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累積:&counter()___ 昨日:&counter(yesterday) ___今日:&counter(today)       &bold(){&size(18){&color(orange){邪気を退け、真気が巡る和方鍼灸}}} ------ &color(green){和方鍼灸の基本} &bold(){&size(12){&color(green){指が動きやすい}}&size(24){&color(green){姿勢、出ているツボ、引き鍼}}}&bold(){&size(15){&color(green){}}} ------ #contents *はじめに  和方鍼灸の基本の 1.&bold(){指が動きやすい姿勢} 2.&bold(){出ているツボ} 3.&bold(){引き鍼} の3つについて、江戸時代からの鍼灸書を引用して解説します。 *指が動きやすい姿勢  &bold(){姿勢}は、指が動きやすいもの。 何故なら、杉山和一検校の作とされる和歌に >「鍼刺すに 心で刺すな 手で引くな >      引くも引かぬも 指に任せよ」 とあるように、指が自由に動かないと、治療中も刻一刻と変化 していく「患者さんの体」に対応するのが難しくなるからです。  姿勢については、「礼と姿勢([[術伝流一本鍼no.61]])」で 詳しく説明しています。 *出ているツボ  ツボは、患者さんの体にその時に&bold(){出ているツボ}を取ります。 指を滑らして取るのが基本で、体の部位別に滑らし方がありま す。そういうことも含め、体で覚えていきます。  阿是穴治療は、和方鍼灸の基本の一つです。 >「成書の経穴部位は、方角を示すのみ」(深谷伊三郎先生) >「邪気ある時は何れの所にも鍼を用ゆ >   病なきは何れの穴にも鍼を禁ず」『鍼道発秘』 >                  (葦原検校)  &bold(){出ているツボ}の出やすい場所や探し方は、先急,養生の運動 器系内科系の各項目で、それぞれ詳しく説明しています。  ツボが出ているというのは、現代の言葉で言えば、その部分 の筋肉が一時的機能性病変を起こしているということだと思い ます。一時的機能性病変というのは「一時的に機能異常の状態」 になっているということです。  ツボの表面に近い方は「過弛緩型の一時的機能性病変」、 そして、ツボの奥の痼りは「過緊張型の一時的機能性病変」と 思います。 **体はツボを感じている  「&bold(){体は、出ているツボを感じている}」ことが多いです。  経絡に沿って、指を動かしていくと、&bold(){出ているツボ}の上で、 指が跳ねたりする現象が観察できます。  詳しく言うと、ツボの出ている部分の10cm位上の空中を、 皮膚に平行に指先をゆっくり動かすと、&bold(){出ているツボ}の真上 で指を動かすスピードが変わったり、指が皮膚から離れる方向 に跳ねたりする現象が観察できます。 &ref(rtf-jaki-wo-jikkan.jpg)  前腕だと実験実証しやすいからで、背中でも腹でも同じ現象 は起きます。また、「私は邪気は分からない」と言う人の指も 動くことが多いというか、殆どの人の指が動きます。試してみ てください。  この観察から、私は、&bold(){出ているツボ}からは邪気が常に少し 噴出しているのではないかと考えました。頭で意識できなくて も、心で思えなくても、指はイヤな感じを受けて避けるように 動くようです。  生物は、アメーバのような単細胞生物から進化しました。特 別な感覚器官は無いけれど、イイ感じの物には近付き、イヤな 物からは逃げられなければ、生物として生き延びることはでき なかったはずです。  人間の細胞の一つ一つにも、そういう原始的能力が残ってい るのかもしれません。 付記(2015.12.8):ーーーーーーーーーーーーーーーーーー  ですから、初めのうちに邪気が感じられないからと言って落 ち込む必要は有りません。指は感じていることが多いです。そ れまでの人生で勉強してきた学問知識常識などが邪魔して、意 識に上って来にくいだけです。  自分に刺鍼すること、同じ志を持った同士で刺鍼しあうこと の2つを続けていけば、やがて分かるようになります。 1.指が動きやすい姿勢で刺鍼する 2.出ているツボを取る 3.自分や患者さん役の体の望みに合わせて刺鍼する  この3つも大切です。  そういう点を大切にしながら、自己刺鍼をしていくと、先ず 自分の体の邪気の動きが感じられるようになります。それから、 二人組稽古で6割以上の確率で結果が出せるようになってから、 しばらくして、体が調子が変化して、その後に、患者さん役の 邪気が感じられるようになることが多いです。  