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累積:&counter()___ 昨日:&counter(yesterday) ___今日:&counter(today) ------ 術伝流操体・ラクな寝方をすこし強調 (9)横向き寝で、皮膚や重さの操体 &size(24){&color(green){ 横向き寝で、皮膚や重さの操体}} ------ #contents *1.はじめに  先回は、横向き寝からの動きの操体でした。今回は、横向き 寝からの皮膚と重さの操体です。体の調子が悪くなると横向き に寝るのがラクな人が増えていきます。  横向き寝からの操体は、橋本先生の本には余り出てきません が、現在ではよく使うので、しっかり覚えてください。しかも 現在では、動きよりも皮膚や重さを好む人が多く、しかも効果 も上がりやすいので、臨床の場では不可欠なものになっていま す。  横向き寝からの皮膚の操体としては、仰向けやうつ伏せの動 きのときと同じように、動きの操体を皮膚の操体に置き換えて いくものと、皮膚の操体独自のものとあります。  動きの操体のときと同じように、横向き寝の場合に、先ず始 めに観察するのは膝の曲げ伸ばしです。比較すると、膝を曲げ た方がラクな人が多いです。  初めは、横向きに寝ながら足を重ねて真っ直ぐ伸ばしている 人も居ます(写真1)。 #ref(ps0809#01.jpg)写真1  が、声を掛けて、膝を曲げた状態と真っ直ぐな状態を比較し てもらうと、曲げた方がラクなことに気付く人が多いです。し かも、膝を重ねているよりも、膝をズラして、どちらの膝も床 に着いている状態がラクな人が、一番多いです。 *2.動きの操体を置き換えていくもの **1)横向き膝曲げで、皮膚の操体  横向き膝曲げの姿勢がラクな場合に、次に観察するのは、上 になっている側の足の膝が、下になっている側の膝よりも前に 出ている(写真2)か、後ろ側(写真3)かです。比較すると、 前に出ているほうがラクな人が多いです。 #ref(ps0809#02.jpg)写真2 #ref(ps0809#03.jpg)写真3 ***Ⅰ)上の足の膝が前なら  上側の膝が前の場合には、上の腰の近くの皮膚を膝の方にズ ラしていくのが気持ちよい場合が多いです。が、膝と腰の位置 関係に因って少しずつ違いが出てくるので、先ず膝の位置が一 番ラクな位置になっているか確認します。  上になっている足の小指の4指側か、4指の小指側の指裏関 節部の端を少し痛くすると、膝を動かして逃げます(写真4)。 #ref(ps0809#04.jpg)写真4  痛みが減るまで逃げて、痛みが減った位置が一番ラクな膝の 位置になることが多いです。 &bold(){ⅰ)上側の大腿に注目する}  上になっている足の膝の位置が決まったら、次に大腿に注目 します。ラクな寝方が決まった場合、体がその時に変えたがっ ている所は、大腿の延長線上、平行な線上、大転子を通り大腿 と直行する線上、その3つの線上にあることが多くなります。  そして、大腿の延長線上や平行な線上に胴体があるか、大転 子を通り大腿と直交する線上に胴体があるかによって決まって くることが多いです。横向き寝の場合には、圧倒的に、大腿と 平行な線上にある場合が多くなります。  具体的には、尻近くの皮膚を膝の方にズラすときに、気持ち 良さが感じられたり、腹の息が深くなることが多いです。 A)尻の皮膚を膝の方にズラす  上側の大転子や腰骨の背中側の辺りに手平を置いて、手が滑 らないように、膝の方に、ゆっくり、皮膚をズラしていきます (写真5)。軽い力でズラせる範囲で。 #ref(ps0809#05.jpg)写真5  気持ち良さが感じられるか、腹に息が深く入ったか確認し、 膝の方へズラそうとする力を加え続けます。  言葉の通じる人には声を掛けて、操者の手が触れていない所、 例えば、首を左右どちらに回すと気持ち良さが増えるか聞いて、 気持ち良さが深くなるように首を動かしてもらいます。  触れていない手足も気持ち良さが深くなるような格好を探し てもらいます。わずらわしくない範囲で。  受け手が姿勢を少しずつ変えていくのに合わせて、丁度良く 釣り合ったタワメの間になるように、操者も加えている力の入 れ方、力を入れる方向や強さなどを、少しずつ変えながらズラ し続けます。  受け手が大きく姿勢を変えたくなるか、息が浅くなったり、 気持ち良さが感じられなくなるまで続けます。  言葉が通じない人の場合には、引き込まれるように感じられ るときは続けて欲しいというサインです。押し返すように感じ られるときには終わりにして欲しいサインです。  しばらくラクな姿勢で休んでもらいます。 B)腕や首の動きを加える  今度は両手を使ってみます。片方の手は「A)尻の皮膚を膝 の方にズラす」で説明したように、尻の皮膚を膝の方にズラし ます。もう一方の手をどこに置くかです。目を付けるのは、肩 を始め上半身です。  横向き寝で膝を曲げた姿勢がラクで、尻の皮膚を膝方向にズ ラすと気持ちよい場合には、上半身のラクな動きは、主に二通 りになります。  肩の辺りの皮膚も胸の方にズラした方が良い場合と、反対に 背中の方にズラした方が良い場合です。比較すると、背中側に ズラした方が良い場合が、やや多くなります。  肩を背中側にズラした方が良い場合には、体全体を腰椎を境 に捻る感じになるように、皮膚の張りを作っていることになり ます。腕を背中側にして大腿と平行に伸ばすか、肩から大腿と 直行する線上に伸ばすか、そのどちらかが良い場合が多いです。  肩の近くの皮膚を前にズラすのがラクな場合には、体全体を 少し前屈させながら、上になっている側を畳や布団に近付けて いく動きになります。 a)胴体が捻れる場合  胴体が捻れていくのがよいときに、肩周囲の皮膚操体を付け 足すには、空いている手平で肩を包み込むようにして滑らない ようにし、ゆっくりズレやすい方にズラします(写真6)。軽 い力でズレる範囲で。 #ref(ps0809#06.jpg)写真6  気持ち良さが感じられるか、腹に息が深く入ったか確認し、 片手で膝の方へ皮膚をズラすことで生まれる皮膚の張りと、も う一方の手で肩の皮膚をズラすことで生まれる皮膚の張り、そ の2つの皮膚の張りが、丁度良く釣り合うように、皮膚をズラ し続けます。  言葉の通じる人には声を掛けて、操者の手が触れていない所、 例えば、首を左右どちらに回すと気持ち良さが増えるか聞いて、 気持ち良さが深くなるように首を動かしてもらいます。  触れていない手足も、気持ち良さが深くなるような格好を探 してもらいます。わずらわしくない範囲で。  肩近くの皮膚の代わりに、腕の皮膚をズラすことを付け加え た方が良いと言う人も居ます。  大腿と上腕が平行の場合には、肩周辺の皮膚をズラす代わり に、小指側が手平側に回る捻転になるように、腕の皮膚を軽く ズラしてから、手首の方にズラすと良いことが多いです。  捻転の皮膚ズラしで遊びを無くしてから、手首方向の皮膚ズ ラしで大腿に加わる力と逆ベクトルの力を出す感じです。  大腿と上腕が直交している場合で手指が腰に近いときには、 腕の皮膚を手首の方にズラしてから小指側が手平側に回る捻転 になるように、腕の皮膚を軽くずズラすのが良い人が多いです。  これも、手首方向の皮膚ズラしで遊びを無くしてから、捻転 の皮膚ズラしで大腿に加わる力と逆ベクトルの力を出す感じで す。つまり、ズラす順番は大腿の皮膚ズラしと正反対の方が後 になります。