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累積:&counter()___ 昨日:&counter(yesterday) ___今日:&counter(today) ------ &color(green){術伝流一本鍼no.55 (術伝流・養生の一本鍼・応用編(7))} &bold(){&size(24){&color(green){生理痛から安産・産後まで}}} ------ #contents *1.はじめに  女性に特有のさまざまな症状や体の状態について取り上げま す。妊娠出産、および子宮などの生殖器に関係するものです。  これらの女性特有の病の東洋医学(日本伝統医学)的な要因 は、主に瘀血と骨盤です。どちらも下焦の問題です。骨盤につ いては、可動域制限、特に、その左右差が主な要因になります。 それから、下焦の虚や冷えも関係します。  また、下焦の邪毒から発生する邪気の上衝による症状も多く 見られます。悪阻(つわり)、乳腺炎、更年期のホットフラッ シュなどです(図1)。 &ref(hujinka-zu1b.jpg)図1  ですから、良くしていく手段も、瘀血の排出と骨盤の可動域 の改善の2つです。特に、慢性期の養生においては、この2つ がポイントになります。  生理痛や生理不順のに関係する瘀血の排出については、病証 篇に書きました。 ([[術伝流一本鍼no.48]])  骨盤の可動域の改善には、骨盤に繋がる筋肉を丁寧に調べて みる必要があります。中でも、脊柱起立筋の腰部分の外寄り (一番外側が多い)に出る筋張り(スジバリ)は関係が深いで す。江戸時代には、この筋張りへの刺鍼は、「子安の鍼」と呼 ばれていたようです。  上衝する邪気による症状への対処は、上衝を下げること、症 状の出ている所の歪みや痼りを改善すること、その2つが必要 になります。 *2.ツボが出やすい所、狙い目(図2) &ref(hujinka-zu2.jpg)図2  改善すべきポイントは、下腹部、第3腰椎より下の腰部~殿 部、それらと関係する足のツボの3つです。  下腹部は、主に、瘀血を始め、虚や冷えにも関係します。腰 殿部は、瘀血と骨盤の可動域の両方に関係します。 **2.1.下腹部  下腹の正中線の近くの任脈~腎経の辺りと、骨盤の腹側の2 か所が中心になります。任脈と腎経では、関元~曲骨、下肓兪~ 横骨。骨盤の腹側では、五枢維道~衝門~気衝。  腹の胃経にも出ることもあります。大巨~気衝など。そのた め、下腹部全体を見るようにします。  未病の期間が長くなり、骨盤の腹側の部分で支えきれない場 合には、腹からズレて大腿側の居髎にも出ることもあります。  また、背中側の筋張りの関係から上腹部の章門も使うことも あります。 追記:20170201ーーー 瘀血の腹診ポイント ーーー  此処に書いた瘀血の古いツボの出やすい所のうち、下肓兪と 五枢維道の2つは、私が沢山の瘀血の患者さんを診た結果を帰 納したものです。が、漢方医の寺澤捷年先生の『和漢診療学』 を読んだら、ほぼ同じ所が出ていて、ビックリすると同時に、 嬉しかったです。 [[『和漢診療学』の読書メモ>http://d.hatena.ne.jp/kuhuusa-raiden/20160713]] ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー **2.2.腰殿部  腰殿部も全体を見る必要がありますが、ポイントは2つです。 1つ目は、腰部脊柱起立筋の外側、痞根~腰徹腹です。2つ目 は、仙蝶関節稜(仙骨と蝶骨の関節部)です。  それらを中心に、それらに繋がる筋肉や腹の痼りとの関係か らツボを探します。  また、八髎穴にも、仙腸関節稜との関係で出ることがありま す。 **2.3.下焦に関連する足  腹、腰殿部、瘀血、骨盤の可動性という視点からツボを探し ます。  陰経は、厥陰に多いですが、少陰や太陰にも出ます。