私は、鍼灸学校に入学する前から、ヨガ、野口整体、気功太 極拳、操体などをしていたせいか、自分に初めて刺鍼した時か ら深さに応じて違った種類の変化が体に起こることを感じるこ とができました。  自己刺鍼を続け、頭痛、発熱、モノモライなどの顔の炎症な どの時に手甲に刺鍼していたら、邪気が来るのを感じることが できるようになっていきました。  それから、二人組での稽古の多い講座を探し、通い始め、2 年位してから稽古相手の邪気を感じ始め、それからは、だんだ ん、邪気に合わせて指が動くようになっていきました。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  ツボと経絡については、「[[ツボと経絡の観方]]」で詳しく 説明しています。 *引き鍼  &bold(){引き鍼}は、 先ずは「&bold(){手足に引く}」、 次は「&bold(){陽に引く}」。 この2つを確実にできるように体で覚えていきます。 「手足に引く」「陽に引く」の「引く」とは、 >「鍼刺すに 心で刺すな 手で引くな >   引くも引かぬも 指にまかせよ」(杉山和一検校) >「鍼は万病一邪と心得べし」『鍼道発秘』(葦原検校) >「病さかんなれば まず遠き所より引く」『鍼道発秘』 >                   (葦原検校) >「けだし鍼は邪気を退くるものなり >  邪気さえ退く時は自ら正気は盛になる理なり」 >                 (『鍼灸重宝記』) (手足背に引き、患部から邪気を退ければ、真気は自然に巡る) >「邪気の至るや緊にして疾く、 >   穀気の至るや徐にして和す」 >   (『杉山真伝流』皆伝之巻「鍼法撮要」〈気察〉) 「病が盛んな時には、患部には邪気が沢山蠢(うごめ)いてい る。手足背など遠い所に引き、患部から邪気を退けると、患部 には真気が巡る。刺鍼した場所には、先ず邪気が来て緊張した 感じがするが、やがて真気が来て和(なご)んだ感じになる」 ということかなと思います。  ーーー 追記:20180526 ーーーーーーーーー   『専門医のための漢方医学テキスト - 漢方専門医研修  カリキュラム準拠 』日本東洋医学会学術教育委員会 (著)  にも出てきます。 > Ⅶ鍼灸 1鍼灸医学総論 (p299〜p300) > ③治療原則としての虚実,補寫 >  病的状態において「実」は邪気の充満した状態をいい、 > 邪気とは生命力の拡張を阻害するもの、病気の原因、誘 > 因である。健康体は発病せずに障害部位が発生するのは > その部位が弱っている、虚している、そこに邪(実)が > 侵入するからと考える…鍼灸治療の原則は補寫である… > 補:闘病反応の低下、体力低下を補うことである > 寫:充満した邪気を排除することである   『専門医のための漢方医学テキスト』の感想はブログ  に書きました。  [[『専門医のための漢方医学テキスト』感想>http://d.hatena.ne.jp/kuhuusa-raiden/20101028/1288247718]]  ーーー 追記:20180526(終) ーーーーーー **邪気=生体内雑電気=体内静電気=体内に溜まった電磁波  これら記述は、私が鍼灸している時に実感していることに近 いですし、敏感な患者さんの話とも近いです。 追記:2016.9.28ーーー  例えば、筋痛症系の患者さんは、電気のような物が動いて指 から出ていくと言う話をされる事が多いです。 [[術伝流一本鍼no.57]]:応用(9)筋痛症 ーーー  邪気とは、今の言葉で言えば「生体内雑電気」かなと思いま す。明治鍼灸大学時代の伊藤和憲先生の研究で「過緊張した筋 肉は活動電位を出し続けている」というのがありますが、その 活動電位と関係が深そうに思います。  また、邪気は、漢方的には、体の中の邪毒のうち、目に見え ず、形が分からないが、電気や空気のように機能は感じられる 物と思われます。  そして、邪気は、水毒や瘀血から湧き出すとされるので、腐っ た水からメタンガス(気体)が出てくる感じかなと思います。  「症状が出ている所、古いツボ、傷跡、水毒、瘀血には、邪 気が沢山有る(蠢いている)。そこから邪気を退けると、症状 は改善し、ツボ、つまり、筋肉の一時的機能性病変も改善し、 傷跡の改善も進み、水毒や瘀血の毒性も低下する」ということ のようです。  体の中の電気生理学的研究が進むと解明できるかもしれない なと思っています。  敏感な人は、ピリピリビリビリした感じを受けることが多い ですし、敏感な患者さんには「小さな雷(稲妻?)」という表 現をされた人もいます。 追記:2016.10.15ーーー  堀泰典先生の『体内静電気を抜けば病気は怖くない!』