正反対の方向に皮膚の張りを作ることでタワメの 間になるわけですから。  どちらの場合も、初めの方の皮膚ズラしで遊びを無くし、 後の皮膚ズラしで大腿と逆ベクトルの力を作っています。  上腕の皮膚ズラしが良いか、前腕の皮膚ズラしが良いかは、 人や状態に因って様々なようです。比較すると、大腿と上腕 が平行の場合には、前腕の皮膚ズラしが良い場合が多いです。 大腿と上腕が直交している場合は、上腕の皮膚ズラしが良い 場合が比較的多いようです。  付け足し方や味わい方、終わり方は今までとほぼ同じです。 終わったら、しばらくラクな姿勢で休んでもらいます。この 場合には、仰向けになって休みたがる人がやや多いです。 a)と同じ効果を脇腹への皮膚操体で出す  横向きで胴体が捻れた姿勢がラクな場合には、脇腹の皮膚を ズラすだけで気持ち良さが生まれる場合も多いです。  上になっている脇腹の腰骨側の皮膚を腹の方に、肋骨側の皮 膚を背中の方にズラす(写真7)ことを切っ掛けにします。 #ref(ps0809#07.jpg)写真7  そして、イイ感じなら、続けます。付け足し方や味わい方、 終わり方は今までとほぼ同じです。  こういう風に、脇腹を少しズラすだけで、胴体を捻ったのと 同じ感じがするのは、不思議な感じがします。が、実際に試し てみると、受け手側の感じとしては殆ど同じことが分かってい ただけると思います。  横向きで体が捻れる形は、橋本先生が本に書かれた定番の操 体としては「仰向け膝倒し」と、ほぼ同じです。  胴体の捻れる角度は両方とも同じで、仰向け膝たおしは背中が畳な どについているのに対し、横向き体捻れは大腿側面が畳などについて いるだけです。  つまり、この横向き体捻れで脇腹の皮膚をずらす操体は、仰向け膝 たおし操体のバリエーションの一つで、その中では、たぶん、いちば ん動きが小さいものになるかなと思います。 b)胴体が前屈する場合  胴体がやや前屈しながら上側が畳や布団に近づいていく場合には、 あいている手のひらの下部を肩と肩甲骨の境目あたりに置き、手のひ らで肩関節を包み込んで滑らないようにし、ゆっくりずれやすいほう にずらします(写真8)。かるい力で動く範囲で。 #ref(ps0809#08.jpg)写真8  この場合には、肩は胴体をやや前屈させるようにしながら畳や布団 に近づけていく動きにつながる皮膚ずらしが良いことが多いです。ま た、それに合わせて、尻の皮膚ずらしも体全体をやや前屈させる方向 に向きを変えたほうが良いことが多いです。  肩の手を肩甲間部に、尻の手を仙骨ちかくにうつし、肩甲間部の手 は頭のほうへ、仙骨の手は尾骨のほうへずらしたほうがよい(写真9) という人も多いです。 #ref(ps0809#09.jpg)写真9  両手でつくっている皮膚の張りが合わさって、体全体に円を描くよ うな感じになりながら、布団や畳に近づけていきます。  付け足し方、味わい方、終わり方は今までとほぼ同じです。終わっ たら、しばらくラクな姿勢で休んでもらいます。この場合には、うつ 伏せになって休みたがる人が多いです。 &bold(){ⅱ)足首ちかくの皮膚ずらしをきっかけに}  横向き寝・膝曲げ・上膝前の姿勢からの皮膚の操体は、尻ちかくの 皮膚を膝のほうにずらす操体を気持ちよいという人が圧倒的ですが、 中には足首から先、とくに足の甲の皮膚ずらしをきっかけにするのが 良いという人もいます。  言葉の通じる人には声をかけて、どちらの足の甲に意識がいきやす いか、どちらの足の甲の状態が気になるか、どちらの足の甲の状態を 感じやすいかなど聞いて、どちらにするか選びます。上になっている 足の甲を選ぶ人が多いです。  決めた足の甲の上に手のひらを置いて皮膚をずれやすいほうにずら すことをきっかけにします。  上側の足を選んだ場合は親指を足の甲の皮膚を親指側にずらしたり、 足首のほうにずらしたりする(写真10)のが良いことが多いです。 #ref(ps0809#10.jpg)写真10  下側の足を選んだ場合は、小指側にずらしながら指先のほうへずら すという動きが良いという人が比較的多いです。後者の動きは基本的 な連動とは違っていて興味深いです。  付け足し方、味わい方、終わり方は今までとほぼ同じです。 &bold(){ⅲ)膝曲げや、足首背屈から}  いままで説明した以外でも、たとえば、上になっている膝の大腿前 面の皮膚を胴体のほうにずらしながら、下腿前面の皮膚を膝のほうに ずらす(写真11)ことをきっかけにすることもできます。 #ref(ps0809#11.jpg)写真11  これは上の膝の曲がりを深くしながら胸のほうに近づける動きの操 体を皮膚の操体にしたものになります。  また、足の甲の皮膚を足首のほうへ下腿裏アキレス腱まわりの皮膚 を踵のほうへずらす(写真12)をきっかけにするのがよいという人 もいます。 #ref(ps0809#12.jpg)写真12  これは、爪先上げ、つまり足首を背屈をきっかけにしたりする動き の操体を皮膚の操体にしたものになります。いままで書いてきた皮膚 の操体でイイ感じが少ないときに試してみてください。  実際のやり方は、いままでのを参考に工夫してみてください。 ***Ⅱ)下の足の膝が前なら  下の足の膝が前の場合には、上になっている大腿の皮膚を尻のほう にずらす(写真13)動きが良いことが多くなります。 #ref(ps0809#13.jpg)写真13  そして、操体していくとわりと早くに姿勢が変わります。仰向けに なるか、反対側を下にした横向き寝の場合が多いです。本来はそうい う姿勢のほうがラクな人が何らかの理由で最初の姿勢がラクに思って しまったという場合が多いようです。  もちろんそうでなく、この姿勢が本当にラクな場合もあると思いま す。そういうときには、いままで説明したやり方を参考に操体してみ てください。 ***Ⅲ)膝と膝が重なっていたら  横向き・膝曲げの寝方でも、膝と膝が重なっている姿勢がラクな 場合には、お尻まわりの皮膚をずらすことをきっかけにするよりも、 膝同士をくっつけ合う動きにつながる皮膚の操体のほうが気持ちよ い場合が多いようです。  膝の外側に手のひらを置き、膝のお皿のほうに皮膚をずらす(写 真14)とよい場合が多いです。 #ref(ps0809#14.jpg)写真14  受け手が言葉の通じる人なら、声をかけていろいろな動きを付け足 してもらいます。この場合には、押し合っている膝を頭のほうに動か したり、足首を背屈したり、首を臍を見るように前屈したりする連動 がうまれる可能性が多いようです。  ですから、操体になれてなくて連動がわからない人の場合には、 「膝が胸のほうに動きやすくないですか?足首は反りやすそうに見え ますが。おへそをみると気持ち良さが増えませんか?」とか声をかけ てみるのもよいと思います。 **2)横向き寝で手の動きをきっかけに  横向き寝では足など下半身をきっかけにしたほうがイイ感じのする ことが多いですが、手の皮膚ずらしをきっかけにすることもできます。 いろいろあると思いますが、代表例を説明します。 ***Ⅰ)手のひらを合わせて  横向き寝でラクな格好で寝た姿勢から、両手のひらを合わせます (写真15)。 #ref(ps0809#15.jpg)写真15  合わせた手のひらをまずどちらかに捻転します。イイ感じがするで しょうか? しない場合には、ほかの動き(関節運動の4種8方向の 中から)も試して、いちばんイイ感じのする動きを選び、操者はその 動きが元に戻らないようにホンの少し強調するように皮膚をずらして 支えます(写真16)。 #ref(ps0809#16.jpg)写真16  付け足し方などはいままでと同じです。 ***Ⅱ)両手小指を手のひら側に  横向き寝の姿勢から両手を合わせ、両手の小指がどちらも手のひら 側に回るような手首捻転をします。  つまり、両手の小指側を合わせた部分を中心にして両方の親指側が 手の甲の側に回るような手首捻転をして、だんだん手の甲同士が合わ さっていくような動きをしてみます。  イイ感じがしたら、操者はその状態が維持できるように両方の手の ひらを受け手の両方の手のひらに重ねて、ほんの少し親指側にずらす ようにします(写真17、18)。 #ref(ps0809#17.jpg)写真17 #ref(ps0809#18.jpg)写真18  付け足し方などはいままでと同じです。この操体は肩甲間部を開き たがっている人に喜ばれます。 **3)動きの操体を皮膚の操体にするのは簡単  いままで書いてきたように動きの操体を皮膚の操体に置き換えるの は簡単で、手をあてている場所は同じで、そこを動かす代わりに手の 下の皮膚をずらしていくものが多いです。  そうでないものでも、どこの皮膚をずらすと動きの操体と同じこと になるか考えていけば、わりと簡単に皮膚の操体に置き換えられると 思います。いろいろ試し、ヤジウマしてみてください。 *3.うつ伏せ寝で目立つところに皮膚操体  ここまでは、動きの操体を皮膚の操体に置き換えてみました。 前にも書きましたが、そのためには、動いて動きやすいほうをみつけ る動診をしなくてはならないので、ためしに動診してみるのさえイヤ がる人やひどく疲れていたりしてあまり動きたくなさそうなそうな人 にはできません。  そういう人に対しては、ラクな寝方で寝ている姿を観察し、そこか ら皮膚の操体をします。寝ている姿に特徴がなくてわかりにくかった ら、足指を少し揉んで逃げてもらって姿勢をくずしてから観察してみ るのもよいと思います。 **1)目立つところを探す  仰向けやうつ伏せでは左右差をおもに利用して観察しましたが、横 向き寝では左右差はあまり使えません。全身をながめて、おおざっぱ な歪みがなんとなくつかめるような勘を養っていくのが大切です。  ただ、勘の働かせ方というか、見方のポイントみたいなものはあり ます。私がよく利用する観察のポイントを説明していきます。自然則 のひとつとして利用してみてください。 ***Ⅰ)大腿上腕の向き  うつ伏せの皮膚操体のときにも書きましたが、観察のポイントのひ とつは、大腿と上腕の向きです。ラクな姿勢で、大腿と上腕の延長線 や、大腿や上腕と手足の付け根で直交する線の胴体を通る延長上にツ ボが出ていることが多いです。  このあたり、うつ伏せのほうが分かりやすいので、うつ伏せの皮膚 の操体を読み返して置いてください。  また、横向き寝の場合には、大腿と上腕に平行な線が胴体と交わる ところも候補になります。とくに上半身と下半身を前後違う方向にし て体を捻っている場合には、胴体の捻れる腰椎部分がポイントになり ます。そこを境に胴体を捻っていますので。 ***Ⅱ)背骨の捻れ曲がり  背骨が捻れていないか曲がっていないかも観察ポイントになります。  捻れの場合には、下半身の背骨を軸にした回転と上半身の背骨を軸 にした回転を比較するとわかりやすいでしょう。横向き寝の場合には、 さきほど書いたように脇腹、つまり腰椎の部分で捻れるか、そうでな ければ、首、つまり頚椎の部分で捻れることが多いです。  背骨が曲がりに関しては、横向き寝の場合には、歪みが少なければ、 背骨が腰と肩のあたりと起点にした懸垂曲線を描きますから、そうい う懸垂曲線が不自然に折れ曲がっている感じのところを見つけるよう にするのがポイントになります。  目で見て折れ曲がりが見つけられない場合には、背骨の上を向いて いる側に反って指をすべらせてみて、曲泉がスムーズに変化していな い、ガクッという感じで折れ曲がっているようなところを見つけます。  左右前後の曲げと捻りが組み合わさっている場合があるのもうつ伏 せの場合と同じです。  また、腰椎が捻れや曲がりの境目の場合には、脊柱起立筋の脇腹に もっとも近い痞根や腰徹腹に出るのもうつ伏せと同じで、比較的上に なっている側が悪いことが多いし、皮膚操体もしやすいです。  肩甲骨の外端や骨盤まわりも比較的上側にツボが出やすいし、皮膚 操体がしやすくなります。 ***Ⅲ)関連する手足を探す  胴体のツボが見つかったら、関連する手足のツボを探します。  このあたりも基本的には、うつ伏せの場合と同じですが、やはり、 比較すると上側の手足にツボが出ている場合が多く、皮膚操体もしや すいことが多いです。  この場合の胴体と手足のツボの関係は、経絡的な相関で見つけるの が比較的簡単です。ツボ同士の経絡的関係については、「操体もくも く」の「体は自然」に詳しく書きましたので、興味を持った人は読ん でみてください。胴体のツボを探すときにも参考になると思います。 ***Ⅳ)首・頭・尾骨を探す  背骨の延長でも、首や頭、尾骨は、手足がつながっていないので、 胸椎から仙骨までとは探し方が少し違います。このあたりも基本的に うつ伏せ寝の場合と同じです。 **2)目立つところに皮膚の操体  ツボが出ていそうなところが見当がついたら、さわってみて、その 中で、表面の皮膚がずれやすいところ、ずらしてイイ感じのするとこ ろ、ずらすと息が深くなる場所を選びます。受け手が言葉の通じる人 なら相談して決めます。  胴体から2カ所選んでもよいし、胴体から1カ所、手足から1カ所 選んでもよいです。両手が届く範囲で選びます。 ***Ⅰ)手のひらでずらす(写真19) #ref(ps0809#19.jpg)写真19  まずは動きの操体を皮膚の操体に置き換えたときと同じように手の ひらでずらしていきます。1番目に選んだところをずれやすい方向に しばらくずらしたままにしておきます。  あいているほうの手は、2番目に選んだところをずれやすい方向に ずらしておきます。また、手首足首を捻ったり、手足の指を反らした りするのと組み合わせてもよいです。  ずらしたままにして、気持ち良さが感じられるか、腹に息が深く入っ たか確認し、ずらし続けます。付け足しやタワメの間、終え方は、い ままで書いていたのとほぼ同じです。  ずらしたあとにできる皮膚の張りを保つこと、2カ所していてその 張りが正反対を向いている場合にはそのバランスを丁度よく保ちイイ 感じのタワメの間が続くことを大切にしてください。 ***Ⅱ)指でずらす  次は、ツボをこまかく特定して指先、正確には指腹などを使って皮 膚をずらします。  この場合には、まずツボを直径1cmほどの範囲で特定します。  手のひらで皮膚操体をしていれば手のひらをあてるところは直径数cm ほどに特定できていると思います。その中でいちばん凹んだところを 探します。直径数cmの円の縦横斜めに横切るように指を滑らせて、 いちばん凹んだところを見つけます。  押してイヤな感じがしたらあたりです。が、麻痺して痛まないこと もあります。そういうときは、まわりも押してみていちばん凹んでい るか確かめればよいと思います。  場所が細かく特定できない場合には、1本の指でなく、4指の先、 というか4指の指腹を使っても構いません。  横向きからよく使うのは、脇腹から腰椎にかけて、胸椎の背骨の上 側、首まわりの3か所のツボのどれかに指先の皮膚操体をしながら、 それと関連する手足のツボに指圧したり指反らししたりという組み合 わせです。  