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累積:&counter()___ 昨日:&counter(yesterday) ___今日:&counter(today) ------ &color(green){術伝流一本鍼no.14}&size(24){&color(green){ 指まわりの痛みに糸状灸}} ------ (1)先急一本鍼  (運動器) 指まわりの辛さ #contents *(1)基本的に  応急処置の原則は「遠くに強く引く」でした。  患部が胴や頭などの体幹部にあるときには、「遠く」として 手足の甲が使われますが、患部が指周りのときには手足の甲は 「遠く」とは言えませんし、手足の甲を使っても邪気を体の外 に引けません。手足の甲の方が胴体に近いからです。  また、指周りは、鍼すると痛がられるので、鍼は使いにくい ことが多いです。接触鍼なら可能ですが。そのため、鍼の場合 には、巨刺を接触鍼でしたりしますが、調節が難しくなります。  指周りや手平、足裏などの辛さには、灸、特に硬く細く捻っ た糸状の直接灸が効きます。  突き指、指の捻挫、使いすぎによる指周り、手平、足裏など の炎症、腱鞘炎による指の痛みなどに効果があります。手首足 首などの痛みにも効果があります。  手首足首などでは他の方法もありますので、患者さんと相談 して適切な方法を選んでください。  灸の熱さに弱い人の中には、指やその周囲でも、鍼の方が良 いと言う人もいます。 *(2)ツボ探し、糸状灸の作り方、立て方 **ポイント1.鍼柄くらいの太さのものでツボを特定する  この方法のポイントの1つは、ツボ探しです。指周りのツボ は細かいので、達人ならともかく、普通の人には指では探せま せん。  鍼柄位の太さの物で探します。術伝では、直径1.5mmのス テンレス棒を加工しツボ探し棒を作りました。  ツボの出てそうな辺りをその太さの物で縦や横に辿ってみて、 一番ペコペコして凹んでいる所を探します。そこをその太さの 物で押してみて、ツンという感じ、ピリビリという感じで痛かっ たら、そこがツボです。  角度によっては感じないこともあるので、押す角度を工夫し てください。いくつか候補があった場合には、押した痕が広め に赤黒く深く凹み、なかなか凹みが浅くならなくて、かつ、色 が薄くならない方を取ります。  鍼柄の太さで探しにくかったら、少し太い直径3〜5mm位の 物で探してから、鍼柄位の太さの物で探すと見付けやすいです。  竹串の先端を鍼柄の太さ位の所で爪切りなどで切り落として から、両端を爪ヤスリなどで丸めると、ツボ探しの道具ができ 上がります。指、竹串の太い方、竹串の細い方の順で探せば、 誰にでも見付けられます。  この道具は、円皮鍼や皮内鍼、またはマグレインなどの粒鍼 を貼るときのツボ探しにも使えます。耳鍼のときには、先端を 痛くない範囲でもう少し細くしたものを使います。エゴマ油や ビーワックスなどを塗ると汚れが付きにくく、使いやすくなり ます。 ***追記:190705 指は上腕と相似  指のツボの出方は、上腕と良く似ています。手甲側が陽で、 手平側が陰、陰陽ともに中央と両端の3ラインです。しかも、 良く出る所は、関節近くの骨が太く成りだした部分(足三里な どと同じ)部分です。解剖学的な自己相似(フラクタル)です ね。  詳しくは、以下に書きました。 「ツボの出やすい所」 https://www26.atwiki.jp/jutsuden/pages/322.html **ポイント2.モグサを細く捻(ひね)る  もう1つのポイントは、モグサを硬く細く捻ることです。底 面の直径は0.5mm以下を目指します。  それ以上太いと熱くなりすぎるし、痕が残りやすくなります。 また、ピンポイントで施術した方が効果が上がりやすいです。 0.5mm以下なら、黒く痕になっても、暫くするとポロッと剥 がれ落ちて、痕が残りません。  細く作るコツはモグサを摘むときに薄く剥ぐように摘むこと です(写真1)。 #image(DSCF0687.jpg)写真1 そして、力を入れて一度捻れば、硬い糸状灸ができます(写真2)。 #image(DSCF0694.jpg)写真2  ただし、子供用は、同じ細さで力を入れずにフンワリとした ものを作った方が良いです。  長さは少なくとも5mmは必要で、余り短いと線香を近付け た時に熱いと言われます。  細くて立ちにくいので、灸点墨をツボに付けて立たせます。 ステンレスのツボ探し棒の頭の方を使って墨を付けています。 細い灸を立たせるのに紫雲膏やオイルを使う人もいますが、ど ちらも油が使われているため必要以上に熱くなりやすいので、 余りお勧めできません。  糸状灸が上手に作れない人は、手指用糸モグサを使うとよい です。しかし、糸状灸に比べると大変熱いですから、途中で消 すこと(八分灸)が必要な場合もあります。手指用糸モグサの 場合は、糸モグサそのものを灸点墨の中に挿し入れて墨を付け てから立てても良いです。 *(3)手順  鍼による応急処置の手順と基本的には同じです。  先ず、どういう動作でどの辺りが辛いか良く確かめます。ま た、指周り以外に辛さを感じている場所があるかどうかも確認 します。  肘膝、腰肩などにも辛さがあるときには、先にそちらの治療 をした方がよいです。胴体よりを治療した後に邪気を末端に引 いてくると、また指周りが痛み出すことがあるからです。  治療は井穴から。最も痛い場所の延長線上の井穴に灸点墨を 付け、硬く細く捻った糸状灸を1壮します。これは鍼の手足の 甲への引き鍼に相当します。  次に、その井穴と最も痛む所を結ぶライン上のツボを探しま す。指関節周りの窪みなどでペコペコと凹んだ所が狙い目で、 最も痛む所よりも少し胴体寄りの手首足首近くにもツボが出て いることもあります。  胴体に一番近いツボから井穴の方への順で、灸点墨を付けて から、硬く捻った糸状灸を1壮します。たいてい1壮で充分で すが、痛みが残っているときには、もう1壮します。  痛むラインが2,3本あるときは同じように灸します。  痛むラインの灸を終えたら、試しに患部を動かしてもらいま す。動かして痛みや辛さが残っていたら、痛む直前の格好で痛 む辺りを、鍼柄ほどの太さの物を縦横に動かして、一番凹んだ 所を見付け、圧痛があったら、灸点墨を付けてから灸をします。  鍼の場合の動作鍼に相当する方法です。施灸後また動かして 痛むようなら、同じようにツボ探しをして、灸をします。動か して痛む所が無くなるまで続けます。  状態によっては、動かすと前腕・下腿など胴よりに痛みが出 てくることもあります。指を動かす筋肉の筋腹や起始は前腕の 肘側や下腿の膝側にあるし、指を動かす時には肩甲骨や骨盤や 背骨も一緒に動いているからです。  また、手指の痛みの場合でも、手指を使う姿勢によっては、 足腰にも辛さが出てくる場合もあります。そういう場所の治療 は鍼でしてもよいでしょう。今まで説明してきた、動作鍼の方 法で施術してください。  終わりに、施灸した所の延長線上の指の井穴を押してみて、 一番痛い所に灸をします。指が何本か有れば、それらの井穴の 痛さを比較して一番痛い所を選びます。  始めに灸したと所と同じ井穴になったら、指端や骨空に灸を します。鍼の場合の最後の引き鍼に相当する方法です。  足の親指の井穴の場合には、陰経側なので、そこで止めずに 陽経側の足指か手指の井穴の中から次に痛い所を見付けて、灸 して終わります。次に痛い所が分かりにくい場合は、陽明の井 穴を選びます。 *(4)多いのは、親指の辛さ  こういうお灸の仕方は、指だけでなく手首足首までの辛さに も使えます。  一番多いのは、マッサージなどのバイトのし過ぎで親指を痛 めたという例ですが、残念ながら撮らせていただいた写真がピ ンボケでした。そこで、親指の痛い方で治療中の写真を撮らせ てくださる人を募集しています。そういう人をご存じなら、術 伝事務局までメールをくださるようお願いします。  今回は、写真が撮れた手首の橈屈で痛みが出る方と遠位指関 節捻挫の方の例を紹介します。 *(5)症例 **手首の橈屈が辛い例  左手首を橈屈すると、指で示した部分が辛い人です(写真3)。 #image(DSCF0442.jpg)写真3  小指の外側の井穴から順に、井穴と痛む辺りを結ぶ線上で凹 んだ所を、ツボ探し用ステンレス棒で押してみて、痛い場所を 探し、青い丸印を書きました(写真4)。