を読 んだら、堀先生の言う体内静電気こそ、邪気の正体のように思 いました。体内静電気を鍼で抜く話も出てきましたので。 「著書『体内静電気を抜けば病気は怖くない』の紹介」 [[http://www.dr-hori.com/media/tainai/intro.php]] 追記の追記:2017,02.09  ただ、静電気は逃げやすいので、邪気の全てを静電気と考え にくいと思います。そういう意味で、邪気は、静電気を含む生 体内の余剰な雑電気と考えるのが妥当と思います。 ーーーーーーーーーーーー   追記:2017.11.30ーーー [[電磁波を放電しよう!体にたまった電磁波の抜き方、知っていますか?>http://www.emf110.com/blog/?p=267]]  上記で問題にしている体内に溜まった電磁波も、昔の言葉で 言えば邪気でしょうね。  体の表面に近い余剰電磁波(雑電気)は、アースなどで抜け ますね。  けれど、筋肉内にも溜まっていることも多く、そういう場合 には、筋肉まで刺鍼する深鍼の鍼治療が一番効果的と思います。 もちろん、その前後に手足末端への引き鍼して、手足末端から 体の外に出るように誘導することも大切ですが。 ーーーーーーーーーーーー **手足に引く  体幹部の邪気を経絡的に関係する手足の&bold(){出ているツボ}に 引きます。体幹部とは、頭首胴のことです。 (症状が出ている所には、邪気が蠢いています) ***手足陽経に引く &ref(ksf-tate-soukan.jpg)図1  体幹部の表面に近い皮下や筋肉部分などで蠢いている邪気を 引くには、手足陽経に&bold(){出ているツボ}を使います。  体幹部の外寄りの筋肉部分などが、体の前側か、横側か、後 側かによって引きやすい経絡が違います。 前)&bold(){体の外寄り前側}で蠢いている邪気は、&bold(){手足陽明}の &bold(){出ているツボ}に引きやすいです。 (体の外寄り前側は、前から見えやすい部分) 横)&bold(){体の外寄り横側}で蠢いている邪気は、&bold(){手足少陽}の &bold(){出ているツボ}に引きやすいです。 (体の外寄り横側は、横から見えやすい部分) 後)&bold(){体の外寄り後側}で蠢いている邪気は、&bold(){手足太陽}の &bold(){出ているツボ}に引きやすいです。 (体の外寄り後側は、後ろから見えやすい部分) ***手足陰経に引く &ref(keiraku-byoushou1110.jpg)図2  体幹部の奥の方の内蔵部分などで蠢いている邪気を引くには、 手足陰経に出ているツボを使います。  体幹部の奥の内蔵部分などが、体の前側か、中央(横側)か、 後側かによって出やすい経絡が違います。 前)&bold(){体の奥の前側}で蠢いている邪気は、&bold(){手足太陰}の &bold(){出ているツボ}に引きやすいです。 (体の奥の前側は、体の内側で前側にあり、手術の時に腹側か ら開始する胃腸系など) 中)&bold(){体の奥の中央}で蠢いている邪気は、&bold(){手足厥陰}の &bold(){出ているツボ}に引きやすいです。 (体の奥の中央は、体の内側で中央にある子宮や肝臓など) 後)&bold(){体の奥の後側}で蠢いている邪気は、&bold(){手足少陰}の &bold(){出ているツボ}に引きやすいです。 (体の奥の後側は、体の内側で後側にある腹膜後器官や脊髄 など、手術する時に背側から開始する臓器など) **陽に引く  体幹部の内部で蠢いている邪気を引くための、もう1つ方法 で、座位立位で同じ高さの背中側に&bold(){出ているツボ}を使います。 背中側には、後頭部や後頚部も含みます。  例えば、上焦で蠢いている邪気は、胸椎1〜7の華佗経など に出ているツボに引きます。 &ref(dm-joushou.jpg)図3   そして、目や鼻の病を「陽に引く」時には、後頭部や後頸部 も使います。 **引き方  邪気が来始めたら、押手を引き気味にしながら弾鍼などしま す。邪気が来始めたかどうかは、色々な兆候(きざし)がある ので、それを把握できるよう、体で覚えていきます。また、敏 感な患者さん(役)なら教えてくれます。  「邪気の引き方」については、「1回の刺鍼中に起こる兆し と合わせ方 [[術伝流一本鍼no.77]]」に詳しく書きました。 *おわりに  繰り返しになりますが、術伝流鍼灸講座では、和方鍼灸の基 本を身に付け、それを応用し、先急や養生の型を身に付けます。  和方鍼灸の基本は、以下です。 1.&bold(){指が自由に動く姿勢} 2.&bold(){出ているツボの見付け方} 3.