肩甲骨から頭寄りに体幹部のツボが出ていた場合には、手のツボ、 手指との組み合わせが多いです。  例えば、背骨の脇のツボへの皮膚の操体と指反らしの組み合わせ (写真20)、 #ref(ps0809#20.jpg)写真20 首の横のツボへの皮膚操体と手の指反らしの組み合わせ(写真21)、 #ref(ps0809#21.jpg)写真21 首の横のツボへの皮膚操体と前腕のツボへの指圧の組み合わせ(写真22)など。 #ref(ps0809#22.jpg)写真22  体幹部のツボが肩甲骨下縁より下に出ていた場合には、足のツボと の組み合わせが多いです。例えば、横腹のツボへの皮膚操体と下腿の ツボへの指圧の組み合わせ(写真23)など。 #ref(ps0809#23.jpg)写真23  これも足の指反らしなどと組み合わせてもよいのですが、操者の手 がゆったりとラクに足指に届かないと気持ち良さが生まれにくいです。 それよりも、横腹のツボと同じように下腿や大腿などのツボも皮膚操 体という組み合わせのほうが多くなります。また、足のツボに手が届 かないときには胴体のツボを二つ組み合わせたりもします。  そのほかにも、横向き寝寝からの皮膚の操体は、いろいろ工夫でき ます。受け手が違和感を感じるところと体の上下左右対角の対称点を 選んで、その2カ所に皮膚の操体をするというのもよくします。  いろいろ試しヤジマウして、面白い方法を見つけてください。  細かく言うと、指先でのずらし方もいろいろあります。ツボの上に 皮膚がかるくピンと張った状態が作れればよいのですから。  例えば、親指と人指し指で間の皮膚を張る方法(写真24)は、ま るで鍼の押し手を広げたような感じで、鍼灸をしたことのある人なら、 こういう方法のほうがやりやすい可能性が高いです。 #ref(ps0809#24.jpg)写真24  鍼を打たずにただ押し手をほんの少し広げるだけで、ツボが変化し、 受け手の症状が改善したりするので、びっくりされるかもしれません。 手陰経のツボに押し手を広げる皮膚操体をして、おなかのシコリがゆ るんだりします。  また、横向きだけでなく、仰向けやうつ伏せでも指先での操体は効 果的ですし、臨床上よく使います。上手になれば、細かいツボに対し て鍼灸とほとんど同じ効果を上げることも可能です。  ただし、ツボの場所なども鍼灸と同じくらい正確に特定できないと 効果が出にくくなります。そのあたりの詳しい説明も必用になります ので、別の機会に「指先での皮膚の操体」という題で解説したいと思 います。 *4.横向き寝から重さの操体  横向き寝からの重さの操体は、仰向けやうつ伏せと違って、片側の 肩や腰が畳についているので、上側の肩と腰を使って体重をかけます。  受け手の上側の肩の前側と後ろ側、上側の腰の前側と後ろ側、その 4カ所に操者の体重をかけてみて、いちばん引き込まれる感じのする ところか、言葉の通じる人ならいちばんイイ感じのするところを選ん で、そこにしばらく体重をかけたままにすることをきっかけにします。  比較すると、腰の前側にかける場合(写真25)と #ref(ps0809#25.jpg)写真25 肩の前側(写真26)が多くなります。 #ref(ps0809#26.jpg)写真26  そして、腰にまず重さをかけたら肩の前後2方向、肩にまず重さを かけたら腰の前後2方向に試しに重さをかけてみて、イイ感じが見つ かったら、イイ感じのほうに重さを軽くかけるのを付け足します。  2番目に重さをかけることを付け足すのがイイ感じがしない場合に は、一つのところだけに重さをかけ続けます。  2番目の重さかけを付け加えるのがイイ感じの場合に、肩と腰の両 方に重さをかける組み合わせは、 ①下半身が前、上半身が後ろ(写真27) #ref(ps0809#27.jpg)写真27 ②下半身が前、上半身も前(写真28) #ref(ps0809#28.jpg)写真28 ③下半身が後ろ、上半身も後ろ ④下半身が後ろ、上半身が前 の4種類になります。比較すると、①と②が多く、その場合は、タワ メの間の時間、つまり、この重さの操体をしている時間が長めになり ます。③と④は比較的少な目で、操体している時間も短めのことが多 いです。  2カ所目に重さをかけるのは軽くで、あくまでも1番目のほうに重 さを充分かけることが初めは大切で、そういう状態から重さの操体を 始めます。  もっとも、その割合が少しずつ変化していくことも多いです。引き 込まれていくように感じるときは重さのかけ方が足らないときで、押 し返されたように感じたときは重さをかけすぎです。  重さの配分を受け手のその時の状態に合わせて変えながらちょうど よいタワメの間が続くようしていきます。  気持ち良さが感じられるか、腹に息が深く入ったか確認し、体重を 移した状態を続けます。  言葉の通じる人には声をかけて、首を左右どちらに回すと気持ち良 さが増すか聞いて、気持ち良さが深くなるように首を動かしてもらい ます。両腕や両足も気持ち良さが深くなるような格好を探してもらい ます。わずらわしくない範囲で。  操者が体重をかけている場合には、受け手が姿勢を少しずつ変えて いくのに合わせて、ちょうどよく釣り合ったタワメの間になるように、 操者も体重の掛け方を少しずつ変えながら支え続けます。  とくに、2カ所に重さをかけている場合には、重さのかけ具合の配 分がイイ感じになるよう調整します。また、受け手が倒れないように 支えてあげたほうがよい場合もあります。  受け手が大きく姿勢を変えたくなるか、息が浅くなったり、気持ち 良さが感じられなくなるまで続けます。  言葉が通じない人の場合には、引き込まれるように感じられるとき は続けてほしいというサインで、押し返すように感じられるときには 終わりにしてほしいサインです。  終わったら、しばらくラクな姿勢で休んでもらいます。①、③、④ は仰向けになることが多く、②はうつ伏せになることが多いです(写 真29)。 #ref(ps0809#29.jpg)写真29  この操体は、こんなので効果があるのかなという感じを受ける人も いると思いますが、実は、現在の臨床の場では大変効果が出る場合が 多いです。  うまく決まると、これ一つで受け手から「今日はもう充分です。こ れ以上するよりも休みたいです」という言葉が出るくらい効果があが ることもあります。そういうわけで、じっくり練習して身に付けるよ うにしてください。 *5.おわりに  以上簡単にですが、横向き寝からの皮膚の操体と重さの操体を解説 しました。  次回は、今までの寝方別の操体を組み合わせて、寝た姿勢での操体 を連続して行う方法を説明します。  この寝た姿勢での連続操体は、臨床の場で操体を使う上で、もっと もよく使う中心的な方法になります。じっくり練習してしっかり身に 付けてください。    つぎへ>>>[[術伝流操体no.21]] -----    >>>目次へ・・・・・・・・・[[術伝流操体(あ)]]    >>>このページのトップヘ・・[[術伝流操体no.20]]    >>>術伝HPトップへ ・・・・[[トップページ]] ----- 術伝HP内検索:上の@wikiメニューの「wiki内検索」 ----- ----- *お知らせとお願い **術伝流鍼灸操体講座で患者さん役を募集  術伝流鍼灸操体講座は、実践面を重視しています。実際に症状が出て いる方の治療を見たほうが勉強になります。そこで、講座で患者さん役 をしてくださる方を募集しています。  