念のため、そのライ ンを肘近くまで調べましたが、前腕には余りツボが出ていませ んでした。 #image(DSCF0443.jpg)写真4  先ずは、小指外側の井穴に灸しました(写真5)。 #image(DSCF0444.jpg)写真5  その後に、印を付けた所を前腕の方から指の方への順で灸し ていきました(写真6、7、8)。 #image(DSCF0450.jpg)写真6 #image(DSCF0451.jpg)写真7 #image(DSCF0452.jpg)写真8  始めに痛かった所の施灸を終え後、試しに橈屈をしてもらっ たら(写真9)、新たに2カ所、痛む場所が見付かったので、 そこに赤い丸印を付け(写真10)、そこに灸しました(写真11)。 #image(DSCF0456.jpg)写真9 #image(DSCF0454.jpg)写真10 #image(DSCF0458.jpg)写真11  もう一度橈屈してもらったら痛む場所が無くなったので、小 指骨空に灸して仕上げました(写真12)。 #image(DSCF0461.jpg)写真12 **突き指で指を曲げられない例  左手薬指を突き指して、痛くて指が曲げられないとのことで した(写真13)。 #image(DSCF0462.jpg)写真13  左手薬指を調べ、痛む所に灸点墨で印を付けました(写真14)。 #image(DSCF0465.jpg)写真14  余りにも指先なので、その指の井穴では遠くとは言えないの で、巨刺に準じた方法でやってみようかと右薬指を調べたら、 左よりは少ないですがツボが出ていたので(写真15)、順に 灸しました(写真16、17)。 #image(DSCF0466.jpg)写真15 #image(DSCF0468.jpg)写真16 #image(DSCF0470.jpg)写真17  その後に、左薬指をツボ探し棒で調べ直したら(写真18)、 ツボが減っていました。このツボの出方からすると、小指より を突いた可能性が高いと思います(写真19)。 #image(DSCF0478.jpg)写真18 #image(DSCF0480.jpg)写真19  それらのツボに順番に灸し(写真20,21,22,23)、最後に薬 指の小指側井穴に灸して仕上げました(写真24)。 #image(DSCF0484.jpg)写真20 #image(DSCF0486.jpg)写真21 #image(DSCF0488.jpg)写真22 #image(DSCF0489.jpg)写真23 #image(DSCF0493.jpg)写真24  そしたら、他の指と同じ位に曲げられるようになりました (写真25)。 #image(DSCF0494.jpg)写真25 *(7)おわりに  指は、経絡の末端であり、指への灸で全身の経絡的歪みを調 整できたりもします。逆に言うと、指の辛さがその指と経絡的 に関係する所(体幹部内の臓器も含めて)の歪みを大きくさせ てしまうことも考えられるかなと思います。  また、指の辛さで肘膝までを診ることと、肘膝から先に手足 の要穴が多いことを考え合わせると、指の辛さは、その指の延 長の手足の要穴に関係していることになります。また、それら 要穴と経絡的関連のある体幹部のまだ顕在化していない歪みや 変動の反映の可能性もあります。  それが、指の痛みをほって置かずに、できるだけ早く辛さを 解消した方が良いと考える理由の一つです。また、他の肘膝か ら先の辛さにも同じようなことが言えるのではないかと考えて います。  筆者は、治療中は、主に息の深さで効果的かどうかを観て匙 加減しています。そして、治療直後は、喜んでもらえたか、嬉 しそうな表情になったか、足取りが軽くなったかなどで有効か どうか判断します。その後は、次の日の朝の寝覚めが良かった かなどで効果を上げたかを判断しています。  局所治療をしても、治療中に息が深くなり、治療後に喜んで 嬉しそうな表情をしていれば、全身治療として見ても、かなり 効果的だったと考えてよいのではないかなと思います。息が深 くなったり、嬉しそうな表情をするのは、全身的なことだと思 いますので。  