&bold(){手足に引く}、&bold(){陽に引く}  上記に引用した『専門医のための漢方医学テキスト』の鍼灸 の解説に書かれたように、鍼の技法は、「邪気を退ける」寫法 と「真気を巡らす」補法の2つですが、「邪気を退ける」瀉法 の方が簡単なので、先ずは、引鍼での「邪気の退け方」を習得 した方が上達が早いです。 >「けだし鍼は邪気を退くるものなり >  邪気さえ退く時は自ら正気は盛になる理なり」 >                 (『鍼灸重宝記』) (手足背に引き、患部から邪気を退ければ、真気は自然に巡る)  「真気を巡らす」補法に関しては、以下に詳しく書きました。 「真気を呼んで巡らすための鍼の動かし方 [[術伝流一本鍼no.78]]」  言い換えれば、要するに、以下と思います。 1.ツボは、筋肉の機能性病変 2.鍼灸は、「筋肉の機能性病変を改善」することを手始めに、   「体の歪み、血流、神経伝達などを改善」することに因り、   痛み辛さ症状を改善している  そう言う風に考えると、現代医学とも余り矛盾しないように 思います。また、江戸時代の鍼灸書は、そういう点で、非常に 鍼灸の本質を突いているように思います。 追記2015.12.8.:ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  繰り返しになりますが、上記3点をしっかり身に付け、患者 さん役の体に合わせて刺鍼することを心掛けて行けば、やがて、 邪気は感じられるようになります。多くの場合は、結果が6割 以上出せるようになった後です。  6割以上になっても邪気が感じられないという人も居ますが、 そういう人の指は、患者さん役の体の変化に応じて動いている ことが多いです。ですから、結果が出せるわけですね。  そういうことも含めて、 >「鍼刺すに 心で刺すな 手で引くな >      引くも引かぬも 指に任せよ」 なのかなと思っています。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 追記:2017.01.28ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  この辺りを独習したい人は、術伝流一本鍼の体得篇を読むと 良いかも知れないなと思います。私が鍼灸術を体得するために 実践してきたことですし、講座で戸惑っている人に助言してき た内容ですから。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー   追記:2018.08.10ーーーーーーーーーーーーーーーーー  ここに書いたように、私は江戸期の和方鍼灸を基盤に しています。ですから、現代中医・ファシア説・DNなど は参考に勉強はしますが、基盤にはしていません。詳し くは、以下に書きました。 [[現代中医・ファシア説・DNなどは基盤にしない理由>http://d.hatena.ne.jp/kuhuusa-raiden/20180522]] ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー   ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー    >>>術伝流鍼灸操体講座へ・・・・・・・・・[[術伝流鍼灸操体講座]]    >>>このページのトップヘ・・[[和方鍼灸の基本]]    >>>術伝HPトップへ ・・・・[[トップページ]] ----- 術伝HP内検索:上の@wikiメニューの「wiki内検索」 ----- ----- *お知らせとお願い **術伝流鍼灸操体講座で患者さん役を募集  術伝流鍼灸操体講座は、実践面を重視しています。実際に症状が出て いる方の治療を見たほうが勉強になります。そこで、講座で患者さん役 をしてくださる方を募集しています。  くわしくは、[[術伝流のモデル]]をみてください。  よろしくお願いします。 **感想・間違いなど  感想などあったり、間違いなど見つけた方は、[[術伝事務局>jutsuden-jmkk@googlegroups.com]]あてにメールをください。  よろしくお願いします。 **「術伝」症例相談用メーリングリストの参加者募集  「術伝」では症例相談用メーリングリストの参加者を募集しています。 参加希望の方は、[[術伝事務局>jutsuden-jmkk@googlegroups.com]]あてにメールをください。  よろしくお願いします。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ----    >>>術伝HPトップへ ・・・・[[トップページ]] ----
