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累積:&counter()___ 昨日:&counter(yesterday) ___今日:&counter(today) ------ &color(green){術伝流一本鍼no.31 (術伝流・養生の一本鍼・基本編(5))} &bold(){&size(24){&color(green){養生の刺鍼手順の意味}}} ------ #contents  慢性期の刺鍼手順には意味があります。  慢性期には、腹診を中心にみていき、具体的にはおもに腹のシコり を改善することをめざします。 *腹のシコリを刺激すると、邪気が頭を衝く  腹のシコりを刺激すると、そこから出た邪気が頭のほうに移動し、 頭に衝き上げる「上衝」(図1)という現象がおきます。鍼をしたあ と、頭が痛くなったり、熱が出たり、めまいがしたりという、首より 上の症状が出たら、それは上衝した邪気によるものです。 &ref(joushou-image.jpg)図1  腹のシコりを動かすというのは、発酵中のどぶろくやビールやシャ ンパンをゆするようなものです。ゆすったら、泡をふいて上のほうに 吹き出そうとしますね。「上衝」というのはそれと似た現象で、邪気 は泡みたいなものだと考えてください。同じ気ですから。  つまり、同じような動きをする性質があるものを昔の人はまとめて 「気」という名前をつけてよんだのだと思います。  もし、顔が赤かったり熱があったり、また、鎖骨まわりで衝き上げ るような感じがしたら、すでに「上衝」しているということですから、 それをおさめるために、手の甲に引き鍼をします。これは、慢性期の 症状に急性期の症状がまじっているときにみられる体の状態です。 *手に引くのは、邪気を手のほうに誘導するため  慢性期で急性症状がまじっていないときには、手の陰経に引くこと からはじめます。これは、腹のシコりを動かしたときに発生した邪気 を、すこしでも手のほうに誘導するための逃げ道を確保しておくため にしています。  むかし中学校か小学校でした静電気の実験を思い出してください。 物体をこすって静電気を発生させるといろいろな現象がおきますが、 これは、物体の片方が+に帯電し、もう一方が-に帯電することによっ ておこります。-に帯電した物体の途中から地面(アース)への逃げ 道を作って、遠くに逃げられるようにしてあげると、-の電子はそち らに逃げ、静電気が発生したことによる現象は見られなくなります。  邪気も気なので、これと同じ性質を持つようです。手の陰経に引き 鍼しておくと、腹のシコりを動かしたときに発生した邪気は頭にむか わず、手の陰経のほうに逃げるようです。「手足に引く」というのは、 邪気の静電気的な性質を利用しているように思います。  また、どぶろくのビンの途中に孔と開けて、そこからガスが逃げら れるようにすると、栓を飛ばすガス圧はなくなる、と考えてもよいと 思います。  また、これは、腹に発生した邪気が頭にいくときに胸をとおるから でもあると思います。手の陰経は、胸の内部の邪気を引くのにいちば ん使われる経絡です。ですから、別名で肺や心臓の名前をつけてよば れています。  つぎに、手の陽経に刺すのは、手の陰経に刺したことの補助で、手 の外側(甲側)にも、邪気の逃げ道を作っておくためです。邪気は、 内側のような陰側からよりも、外側のような陽側からのほうが体の外 に出やすいからです。同時に、胸より上に邪気の一部が上がったとき に、それが手の陽経のほうに誘導されるようにするためです。  いま手にはいる、もっとも古い経絡の文献のひとつである馬王堆医 経の陰陽十一脈灸経で、手の陽経は肩脈・耳脈・歯脈とよばれたよう に、肩胛骨・鎖骨から上の邪気を引くのによく使われます。 *腹への刺鍼の意味  そして、つぎは腹ですが、腹のなかで初めに横腹を刺すのは、「陽 に引く」ためです。腹のなかでは横腹がいちばん背中に近いので、腹 のシコりを動かしたときに発生した邪気を陽位である背中側にちかい ほうにも逃げ道をつくり、胸をとおって頭にいく邪気をへらしておこ うというわけです。  横腹のつぎに小腹、つまり下腹部を先に刺すのは、邪気は上に動き やすいので、上腹部を先に刺したあとに下腹部を刺すと、下腹部から 上に逃げた邪気に上腹部のシコりが反応して、ゆるんだシコりがまた 硬くなったりしやすいからです。 *足に引くのは、足のほうにも邪気を誘導するため  つぎに足ですが、足の経絡は、陰経は頭や胴体の内側に、陽経は胴 や頭の外側に関係しています。  