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累積:&counter()___ 昨日:&counter(yesterday) ___今日:&counter(today) ------ 術伝流操体no.72 【6】自然則篇 (8)タワメの間とシコリ &size(24){&color(green){タワメの間とシコリ}} ------ #contents *1.はじめに  前回は「タワメの間で力が作用する先に体が治したがっている 所がある」という話を書きました。体が治したがっている所」は、 その時の「操体の焦点」です。  また、そこには、その時の「操体の改善目標」であるシコリが あります。今回は「目標とするシコリはタワメの間でどのように 変化するか」ということを書いていきます。 *2.タワメの間では、目標のシコリは消える  操体は動かして診る動診が中心です。が、触ってシコリを見付 ける触診で診ていくこともあります。代表例は、膝裏です。先ず 膝裏を探って「痛たた!」というシコリを見付けてから(写真1)、 爪先上げなどの操体をしていきますね。 &ref(DSCF4609.jpg)写真1  さて、膝裏のシコリをとる操体をしてタワメの間になったとき に、膝裏のシコリはどうなっているでしょう。触って確かめたこ とがありますか?  確かめた人ならお分かりでしょう。また、敏感な人なら、爪先 上げなどの操体を受けているときのタワメの間の状態での膝裏の 感じから気づかれていると思います。  タワメの間では、シコリは消えています。押しても痛くありま せんし、押している指先にシコった膨らみを感じることもありま せん。  まだ確かめていない人は、確かめてみることをお勧めします。 確かめるときには、定番の爪先上げ操体でもよいのですが、これ から書くやり方の方が確かめやすいです。  膝裏のシコリを確かめたら、一番痛みの強いシコリに指を当て たまま、反対側の手でその膝の延長の足首を反らせます。操者が それを強調し、膝や鼠径部に連動させていくと、踵が上がってい きます。  そして、足首を反らした状態を弛めないように注意しながら、 膝を、最も少ない力で動く方向、言い換えれば、受け手の体の抵 抗の最も少ない方向に誘導していきます(写真2)。 &ref(DSCF4610.jpg)写真2  これは、シコリを痛くして逃げる姿勢を少し強調する、いわゆ る圧痛操体の膝裏シコリ版になっています。  この操体をしていくと、ある姿勢になった所で、膝裏のシコリ の膨らみが消え、少し強めに押しても痛くない状態になります (写真3)。その姿勢ががタワメの間であることが多いです。 &ref(DSCF4611.jpg)写真3  腹に目を移してみると、たいてい大きく動いていて、息が深く なっているのが分かります。  この現象は、抵抗の少ない方向に動かしながら腹を眺めつづけ、 息が深くなった時点でシコリを確認してみるという手順でもでき ます。  しかし、後者の場合でも、この操体を始めた時から目標のシコ リに手を触れていないと、分かりにくいと思います。人によって、 シコリの変化が分かりやすい人と息の変化が分かりやすい人がい るので、得意なほうで確認するとよいでしょう。  そして、仰向け膝立の姿勢に戻って確認してみると、シコリは 余り痛くなくなっています(写真4)。 &ref(DSCF4613.jpg)写真4 *2.目標のシコリには、タワメの間で一番、力が作用する  定番の操体には、膝裏のシコリ以外は操体を始める前にシコリ を確認する習慣はあまりないようです。  『万病を治せる妙療法 操体法』には、首の操体のときのシコリ、 眩暈(めまい)のときの背中のシコリ、仰向け膝倒しときの仙蝶 関節のシコリ、踵踏み込みのときの大転子あたりのシコリ、腹痛 のときの背中のシコリなどが書いてあります。  が、確認を取りながら操体していますか?  そういう定番以外でも、ある特定のタワメの間になったときに は、体が治したがっているシコリがあります。必ずといって良い くらいです。