累積:&counter()___ 昨日:&counter(yesterday) ___今日:&counter(today)       &bold(){&size(18){&color(orange){邪気を退け、真気が巡る和方鍼灸}}} ------ &color(green){和方鍼灸の基本} &bold(){&size(12){&color(green){指が動きやすい}}&size(24){&color(green){姿勢、出ているツボ、引き鍼}}}&bold(){&size(15){&color(green){}}} ------ #contents *はじめに  和方鍼灸の基本の 1.&bold(){指が動きやすい姿勢} 2.&bold(){出ているツボ} 3.&bold(){引き鍼} の3つについて、江戸時代からの鍼灸書を引用して解説します。 *指が動きやすい姿勢  &bold(){姿勢}は、指が動きやすいもの。 何故なら、杉山和一検校の作とされる和歌に >「鍼刺すに 心で刺すな 手で引くな >      引くも引かぬも 指に任せよ」 とあるように、指が自由に動かないと、治療中も刻一刻と変化 していく「患者さんの体」に対応するのが難しくなるからです。  姿勢については、「礼と姿勢([[術伝流一本鍼no.61]])」で 詳しく説明しています。 *出ているツボ  ツボは、患者さんの体にその時に&bold(){出ているツボ}を取ります。 指を滑らして取るのが基本で、体の部位別に滑らし方がありま す。そういうことも含め、体で覚えていきます。  阿是穴治療は、和方鍼灸の基本の一つです。 >「成書の経穴部位は、方角を示すのみ」(深谷伊三郎先生) >「邪気ある時は何れの所にも鍼を用ゆ >   病なきは何れの穴にも鍼を禁ず」『鍼道発秘』 >                  (葦原検校)  &bold(){出ているツボ}の出やすい場所や探し方は、先急,養生の運動 器系内科系の各項目で、それぞれ詳しく説明しています。  ツボが出ているというのは、現代の言葉で言えば、その部分 の筋肉が一時的機能性病変を起こしているということだと思い ます。一時的機能性病変というのは「一時的に機能異常の状態」 になっているということです。  ツボの表面に近い方は「過弛緩型の一時的機能性病変」、 そして、ツボの奥の痼りは「過緊張型の一時的機能性病変」と 思います。 **体はツボを感じている  「&bold(){体は、出ているツボを感じている}」ことが多いです。  経絡に沿って、指を動かしていくと、&bold(){出ているツボ}の上で、 指が跳ねたりする現象が観察できます。  詳しく言うと、ツボの出ている部分の10cm位上の空中を、 皮膚に平行に指先をゆっくり動かすと、&bold(){出ているツボ}の真上 で指を動かすスピードが変わったり、指が皮膚から離れる方向 に跳ねたりする現象が観察できます。 &ref(rtf-jaki-wo-jikkan.jpg)  前腕だと実験実証しやすいからで、背中でも腹でも同じ現象 は起きます。また、「私は邪気は分からない」と言う人の指も 動くことが多いというか、殆どの人の指が動きます。試してみ てください。  この観察から、私は、&bold(){出ているツボ}からは邪気が常に少し 噴出しているのではないかと考えました。頭で意識できなくて も、心で思えなくても、指はイヤな感じを受けて避けるように 動くようです。  生物は、アメーバのような単細胞生物から進化しました。特 別な感覚器官は無いけれど、イイ感じの物には近付き、イヤな 物からは逃げられなければ、生物として生き延びることはでき なかったはずです。  人間の細胞の一つ一つにも、そういう原始的能力が残ってい るのかもしれません。 付記(2015.12.8):ーーーーーーーーーーーーーーーーーー  ですから、初めのうちに邪気が感じられないからと言って落 ち込む必要は有りません。指は感じていることが多いです。そ れまでの人生で勉強してきた学問知識常識などが邪魔して、意 識に上って来にくいだけです。  自分に刺鍼すること、同じ志を持った同士で刺鍼しあうこと の2つを続けていけば、やがて分かるようになります。 1.指が動きやすい姿勢で刺鍼する 2.出ているツボを取る 3.自分や患者さん役の体の望みに合わせて刺鍼する  この3つも大切です。  そういう点を大切にしながら、自己刺鍼をしていくと、先ず 自分の体の邪気の動きが感じられるようになります。それから、 二人組稽古で6割以上の確率で結果が出せるようになってから、 しばらくして、体が調子が変化して、その後に、患者さん役の 邪気が感じられるようになることが多いです。  