まず陰経に刺すのは、腹を動かしたことで発生した邪気の逃げ道を 足のほうにも作るためです。  つぎに陽経に刺すのは、足に引いた邪気の逃げ道を足の外側にも作 るためでもあり、また、肩胛骨鎖骨から上に登ってしまった邪気や腹 の表面に出てきた邪気を足の陽経に引くためでもあります。手のとき とほぼ同じです。  また、足の陰経に刺せば腹の悪いところや深いシコりに直接ひびい て、それらの邪気をよりへらせるので、それらをより改善できます。 同じように、足の陽経に刺せば、腹の浅いところに出ていたシコりの 邪気をよりへらせるので、そこの状態をより改善できます。  これは、もともと、足のツボが、腹の悪いところや、腹の奥や表面 のシコりをかばうために出てきたことによっています。ですから、腹 のツボにあさく切皮した程度でも刺して、しばらくのあいだ横ゆらし 旋撚などしておくだけでも、足のツボに刺したときに、腹のツボがゆ るんで、腹の悪いところが改善するわけです。 *背に引くのは、邪気を背のほうにも誘導するため  つぎに、うつ伏せで、肩胛骨下縁あたりから背中〜腰を上から順に 刺していきます。背中側に刺すのは、腹の邪気を背中側へ引くための 逃げ道つくりです。また、背中に刺すと、腹側のツボがもっとゆるん だり、腹側の悪いところの改善がすすむからでもあります。  もともと、背中側のツボは、すこしづつもれていた腹の邪気が逃げ 道をさがしたりしたため、また、腹の症状や腹側のツボをかばうため に、腹側とほぼ同じ高さ(デルマトーム?)に出てきています。もち ろん、背中の使いすぎで背中側にツボが出ることもありますが。  そのため、背中側に出ているツボから邪気を引き出すと、かるく刺 しておいた腹のツボから邪気が背中側に誘導され、腹のツボがゆるみ、 その結果として腹側の症状の改善もすすみます。  腹とちがって上から下に刺すのは、腹を動かして発生した邪気は、 おもに肩胛骨下角よりも上に動くので、それよりも下側は、上から 下に刺しても上のツボが復活する可能性は低いからです。 *座位での刺鍼の意味  そして、座位になってもらうわけですが、おわりに座位の姿勢で刺 鍼するのにも意味があります。腹を動かしたことによって発生した邪 気は、頭のほうへ動きます。この邪気の後始末は、座位でしたほうが スッキリさせることができるからです。  寝たまま刺鍼した場合には、立ったときにフラフラしたり、あとで 頭が痛くなったりする可能性がふえると考えておいてください。  さて、座位では、肩から肩胛骨、つぎに首、頭という順で刺してい きます。これは腹側と同じで、邪気は頭のほうに逃げる性質があるた め、先に頭に刺して、あとで肩胛骨に刺すと、肩胛骨から頭に逃げた 邪気の影響で、頭のツボがまた出てきてしまうことがあるからです。  首の前や鎖骨・胸骨など胸の上部にも刺鍼する場合には、肩頚の後、 頭の前に刺します。これも、そこから逃げた邪気が頭のほうにいきや すいからです。  肩頚、胸の上部や頭に熱いところがあるときに、その熱いあたりに 散鍼するのは、逃げてきた邪気によって熱が皮下にこもっていること がおおいせいです。このあたりを漢方の用語で表位とよびます。  表位の皮膚に熱がこもった場合に、漢方では、解表(解肌)という 目的の生薬を配合しますが、散鍼にはそれと同じ効果があります。と くに、腹を刺鍼し、腹の邪気を動かした場合には、頭には、かならず といっていいほど、熱いところがあるので、散鍼して熱を散らしてお きます。  おわりに手の甲に引き鍼するのは、散鍼で散らし切れなかった頭の 邪気を手の陽経末端に強く引いて出すとともに、これからも腹からも れて頭にいくかもしれない邪気が手の末端から出ていくような逃げ道 をもう一度つくっておくためです。 *頭の散鍼と手甲への引き鍼は、後始末、ていねいに  このおわりの頭の散鍼と手の甲への引き鍼をおろそかにすると、立 ち上がったときにふらついたり眩暈(めまい)がしたり、あとで頭が 痛くなったりしやすいので、わすれずにかならずするようにしてくだ さい。時間がないときには、途中を省略しても、この頭の散鍼と手の 甲への引き鍼は、ていねいにしてください。 *水毒・瘀血の排泄について  この慢性期の養生の型をすると、腹にたまっていた邪毒から邪気が ぬけるので、水毒・瘀血などの毒性がよわまります。すると、体の普 通の排泄手段で体の外に出せるようになります。  治療したあとに汗が出たりトイレにいきたくなったりするのは、そ のせいです。