.jpg)写真20  気持ち良さが感じられたり、腹に息が深くはいるようなら続けます。 辛かったりしたら止めます。反対側の足や両方の手や首を気持ち良さが 深くなるようにゆっくり動かしてもらいます。  気持ち良さを感じられなくなったり、腹の息が普通に戻ったり、大き く姿勢を変えたくなったり休みたくなったりしたら終わりにしてよい合 図で、受け手にそのとき感じられるラクな寝方で休んでもらいます。  以前は、この操体をよくしていたのですが、けっこう長いこと気持ち 良さが続き操者がくたびれてしまうので、このごろは大人にはあまりし ません。これと同じ効果のある皮膚の操体をすることのほうが多いです。 皮膚の操体のところで説明します。 *3.仰向けから、首をきっかけに  さて次は、仰向けから首を動かすことをきっかけにする操体です。 **1)動かしやすいほうに動かす  まず、首がほんの少しでも横に傾いていないか捻れていないか観察し ます。言葉の通じる人なら首をあちこち動かして動かしやすい方向を決 めてもらってもよいです。  受け手の頭のほうに座り、操者の両手を受け手の首の下にいれて手の ひらで後頭部をつつむようにしてから、ゆっくり決めた方向にほんの少 し余分に動かしていき、軽い力では動かなくなったところで止めます (写真21)。 &ref(so13p21h.jpg)写真21  その状態をヤジロベエの釣り合った状態に保ちながら、両手両足をイ イ感じのするほうに動かしてもらい、気持ち良さが深くなる姿勢を探し てもらいます。辛かったりしたら止めます。続けたい気持がしたり、腹 の息が深くなったら続けます。  気持ち良さを感じられなくなったり、腹の息が普通に戻ったり、大き く姿勢を変えたくなったり休みたくなったりしたら終わりにして、受け 手にそのとき感じられるラクな寝方で休んでもらいます。 **2)首のシコリに指を当てながら  首にシコリがある場合には、基本的にそのシコリのあるところがもっ とも縮むような方向が効果が出やすい方向になります。首を触って、シ コリがわかれば自然に方向は決まってきます。  逆に、方向が決まったら、そのとき首の姿勢でもっとも縮むラインの もっとも縮もうとしているところを探ると、奥のほうにシコリが見つか ると思います。  そのシコリにかるく温めるような感じで指の腹を当てながら、首を動 かしてもらうと、いくらか動かしたところで急にシコリがフッと消えま す。膝裏のときと同じで、緊張してくる筋肉のなかに埋没するように消 えていきます。  そのときがちょうどよい動かし具合のところで、そのままタワメの間 に入っていきます。ですから、シコリに指が当てられると確実に効果が 出せるようになります。  シコリの探し方を身に付けましょう。  首のシコリは、まず、鎖骨の首側のくぼみに肩のほうから中指を入れ て、首の根元に押しつけるように押して痛いところを探します。そして、 そこから顎のほうに筋肉の溝をたどっていき、ヘコんだ感じのところを 押してみて痛くて、奥が硬くなっているところを見つけます。  首の後ろ側は、後頭骨下縁の首側を探って、ヘコんで奥が硬いところ を見つけ、そこから背中のほうに筋肉の溝をたどっていき、ヘコんで奥 が硬く押して痛いところを見つけます。  いくつか痛いシコリが見つかったら、その中でいちばん痛かったり、 イヤな感じのするシコリを選びます。  同じくらいのシコリが二つあったら、表面がズブズブしているシコリ をまず選びます。ズブズブしているシコリの方が古い可能性が高く、古 いシコリをゆるめたほうが少ない時間で効果が上がる可能性が高いから です。  選んだシコリに指を当てながら首の操体をしていると、膝裏の場合と 同じように、そのまわりが温かくなったり、脈を打つようにドキドキし てくることがよくあります。シコリやそのまわりの筋肉の血の流れがよ くなったためで、しばらくするとシコリがゆるんでいきます。  シコリがいくつかあったときには、次にイヤな感じのするシコリを選 んで、シコリに指を当てて、その部分が縮むような動きをきっかけにす る操体をしていきます。 **3)首の操体は首から上の症状に効く  橋本敬三先生が書かれているように、首の操体は首から上の症状に効 果があります。首から上の症状があったら、試しにやってみるとよいと 思います。症状の出ている患部を触らないでも、意外な症状にも効きま す。  先日も、顎関節症の人にかるく足もみ足ゆらしをしたあと、首の操体 をしたら、それだけで、顎関節症がなくなっていました。  ただし、下半身の歪みがひどいと消えにくいし戻りやすいので、下半 身の歪みを取ってから、とくに、膝裏のシコリを取ってからするとよい と思います。  でも、ラクな寝方を強調するアプローチの場合には、言葉の通じる人 なら、首のシコリに指を当てて首をすこし曲げたり捻ったりした状態か ら、声をかけて、膝たおしや足首そらし、踵つきだしなどの中からイイ 感じのする動きを選んで、その操体をしてもらうこともできます。  そうすると、首のシコリに関係する下半身の歪みは消えやすいので、 それだけで、効果が出ることが多くなります。  とくに、操体に慣れている人で辛い症状が首から上の場合には、仰向 けに寝てもらってすぐに、首のシコリに指を当てて首の操体をしながら 足の操体をしてもらうと、それだけで、辛い症状が消えることがよくあ ります。  これは、首のシコリに指を当てていると、下半身の動きの操体がうま く決まりやすいためだと思います。  そんなわけで、言葉で書くと簡単だし、練習もそんなに大変ではなく、 簡単に感じるかも知れませんが、シコリの見つけ方や曲げ具合、捻り具 合、ヤジロベエ感覚、声のかけ方などをしっかり身に付けて、また工夫 していきましょう。そうすれば、思いがけないほど効果が上げられます。 *4.おわりに  前回の前編と今回の後編の2回にわたって、仰向けからの動きの操体 をラクな寝方を強調するという視点から解説しました。  次回は、仰向けがラクな寝方の場合の皮膚の操体と重さの操体です。 皮膚の操体では、今回の動きの操体とほぼ同じ効果の皮膚の操体を取り 上げていきます。    つぎへ>>>[[術伝流操体no.15]] -----    >>>目次へ・・・・・・・・・[[術伝流操体(あ)]]    >>>このページのトップヘ・・[[術伝流操体no.14]]    >>>術伝HPトップへ ・・・・[[トップページ]] ----- 術伝HP内検索:上の@wikiメニューの「wiki内検索」 ----- ----- *お知らせとお願い **術伝流鍼灸操体講座で患者さん役を募集  術伝流鍼灸操体講座は、実践面を重視しています。実際に症状が出て いる方の治療を見たほうが勉強になります。そこで、講座で患者さん役 をしてくださる方を募集しています。  くわしくは、[[術伝流のモデル]]をみてください。  よろしくお願いします。 **感想など  感想などありましたら、[[「術伝」掲示板>http://jutsuden.bbs.fc2.com/]]に書いてください。  また、「術伝」掲示板でも、旧掲示板「養生の杜」と同じように、 養生についての雑談や症例相談などもしていきたいと思っています。  よろしくお願いします。 **間違いなど  間違いなど見つけた方は、[[術伝事務局>jutsuden-jmkk@yahoogroups.jp]]あてにメールをください。  よろしくお願いします。 **「術伝」症例相談用メーリングリストの参加者募集  「術伝」では症例相談用メーリングリスト( [[術伝ML(muchukand)>http://groups.yahoo.co.jp/group/muchukand/]])の 参加者を募集しています。  よろしくお願いします。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ----    >>>術伝HPトップへ ・・・・[[トップページ]] ----

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