そのシコリは、先回書いたライン上にあり、ライン が二つ以上あるときには、その二つのラインが交わる交点になり ます。  もう少し簡単に言うと、タワメの間で体の動きがほぼ止まった 姿勢を眺めて、最も伸びようとしているライン、最も縮もうとし ているライン上にあることが多いです。  次に可能性があるのは、最も上のラインか、最も下のライン、 つまり、体重をもっとも受けないラインと、もっとも受けるライ ンです。  そして、伸び縮みのそれぞれのラインの中では、伸びているラ インの中の最も伸びようとしている所、縮んでいるラインの中の 最も縮もうとしている所が焦点になります。つまり、そういう所 が、その時の操体のタワメの間を利用して、体が治そうとしてい る所になるように思います。  別の言い方をすれば、タワメの間の姿勢で、最も力が作用する 所に、その操体で体が治したがっている焦点があります。逆に言 えば、タワメの間では、治したい所に、最も力が働くような姿勢 を暫く維持しているということになります。  仰向け膝立での定番の爪先上げ操体や、その圧痛操体版では、 膝裏シコリは、最も縮むラインの最も縮む所になります。圧痛操 体のタワメの間(写真5)では縮むラインということが分かりや すいです。 &ref(DSCF4612.jpg)写真5  が、定番のつま先上げのタワメの間(写真6)では、最も縮む ラインということが分かりにくいと思います。これは、定番の爪 先上げのタワメの間では、最も縮むラインが等尺性収縮になって いるためです。 &ref(DSCF4624.jpg)写真6  実際に、膝裏シコリに指を当てながら定番の爪先上げ操体をし てみると、タワメの間に近づくにつれ、指を当てているシコリの 周りの筋肉が縮み、膨らんできます。そして、タワメの間では、 その膨らんでくる周りの筋肉に埋もれるように、シコリが消えて いきます。 *3.あるシコリを改善する操体を見つけることも可能  タワメの間になったら、上に書いたような見方を利用して、そ の時の焦点となるシコリを探します。  また、逆に、膝裏以外のシコリでも、そのシコリを改善するた めの操体(のタワメの間)を探していく時に、この現象を利用す ることもできます。  例えば、五十肩などで動作制限がある場合です。先ず、制限の ある動作を痛む直前までやってもらいます。その時の痛む直前の 姿勢で、一番、伸びようとしているラインと縮もうとしているラ インに目をつけます。  上腕部の動いていく軌跡の延長、つまり、上腕の延長ラインか、 それと直角の、上腕の捻転する力が伝わるラインか、そのどちら かになる可能性が高いです。  すると、多くの場合、そのラインは、皮膚表面上にミゾになっ て見えます。見えない場合は、上腕骨の延長ラインか直交ライン を目安にミゾを見付けます。  そのミゾを辿っていって、そのミゾの中で、一番凹んだ所を見 付けます。そこを押すと、圧痛があり、ツボになっているのが分 かります。詳しく調べると、シコリが見つかります。  服を脱いでもらえば分かりやすいですが、着たままでも服にで きるシワなどを参考にすれば探せると思います。  ツボのあるラインが皮膚表面上にミゾとして見えるのは、その 時の姿勢動作では本来は伸びるべき筋肉の中にシコリがあるので、 表面の皮膚がその部分だけシコリのある部分に引っ張られるため ではないかと思います。  腕を高く挙げる場合など、腕の動作は、ある限度(水平よりも 上)を過ぎると、肩甲骨を動かして動作しているので、ツボやシ コリが肩甲骨の周りに出ることが多くなります。  また、腕を水平よりも下にしか挙げられない時には、脇の下ま わりにシコリがあって、そこが伸びないので腕が挙げられないこ とが多いです。  こういう場合にも、痛い手前まで制限のある動作をすると、肩 甲骨周囲や、脇の下から上腕の手の平側にミゾが見えますから、 その中で、一番凹んだ辺りを探すと、ツボやシコリが見付かりま す。  さて、見付けたシコリに指先を当てたまま制限のある動作の逆 モーションの動きをやってもらいます。