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累積:&counter()___ 昨日:&counter(yesterday) ___今日:&counter(today) ------ 術伝流操体・ラクな寝方をすこし強調 (9)横向き寝で、皮膚や重さの操体 &size(24){&color(green){ 横向き寝で、皮膚や重さの操体}} ------ #contents *1.はじめに  先回は、横向き寝からの動きの操体でした。今回は、横向き 寝からの皮膚と重さの操体です。体の調子が悪くなると横向き に寝るのがラクな人が増えていきます。  横向き寝からの操体は、橋本先生の本には余り出てきません が、現在ではよく使うので、しっかり覚えてください。しかも 現在では、動きよりも皮膚や重さを好む人が多く、しかも効果 も上がりやすいので、臨床の場では不可欠なものになっていま す。  横向き寝からの皮膚の操体としては、仰向けやうつ伏せの動 きのときと同じように、動きの操体を皮膚の操体に置き換えて いくものと、皮膚の操体独自のものとあります。  動きの操体のときと同じように、横向き寝の場合に、先ず始 めに観察するのは膝の曲げ伸ばしです。比較すると、膝を曲げ た方がラクな人が多いです。  初めは、横向きに寝ながら足を重ねて真っ直ぐ伸ばしている 人も居ます(写真1)。 #ref(ps0809#01.jpg)写真1  が、声を掛けて、膝を曲げた状態と真っ直ぐな状態を比較し てもらうと、曲げた方がラクなことに気付く人が多いです。し かも、膝を重ねているよりも、膝をズラして、どちらの膝も床 に着いている状態がラクな人が、一番多いです。 *2.動きの操体を置き換えていくもの **1)横向き膝曲げで、皮膚の操体  横向き膝曲げの姿勢がラクな場合に、次に観察するのは、上 になっている側の足の膝が、下になっている側の膝よりも前に 出ている(写真2)か、後ろ側(写真3)かです。比較すると、 前に出ているほうがラクな人が多いです。 #ref(ps0809#02.jpg)写真2 #ref(ps0809#03.jpg)写真3 ***Ⅰ)上の足の膝が前なら  上側の膝が前の場合には、上の腰の近くの皮膚を膝の方にズ ラしていくのが気持ちよい場合が多いです。が、膝と腰の位置 関係に因って少しずつ違いが出てくるので、先ず膝の位置が一 番ラクな位置になっているか確認します。  上になっている足の小指の4指側か、4指の小指側の指裏関 節部の端を少し痛くすると、膝を動かして逃げます(写真4)。 #ref(ps0809#04.jpg)写真4  痛みが減るまで逃げて、痛みが減った位置が一番ラクな膝の 位置になることが多いです。 &bold(){ⅰ)上側の大腿に注目する}  上になっている足の膝の位置が決まったら、次に大腿に注目 します。ラクな寝方が決まった場合、体がその時に変えたがっ ている所は、大腿の延長線上、平行な線上、大転子を通り大腿 と直行する線上、その3つの線上にあることが多くなります。  そして、大腿の延長線上や平行な線上に胴体があるか、大転 子を通り大腿と直交する線上に胴体があるかによって決まって くることが多いです。横向き寝の場合には、圧倒的に、大腿と 平行な線上にある場合が多くなります。  具体的には、尻近くの皮膚を膝の方にズラすときに、気持ち 良さが感じられたり、腹の息が深くなることが多いです。 A)尻の皮膚を膝の方にズラす  上側の大転子や腰骨の背中側の辺りに手平を置いて、手が滑 らないように、膝の方に、ゆっくり、皮膚をズラしていきます (写真5)。軽い力でズラせる範囲で。 #ref(ps0809#05.jpg)写真5  気持ち良さが感じられるか、腹に息が深く入ったか確認し、 膝の方へズラそうとする力を加え続けます。  言葉の通じる人には声を掛けて、操者の手が触れていない所、 例えば、首を左右どちらに回すと気持ち良さが増えるか聞いて、 気持ち良さが深くなるように首を動かしてもらいます。  触れていない手足も気持ち良さが深くなるような格好を探し てもらいます。わずらわしくない範囲で。  受け手が姿勢を少しずつ変えていくのに合わせて、丁度良く 釣り合ったタワメの間になるように、操者も加えている力の入 れ方、力を入れる方向や強さなどを、少しずつ変えながらズラ し続けます。  受け手が大きく姿勢を変えたくなるか、息が浅くなったり、 気持ち良さが感じられなくなるまで続けます。  言葉が通じない人の場合には、引き込まれるように感じられ るときは続けて欲しいというサインです。押し返すように感じ られるときには終わりにして欲しいサインです。  しばらくラクな姿勢で休んでもらいます。 B)腕や首の動きを加える  今度は両手を使ってみます。片方の手は「A)尻の皮膚を膝 の方にズラす」で説明したように、尻の皮膚を膝の方にズラし ます。もう一方の手をどこに置くかです。目を付けるのは、肩 を始め上半身です。  横向き寝で膝を曲げた姿勢がラクで、尻の皮膚を膝方向にズ ラすと気持ちよい場合には、上半身のラクな動きは、主に二通 りになります。  肩の辺りの皮膚も胸の方にズラした方が良い場合と、反対に 背中の方にズラした方が良い場合です。比較すると、背中側に ズラした方が良い場合が、やや多くなります。  肩を背中側にズラした方が良い場合には、体全体を腰椎を境 に捻る感じになるように、皮膚の張りを作っていることになり ます。腕を背中側にして大腿と平行に伸ばすか、肩から大腿と 直行する線上に伸ばすか、そのどちらかが良い場合が多いです。  肩の近くの皮膚を前にズラすのがラクな場合には、体全体を 少し前屈させながら、上になっている側を畳や布団に近付けて いく動きになります。 a)胴体が捻れる場合  胴体が捻れていくのがよいときに、肩周囲の皮膚操体を付け 足すには、空いている手平で肩を包み込むようにして滑らない ようにし、ゆっくりズレやすい方にズラします(写真6)。軽 い力でズレる範囲で。 #ref(ps0809#06.jpg)写真6  気持ち良さが感じられるか、腹に息が深く入ったか確認し、 片手で膝の方へ皮膚をズラすことで生まれる皮膚の張りと、も う一方の手で肩の皮膚をズラすことで生まれる皮膚の張り、そ の2つの皮膚の張りが、丁度良く釣り合うように、皮膚をズラ し続けます。  言葉の通じる人には声を掛けて、操者の手が触れていない所、 例えば、首を左右どちらに回すと気持ち良さが増えるか聞いて、 気持ち良さが深くなるように首を動かしてもらいます。  触れていない手足も、気持ち良さが深くなるような格好を探 してもらいます。わずらわしくない範囲で。  肩近くの皮膚の代わりに、腕の皮膚をズラすことを付け加え た方が良いと言う人も居ます。  大腿と上腕が平行の場合には、肩周辺の皮膚をズラす代わり に、小指側が手平側に回る捻転になるように、腕の皮膚を軽く ズラしてから、手首の方にズラすと良いことが多いです。  捻転の皮膚ズラしで遊びを無くしてから、手首方向の皮膚ズ ラしで大腿に加わる力と逆ベクトルの力を出す感じです。  大腿と上腕が直交している場合で手指が腰に近いときには、 腕の皮膚を手首の方にズラしてから小指側が手平側に回る捻転 になるように、腕の皮膚を軽くずズラすのが良い人が多いです。  これも、手首方向の皮膚ズラしで遊びを無くしてから、捻転 の皮膚ズラしで大腿に加わる力と逆ベクトルの力を出す感じで す。つまり、ズラす順番は大腿の皮膚ズラしと正反対の方が後 になります。正反対の方向に皮膚の張りを作ることでタワメの 間になるわけですから。  