この辺りの判断は、「鍼は引き鍼」内の「治療は対話」に詳 しく書きました。(「鍼は引き鍼」も、そのうち掲載したいと 思います)  逆に、辛さが減り可動域が改善しても、喜んでいただけない ときには、匙加減を間違えたかなと思い、次はもう少し工夫し てみることにしています。これは、全身治療するときも同じで す。  耳、手、足裏、肘膝から先だけで治療する流派の人もいるし、 この辺りの全身と局所の相関関係は、東洋医学の面白い所だな と思っています。  今回書いた方法で、指の痛みは、かなり解消できると思いま す。試してみてください。  また、この方法で解消できなかったり、改善できても直ぐに ぶり返したりすれば、単なる運動器系の病変ではない可能性が 高くなるということかなと考えています。  そういう場合は、腹診など含めて全身の慢性期の養生が必要 になると思います。そういう場合の処置は、「養生の一本鍼」 というテーマで別途書きたいと思っています。逆に言えば、こ の方法で解消できれば、単なる運動器系病変の可能性が高く、 そういう意味で、判断の一つに使えるのではないかと考えてい ます。 追記:  次の「指の腱鞘炎の灸治療」も参考にしてください。 [[術伝流一本鍼no.15]] 使い過ぎで指が動かしづらい    つぎへ>>>[[術伝流一本鍼no.15]] -----    >>>目次へ・・・・・・・・・[[術伝流一本鍼(あ)]]    >>>このページのトップヘ・・[[術伝流一本鍼no.14]]    >>>術伝HPトップへ ・・・・[[トップページ]] ----- 術伝HP内検索:上の@wikiメニューの「wiki内検索」 ----- ------ *お知らせとお願い **術伝流鍼灸操体講座で患者さん役を募集  術伝流鍼灸操体講座は、実践面を重視しています。実際に症状が出て いる方の治療を見たほうが勉強になります。そこで、講座で患者さん役 をしてくださる方を募集しています。  くわしくは、[[術伝流のモデル]]をみてください。  よろしくお願いします。 **感想など  感想、間違いなど術伝事務局までメールをください。 よろしくおねがいします。 術伝事務局メルアド :jutsuden-jmkkあまググどこ (この行は無視してください。akwba、laemfro、thgosewibe) (「あま」を「@」に、)(以下無視kuaniu、nteyu、lPpkiumo) (「ググ」を「googlegroups」に、)(以下無視mesiun、kiuen) (「どこ」を「.com」に変えて送信してください。) (面倒をおかけし申し訳ありません。迷惑メール対策です) 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ----    >>>術伝HPトップへ ・・・・[[トップページ]] ----
累積:&counter()___ 昨日:&counter(yesterday) ___今日:&counter(today) ------ &color(green){術伝流一本鍼no.14}&size(24){&color(green){ 指まわりの痛みに糸状灸}} ------ (1)先急一本鍼  (運動器) 指まわりの辛さ #contents *(1)基本的に  応急処置の原則は「遠くに強く引く」でした。  患部が胴や頭などの体幹部にあるときには、「遠く」として 手足の甲が使われますが、患部が指周りのときには手足の甲は 「遠く」とは言えませんし、手足の甲を使っても邪気を体の外 に引けません。手足の甲の方が胴体に近いからです。  また、指周りは、鍼すると痛がられるので、鍼は使いにくい ことが多いです。接触鍼なら可能ですが。そのため、鍼の場合 には、巨刺を接触鍼でしたりしますが、調節が難しくなります。  指周りや手平、足裏などの辛さには、灸、特に硬く細く捻っ た糸状の直接灸が効きます。  突き指、指の捻挫、使いすぎによる指周り、手平、足裏など の炎症、腱鞘炎による指の痛みなどに効果があります。手首足 首などの痛みにも効果があります。  手首足首などでは他の方法もありますので、患者さんと相談 して適切な方法を選んでください。  