厥陰で は、蠡溝~太衝、足五里~陰包。少陰では、大鐘~照海、下陰 谷。太陰では、血海。慢性期が長い人が多いので、大腿部にツ ボが出ていることも多いです。  浮腫や蛋白尿の人は、妊娠中毒予防として、陰谷、築賓、復 溜も見ます。  陽経は、腹の痼りや骨盤の可動性との関係から、伏兎や風市 の辺りを探します。  冷えがあるときは、足甲3~4間にツボが出やすいです。  浮腫のときは、失眠に出やすいです。灸をします。 **2.4.症状別に、特に出やすい所 ***①悪阻(つわり)  悪阻では、内関や膻中、薬指の周りに出ていることが多いで す。 追記:深谷灸法では、膻中など「胸部任脈の腹の中に強い響き、 もしくは放散性の圧痛がある点を選ぶ」とあり、また、膻中の 裏側の「神道(〜霊台)、そして膻中・神道の打ち抜きの灸」 もありました。  胃の噴門の少し上の胸および背中側を利用ということかなと 思います。 (FBに、裏内庭の多荘灸で改善という症例報告も有りました) (裏内庭は食中毒の名灸穴、胴の目標が近くだからでしょう) ***②逆子  逆子には、骨盤の可動性、特に、仙蝶関節の可動性に関係す るようです。  そのためか、左右どちらかの仙蝶関節の周りが炎症気味のこ とが多いです。仙腸関節の辺りの殿部左右を触って、温度差が ないか確かめます ***③安産  安産には、痞根~腰徹腹の筋張り、足の4指小指の周り。 ***④乳腺炎  乳は、大雑把に言えば、血液から赤血球を除き、乳房の脂肪 を混ぜたものです。  乳腺炎は、乳房と肋骨の間の大胸筋などに痼りができて、そ のため、その辺りから乳頭への血行が悪くなっていることが大 きな原因のようです。少ない血液に沢山の脂肪を混ぜようとし て、ドロドロになって血管が詰まり、炎症を起こすようです。  乳房の裾野を乳房と肋骨の間に向かって押して、痛い所を調 べます。中府(肩)の近くとその対角に多いです。が、酷い人 は、片側の乳房の裾野に数カ所見付かることもあります。  乳腺炎を起こしているときなら、詰まっている所の延長線上 の裾野に痼りがあります。そこを弛めると改善します。  乳房の裾野にツボが出ているときには、前後反対の背中側の 肩甲骨の周りと天宗にもツボが出ます。  さらに、足陽明の下腿〜足甲に出ているツボ(足三里、内庭 など)に透熱灸して、乳房の熱を降ろすと、より改善しやすい です。  また、血液がドロドロだと乳腺炎になりやすいので、次の2 つの点を確認し、改善します。 血液ドロドロ1:水分不足  特に、夏場に注意。自然海水塩を溶かした水を飲む。塩分濃 度は、吸い物や味噌汁の程度。 血液ドロドロ2:化学合成物や高度精製物が多い  食品中の化学合成物や高度精製物を減らす。化学合成物は、 色々な食品添加物、化学調味料、人工甘味料など。高度精製物 は、白砂糖、精製小麦粉、白米など。 ***⑤不妊、不育  不妊や不育には、逆子や安産と同じ所を中心に、腹部や足に 古いツボが出ていないか、探します。 *3.手順など **3.1.基本的な手順  基本的には慢性期の型をします。1回目は、慢性期の型で鍼 をした後、冷えや虚のツボに灸します。2回目以降は、鍼のみ で変わりにくいツボがあったら、だんだん、灸や灸頭鍼の割合 を増やしていきます。  慢性期中心になりますが、以下は、応急処置のポイントです。 **3.2.症状別の応急処置など  悪阻(つわり)や乳腺炎などでは、上衝を治めるのがポイン トです。そのため、内科系急性期の上焦や中焦に準じた手順で 鍼灸します。終わりに、頭に散鍼して、手足陽明に引きます。 手足陽明に出ているツボに透熱灸をしても、上衝を下ろせます。 ***①悪阻(つわり)  悪阻は、薬指を反らすとサッと吐いてしまって改善すること も多いです。吐く物が無くても、吐き気という気配(邪気)を 無くすことができれば、治まるようです。 追記:ーーー  それで収まらない場合は、胃の噴門辺りを中心に(胸部 も含め)腹診し、その背中側も診て、出ているツボを見付け、 内科系急性期の手順で鍼灸すると良いです。  