どちらの場合も、初めの方の皮膚ズラしで遊びを無くし、 後の皮膚ズラしで大腿と逆ベクトルの力を作っています。  上腕の皮膚ズラしが良いか、前腕の皮膚ズラしが良いかは、 人や状態に因って様々なようです。比較すると、大腿と上腕 が平行の場合には、前腕の皮膚ズラしが良い場合が多いです。 大腿と上腕が直交している場合は、上腕の皮膚ズラしが良い 場合が比較的多いようです。  付け足し方や味わい方、終わり方は今までとほぼ同じです。 終わったら、しばらくラクな姿勢で休んでもらいます。この 場合には、仰向けになって休みたがる人がやや多いです。 a)と同じ効果を脇腹への皮膚操体で出す  横向きで胴体が捻れた姿勢がラクな場合には、脇腹の皮膚を ズラすだけで気持ち良さが生まれる場合も多いです。  上になっている脇腹の腰骨側の皮膚を腹の方に、肋骨側の皮 膚を背中の方にズラす(写真7)ことを切っ掛けにします。 #ref(ps0809#07.jpg)写真7  そして、イイ感じなら、続けます。付け足し方や味わい方、 終わり方は今までとほぼ同じです。  こういう風に、脇腹を少しズラすだけで、胴体を捻ったのと 同じ感じがするのは、不思議な感じがします。が、実際に試し てみると、受け手側の感じとしては殆ど同じことが分かってい ただけると思います。  横向きで体が捻れる形は、橋本先生が本に書かれた定番の操 体としては「仰向け膝倒し」と、ほぼ同じです。  胴体の捻れる角度は両方とも同じです。仰向け膝倒しは、背 中が畳などに付きます。それに対し、横向き体捻れは、大腿側 面が畳などに付いています。その点が違うだけです。  つまり、この横向き体捻れで脇腹の皮膚をズラす操体は、仰 向け膝倒し操体のバリエーションの一つです。その中では、多 分、動きが一番小さいものと思います。 b)胴体が前屈する場合  胴体がやや前屈しながら、上に成っている側が畳や布団に近 付いていく場合には、空いている手平の下部を、肩と肩甲骨の 境目の辺りに置き、手平で肩関節を包み込んで滑らないように し、ゆっくり、ズレやすい方にズラします(写真8)。軽い力 で動く範囲で。 #ref(ps0809#08.jpg)写真8  この場合には、肩の皮膚ズラしは、胴体をやや前屈させるよ うにしながら畳や布団に近付けていく動きを生み出すような感 じが良いことが多いです。また、それに合わせて、尻の皮膚ズ ラしも、体全体をやや前屈させる方向に向きを変えた方が良い ことが多いです。  肩に置いた手を肩甲間部に、尻に置いた手を仙骨に移動し、 肩甲間部の手は頭の方へ、仙骨の手は尾骨の方へズラした方が よい(写真9)と言う人も多いです。 #ref(ps0809#09.jpg)写真9  両手で作っている皮膚の張りが合わさって、体全体に円を描 くような感じになりながら、布団や畳に近付いていきます。  付け足し方、味わい方、終わり方は、今までと同じです。終 わったら、しばらくラクな姿勢で休んでもらいます。この場合 には、うつ伏せになって休みたがる人が多いです。 &bold(){ⅱ)足首近くの皮膚ズラしを切っ掛けに}  横向き寝・膝曲げ・上膝前の姿勢からの皮膚の操体は、尻近 くの皮膚を膝の方にズラす操体を気持ちよいという人が圧倒的 に多いです。  が、中には足首から先、特に足甲の皮膚ズラしを切っ掛けに するのが良いという人もいます。  言葉の通じる人には声を掛けて、どちらの足甲に意識が行き やすいか、どちらの足甲の状態が気になるか、どちらの足甲の 状態を感じやすいかなど聞いて、どちらにするか選びます。上 になっている足甲を選ぶ人が多いです。  決めた足甲の上に手平を置いて皮膚をズレやすい方にズラす ことを切っ掛けにします。  上側の足を選んだ場合は、拇指を足甲の皮膚を拇指側にズラ したり、足首の方にズラしたりする(写真10)のが良いこと が多いです。 #ref(ps0809#10.jpg)写真10  下側の足を選んだ場合は、小指側にズラしながら指先の方へ ズラすという動きが良いという人が比較的多いです。後者の動 きは、基本的な連動とは違っていて、興味深いです。  付け足し方、味わい方、終わり方は今までとほぼ同じです。 &bold(){ⅲ)膝曲げや、足首背屈から}  今まで説明した以外でも、例えば、上になっている膝の大腿 前面の皮膚を胴体の方にズラしながら、下腿前面の皮膚を膝の 方にズラす(写真11)ことを切っ掛けにすることもできます。 #ref(ps0809#11.jpg)写真11  これは、「上の膝の曲がりを深くしながら、胸の方に近付け る"動きの操体"」を、皮膚の操体にしたものになります。  また、足甲の皮膚を足首の方へ、下腿裏アキレス腱の周りの 皮膚を踵の方へズラす(写真12)を切っ掛けにするのが良い と言う人も居ます。 #ref(ps0809#12.jpg)写真12  これは、「爪先上げ(つまり、足首を背屈を切っ掛けにする "動きの操体")」を、皮膚の操体にしたものになります。今ま で書いてきた皮膚の操体でイイ感じが少ないときに試してみて ください。  実際のやり方は、今までのを参考に工夫してみてください。 ***Ⅱ)下の足の膝が前なら  下の足の膝が前の場合には、上になっている大腿の皮膚を、 尻の方にズラす(写真13)動きが良いことが多くなります。 #ref(ps0809#13.jpg)写真13  そして、操体していくと、割りと早くに姿勢が変わります。 仰向けになるか、反対側を下にした横向き寝の場合が多いです。 本来はそういう姿勢の方がラクな人が、何らかの理由で、最初 の姿勢がラクに思ってしまったという場合が多いようです。  もちろん、そうでなく、この姿勢が本当にラクな場合もある と思います。そういうときには、今まで説明したやり方を参考 に操体してみてください。 ***Ⅲ)膝と膝が重なっていたら  横向き・膝曲げの寝方でも、膝と膝が重なっている姿勢がラ クな場合には、尻の辺りの皮膚をズラすことを切っ掛けにする よりも、膝同士を付け合う動きにつながる皮膚の操体の方が気 持ちよい場合が多いようです。  膝の外側に手の平を置き、膝の皿の方に皮膚をズラす(写真 14)が良い場合が多いです。 #ref(ps0809#14.jpg)写真14  受け手が言葉の通じる人なら、声を掛けて色々な動きを付け 足してもらいます。この場合には、押し合っている膝を頭の方 に動かしたり、足首を背屈したり、首を臍を見るように前屈し たりする連動が生まれる可能性が多いようです。  ですから、操体に慣れてなくて連動が分からない人の場合に は、「膝が胸の方に動きやすくないですか? 足首は反りやす そうに見えますが。お臍を見ると気持ち良さが増えませんか?」 とか、声を掛けてみるのもよいと思います。 **2)横向き寝で手の動きを切っ掛けに  横向き寝では足など下半身を切っ掛けにした方がイイ感じの することが多いですが、手の皮膚ズラしを切っ掛けにすること もできます。色々あると思いますが、代表例を説明します。 ***Ⅰ)手平を合わせて  横向き寝でラクな格好で寝た姿勢から、両手の平を合わせま す(写真15)。 #ref(ps0809#15.jpg)写真15  合わせた手平を先ずどちらかに捻転します。イイ感じがする でしょうか? しない場合には、関節運動の4種8方向の中か ら、他の動きも試して、一番イイ感じのする動きを選びます。 操者は、その動きが元に戻らないように、ほんの少し強調する ように皮膚をズラして支えます(写真16)。 #ref(ps0809#16.jpg)写真16  付け足し方などは、今までと同じです。 ***Ⅱ)両手小指を手平側に  横向き寝の姿勢から両手を合わせ、両手の小指がどちらも手 平側に回るような手首捻転をします。  つまり、両手の小指側を合わせた部分を中心にして、両方の 拇指側が手甲側に回るような手首捻転をして、だんだん両手の 甲同士が合わさっていくような動きをしてみます。  イイ感じがしたら、操者はその状態が維持できるように両方 の手平を、受け手の両方の手平に重ねて、ほんの少し拇指側に ズラすようにします(写真17、18)。 #ref(ps0809#17.jpg)写真17 #ref(ps0809#18.jpg)写真18  付け足し方などは今までと同じです。この操体は、肩甲間部 を開きたがっている人に喜ばれます。 **3)動きの操体を皮膚の操体にするのは簡単  今まで書いてきたように、動きの操体を皮膚の操体に置き換 えるのは簡単です。手を当てている場所は同じで、そこを動か す代わりに手の下の皮膚をズラしていくものが多いです。  そうでないものでも、どこの皮膚をズラすと動きの操体と同 じことになるか考えていけば、割りと簡単に皮膚の操体に置き 換えられると思います。色々と試し、ヤジウマしてみてくださ い。 *3.うつ伏せ寝で目立つ所に皮膚操体  ここまでは、動きの操体を皮膚の操体に置き換えてみました。  前にも書きましたが、そのためには、動いて動きやすい方を 見付ける動診をする必要があります。それで、試しに動診して みるのさえイヤがる人や、酷く疲れていたりして余り動きたく 無さそうなそうな人には、できません。  そういう人に対しては、ラクな寝方で寝ている姿を観察し、 そこから皮膚の操体をします。寝ている姿に特徴が無くて分か りにくかったら、足指を少し揉んで逃げてもらって姿勢を崩し てから、観察してみるのもよいと思います。 **1)目立つところを探す  仰向けやうつ伏せでは、左右差を主に利用して観察しました が、横向き寝では左右差は余り使えません。全身を眺めて、大 雑把な歪みが把握できるような勘を養っていくのが大切です。  ただ、勘の働かせ方というか、見方のポイントみたいなもの は有ります。私がよく利用する観察のポイントを説明していき ます。自然則の一つとして利用してみてください。 ***Ⅰ)大腿上腕の向き  うつ伏せの皮膚操体のときにも書きましたが、観察のポイン トの一つは、大腿と上腕の向きです。ラクな姿勢で、大腿と上 腕の延長線や、大腿や上腕と手足の付け根で直交する線の胴体 を通る延長上にツボが出ていることが多いです。  この辺り、うつ伏せの方が分かりやすいので、うつ伏せの皮 膚の操体を読み返して置いてください。  また、横向き寝の場合には、大腿と上腕に平行な線が胴体と 交わる所も候補になります。特に、上半身と下半身を前後で違 う方向にして体を捻っている場合には、胴体の捻れる腰椎部分 がポイントになります。そこを境に胴体を捻っていますので。 ***Ⅱ)背骨の捻れ曲がり  背骨が捻れていないか曲がっていないかも観察ポイントにな ります。  捻れの場合には、下半身の背骨を軸にした回転と、上半身の 背骨を軸にした回転、その2つを比較すると分かりやすいでしょ う。横向き寝の場合には、先ほど書いたように脇腹、つまり、 腰椎の部分で捻れるか、そうでなければ、首、つまり、頚椎の 部分で捻れることが多いです。  背骨が曲がりに関しては、横向き寝の場合には、歪みが少な ければ、背骨が腰と肩の辺りを起点にした懸垂曲線を描きます から、そういう懸垂曲線が不自然に折れ曲がっている感じの所 を見付けるようにするのがポイントになります。  目で見て折れ曲がりが見付けられない場合には、背骨の上を 向いている側に反って指を滑べらせてみて、曲線がスムーズに 変化していない、ガクッという感じで折れ曲がっているような 所を見付けます。  左右前後の曲げと捻りが組み合わさっている場合があるのも、 うつ伏せの場合と同じです。  また、腰椎が捻れや曲がりの境目の場合には、脊柱起立筋の 脇腹に最も近い痞根や腰徹腹に出るのも、うつ伏せと同じです。 比較すると、上になっている側が悪いことが多いし、皮膚操体 もしやすいです。  肩甲骨の外端や骨盤の周りも、比較すると、上側にツボが出 やすいし、皮膚操体がしやすくなります。 ***Ⅲ)関連する手足を探す  胴体のツボが見付かったら、関連する手足のツボを探します。  この辺りも、基本的には、うつ伏せの場合と同じですが、や はり、比較すると、上側の手足にツボが出ている場合が多く、 皮膚操体もしやすいことが多いです。  この場合の胴体と手足のツボの関係は、経絡的な相関で見付 けるのが比較的簡単です。ツボ同士の経絡的関係については、 「操体もくもく」の「体は自然」に詳しく書きましたので、興 味を持った人は読んでみてください。胴体のツボを探すときに も参考になると思います。  また、[[ツボと経絡の観方]]も参考にしてください。 ***Ⅳ)首・頭・尾骨を探す  背骨の延長でも、首や頭、尾骨は、手足がつながっていない ので、胸椎から仙骨までとは探し方が少し違います。この辺り も、基本的に、うつ伏せ寝の場合と同じです。 **2)目立つ所に皮膚の操体  ツボが出ていそうな所が見当が付いたら、さわってみて、そ の中で、表面の皮膚がズレやすい所、ズラしてイイ感じのする 所、ズラすと息が深くなる場所を選びます。受け手が、言葉の 通じる人なら、相談して決めます。  胴体から2カ所選んでも良いし、胴体から1カ所、手足から 1カ所選んでもよいです。両手が届く範囲で選びます。 ***Ⅰ)手平でズラす  先ずは、手平でズラす方法です(写真19)。 #ref(ps0809#19.jpg)写真19  先ずは、動きの操体を皮膚の操体に置き換えたときと同じよ うに、手平でズラしていきます。1番目に選んだ所をズレやす い方向に、しばらく、ズラしたままにしておきます。  空いている方の手は、2番目に選んだ所をズレやすい方向に ズラしておきます。また、手首足首を捻ったり、手足の指を反 らしたりするのと組み合わせてもよいです。  ズラしたままにして、気持ち良さが感じられるか、腹に息が 深く入ったか確認し、ズラし続けます。付け足しやタワメの間、 終え方は、今まで書いていたのと、ほぼ同じです。  「ズラした後にできる皮膚の張りを保つ」こと、「2カ所し ていて、その張りが正反対を向いている場合には、そのバラン スを丁度良く保ちイイ感じのタワメの間が続く」ことを大切に してください。 ***Ⅱ)指でズラす  次は、ツボを細かく特定して、指先、正確には、指腹などを 使って、皮膚をズラします。  この場合には、先ず、ツボを直径1cm程の範囲で特定しま す。  手平で皮膚操体をしていれば、手平を当てる所は直径数cm 位に特定できていると思います。その中で一番凹んだ所を探し ます。直径数cmの円の縦横斜めに横切るように指を滑らせて、 一番凹んだ所を見つけます。  押してイヤな感じがしたら、当りです。が、麻痺して痛まな いこともあります。そういうときは、周りも押してみて、一番 凹んでいるか確かめればよいと思います。  場所が細かく特定できない場合には、1本の指でなく、4指 の先、というか、4指の指腹を使っても構いません。  横向きから良く使うのは、脇腹から腰椎、胸椎の背骨の上側、 首の周り、そのの3か所のツボのどれかに指先の皮膚操体をし ながら、それと関連する手足のツボを指圧したり、関連する指 を反らしたりという組み合わせです。  