灸の熱さに弱い人の中には、指やその周囲でも、鍼の方が良 いと言う人もいます。 *(2)ツボ探し、糸状灸の作り方、立て方 **ポイント1.鍼柄くらいの太さのものでツボを特定する  この方法のポイントの1つは、ツボ探しです。指周りのツボ は細かいので、達人ならともかく、普通の人には指では探せま せん。  鍼柄位の太さの物で探します。術伝では、直径1.5mmのス テンレス棒を加工しツボ探し棒を作りました。  ツボの出てそうな辺りをその太さの物で縦や横に辿ってみて、 一番ペコペコして凹んでいる所を探します。そこをその太さの 物で押してみて、ツンという感じ、ピリビリという感じで痛かっ たら、そこがツボです。  角度によっては感じないこともあるので、押す角度を工夫し てください。いくつか候補があった場合には、押した痕が広め に赤黒く深く凹み、なかなか凹みが浅くならなくて、かつ、色 が薄くならない方を取ります。  鍼柄の太さで探しにくかったら、少し太い直径3〜5mm位の 物で探してから、鍼柄位の太さの物で探すと見付けやすいです。  竹串の先端を鍼柄の太さ位の所で爪切りなどで切り落として から、両端を爪ヤスリなどで丸めると、ツボ探しの道具ができ 上がります。指、竹串の太い方、竹串の細い方の順で探せば、 誰にでも見付けられます。  この道具は、円皮鍼や皮内鍼、またはマグレインなどの粒鍼 を貼るときのツボ探しにも使えます。耳鍼のときには、先端を 痛くない範囲でもう少し細くしたものを使います。エゴマ油や ビーワックスなどを塗ると汚れが付きにくく、使いやすくなり ます。 ***追記:190705 指は上腕と相似  指のツボの出方は、上腕と良く似ています。手甲側が陽で、 手平側が陰、陰陽ともに中央と両端の3ラインです。しかも、 良く出る所は、関節近くの骨が太く成りだした部分(足三里な どと同じ)部分です。解剖学的な自己相似(フラクタル)です ね。  詳しくは、以下に書きました。 「ツボの出やすい所」 https://www26.atwiki.jp/jutsuden/pages/322.html **ポイント2.モグサを細く捻(ひね)る  もう1つのポイントは、モグサを硬く細く捻ることです。底 面の直径は0.5mm以下を目指します。  それ以上太いと熱くなりすぎるし、痕が残りやすくなります。 また、ピンポイントで施術した方が効果が上がりやすいです。 0.5mm以下なら、黒く痕になっても、暫くするとポロッと剥 がれ落ちて、痕が残りません。  細く作るコツはモグサを摘むときに薄く剥ぐように摘むこと です(写真1)。 #image(DSCF0687.jpg)写真1 そして、力を入れて一度捻れば、硬い糸状灸ができます(写真2)。 #image(DSCF0694.jpg)写真2  ただし、子供用は、同じ細さで力を入れずにフンワリとした ものを作った方が良いです。  長さは少なくとも5mmは必要で、余り短いと線香を近付け た時に熱いと言われます。  細くて立ちにくいので、灸点墨をツボに付けて立たせます。 ステンレスのツボ探し棒の頭の方を使って墨を付けています。 細い灸を立たせるのに紫雲膏やオイルを使う人もいますが、ど ちらも油が使われているため必要以上に熱くなりやすいので、 余りお勧めできません。  糸状灸が上手に作れない人は、手指用糸モグサを使うとよい です。しかし、糸状灸に比べると大変熱いですから、途中で消 すこと(八分灸)が必要な場合もあります。手指用糸モグサの 場合は、糸モグサそのものを灸点墨の中に挿し入れて墨を付け てから立てても良いです。 *(3)手順  鍼による応急処置の手順と基本的には同じです。  先ず、どういう動作でどの辺りが辛いか良く確かめます。ま た、指周り以外に辛さを感じている場所があるかどうかも確認 します。  肘膝、腰肩などにも辛さがあるときには、先にそちらの治療 をした方がよいです。胴体よりを治療した後に邪気を末端に引 いてくると、また指周りが痛み出すことがあるからです。  治療は井穴から。最も痛い場所の延長線上の井穴に灸点墨を 付け、硬く細く捻った糸状灸を1壮します。これは鍼の手足の 甲への引き鍼に相当します。  次に、その井穴と最も痛む所を結ぶライン上のツボを探しま す。