受け手が自分では上手に 動かせないときには、操者があいている方(シコリに指を当てて いない方)の手で誘導してあげます。  そのときには、一番少ない力で誘導できる方向を探しながら動 かしていくのがコツです。そして、軽い力では動かせなくなった ら、逆モーション運動をやめます。  その後、手首の捻転や体重移動などを付け足してみると、少し 余分に逆モーション運動できると思います。手首捻転は、二つの 方向への捻転を試して捻転しやすい方向を見付けます。そして、 捻転しやすいほうに捻転してから、逆モーション運動が少し余分 にできないか、やってみます。  体重移動は、体重を移動しやすい方向に移動すると、逆モーショ ン運動が少し余分にできることが多いです。その時の肩甲間部の 背骨にどういう力が伝わっているか考え、それがやりやすい体重 移動をしてみてもよいですが、どちらの方向に体重が移動しやす いか試してみるほうが簡単です。  以上の3つの動き、逆モーションと二つの強調(手首捻転と体 重移動)をしてみた後で、腹の息の深さを観察しながら、気持ち よい動きかどうか聞いてみたりします。  そういう操体をしている間、ずっと、シコリに当てた指先で、 シコリの様子を観察し続けます。少しの力で動く範囲で止めた瞬 間か、手首捻転や体重移動でもう少し余分に動かした瞬間に、シ コリが消えるのが観察できると思います。  この現象は、どんな操体でも、目標とするシコリに焦点が当た るようなタワメの間が作れた時には、必ず起きる現象のようです。 シコリを見付け、そのシコリを目標とする操体をしていくときに は、利用できると思います。  そういうシコリが消えているタワメの間の姿勢を、腹の息が普 通に近くなるまで、または、移動した体重を戻したくなったり、 タワメの間の姿勢を変えたくなるまで、あるいは、何となく感じ られる気持ちよさが感じられなくなるまで、4つ書いた、そうい う状態になるまでタワメの間の姿勢を維持し続けます。  そして、その姿勢を止めてラクな姿勢に戻ってからシコリを観 察してみます。そのラクな姿勢では操体前には指で確認できたシ コリが消えているのが分かります。  つまり、その操体をする前にはシコリがあって押すと痛かった 姿勢でも、シコリが消えた状態になっています。 *4.シコリを触りながら操体すると、丁度よいタワメの間が見付けやすい  この方法で肩まわりの動作制限に効果的な操体をしてみると、 普段している逆モーションよりも少ない動きのでシコリが消える ことが、かなり、あります。  要するに、普段はやりすぎというか、逆モーションを意識しす ぎて、また、抵抗を感じるまで動かそうとしすぎて、実際には、 タワメの間となる姿勢を通り越したり、逆モーションの軌道から 外れて動かしている場合がかなり有るということだと思います。  肩関節は自由度が大きく、色々な方向に様々な動かし方ができ るので、肩まわりの可動域制限への操体は、操体の中では難しい とされているようです。  その理由の一つは、今、書いたように、ちょっと動かしすぎた り、逆モーションの軌道から外れた方向に動かしたりしている可 能性が高いのかもしれません。  このシコリに触りながら操体してみる方法は、前に書いた反対 側の手で、やりにくい動作をしてみることをキッカケにする操体 でも使えます。  動作制限のある患側の患部のシコリに指を当てながら、反対側 の健側の手で制限のある動作と同じ動きをしてもらうと、やはり、 ある程度動かしたところでシコリが消えます。  腹に見ると息が深くなっていて、タワメの間になっているのが 観察できると思います。もちろん、手首の捻転や体重移動を付け 加えると、その瞬間にシコリが消えることがあるというのも、同 じです。  また、ラクな姿勢に戻ってシコリがあった所を押すと、改善し ているのが分かると思います。 *5.末端動作や体重移動などの付け足しで、シコリが消えることもある  動作制限からシコリをさがした場合以外でも、シコリが操体を 始める前に見付けられたら、いわゆる圧痛操体、そのシコリを少 し痛くして逃げる動きをきっかけにする操体をすることが可能で す。  