例えば、仰向けで(上衝があるなら合谷→)内関→前腕少陽→ 左横腹上半分→(膻中:服の上から接触鍼→)鳩尾~中脘の左 側→左地機→脛骨直ぐ脇(足三里~豊隆)、うつ伏せで華佗経 (胸椎5〜7~9)→承筋~承山、座位で頭散鍼→手甲  詳しくは、内科系急性期を参照してください。 [[術伝流一本鍼no.24]]  上焦の急性症状  [[術伝流一本鍼no.25]]  中焦の急性症状 ーーー ***②乳腺炎  乳腺炎は、ポイントの乳房の裾野を、肩甲骨の周りと同じよ うな刺し方で弛めるのがコツです。乳房と肋骨の間の筋肉内の 痼りを目指して、鍼の向きは乳首、皮膚には20度位の斜刺で、 刺鍼します。  また、上衝も関係していることが多いので、上衝があるよう なら、手足陽明にツボを探して鍼灸し改善します。  そして、乳房の裾野の乳房と肋骨の間の筋肉内の痼りは、患 者さん本人にマッサージするよう伝えます。 ***③更年期  更年期のホットフラッシュの急性期も、上焦を治めると改善 します。居髎など腹の近くの足のツボが有効なことが多いです。  もちろん、普通の上衝で使う、もう少し末端の手足陽明のツ ボも組み合わせます。頭に熱い所があれば、散鍼もします。  詳しくは、以下を参照してください。 [[術伝流一本鍼no.44]]  病証(3)陽明の病 ***④逆子  逆子の応急処置では、ポイントの仙腸関節の炎症を鎮め、可 動性を良くするために、その部分に散鍼や刺鍼をします。その 処置の前後に、足の4指小指などのツボに引きます。  至陰はじめ、三陰交と足三里などへの灸で改善例もあります。  また、仰向け寝からの「膝の内倒しの操体」と「腹部の皮膚 操体」の併用も効果が高いです。また、この方法は、産後太り の改善にも効果的です。 &bold(){膝の内倒しの操体+腹部の皮膚操体} (1)仰向け膝立の姿勢で、足を腰幅より少し広めに開きます。    膝は立てたまま。 (2)その姿勢から、左右の膝を交互に反対側の足の内側に倒    してみて、倒しやすい方、イイ感じのする方を選びます。    選んだ方に少し余分に倒します。皮膚操体でも良いです。 (3)臍周りに手平を当て、皮膚の右回しズラしと左回しズラ    しを試してみて、イイ感じの方を選びます。そして、選    んだ方に少し余分にズラします。 (4)患者さんに体の中の状態に注意を向けるように伝え、変    化が有ったら、言ってもらいます。子宮の中の赤ちゃん    が動いていくのが分かることが多いです。 (5)体の中の動きが止まったり、姿勢を変えたくなったりし    たら、止めます。 (*)次の診察で逆子なら手術と言われた人に何とかならない    かと頼まれたことがあります。その診察の3日ほど前に    左右の仙腸関節を観察したら、温度差が大きかったです。    そこで、操体をしたら、している最中に赤ちゃんが動い    ていると言うことでした。次の診察の時には正常とのこ    とで、帝王切開を避けることができたとの連絡がありま    した。詳しくは以下を見てください。    「逆子+つわり」[[操体症例問答no.2]] (☆)「膝の打倒し」は産後太りにも有効です。  産後太りは、逆子の場合と同じで、骨盤の開き具合の左右差が 原因のことが多いです。骨盤の開き具合の左右差が有ると腰の 部分が丸く太りやすいからです。骨盤の開き具合の左右差を改 善すると、腰周りが丸く太ることは少なく成ります。 ***⑤安産  安産のためには、骨盤や産道の可動性を良くするのがポイン トです。  鍼灸では、痞根~腰徹腹の筋張りなどが狙い目です。そこへ の施術の前後に、足4指小指などに引きます。  足4指小指の指揉みも効果的です。  また、陣痛が起きて病院へ行くときに、痞根~腰徹腹、足4 指小指などに出ているツボ、三陰交、上仙などに、円皮鍼など を貼ることを勧める先生もいます。 ***⑥不妊  不妊は、先ずは、生理痛や生理不順を改善します。