この排泄現象は、つぎの日の朝ぐらいまでつづきます。 毒物の排出がうまくできると、翌日の朝の寝覚めがすっきりしていて、 体がさわやかで透明な感じになります。  この、つぎの日の朝おきたときの感じがスッキリしていることは、 治療中に息が深くなること、治療後に表情が晴れ晴れとしたり足取り がかるくなることとならんで、治療が適切にできたかどうかの良い目 安になります。患者さんに、治療した日の翌朝の体の感じを観察しお ぼえておいてもらうよう、伝えてください。  腹の邪気が大量に動き、つぎの日の朝までに大量に毒物が排泄され る場合には、熱が出たりすることもあります。そういう場合にも、翌 朝の寝覚めがスッキリしていれば問題はないので、それも伝えておい たほうがよいでしょう。  鍼治療を無理せずに気持ち良い範囲でして、頭の散鍼と手甲への引 き鍼をきちんとすれば、そういう発熱なども少なくてすみます。  生理痛などの人の場合には、排出現象がつぎの生理のときにおこる こともあります。普段よりも、色が黒く、粘り気も強く、匂いもきつ いものが、大量に出るようです。舌の裏側の血管が黒っぽかったり、 下腹部から腰骨よりに圧痛があったりという瘀血のサインが出ていた 場合には、そのあたりも伝えておいたほうがよいと思います。    つぎへ>>>[[術伝流一本鍼no.32]] -----    >>>目次へ・・・・・・・・・[[術伝流一本鍼(あ)]]    >>>このページのトップヘ・・[[術伝流一本鍼no.31]]    >>>術伝HPトップへ ・・・・[[トップページ]] ----- 術伝HP内検索:上の@wikiメニューの「wiki内検索」 ----- ----- *お知らせとお願い **術伝流鍼灸操体講座で患者さん役を募集  術伝流鍼灸操体講座は、実践面を重視しています。実際に症状が出て いる方の治療を見たほうが勉強になります。そこで、講座で患者さん役 をしてくださる方を募集しています。  くわしくは、[[術伝流のモデル]]をみてください。  よろしくお願いします。 **感想など  感想などありましたら、[[「術伝」掲示板>http://jutsuden.bbs.fc2.com/]]に書いてください。  また、「術伝」掲示板でも、旧掲示板「養生の杜」と同じように、 養生についての雑談や症例相談などもしていきたいと思っています。  よろしくお願いします。 **間違いなど  間違いなど見つけた方は、[[術伝事務局>jutsuden-jmkk@yahoogroups.jp]]あてにメールをください。  よろしくお願いします。 **「術伝」症例相談用メーリングリストの参加者募集  「術伝」では症例相談用メーリングリスト( [[術伝ML(muchukand)>http://groups.yahoo.co.jp/group/muchukand/]])の 参加者を募集しています。  よろしくお願いします。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ----    >>>術伝HPトップへ ・・・・[[トップページ]] ----
累積:&counter()___ 昨日:&counter(yesterday) ___今日:&counter(today) ------ &color(green){術伝流一本鍼no.31 (術伝流・養生の一本鍼・基本編(5))} &bold(){&size(24){&color(green){養生の刺鍼手順の意味}}} ------ #contents *慢性期の刺鍼手順には意味がある  慢性期の刺鍼手順には意味があります。  慢性期には、腹診を中心に診ていき、具体的には主に腹 の痼りを改善することを目指します。 *腹の痼りを刺激すると、邪気が頭を衝く  腹の痼りを刺激すると、そこから出た邪気が頭の方に移 動し、頭に衝き上げる「上衝」(図1)という現象が起き ます。鍼をした後に、頭が痛くなったり、熱が出たり、目 眩がしたりという、首より上の症状が出たら、それは上衝 した邪気によるものです。 &ref(joushou-image.jpg)図1  腹の痼りを動かすというのは、発酵中の濁醪やビールや シャンパンを揺するようなものです。揺すったら、泡を吹 いて上の方に吹き出そうとしますね。「上衝」というのは、 それと似た現象で、邪気は泡みたいなものだと考えてくだ さい。同じ気ですから。  つまり、同じような動きをする性質があるものを、昔の 人は、まとめて「気」という名前を付けて呼んだのだと思 います。  