そのシコリに指を触れたまま、キッカケにした動きを一番少な い力で誘導できる方向に誘導していけば、シコリが消えた瞬間の 姿勢がタワメの間の姿勢になります。  シコリが消える前に軽い力では動かせなくなったときには、動 かしている手足の手首足首を捻転しやすいほうに捻転したり、体 重を移動しやすいほうに移動してもらうと、そのシコリが消え、 その瞬間に腹の息も深くなることが多いです。  なお、足首の場合には、捻転を意識してもらうよりも、爪先上 げをして、親指側を爪先上げしたり、小指側を爪先上げしたりし てもらうことで、捻転になるようにした方が、巧く行くことが多 いです。  また、手首足首の捻転や体重移動で巧く行かないときには、首 を気持ちよいほうに動かしてもらったりしてもよいです。 *6.つぎのシコリで新しいタワメの間になることもある  シコリを痛くすることをキッカケにした操体(写真7)で、シ コリが痛まない姿勢にはなったが、腹の息の深さや気持ち良さが 十分にならないこともあります(写真8)。 &ref(DSCF4632.jpg)写真7 &ref(DSCF4633.jpg)写真8  そういうときには、そのシコリがある筋肉のミゾや窪みを辿り、 次に凹んだ所を押してみると圧痛があることがあります(写真9)。 圧痛点がミゾの両側にあるときには、圧痛の強い方を選びます。 &ref(DSCF4638.jpg)写真9  新しく見付けたシコリを少し痛くし、その痛みから逃げる動作 をキッカケに操体していくと(写真10)、前のシコリをキッカケ にしたときよりも、腹への息や気持ち良さも十分なタワメの間が 見付かることがよくあります(写真11)。 &ref(DSCF4635.jpg)写真10 &ref(DSCF4637.jpg)写真11  こういうことがあるのは、初めにキッカケにしたシコリが、そ のときの体には一番改善したいシコリではなかったからかなと思 います。  そして、そこで十分な気持ちよさを味わえないようなら、次の ツボを探し、そこをキッカケに圧痛操体していきます(写真12)。 &ref(DSCF4643.jpg)写真12  こうしていくと、その経絡というか、そのラインというかを一 本全体的に調整することができます。  やったことがなかったらヤジウマしてみてください。 *7.おわりに  今回は、「タワメの間では目標のシコリは消える」という話を 書きました。次回は「目標のシコリにふさわしいタワメの間を予 測する」という話を書きます。今回の内容と先回の内容の組み合 わせです。  つまり、先回は、タワメの間の姿勢で力が働く所に、その時に 体が改善したい所があると書きました。それを応用すると、その 日の体の状態でポイントになっていそうなシコリが見つかった時 に、タワメの間の姿勢が予測できます。  手足を動かす操体をしていくときには、上腕・大腿部の向きに 注目します。  そして、それを利用した、目的のシコリに皮膚の操体をしなが ら、両手首・両足首と首を、そのシコリに焦点を合わせて操作す るという、5~6人でする操体についても書いていきたいと思い ます。    次へ >>> [[術伝流操体no.73]] -----    >>> 目次へ・・・・・・・・・[[術伝流操体(あ)]]    >>> このページのトップヘ・・[[術伝流操体no.72]]    >>> 術伝HPトップへ ・・・・[[トップページ]] ----- 術伝HP内検索:上の@wikiメニューの「wiki内検索」 ----- ----- *お知らせとお願い **術伝流鍼灸操体講座で患者さん役を募集  術伝流鍼灸操体講座は、実践面を重視しています。実際に症状が出て いる方の治療を見たほうが勉強になります。そこで、講座で患者さん役 をしてくださる方を募集しています。  くわしくは、[[術伝流のモデル]]をみてください。  よろしくお願いします。 **感想・間違いなど  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累積:&counter()___ 昨日:&counter(yesterday) ___今日:&counter(today) ------ 術伝流操体no.72 【6】自然則篇 (8)タワメの間とシコリ &size(24){&color(green){タワメの間とシコリ}} ------ #contents *1.はじめに  前回は「タワメの間で力が作用する先に体が治したがっている 所がある」という話を書きました。体が治したがっている所」は、 その時の「操体の焦点」です。  また、そこには、その時の「操体の改善目標」であるシコリが あります。今回は「目標とするシコリはタワメの間でどのように 変化するか」ということを書いていきます。 *2.タワメの間では、目標のシコリは消える  操体は動かして診る動診が中心です。が、触ってシコリを見付 ける触診で診ていくこともあります。代表例は、膝裏です。先ず 膝裏を探って「痛たた!」というシコリを見付けてから(写真1)、 爪先上げなどの操体をしていきますね。 &ref(DSCF4609.jpg)写真1  さて、膝裏のシコリをとる操体をしてタワメの間になったとき に、膝裏のシコリはどうなっているでしょう。触って確かめたこ とがありますか?  確かめた人ならお分かりでしょう。また、敏感な人なら、爪先 上げなどの操体を受けているときのタワメの間の状態での膝裏の 感じから気づかれていると思います。  タワメの間では、シコリは消えています。押しても痛くありま せんし、押している指先にシコった膨らみを感じることもありま せん。  まだ確かめていない人は、確かめてみることをお勧めします。 確かめるときには、定番の爪先上げ操体でもよいのですが、これ から書くやり方の方が確かめやすいです。  膝裏のシコリを確かめたら、一番痛みの強いシコリに指を当て たまま、反対側の手でその膝の延長の足首を反らせます。操者が それを強調し、膝や鼠径部に連動させていくと、踵が上がってい きます。  そして、足首を反らした状態を弛めないように注意しながら、 膝を、最も少ない力で動く方向、言い換えれば、受け手の体の抵 抗の最も少ない方向に誘導していきます(写真2)。 &ref(DSCF4610.jpg)写真2  これは、シコリを痛くして逃げる姿勢を少し強調する、いわゆ る圧痛操体の膝裏シコリ版になっています。  この操体をしていくと、ある姿勢になった所で、膝裏のシコリ の膨らみが消え、少し強めに押しても痛くない状態になります (写真3)。その姿勢ががタワメの間であることが多いです。 &ref(DSCF4611.jpg)写真3  腹に目を移してみると、たいてい大きく動いていて、息が深く なっているのが分かります。  この現象は、抵抗の少ない方向に動かしながら腹を眺めつづけ、 息が深くなった時点でシコリを確認してみるという手順でもでき ます。  しかし、後者の場合でも、この操体を始めた時から目標のシコ リに手を触れていないと、分かりにくいと思います。人によって、 シコリの変化が分かりやすい人と息の変化が分かりやすい人がい るので、得意な方で確認するとよいでしょう。  そして、仰向け膝立の姿勢に戻って確認してみると、シコリは 余り痛くなくなっています(写真4)。 &ref(DSCF4613.jpg)写真4 *2.目標のシコリには、タワメの間で一番、力が作用する  定番の操体には、膝裏のシコリ以外は操体を始める前にシコリ を確認する習慣はあまりないようです。  『万病を治せる妙療法 操体法』には、首の操体のときのシコリ、 眩暈(めまい)のときの背中のシコリ、仰向け膝倒しときの仙蝶 関節のシコリ、踵踏み込みのときの大転子あたりのシコリ、腹痛 のときの背中のシコリなどが書いてあります。  が、確認を取りながら操体していますか?  そういう定番以外でも、ある特定のタワメの間になったときに は、体が治したがっているシコリがあります。必ずといって良い 位です。そのシコリは、先回書いたライン上にあり、ラインが二 つ以上あるときには、その二つのラインが交わる交点になります。  