肩甲骨から頭寄りに体幹部のツボが出ていた場合には、手の ツボ、手指との組み合わせが多いです。  例えば、以下の様な組み合わせです。  背骨の脇のツボへの皮膚の操体と、指反らし(写真20)。 #ref(ps0809#20.jpg)写真20  首の横のツボへの皮膚操体と、手の指反らし(写真21)。 #ref(ps0809#21.jpg)写真21  首の横のツボへの皮膚操体と、前腕のツボへの指圧(写真22)。 #ref(ps0809#22.jpg)写真22  体幹部のツボが肩甲骨下縁より下に出ていた場合には、足の ツボとの組み合わせが多いです。例えば、横腹のツボへの皮膚 操体と下腿のツボへの指圧の組み合わせ(写真23)など。 #ref(ps0809#23.jpg)写真23  これも足の指反らしなどと組み合わせてもよいのですが、操 者の手がゆったりとラクに足指に届かないと、気持ち良さが生 まれにくいです。  それよりも、横腹のツボと同じように、下腿や大腿などのツ ボも皮膚操体という組み合わせの方が多くなります。また、足 のツボに手が届かないときには、胴体のツボを二つ組み合わせ たりもします。  その他にも、横向き寝寝からの皮膚の操体は、色々工夫でき ます。受け手が違和感を感じる所と、体の上下左右対角の対称 点を選んで、その2カ所に皮膚の操体をするのも良く使います し、イイ感じと言ってもらいやすく、効果も上がりやすいです。  色々試しヤジマウして、面白い方法を見付けてください。  細かく言うと、指先でのズラし方も色々あります。ツボの上 の皮膚が軽くピンと張った状態が作れればよいのですから。  例えば、拇指と示指で間の皮膚を張る方法(写真24)は、 まるで、鍼の押し手を広げたような感じで、鍼灸をした経験の ある人なら、こういう方法の方がやりやすい可能性が高いです。 #ref(ps0809#24.jpg)写真24  鍼を打たずに、ただ押し手をほんの少し広げるだけで、ツボ が変化し、受け手の症状が改善したりするので、ビックリされ るかもしれません。手陰経のツボに、押し手を広げる皮膚操体 をして、腹の痼りが弛んだりします。  また、横向きだけでなく、仰向けやうつ伏せでも、指先での 操体は効果的ですし、臨床上よく使います。上手になれば、細 かいツボに対して、鍼灸と殆ど同じ効果を上げることも可能で す。  ただし、ツボの場所なども、鍼灸と同程度に正確に特定でき ないと、効果が出にくいです。その当りの詳しい説明も必用に なりますので、別の機会に「指先での皮膚の操体」という題で 解説したいと思います。 *4.横向き寝から重さの操体  横向き寝からの重さの操体は、仰向けやうつ伏せと違って、 片側の肩や腰が畳に付いているので、上側の肩と腰を使って、 体重を掛けます。  受け手の上側の肩の前側と後ろ側、上側の腰の前側と後ろ側、 その4カ所に操者の体重を掛けてみて、一番、引き込まれる感 じのする所か、言葉の通じる人なら一番イイ感じのする所を選 んで、そこに、しばらく、体重を掛けたままにすることを切っ 掛けにします。  比較すると、腰の前側に掛ける場合(写真25)と、肩の前側 (写真26)が多くなります。 #ref(ps0809#25.jpg)写真25 #ref(ps0809#26.jpg)写真26  そして、腰に先ず重さを掛けたら、肩の前後2方向に試しに 重さを掛けてみて、イイ感じが見付かったら、イイ感じの方に 重さを軽く掛けるのを付け足します。  同じように、肩に先ず重さを掛けたら、腰の前後2方向に試 しに重さを掛けてみて、イイ感じが見つかったら、イイ感じの 方に重さを軽く掛けるのを付け足します。  2番目に重さを掛けることを付け足すのがイイ感じがしない 場合には、一つの所だけに重さを掛け続けます。  2番目の重さ掛けを付け加えるのがイイ感じの場合に、肩と 腰の両方に重さをかける組み合わせは、 ①下半身が前、上半身が後ろ(写真27) ②下半身が前、上半身も前(写真28) ③下半身が後ろ、上半身も後ろ ④下半身が後ろ、上半身が前 の4種類になります。 #ref(ps0809#27.jpg)写真27 #ref(ps0809#28.jpg)写真28  比較すると、①(写真27)と②(写真28)が多く、その場 合は、タワメの間の時間、つまり、この重さの操体をしている 時間が長めになります。③と④は比較的少な目で、操体してい る時間も短めのことが多いです。  2カ所目に重さを掛けるのは軽くで、あくまでも1番目の方 に重さを充分掛けることが初めは大切で、そういう状態から重 さの操体を始めます。  もっとも、その割合が少しずつ変化していくことも多いです。 引き込まれていくように感じるときは、重さの掛け方が足らな いときで、押し返されたように感じたときは、重さを掛け過ぎ です。  受け手のその時の状態に合わせて、重さの配分を変えながら 丁度良いタワメの間が続くようしていきます。  気持ち良さが感じられるか、腹に息が深く入ったか確認し、 体重を移した状態を続けます。  言葉の通じる人には声を掛けて、首を左右どちらに回すと気 持ち良さが増すか聞いて、気持ち良さが深くなるように首を動 かしてもらいます。両腕や両足も気持ち良さが深くなるような 格好を探してもらいます。わずらわしくない範囲で。  操者が体重を掛けている場合には、受け手が姿勢を少しずつ 変えていくのに合わせて、丁度良く釣り合ったタワメの間にな るように、操者も体重の掛け方を少しずつ変えながら、支え続 けます。  特に、2カ所に重さを掛けている場合には、重さの掛け具合 の配分がイイ感じになるよう調整します。また、受け手が倒れ ないように支えてあげた方が良い場合もあります。  受け手が大きく姿勢を変えたくなるか、息が浅くなったり、 気持ち良さが感じられなくなるまで続けます。  言葉が通じない人の場合には、引き込まれるように感じられ るときは続けてほしいというサインで、押し返すように感じら れるときには終わりにしてほしいサインです。  終わったら、しばらくラクな姿勢で休んでもらいます。①、 ③、④は仰向けになることが多く、②はうつ伏せになることが 多いです(写真29)。 #ref(ps0809#29.jpg)写真29  この操体は、こんなので効果があるのかなという感じを受け る人もいると思います。が、実は、現在の臨床の場では大変効 果が出る場合が多いです。  上手く決まると、これ一つで受け手から「今日はもう充分で す。これ以上するよりも休みたいです」という言葉が出る位、 効果が出ることもあります。そういう理由(わけ)で、じっく り練習して身に付けるようにしてください。 *5.おわりに  以上、「簡単に」ですが、横向き寝からの「皮膚の操体」と 「重さの操体」を解説しました。  次回は、今までの寝方別の操体を組み合わせて、寝た姿勢で の操体を連続して行う方法を説明します。  この寝た姿勢での連続操体は、臨床の場で操体を使う上で、 もっともよく使う中心的な方法になります。じっくり練習して しっかり身に付けてください。    つぎへ>>>[[術伝流操体no.21]] -----    >>>目次へ・・・・・・・・・[[術伝流操体(あ)]]    >>>このページのトップヘ・・[[術伝流操体no.20]]    >>>術伝HPトップへ ・・・・[[トップページ]] ----- 術伝HP内検索:上の@wikiメニューの「wiki内検索」 ----- ----- *お知らせとお願い 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