私は、鍼灸学校に入学する前から、ヨガ、野口整体、気功太 極拳、操体などをしていたせいか、自分に初めて刺鍼した時か ら深さに応じて違った種類の変化が体に起こることを感じるこ とができました。  自己刺鍼を続け、頭痛、発熱、モノモライなどの顔の炎症な どの時に手甲に刺鍼していたら、邪気が来るのを感じることが できるようになっていきました。  それから、二人組での稽古の多い講座を探し、通い始め、2 年位してから稽古相手の邪気を感じ始め、それからは、だんだ ん、邪気に合わせて指が動くようになっていきました。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  ツボと経絡については、「[[ツボと経絡の観方]]」で詳しく 説明しています。 *引き鍼  &bold(){引き鍼}は、 先ずは「&bold(){手足に引く}」、 次は「&bold(){陽に引く}」。 この2つを確実にできるように体で覚えていきます。 「手足に引く」「陽に引く」の「引く」とは、 >「鍼刺すに 心で刺すな 手で引くな >   引くも引かぬも 指にまかせよ」(杉山和一検校) >「鍼は万病一邪と心得べし」『鍼道発秘』(葦原検校) >「病さかんなれば まず遠き所より引く」『鍼道発秘』 >                   (葦原検校) >「けだし鍼は邪気を退くるものなり >  邪気さえ退く時は自ら正気は盛になる理なり」 >                 (『鍼灸重宝記』) (手足背に引き、患部から邪気を退ければ、真気は自然に巡る) >「邪気の至るや緊にして疾く、 >   穀気の至るや徐にして和す」 >   (『杉山真伝流』皆伝之巻「鍼法撮要」〈気察〉) 「病が盛んな時には、患部には邪気が沢山蠢(うごめ)いてい る。手足背など遠い所に引き、患部から邪気を退けると、患部 には真気が巡る。刺鍼した場所には、先ず邪気が来て緊張した 感じがするが、やがて真気が来て和(なご)んだ感じになる」 ということかなと思います。  ーーー 追記:20180526 ーーーーーーーーー   『専門医のための漢方医学テキスト - 漢方専門医研修  カリキュラム準拠 』日本東洋医学会学術教育委員会 (著)  にも出てきます。 > Ⅶ鍼灸 1鍼灸医学総論 (p299〜p300) > ③治療原則としての虚実,補寫 >  病的状態において「実」は邪気の充満した状態をいい、 > 邪気とは生命力の拡張を阻害するもの、病気の原因、誘 > 因である。健康体は発病せずに障害部位が発生するのは > その部位が弱っている、虚している、そこに邪(実)が > 侵入するからと考える…鍼灸治療の原則は補寫である… > 補:闘病反応の低下、体力低下を補うことである > 寫:充満した邪気を排除することである   『専門医のための漢方医学テキスト』の感想はブログ  に書きました。  [[『専門医のための漢方医学テキスト』感想>http://d.hatena.ne.jp/kuhuusa-raiden/20101028/1288247718]]  ーーー 追記:20180526(終) ーーーーーー **邪気=生体内雑電気=体内静電気=体内に溜まった電磁波  これら記述は、私が鍼灸している時に実感していることに近 いですし、敏感な患者さんの話とも近いです。 追記:2016.9.28ーーー  例えば、筋痛症系の患者さんは、電気のような物が動いて指 から出ていくと言う話をされる事が多いです。 [[術伝流一本鍼no.57]]:応用(9)筋痛症 ーーー  邪気とは、今の言葉で言えば「生体内雑電気」かなと思いま す。明治鍼灸大学時代の伊藤和憲先生の研究で「過緊張した筋 肉は活動電位を出し続けている」というのがありますが、その 活動電位と関係が深そうに思います。  また、邪気は、漢方的には、体の中の邪毒のうち、目に見え ず、形が分からないが、電気や空気のように機能は感じられる 物と思われます。  そして、邪気は、水毒や瘀血から湧き出すとされるので、腐っ た水からメタンガス(気体)が出てくる感じかなと思います。  「症状が出ている所、古いツボ、傷跡、水毒、瘀血には、邪 気が沢山有る(蠢いている)。そこから邪気を退けると、症状 は改善し、ツボ、つまり、筋肉の一時的機能性病変も改善し、 傷跡の改善も進み、水毒や瘀血の毒性も低下する」ということ のようです。  体の中の電気生理学的研究が進むと解明できるかもしれない なと思っています。  敏感な人は、ピリピリビリビリした感じを受けることが多い ですし、敏感な患者さんには「小さな雷(稲妻?)」という表 現をされた人もいます。 追記:2016.10.15ーーー  堀泰典先生の『体内静電気を抜けば病気は怖くない!』を読 んだら、堀先生の言う体内静電気こそ、邪気の正体のように思 いました。体内静電気を鍼で抜く話も出てきましたので。 