もう少し簡単に言うと、タワメの間で体の動きがほぼ止まった 姿勢を眺めて、最も伸びようとしているライン、最も縮もうとし ているライン上にあることが多いです。  次に可能性があるのは、最も上のラインか、最も下のライン、 つまり、体重を最も受けないラインと、最も受けるラインです。  そして、伸び縮みのそれぞれのラインの中では、伸びているラ インの中の最も伸びようとしている所、縮んでいるラインの中の 最も縮もうとしている所が焦点になります。つまり、そういう所 が、その時の操体のタワメの間を利用して、体が治そうとしてい る所になるように思います。  別の言い方をすれば、タワメの間の姿勢で、最も力が作用する 所に、その操体で体が治したがっている焦点があります。逆に言 えば、タワメの間では、治したい所に、最も力が働くような姿勢 を暫く維持しているということになります。  仰向け膝立での定番の爪先上げ操体や、その圧痛操体版では、 膝裏シコリは、最も縮むラインの最も縮む所になります。圧痛操 体のタワメの間(写真5)では縮むラインということが分かりや すいです。 &ref(DSCF4612.jpg)写真5  が、定番のつま先上げのタワメの間(写真6)では、最も縮む ラインということが分かりにくいと思います。これは、定番の爪 先上げのタワメの間では、最も縮むラインが等尺性収縮になって いるためです。 &ref(DSCF4624.jpg)写真6  実際に、膝裏シコリに指を当てながら定番の爪先上げ操体をし てみると、タワメの間に近づくにつれ、指を当てているシコリの 周りの筋肉が縮み、膨らんできます。そして、タワメの間では、 その膨らんでくる周りの筋肉に埋もれるように、シコリが消えて いきます。 *3.あるシコリを改善する操体を見つけることも可能  タワメの間になったら、上に書いたような見方を利用して、そ の時の焦点となるシコリを探します。  また、逆に、膝裏以外のシコリでも、そのシコリを改善するた めの操体(のタワメの間)を探していく時に、この現象を利用す ることもできます。  例えば、五十肩などで動作制限がある場合です。先ず、制限の ある動作を痛む直前までやってもらいます。その時の痛む直前の 姿勢で、一番、伸びようとしているラインと縮もうとしているラ インに目をつけます。  上腕部の動いていく軌跡の延長、つまり、上腕の延長ラインか、 それと直角の、上腕の捻転する力が伝わるラインか、そのどちら かになる可能性が高いです。  すると、多くの場合、そのラインは、皮膚表面上にミゾになっ て見えます。見えない場合は、上腕骨の延長ラインか直交ライン を目安にミゾを見付けます。  そのミゾを辿っていって、そのミゾの中で、一番凹んだ所を見 付けます。そこを押すと、圧痛があり、ツボになっているのが分 かります。詳しく調べると、シコリが見つかります。  服を脱いでもらえば分かりやすいですが、着たままでも服にで きるシワなどを参考にすれば探せると思います。  ツボのあるラインが皮膚表面上にミゾとして見えるのは、その 時の姿勢動作では本来は伸びるべき筋肉の中にシコリがあるので、 表面の皮膚がその部分だけシコリのある部分に引っ張られるため ではないかと思います。  腕を高く挙げる場合など、腕の動作は、ある限度(水平よりも 上)を過ぎると、肩甲骨を動かして動作しているので、ツボやシ コリが肩甲骨の周りに出ることが多くなります。  また、腕を水平よりも下にしか挙げられない時には、脇の下ま わりにシコリがあって、そこが伸びないので腕が挙げられないこ とが多いです。  こういう場合にも、痛い手前まで制限のある動作をすると、肩 甲骨周囲や、脇の下から上腕の手の平側にミゾが見えますから、 その中で、一番凹んだ辺りを探すと、ツボやシコリが見付かりま す。  さて、見付けたシコリに指先を当てたまま制限のある動作の逆 モーションの動きをやってもらいます。受け手が自分では上手に 動かせないときには、操者が空いている方(シコリに指を当てて いない方)の手で誘導してあげます。  その時には、一番少ない力で誘導できる方向を探しながら動か していくのがコツです。