もし、顔が赤かったり熱が出ていたり、また、鎖骨まわ りで衝き上げるような感じがしたら、すでに「上衝」して いるということですから、それを治めるために、手甲に引 き鍼をします。これは、慢性期の症状に急性期の症状が混 じっているときにみられる体の状態です。 *「手に引く」のは、邪気を手の方に誘導するため  慢性期で急性症状が混じっていないときには、手の陰経 に引くことから始めます。これは、腹の痼りを動かしたと きに発生した邪気を、少しでも手の方に誘導するための逃 げ道を確保しておくためです。  むかし中学校か小学校でした「静電気の実験」を思い出 してください。物体をこすって静電気を発生させると色々 な現象が起きます。物体の片方が+(プラス)に帯電し、 もう一方が-(マイナス)に帯電することによると習いま したね。-に帯電した物体の途中から地面(アース)への 逃げ道を作って、遠くに逃げられるようにしてあげると、 -の電子はそちらに逃げ、静電気が発生したことによる現 象は見られなくなります。  邪気も気なので、これと同じ性質を持つようです。手の 陰経に引き鍼しておくと、腹の痼りを動かしたときに発生 した邪気のかなりの部分が、頭に向かわず、手の陰経の方 に逃げるようです。「手足に引く」というのは、邪気の静 電気的な性質を利用しているように思います。  また、濁醪のビンの途中に孔と開けて、そこからガスが 逃げられるようにすると、栓を飛ばすガス圧は少なくなる、 と考えてもよいと思います。  また、これは、腹に発生した邪気が頭にいくときに胸を 通るからでもあると思います。手の陰経は、胸の内部の邪 気を引くのに一番多く使われる経絡です。ですから、別名 で肺や心臓の名前を付けて呼ばれています。  次に、手の陽経に刺すのは、手の陰経に刺したことの補 助で、手の外側(甲側)にも、邪気の逃げ道を作っておく ためです。邪気は、内側のような陰側からよりも、外側の ような陽側からの方が体の外に出やすいからです。同時に、 胸より上に邪気の一部が上がったときに、それが手の陽経 の方に誘導されるようにするためです。  いま手に入る、最も古い経絡の文献の一つである馬王堆 医経の陰陽十一脈灸経で、手陽経は「肩脈・耳脈・歯脈」 と呼ばれたように、肩胛骨・鎖骨から上の邪気を引くのに よく使われます。 *腹への刺鍼の意味  そして、次は腹ですが、腹の中で初めに横腹を刺すのは、 「陽に引く」ためです。腹の中では、横腹が一番背中に近 いです。それで、腹の痼りを動かしたときに発生した邪気 を陽位である背中側に近い方にも逃げ道を作り、胸を通っ て頭に行く邪気を減らしておこうというわけです。  横腹の次に小腹、つまり下腹部を先に刺すのは、邪気は 上に動きやすいので、上腹部を先に刺した後に下腹部を刺 すと、下腹部から上に逃げた邪気に上腹部の痼りが反応し て、弛んだ痼りがまた硬くなったりしやすいからです。 *足に引くのは、足の方にも邪気を誘導するため  次に足ですが、足の経絡は、陰経は頭や胴体の内側に、 陽経は胴や頭の外側に関係しています。  先ず陰経に刺すのは、腹を動かしたことで発生した邪気 の逃げ道を足の方にも作るためです。  次に陽経に刺すのは、足に引いた邪気の逃げ道を足の外 側にも作るためです。また、肩胛骨鎖骨から上に登ってし まった邪気や腹の表面に出てきた邪気を足の陽経に引くた めでもあります。手の場合と、ほぼ同じです。  また、足の陰経に刺せば腹の悪い所や深い痼りに直接響 いて、それらの邪気をより減らせるので、それらをより改 善できます。同じように、足の陽経に刺せば、腹の浅い所 に出ていた痼りの邪気をより減らせるので、そこの状態を より改善できます。  これは、もともと、足のツボが、腹の悪い所や、腹の奥 や表面の痼りを庇うために出てきたことによっています。 ですから、腹のツボに浅く切皮した程度でも刺して、しば らく横揺らしや旋撚などしておくだけでも、足のツボに刺 したときに、腹のツボが弛んで、腹の悪い所が改善するわ けです。 *背に引くのは、邪気を背の方にも誘導するため  次に、うつ伏せで、肩胛骨下縁の辺りから背中〜腰を上 から順に刺していきます。背中側に刺すのは、腹の邪気を 背中側へ引くためです。背中側へ逃げるルート作りです。  また、背中に刺すと、腹側のツボがもっと弛んだり、腹 側の悪い所の改善が進むからでもあります。  もともと、背中側のツボは、少しづつ漏れていた腹の邪 気が逃げ道を探したりしたため、また、腹の症状や腹側の ツボを庇うために、腹側とほぼ同じ高さ(デルマトーム?) に出てきています。