次に、逆 子や安産と同じポイントことを中心に、腹部や足の経絡も使っ て、体の歪みを少なくしてきます。長期になることが多いので、 あせらず、じっくり取り組みます。  生理痛や生理不順のに関係する瘀血の排出については、病証 篇に書きました。 (病証(7)下焦の病:[[術伝流一本鍼no.48]]) *4.養生の指導も大切  養生の指導、冷えの改善や食養も大切です。  冷えには、靴下の重ね履きなどして、下半身が冷えないよう にします。湯たんぽも活用します。  食養は、カタカナ主食から和食へ切り替えるよう勧めるのが 基本です。化学合成物や高度精製物を減らし、丸事食や発酵食 品を増やします。丸事食は、未精製の玄米・全粒粉・豆類など や、小魚・貝など。野菜も皮を可能な限り食べます。発酵食品 は、漬物、味噌、醤油、酒粕、納豆など。  赤ちゃんを育てるには、勘の良さが必要です。操体などで、 勘の良さを育むのも良いと思います。  例えば、生理痛を軽減する灸の事は以下に書きました。この 灸は、生理不順や不正出血にも効果的です。 [[腹痛や生理痛の慢性期の養生に爪上の温灸>https://www26.atwiki.jp/jutsuden/pages/254.html#id_c03a6676]]  それ以外の養生については、[[養生生活の基本]]を参考にして ください。 *5.おわりに  今回のテーマの写真が撮れていません。この写真と動画を撮 らしてくださるモデル患者さんを募集しています。その方が分 かりやすいと思いますので。でも、難しいことかもしれません。 (瘀血の写真付き症例>>>[[術伝流一本鍼no.48]])  女性同士で練習してみてください。今回書いた所は、女性に は、症状が出ていなくても、ツボが出ていることが多いです。 そういうツボを探し合うだけでも勉強になりますし、体全体の 養生にもなりますから。  そして、患者さんも多いです。女性鍼灸師が身に付けて損の ない分野と思います。    次へ>>>[[術伝流一本鍼no.56]] -----    >>>目次へ・・・・・・・・・[[術伝流一本鍼(あ)]]    >>>このページのトップヘ・・[[術伝流一本鍼no.55]]    >>>術伝HPトップへ ・・・・[[トップページ]] ----- 術伝HP内検索:上の@wikiメニューの「wiki内検索」 ----- ----- *お知らせとお願い **術伝流鍼灸操体講座で患者さん役を募集  術伝流鍼灸操体講座は、実践面を重視しています。実際に症状が出て いる方の治療を見たほうが勉強になります。そこで、講座で患者さん役 をしてくださる方を募集しています。  くわしくは、[[術伝流のモデル]]をみてください。  よろしくお願いします。 **感想など  感想などありましたら、[[「術伝」掲示板>http://jutsuden.bbs.fc2.com/]]に書いてください。  また、「術伝」掲示板でも、旧掲示板「養生の杜」と同じように、 養生についての雑談や症例相談などもしていきたいと思っています。  よろしくお願いします。 **間違いなど  間違いなど見つけた方は、[[術伝事務局>jutsuden-jmkk@yahoogroups.jp]]あてにメールをください。  よろしくお願いします。 **「術伝」症例相談用メーリングリストの参加者募集  「術伝」では症例相談用メーリングリスト( [[術伝ML(muchukand)>http://groups.yahoo.co.jp/group/muchukand/]])の 参加者を募集しています。  よろしくお願いします。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ----    >>>術伝HPトップへ ・・・・[[トップページ]] ----