そして、軽い力では動かせなくなったら、 逆モーション運動を止めます。  その後、手首の捻転や体重移動などを付け足してみると、少し 余分に逆モーション運動できると思います。手首捻転は、二つの 方向への捻転を試して捻転しやすい方向を見付けます。そして、 捻転しやすい方に捻転してから、逆モーション運動が少し余分に できないか、やってみます。  体重移動は、体重を移動しやすい方向に移動すると、逆モーショ ン運動が少し余分にできることが多いです。その時の肩甲間部の 背骨にどういう力が伝わっているか考え、それがやりやすい体重 移動をしてみてもよいですが、どちらの方向に体重が移動しやす いか試してみるほうが簡単です。  以上の3つの動き、逆モーションと二つの強調(手首捻転と体 重移動)をしてみた後で、腹の息の深さを観察しながら、気持ち よい動きかどうか聞いてみたりします。  そういう操体をしている間、ずっと、シコリに当てた指先で、 シコリの様子を観察し続けます。少しの力で動く範囲で止めた瞬 間か、手首捻転や体重移動でもう少し余分に動かした瞬間に、シ コリが消えるのが観察できると思います。  この現象は、どんな操体でも、目標とするシコリに焦点が当た るようなタワメの間が作れた時には、必ず起きる現象のようです。 シコリを見付け、そのシコリを目標とする操体をしていくときに は、利用できると思います。  そういうシコリが消えているタワメの間の姿勢を、腹の息が普 通に近くなるまで、または、移動した体重を戻したくなったり、 タワメの間の姿勢を変えたくなるまで、あるいは、何となく感じ られる気持ちよさが感じられなくなるまで、4つ書いた、そうい う状態になるまでタワメの間の姿勢を維持し続けます。  そして、その姿勢を止めてラクな姿勢に戻ってからシコリを観 察してみます。そのラクな姿勢では操体前には指で確認できたシ コリが消えているのが分かります。  つまり、その操体をする前にはシコリがあって押すと痛かった 姿勢でも、シコリが消えた状態になっています。 *4.シコリを触りながら操体すると、丁度よいタワメの間が見付けやすい  この方法で肩まわりの動作制限に効果的な操体をしてみると、 普段している逆モーションよりも少ない動きのでシコリが消える ことが、かなり、あります。  要するに、普段はやりすぎというか、逆モーションを意識しす ぎて、また、抵抗を感じるまで動かそうとしすぎて、実際には、 タワメの間となる姿勢を通り越したり、逆モーションの軌道から 外れて動かしている場合がかなり有るということだと思います。  肩関節は自由度が大きく、色々な方向に様々な動かし方ができ るので、肩周りの可動域制限への操体は、操体の中では難しいと されているようです。  その理由の一つは、今、書いたように、ちょっと動かしすぎた り、逆モーションの軌道から外れた方向に動かしたりしている可 能性が高いのかもしれません。  このシコリに触りながら操体してみる方法は、前に書いた反対 側の手で、やりにくい動作をしてみることをキッカケにする操体 でも使えます。  動作制限のある患側の患部のシコリに指を当てながら、反対側 の健側の手で制限のある動作と同じ動きをしてもらうと、やはり、 ある程度動かしたところでシコリが消えます。  腹に見ると息が深くなっていて、タワメの間になっているのが 観察できると思います。もちろん、手首の捻転や体重移動を付け 加えると、その瞬間にシコリが消えることがあるというのも、同 じです。  また、ラクな姿勢に戻ってシコリがあった所を押すと、改善し ているのが分かると思います。 *5.末端動作や体重移動などの付け足しで、シコリが消えることもある  動作制限からシコリをさがした場合以外でも、シコリが操体を 始める前に見付けられたら、いわゆる圧痛操体、そのシコリを少 し痛くして逃げる動きをキッカケにする操体をすることが可能で す。  そのシコリに指を触れたまま、キッカケにした動きを一番少な い力で誘導できる方向に誘導していけば、シコリが消えた瞬間の 姿勢がタワメの間の姿勢になります。  