「著書『体内静電気を抜けば病気は怖くない』の紹介」 [[http://www.dr-hori.com/media/tainai/intro.php]] 追記の追記:2017,02.09  ただ、静電気は逃げやすいので、邪気の全てを静電気と考え にくいと思います。そういう意味で、邪気は、静電気を含む生 体内の余剰な雑電気と考えるのが妥当と思います。 ーーーーーーーーーーーー   追記:2017.11.30ーーー [[電磁波を放電しよう!体にたまった電磁波の抜き方、知っていますか?>http://www.emf110.com/blog/?p=267]]  上記で問題にしている体内に溜まった電磁波も、昔の言葉で 言えば邪気でしょうね。  体の表面に近い余剰電磁波(雑電気)は、アースなどで抜け ますね。  けれど、筋肉内にも溜まっていることも多く、そういう場合 には、筋肉まで刺鍼する深鍼の鍼治療が一番効果的と思います。 もちろん、その前後に手足末端への引き鍼して、手足末端から 体の外に出るように誘導することも大切ですが。 ーーーーーーーーーーーー **手足に引く  体幹部の邪気を経絡的に関係する手足の&bold(){出ているツボ}に 引きます。体幹部とは、頭首胴のことです。 (症状が出ている所には、邪気が蠢いています) ***手足陽経に引く &ref(ksf-tate-soukan.jpg)図1  体幹部の表面に近い皮下や筋肉部分などで蠢いている邪気を 引くには、手足陽経に&bold(){出ているツボ}を使います。  体幹部の外寄りの筋肉部分などが、体の前側か、横側か、後 側かによって引きやすい経絡が違います。 前)&bold(){体の外寄り前側}で蠢いている邪気は、&bold(){手足陽明}の &bold(){出ているツボ}に引きやすいです。 (体の外寄り前側は、前から見えやすい部分) 横)&bold(){体の外寄り横側}で蠢いている邪気は、&bold(){手足少陽}の &bold(){出ているツボ}に引きやすいです。 (体の外寄り横側は、横から見えやすい部分) 後)&bold(){体の外寄り後側}で蠢いている邪気は、&bold(){手足太陽}の &bold(){出ているツボ}に引きやすいです。 (体の外寄り後側は、後ろから見えやすい部分) ***手足陰経に引く &ref(keiraku-byoushou1110.jpg)図2  体幹部の奥の方の内蔵部分などで蠢いている邪気を引くには、 手足陰経に出ているツボを使います。  体幹部の奥の内蔵部分などが、体の前側か、中央(横側)か、 後側かによって出やすい経絡が違います。 前)&bold(){体の奥の前側}で蠢いている邪気は、&bold(){手足太陰}の &bold(){出ているツボ}に引きやすいです。 (体の奥の前側は、体の内側で前側にあり、手術の時に腹側か ら開始する胃腸系など) 中)&bold(){体の奥の中央}で蠢いている邪気は、&bold(){手足厥陰}の &bold(){出ているツボ}に引きやすいです。 (体の奥の中央は、体の内側で中央にある子宮や肝臓など) 後)&bold(){体の奥の後側}で蠢いている邪気は、&bold(){手足少陰}の &bold(){出ているツボ}に引きやすいです。 (体の奥の後側は、体の内側で後側にある腹膜後器官や脊髄 など、手術する時に背側から開始する臓器など) **陽に引く  体幹部の内部で蠢いている邪気を引くための、もう1つ方法 で、座位立位で同じ高さの背中側に&bold(){出ているツボ}を使います。 背中側には、後頭部や後頚部も含みます。  例えば、上焦で蠢いている邪気は、胸椎1〜7の華佗経など に出ているツボに引きます。 &ref(dm-joushou.jpg)図3   そして、目や鼻の病を「陽に引く」時には、後頭部や後頸部 も使います。 **引き方  邪気が来始めたら、押手を引き気味にしながら弾鍼などしま す。邪気が来始めたかどうかは、色々な兆候(きざし)がある ので、それを把握できるよう、体で覚えていきます。また、敏 感な患者さん(役)なら教えてくれます。  「邪気の引き方」については、「1回の刺鍼中に起こる兆し と合わせ方 [[術伝流一本鍼no.77]]」に詳しく書きました。 *おわりに  繰り返しになりますが、術伝流鍼灸講座では、和方鍼灸の基 本を身に付け、それを応用し、先急や養生の型を身に付けます。  和方鍼灸の基本は、以下です。 1.&bold(){指が自由に動く姿勢} 2.&bold(){出ているツボの見付け方} 3.&bold(){手足に引く}、&bold(){陽に引く}  上記に引用した『専門医のための漢方医学テキスト』の鍼灸 の解説に書かれたように、鍼の技法は、「邪気を退ける」寫法 と「真気を巡らす」補法の2つですが、「邪気を退ける」瀉法 の方が簡単なので、先ずは、引鍼での「邪気の退け方」を習得 した方が上達が早いです。 >「けだし鍼は邪気を退くるものなり >  邪気さえ退く時は自ら正気は盛になる理なり」 >                 (『鍼灸重宝記』) (手足背に引き、患部から邪気を退ければ、真気は自然に巡る)  「真気を巡らす」補法に関しては、以下に詳しく書きました。 「真気を呼んで巡らすための鍼の動かし方 [[術伝流一本鍼no.78]]」  言い換えれば、要するに、以下と思います。 1.ツボは、筋肉の機能性病変 2.鍼灸は、「筋肉の機能性病変を改善」することを手始めに、   「体の歪み、血流、神経伝達などを改善」することに因り、   痛み辛さ症状を改善している  そう言う風に考えると、現代医学とも余り矛盾しないように 思います。また、江戸時代の鍼灸書は、そういう点で、非常に 鍼灸の本質を突いているように思います。 追記2015.12.8.:ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  繰り返しになりますが、上記3点をしっかり身に付け、患者 さん役の体に合わせて刺鍼することを心掛けて行けば、やがて、 邪気は感じられるようになります。多くの場合は、結果が6割 以上出せるようになった後です。  6割以上になっても邪気が感じられないという人も居ますが、 そういう人の指は、患者さん役の体の変化に応じて動いている ことが多いです。ですから、結果が出せるわけですね。  そういうことも含めて、 >「鍼刺すに 心で刺すな 手で引くな >      引くも引かぬも 指に任せよ」 なのかなと思っています。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 追記:2017.01.28ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  この辺りを独習したい人は、術伝流一本鍼の体得篇を読むと 良いかも知れないなと思います。私が鍼灸術を体得するために 実践してきたことですし、講座で戸惑っている人に助言してき た内容ですから。  また、基本的なことは以下も参考にしてください。 [[鍼灸を独習]] ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー   追記:2018.08.10ーーーーーーーーーーーーーーーーー  ここに書いたように、私は江戸期の和方鍼灸を基盤に しています。ですから、現代中医・ファシア説・DNなど は参考に勉強はしますが、基盤にはしていません。詳し くは、以下に書きました。 [[現代中医・ファシア説・DNなどは基盤にしない理由>http://d.hatena.ne.jp/kuhuusa-raiden/20180522]] ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー   ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー    >>>術伝流鍼灸操体講座へ・・・・・・・・・[[術伝流鍼灸操体講座]]    >>>このページのトップヘ・・[[和方鍼灸の基本]]    >>>術伝HPトップへ ・・・・[[トップページ]] ----- 術伝HP内検索:上の@wikiメニューの「wiki内検索」 ----- ----- *お知らせとお願い **術伝流鍼灸操体講座で患者さん役を募集  術伝流鍼灸操体講座は、実践面を重視しています。実際に症状が出て いる方の治療を見たほうが勉強になります。そこで、講座で患者さん役 をしてくださる方を募集しています。  くわしくは、[[術伝流のモデル]]をみてください。  よろしくお願いします。 **感想・間違いなど  感想などあったり、間違いなど見つけた方は、[[術伝事務局>jutsuden-jmkk@googlegroups.com]]あてにメールをください。  よろしくお願いします。 **「術伝」症例相談用メーリングリストの参加者募集  「術伝」では症例相談用メーリングリストの参加者を募集しています。 参加希望の方は、[[術伝事務局>jutsuden-jmkk@googlegroups.com]]あてにメールをください。  よろしくお願いします。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ----    >>>術伝HPトップへ ・・・・[[トップページ]] ----

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