指関節周りの窪みなどでペコペコと凹んだ所が狙い目で、 最も痛む所よりも少し胴体寄りの手首足首近くにもツボが出て いることもあります。  胴体に一番近いツボから井穴の方への順で、灸点墨を付けて から、硬く捻った糸状灸を1壮します。たいてい1壮で充分で すが、痛みが残っているときには、もう1壮します。  痛むラインが2,3本あるときは同じように灸します。  痛むラインの灸を終えたら、試しに患部を動かしてもらいま す。動かして痛みや辛さが残っていたら、痛む直前の格好で痛 む辺りを、鍼柄ほどの太さの物を縦横に動かして、一番凹んだ 所を見付け、圧痛があったら、灸点墨を付けてから灸をします。  鍼の場合の動作鍼に相当する方法です。施灸後また動かして 痛むようなら、同じようにツボ探しをして、灸をします。動か して痛む所が無くなるまで続けます。  状態によっては、動かすと前腕・下腿など胴よりに痛みが出 てくることもあります。指を動かす筋肉の筋腹や起始は前腕の 肘側や下腿の膝側にあるし、指を動かす時には肩甲骨や骨盤や 背骨も一緒に動いているからです。  また、手指の痛みの場合でも、手指を使う姿勢によっては、 足腰にも辛さが出てくる場合もあります。そういう場所の治療 は鍼でしてもよいでしょう。今まで説明してきた、動作鍼の方 法で施術してください。  終わりに、施灸した所の延長線上の指の井穴を押してみて、 一番痛い所に灸をします。指が何本か有れば、それらの井穴の 痛さを比較して一番痛い所を選びます。  始めに灸したと所と同じ井穴になったら、指端や骨空に灸を します。鍼の場合の最後の引き鍼に相当する方法です。  足の親指の井穴の場合には、陰経側なので、そこで止めずに 陽経側の足指か手指の井穴の中から次に痛い所を見付けて、灸 して終わります。次に痛い所が分かりにくい場合は、陽明の井 穴を選びます。 *(4)多いのは、親指の辛さ  こういうお灸の仕方は、指だけでなく手首足首までの辛さに も使えます。  一番多いのは、マッサージなどのバイトのし過ぎで親指を痛 めたという例ですが、残念ながら撮らせていただいた写真がピ ンボケでした。そこで、親指の痛い方で治療中の写真を撮らせ てくださる人を募集しています。そういう人をご存じなら、術 伝事務局までメールをくださるようお願いします。  今回は、写真が撮れた手首の橈屈で痛みが出る方と遠位指関 節捻挫の方の例を紹介します。 *(5)症例 **手首の橈屈が辛い例  左手首を橈屈すると、指で示した部分が辛い人です(写真3)。 #image(DSCF0442.jpg)写真3  小指の外側の井穴から順に、井穴と痛む辺りを結ぶ線上で凹 んだ所を、ツボ探し用ステンレス棒で押してみて、痛い場所を 探し、青い丸印を書きました(写真4)。念のため、そのライ ンを肘近くまで調べましたが、前腕には余りツボが出ていませ んでした。 #image(DSCF0443.jpg)写真4  先ずは、小指外側の井穴に灸しました(写真5)。 #image(DSCF0444.jpg)写真5  その後に、印を付けた所を前腕の方から指の方への順で灸し ていきました(写真6、7、8)。 #image(DSCF0450.jpg)写真6 #image(DSCF0451.jpg)写真7 #image(DSCF0452.jpg)写真8  始めに痛かった所の施灸を終え後、試しに橈屈をしてもらっ たら(写真9)、新たに2カ所、痛む場所が見付かったので、 そこに赤い丸印を付け(写真10)、そこに灸しました(写真11)。 #image(DSCF0456.jpg)写真9 #image(DSCF0454.jpg)写真10 #image(DSCF0458.jpg)写真11  もう一度橈屈してもらったら痛む場所が無くなったので、小 指骨空に灸して仕上げました(写真12)。 #image(DSCF0461.jpg)写真12 **突き指で指を曲げられない例  左手薬指を突き指して、痛くて指が曲げられないとのことで した(写真13)。 #image(DSCF0462.jpg)写真13  左手薬指を調べ、痛む所に灸点墨で印を付けました(写真14)。 #image(DSCF0465.jpg)写真14  余りにも指先なので、その指の井穴では遠くとは言えないの で、巨刺に準じた方法でやってみようかと右薬指を調べたら、 左よりは少ないですがツボが出ていたので(写真15)、順に 灸しました(写真16、17)。 #image(DSCF0466.jpg)写真15 #image(DSCF0468.jpg)写真16 #image(DSCF0470.jpg)写真17  その後に、左薬指をツボ探し棒で調べ直したら(写真18)、 ツボが減っていました。このツボの出方からすると、小指より を突いた可能性が高いと思います(写真19)。 #image(DSCF0478.jpg)写真18 #image(DSCF0480.jpg)写真19  それらのツボに順番に灸し(写真20,21,22,23)、最後に薬 指の小指側井穴に灸して仕上げました(写真24)。 #image(DSCF0484.jpg)写真20 #image(DSCF0486.jpg)写真21 #image(DSCF0488.jpg)写真22 #image(DSCF0489.jpg)写真23 #image(DSCF0493.jpg)写真24  そしたら、他の指と同じ位に曲げられるようになりました (写真25)。 #image(DSCF0494.jpg)写真25 *(6)おわりに  指は、経絡の末端であり、指への灸で全身の経絡的歪みを調 整できたりもします。逆に言うと、指の辛さがその指と経絡的 に関係する所(体幹部内の臓器も含めて)の歪みを大きくさせ てしまうことも考えられるかなと思います。  また、指の辛さで肘膝までを診ることと、肘膝から先に手足 の要穴が多いことを考え合わせると、指の辛さは、その指の延 長の手足の要穴に関係していることになります。また、それら 要穴と経絡的関連のある体幹部のまだ顕在化していない歪みや 変動の反映の可能性もあります。  それが、指の痛みをほって置かずに、できるだけ早く辛さを 解消した方が良いと考える理由の一つです。また、他の肘膝か ら先の辛さにも同じようなことが言えるのではないかと考えて います。  筆者は、治療中は、主に息の深さで効果的かどうかを観て匙 加減しています。そして、治療直後は、喜んでもらえたか、嬉 しそうな表情になったか、足取りが軽くなったかなどで有効か どうか判断します。その後は、次の日の朝の寝覚めが良かった かなどで効果を上げたかを判断しています。  局所治療をしても、治療中に息が深くなり、治療後に喜んで 嬉しそうな表情をしていれば、全身治療として見ても、かなり 効果的だったと考えてよいのではないかなと思います。息が深 くなったり、嬉しそうな表情をするのは、全身的なことだと思 いますので。  この辺りの判断は、「鍼は引き鍼」内の「治療は対話」に詳 しく書きました。(「鍼は引き鍼」も、そのうち掲載したいと 思います)  逆に、辛さが減り可動域が改善しても、喜んでいただけない ときには、匙加減を間違えたかなと思い、次はもう少し工夫し てみることにしています。これは、全身治療するときも同じで す。  耳、手、足裏、肘膝から先だけで治療する流派の人もいるし、 この辺りの全身と局所の相関関係は、東洋医学の面白い所だな と思っています。  今回書いた方法で、指の痛みは、かなり解消できると思いま す。試してみてください。  また、この方法で解消できなかったり、改善できても直ぐに ぶり返したりすれば、単なる運動器系の病変ではない可能性が 高くなるということかなと考えています。  そういう場合は、腹診など含めて全身の慢性期の養生が必要 になると思います。そういう場合の処置は、「養生の一本鍼」 というテーマで別途書きたいと思っています。逆に言えば、こ の方法で解消できれば、単なる運動器系病変の可能性が高く、 そういう意味で、判断の一つに使えるのではないかと考えてい ます。 追記:  次の「指の腱鞘炎の灸治療」も参考にしてください。 [[術伝流一本鍼no.15]] 使い過ぎで指が動かしづらい    つぎへ>>>[[術伝流一本鍼no.15]] -----    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