累積:&counter()___ 昨日:&counter(yesterday) ___今日:&counter(today) ------ &color(green){術伝流一本鍼no.55 (術伝流・養生の一本鍼・応用編(7))} &bold(){&size(24){&color(green){生理痛から安産・産後まで}}} ------ #contents *1.はじめに  女性に特有のさまざまな症状や体の状態について取り上げま す。妊娠出産、および子宮などの生殖器に関係するものです。  これらの女性特有の病の東洋医学(日本伝統医学)的な要因 は、主に瘀血と骨盤です。どちらも下焦の問題です。骨盤につ いては、可動域制限、特に、その左右差が主な要因になります。 それから、下焦の虚や冷えも関係します。  また、下焦の邪毒から発生する邪気の上衝による症状も多く 見られます。悪阻(つわり)、乳腺炎、更年期のホットフラッ シュなどです(図1)。 &ref(hujinka-zu1b.jpg)図1  ですから、良くしていく手段も、瘀血の排出と骨盤の可動域 の改善の2つです。特に、慢性期の養生においては、この2つ がポイントになります。  生理痛や生理不順のに関係する瘀血の排出については、病証 篇に書きました。 ([[術伝流一本鍼no.48]])  骨盤の可動域の改善には、骨盤に繋がる筋肉を丁寧に調べて みる必要があります。中でも、脊柱起立筋の腰部分の外寄り (一番外側が多い)に出る筋張り(スジバリ)は関係が深いで す。江戸時代には、この筋張りへの刺鍼は、「子安の鍼」と呼 ばれていたようです。  上衝する邪気による症状への対処は、上衝を下げること、症 状の出ている所の歪みや痼りを改善すること、その2つが必要 になります。 *2.ツボが出やすい所、狙い目(図2) &ref(hujinka-zu2.jpg)図2  改善すべきポイントは、下腹部、第3腰椎より下の腰部~殿 部、それらと関係する足のツボの3つです。  下腹部は、主に、瘀血を始め、虚や冷えにも関係します。腰 殿部は、瘀血と骨盤の可動域の両方に関係します。 **2.1.下腹部  下腹の正中線の近くの任脈~腎経の辺りと、骨盤の腹側の2 か所が中心になります。任脈と腎経では、関元~曲骨、下肓兪~ 横骨。骨盤の腹側では、五枢維道~衝門~気衝。  腹の胃経にも出ることもあります。大巨~気衝など。そのた め、下腹部全体を見るようにします。  未病の期間が長くなり、骨盤の腹側の部分で支えきれない場 合には、腹からズレて大腿側の居髎にも出ることもあります。  また、背中側の筋張りの関係から上腹部の章門も使うことも あります。 追記:20170201ーーー 瘀血の腹診ポイント ーーー  此処に書いた瘀血の古いツボの出やすい所のうち、下肓兪と 五枢維道の2つは、私が沢山の瘀血の患者さんを診た結果を帰 納したものです。が、漢方医の寺澤捷年先生の『和漢診療学』 を読んだら、ほぼ同じ所が出ていて、ビックリすると同時に、 嬉しかったです。 [[『和漢診療学』の読書メモ>http://d.hatena.ne.jp/kuhuusa-raiden/20160713]] ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー **2.2.腰殿部  腰殿部も全体を見る必要がありますが、ポイントは2つです。 1つ目は、腰部脊柱起立筋の外側、痞根~腰徹腹です。2つ目 は、仙蝶関節稜(仙骨と蝶骨の関節部)です。  それらを中心に、それらに繋がる筋肉や腹の痼りとの関係か らツボを探します。  また、八髎穴にも、仙腸関節稜との関係で出ることがありま す。 **2.3.下焦に関連する足  腹、腰殿部、瘀血、骨盤の可動性という視点からツボを探し ます。  陰経は、厥陰に多いですが、少陰や太陰にも出ます。厥陰で は、蠡溝~太衝、足五里~陰包。少陰では、大鐘~照海、下陰 谷。太陰では、血海。慢性期が長い人が多いので、大腿部にツ ボが出ていることも多いです。  浮腫や蛋白尿の人は、妊娠中毒予防として、陰谷、築賓、復 溜も見ます。  陽経は、腹の痼りや骨盤の可動性との関係から、伏兎や風市 の辺りを探します。  