シコリが消える前に軽い力では動かせなくなったときには、動 かしている手足の手首足首を捻転しやすい方に捻転したり、体重 を移動しやすいほうに移動してもらうと、そのシコリが消え、そ の瞬間に腹の息も深くなることが多いです。  なお、足首の場合には、捻転を意識してもらうよりも、爪先上 げをして、親指側を爪先上げしたり、小指側を爪先上げしたりし てもらうことで、捻転になるようにした方が、巧く行くことが多 いです。  また、手首足首の捻転や体重移動で巧く行かないときには、首 を気持ちよい方に動かしてもらったりしてもよいです。 *6.次のシコリで新しいタワメの間になることもある  シコリを痛くすることをキッカケにした操体(写真7)で、シ コリが痛まない姿勢にはなったが、腹の息の深さや気持ち良さが 十分にならないこともあります(写真8)。 &ref(DSCF4632.jpg)写真7 &ref(DSCF4633.jpg)写真8  そういうときには、そのシコリがある筋肉のミゾや窪みを辿り、 次に凹んだ所を押してみると圧痛があることがあります(写真9)。 圧痛点がミゾの両側にあるときには、圧痛の強い方を選びます。 &ref(DSCF4638.jpg)写真9  新しく見付けたシコリを少し痛くし、その痛みから逃げる動作 をキッカケに操体していくと(写真10)、前のシコリをキッカケ にしたときよりも、腹への息や気持ち良さも十分なタワメの間が 見付かることがよくあります(写真11)。 &ref(DSCF4635.jpg)写真10 &ref(DSCF4637.jpg)写真11  こういうことがあるのは、初めにキッカケにしたシコリが、そ のときの体には一番改善したいシコリではなかったからかなと思 います。  そして、そこで十分な気持ちよさを味わえないようなら、次の ツボを探し、そこをキッカケに圧痛操体していきます(写真12)。 &ref(DSCF4643.jpg)写真12  こうしていくと、その経絡というか、そのラインというかを一 本全体的に調整することができます。  やったことがなかったらヤジウマしてみてください。 *7.おわりに  今回は、「タワメの間では目標のシコリは消える」という話を 書きました。次回は「目標のシコリにふさわしいタワメの間を予 測する」という話を書きます。今回の内容と先回の内容の組み合 わせです。  つまり、先回は、タワメの間の姿勢で力が働く所に、その時に 体が改善したい所があると書きました。それを応用すると、その 日の体の状態でポイントになっていそうなシコリが見つかった時 に、タワメの間の姿勢が予測できます。  手足を動かす操体をしていくときには、上腕・大腿部の向きに 注目します。  そして、それを利用した、目的のシコリに皮膚の操体をしなが ら、両手首・両足首と首を、そのシコリに焦点を合わせて操作す るという、5~6人でする操体についても書いていきたいと思い ます。    次へ >>> [[術伝流操体no.73]] -----    >>> 目次へ・・・・・・・・・[[術伝流操体(あ)]]    >>> このページのトップヘ・・[[術伝流操体no.72]]    >>> 術伝HPトップへ ・・・・[[トップページ]] ----- 術伝HP内検索:上の@wikiメニューの「wiki内検索」 ----- ----- *お知らせとお願い **術伝流鍼灸操体講座で患者さん役を募集  術伝流鍼灸操体講座は、実践面を重視しています。実際に症状が出て いる方の治療を見たほうが勉強になります。そこで、講座で患者さん役 をしてくださる方を募集しています。  くわしくは、[[術伝流のモデル]]をみてください。  よろしくお願いします。 **感想・間違いなど  感想などあったり、間違いなど見つけた方は、[[術伝事務局>jutsuden-jmkk@googlegroups.com]]あてにメールをください。  よろしくお願いします。 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