冷えがあるときは、足甲3~4間にツボが出やすいです。  浮腫のときは、失眠に出やすいです。灸をします。 **2.4.症状別に、特に出やすい所 ***①悪阻(つわり)  悪阻では、内関や膻中、薬指の周りに出ていることが多いで す。 追記:深谷灸法では、膻中など「胸部任脈の腹の中に強い響き、 もしくは放散性の圧痛がある点を選ぶ」とあり、また、膻中の 裏側の「神道(〜霊台)、そして膻中・神道の打ち抜きの灸」 もありました。  胃の噴門の少し上の胸および背中側を利用ということかなと 思います。 (FBに、裏内庭の多荘灸で改善という症例報告も有りました) (裏内庭は食中毒の名灸穴、胴の目標が近くだからでしょう) ***②逆子  逆子には、骨盤の可動性、特に、仙蝶関節の可動性に関係す るようです。  そのためか、左右どちらかの仙蝶関節の周りが炎症気味のこ とが多いです。仙腸関節の辺りの殿部左右を触って、温度差が ないか確かめます ***③安産  安産には、痞根~腰徹腹の筋張り、足の4指小指の周り。 ***④乳腺炎  乳は、大雑把に言えば、血液から赤血球を除き、乳房の脂肪 を混ぜたものです。  乳腺炎は、乳房と肋骨の間の大胸筋などに痼りができて、そ のため、その辺りから乳頭への血行が悪くなっていることが大 きな原因のようです。少ない血液に沢山の脂肪を混ぜようとし て、ドロドロになって血管が詰まり、炎症を起こすようです。  乳房の裾野を乳房と肋骨の間に向かって押して、痛い所を調 べます。中府(肩)の近くとその対角に多いです。が、酷い人 は、片側の乳房の裾野に数カ所見付かることもあります。  乳腺炎を起こしているときなら、詰まっている所の延長線上 の裾野に痼りがあります。そこを弛めると改善します。  乳房の裾野にツボが出ているときには、前後反対の背中側の 肩甲骨の周りと天宗にもツボが出ます。  さらに、足陽明の下腿〜足甲に出ているツボ(足三里、内庭 など)に透熱灸して、乳房の熱を降ろすと、より改善しやすい です。  また、血液がドロドロだと乳腺炎になりやすいので、次の2 つの点を確認し、改善します。 血液ドロドロ1:水分不足  特に、夏場に注意。自然海水塩を溶かした水を飲む。塩分濃 度は、吸い物や味噌汁の程度。 血液ドロドロ2:化学合成物や高度精製物が多い  食品中の化学合成物や高度精製物を減らす。化学合成物は、 色々な食品添加物、化学調味料、人工甘味料など。高度精製物 は、白砂糖、精製小麦粉、白米など。 ***⑤不妊、不育  不妊や不育には、逆子や安産と同じ所を中心に、腹部や足に 古いツボが出ていないか、探します。 *3.手順など **3.1.基本的な手順  基本的には慢性期の型をします。1回目は、慢性期の型で鍼 をした後、冷えや虚のツボに灸します。2回目以降は、鍼のみ で変わりにくいツボがあったら、だんだん、灸や灸頭鍼の割合 を増やしていきます。  慢性期中心になりますが、以下は、応急処置のポイントです。 **3.2.症状別の応急処置など  悪阻(つわり)や乳腺炎などでは、上衝を治めるのがポイン トです。そのため、内科系急性期の上焦や中焦に準じた手順で 鍼灸します。終わりに、頭に散鍼して、手足陽明に引きます。 手足陽明に出ているツボに透熱灸をしても、上衝を下ろせます。 ***①悪阻(つわり)  悪阻は、薬指を反らすとサッと吐いてしまって改善すること も多いです。吐く物が無くても、吐き気という気配(邪気)を 無くすことができれば、治まるようです。 追記:ーーー  それで収まらない場合は、胃の噴門辺りを中心に(胸部 も含め)腹診し、その背中側も診て、出ているツボを見付け、 内科系急性期の手順で鍼灸すると良いです。  例えば、仰向けで(上衝があるなら合谷→)内関→前腕少陽→ 左横腹上半分→(膻中:服の上から接触鍼→)鳩尾~中脘の左 側→左地機→脛骨直ぐ脇(足三里~豊隆)、うつ伏せで華佗経 (胸椎5〜7~9)→承筋~承山、座位で頭散鍼→手甲  詳しくは、内科系急性期を参照してください。 [[術伝流一本鍼no.24]]  上焦の急性症状  [[術伝流一本鍼no.25]]  中焦の急性症状 ーーー ***②乳腺炎  乳腺炎は、ポイントの乳房の裾野を、肩甲骨の周りと同じよ うな刺し方で弛めるのがコツです。乳房と肋骨の間の筋肉内の 痼りを目指して、鍼の向きは乳首、皮膚には20度位の斜刺で、 刺鍼します。  また、上衝も関係していることが多いので、上衝があるよう なら、手足陽明にツボを探して鍼灸し改善します。  そして、乳房の裾野の乳房と肋骨の間の筋肉内の痼りは、患 者さん本人にマッサージするよう伝えます。 ***③更年期  更年期のホットフラッシュの急性期も、上焦を治めると改善 します。居髎など腹の近くの足のツボが有効なことが多いです。  もちろん、普通の上衝で使う、もう少し末端の手足陽明のツ ボも組み合わせます。頭に熱い所があれば、散鍼もします。  詳しくは、以下を参照してください。 [[術伝流一本鍼no.44]]  病証(3)陽明の病 ***④逆子  逆子の応急処置では、ポイントの仙腸関節の炎症を鎮め、可 動性を良くするために、その部分に散鍼や刺鍼をします。その 処置の前後に、足の4指小指などのツボに引きます。  至陰はじめ、三陰交と足三里などへの灸で改善例もあります。  また、仰向け寝からの「膝の内倒しの操体」と「腹部の皮膚 操体」の併用も効果が高いです。また、この方法は、産後太り の改善にも効果的です。 &bold(){膝の内倒しの操体+腹部の皮膚操体} (1)仰向け膝立の姿勢で、足を腰幅より少し広めに開きます。    膝は立てたまま。 (2)その姿勢から、左右の膝を交互に反対側の足の内側に倒    してみて、倒しやすい方、イイ感じのする方を選びます。    選んだ方に少し余分に倒します。皮膚操体でも良いです。 (3)臍周りに手平を当て、皮膚の右回しズラしと左回しズラ    しを試してみて、イイ感じの方を選びます。そして、選    んだ方に少し余分にズラします。 (4)患者さんに体の中の状態に注意を向けるように伝え、変    化が有ったら、言ってもらいます。子宮の中の赤ちゃん    が動いていくのが分かることが多いです。 (5)体の中の動きが止まったり、姿勢を変えたくなったりし    たら、止めます。 (*)次の診察で逆子なら手術と言われた人に何とかならない    かと頼まれたことがあります。その診察の3日ほど前に    左右の仙腸関節を観察したら、温度差が大きかったです。    そこで、操体をしたら、している最中に赤ちゃんが動い    ていると言うことでした。次の診察の時には正常とのこ    とで、帝王切開を避けることができたとの連絡がありま    した。詳しくは以下を見てください。    「逆子+つわり」[[操体症例問答no.2]] (☆)「膝の打倒し」は産後太りにも有効です。  産後太りは、逆子の場合と同じで、骨盤の開き具合の左右差が 原因のことが多いです。骨盤の開き具合の左右差が有ると腰の 部分が丸く太りやすいからです。骨盤の開き具合の左右差を改 善すると、腰周りが丸く太ることは少なく成ります。 ***⑤安産  安産のためには、骨盤や産道の可動性を良くするのがポイン トです。  鍼灸では、痞根~腰徹腹の筋張りなどが狙い目です。そこへ の施術の前後に、足4指小指などに引きます。  足4指小指の指揉みも効果的です。  また、陣痛が起きて病院へ行くときに、痞根~腰徹腹、足4 指小指などに出ているツボ、三陰交、上仙などに、円皮鍼など を貼ることを勧める先生もいます。 ***⑥不妊  不妊は、先ずは、生理痛や生理不順を改善します。次に、逆 子や安産と同じポイントことを中心に、腹部や足の経絡も使っ て、体の歪みを少なくしてきます。長期になることが多いので、 あせらず、じっくり取り組みます。  生理痛や生理不順のに関係する瘀血の排出については、病証 篇に書きました。 (病証(7)下焦の病:[[術伝流一本鍼no.48]]) *4.養生の指導も大切  養生の指導、冷えの改善や食養も大切です。  冷えには、靴下の重ね履きなどして、下半身が冷えないよう にします。湯たんぽも活用します。  食養は、カタカナ主食から和食へ切り替えるよう勧めるのが 基本です。化学合成物や高度精製物を減らし、丸事食や発酵食 品を増やします。丸事食は、未精製の玄米・全粒粉・豆類など や、小魚・貝など。野菜も皮を可能な限り食べます。発酵食品 は、漬物、味噌、醤油、酒粕、納豆など。  赤ちゃんを育てるには、勘の良さが必要です。操体などで、 勘の良さを育むのも良いと思います。  例えば、生理痛を軽減する灸の事は以下に書きました。この 灸は、生理不順や不正出血にも効果的です。 [[腹痛や生理痛の慢性期の養生に爪上の温灸>https://www26.atwiki.jp/jutsuden/pages/254.html#id_c03a6676]]  それ以外の養生については、[[養生生活の基本]]を参考にして ください。 ーーー 追記:2019.11.21 ーーー  また、生理痛はじめ漢方薬が効果的なことが多いです。該当 しそうな患者さんがいたら、漢方専門医や、漢方に詳しい薬剤 師や登録販売者などに紹介してあげられると良いですね。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー *5.おわりに  今回のテーマの写真が撮れていません。この写真と動画を撮 らしてくださるモデル患者さんを募集しています。その方が分 かりやすいと思いますので。でも、難しいことかもしれません。 (瘀血の写真付き症例>>>[[術伝流一本鍼no.48]])  女性同士で練習してみてください。今回書いた所は、女性に は、症状が出ていなくても、ツボが出ていることが多いです。 そういうツボを探し合うだけでも勉強になりますし、体全体の 養生にもなりますから。  そして、患者さんも多いです。女性鍼灸師が身に付けて損の ない分野と思います。    次へ>>>[[術伝流一本鍼no.56]] -----    >>>目次へ・・・・・・・・・[[術伝流一本鍼(あ)]]    >>>このページのトップヘ・・[[術伝流一本鍼no.55]]    >>>術伝HPトップへ ・・・・[[トップページ]] ----- 術伝HP内検索:上の@wikiメニューの「wiki内検索」 ----- ----- *お知らせとお願い **術伝流鍼灸操体講座で患者さん役を募集  術伝流鍼灸操体講座は、実践面を重視しています。実際に症状が出て いる方の治療を見たほうが勉強になります。そこで、講座で患者さん役 をしてくださる方を募集しています。  くわしくは、[[術伝流のモデル]]をみてください。  よろしくお願いします。 **感想など  感想などありましたら、[[「術伝」掲示板>http://jutsuden.bbs.fc2.com/]]に書いてください。  また、「術伝」掲示板でも、旧掲示板「養生の杜」と同じように、 養生についての雑談や症例相談などもしていきたいと思っています。  よろしくお願いします。 **間違いなど  間違いなど見つけた方は、[[術伝事務局>jutsuden-jmkk@yahoogroups.jp]]あてにメールをください。  よろしくお願いします。 **「術伝」症例相談用メーリングリストの参加者募集  「術伝」では症例相談用メーリングリスト( [[術伝ML(muchukand)>http://groups.yahoo.co.jp/group/muchukand/]])の 参加者を募集しています。  よろしくお願いします。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ----    >>>術伝HPトップへ ・・・・[[トップページ]] ----

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