もちろん、背中の使いすぎで背中側に ツボが出ることもありますが。  そのため、背中側に出ているツボから邪気を引き出すと、 軽く刺しておいた腹のツボから邪気が背中側に誘導され、 腹のツボが弛み、その結果として腹側の症状の改善も進み ます。  腹と違って上から下に刺すのは、腹を動かして発生した 邪気は、主に肩胛骨下角よりも上に動くので、それよりも 下側は、上から下に刺しても上のツボが復活する可能性は 低いからです。 *座位での刺鍼の意味  そして、座位になってもらうわけですが、終わりに座位 の姿勢で刺鍼するのにも意味があります。腹を動かしたこ とに因って発生した邪気は、頭の方へ動きます。この邪気 の後始末は、座位でした方がスッキリさせることができる からです。  寝たまま刺鍼した場合には、立ったときにフラフラした り、後で頭が痛くなったりする可能性が増えると考えてお いてください。(逆に言えば、治療後にしばらく寝ていら れる時や寝ていた方が良い場合には、後始末も寝た姿勢で することもあります)  さて、座位では、肩から肩胛骨、次に首、頭という順で 刺していきます。これは腹側と同じで、邪気は頭の方に逃 げる性質があるためです。先に頭に刺して、後で肩胛骨に 刺すと、肩胛骨から頭に逃げた邪気の影響で、頭のツボが また出てきてしまうことがあるからです。  首の前や鎖骨・胸骨など胸の上部にも刺鍼する場合には、 肩首を刺鍼した後に、頭に刺します。これも、そこから逃 げた邪気が頭の方に行きやすいからです。  肩首、胸の上部や頭に熱い所があるときに、その熱い辺 りに散鍼するのは、逃げてきた邪気によって熱が皮下に篭 もっていることが多いせいです。  このあたり、肩甲骨・鎖骨から上を漢方の用語で表位と 呼びます。  表位の皮膚に熱が篭もった場合に、漢方では、解表(解 肌)と言う目的の生薬を配合しますが、散鍼には解表と同 じ効果があります。特に、腹を刺鍼し、腹の邪気を動かし た場合には、頭には、必ずと言って良いほど、熱い所があ るので、散鍼して、熱を散らしておきます。  終わりに手甲に引き鍼するのは、散鍼で散らし切れなかっ た頭の邪気を手の陽経末端に強く引いて出すためです。そ して、治療後に腹から漏れて頭に行くかもしれない邪気が 手の末端から出ていくような逃げ道をもう一度作っておく ためでもあります。 *「頭の散鍼」と「手甲への引き鍼」は、後始末、丁寧に  この終わりの「頭の散鍼」と「手甲への引き鍼」を疎か にすると、立ち上がったときにフラフラしたり、眩暈(め まい)がしたり、後で頭が痛くなったりしやすいです。  そのため、忘れずに必ずするようにしてください。時間 が無いときには、途中を省略しても、この「頭の散鍼」と 「手甲への引き鍼」は、丁寧にしてください。 *水毒・瘀血の排泄について  この慢性期の養生の型をすると、腹に溜まっていた邪毒 から邪気が抜けるので、水毒・瘀血などの毒性が弱まりま す。すると、体の普通の排泄手段で体の外に出せるように なります。  治療した後に汗が出たりトイレに行きたくなったりする のは、そのせいです。この排泄現象は、次の日の朝くらい まで続きます。毒物の排出ができると、翌日の朝の寝覚め がスッキリしていて、体が爽やかで透明な感じになります。  この、「次の日の朝に起きたときの感じがスッキリして いること」は、「治療中に息が深くなること」、「治療後 に、表情が晴れ晴れとしたり、足取りが軽くなること」と 並んで、治療が適切にできたかどうかの良い目安になりま す。  患者さんに、治療した日の翌朝の体の感じを観察し、覚 えておいてもらうよう、伝えてください。  腹の邪気が大量に動き、次の日の朝までに大量に毒物が 排泄される場合には、熱が出たりすることもあります。そ ういう場合にも、翌朝の寝覚めがスッキリしていれば問題 は無いので、それも伝えておいた方が良いでしょう。  鍼治療を無理せずに気持ち良い範囲でして、頭の散鍼と 手甲への引き鍼を丁寧にすれば、そういう発熱なども少な くてすみます。  生理痛などの人の場合には、排出現象が次の生理の時に 起こることもあります。普段よりも、色が黒く、粘り気も 多く、匂いも強いものが、大量に出るようです。舌の裏側 の血管が黒っぽかったり、下腹部から腰骨よりに圧痛が有っ たり…などの瘀血証のサインが出ていた場合には、その辺 りも伝えておいた方が良いと思います。    つぎへ>>>[[術伝流一本鍼no.32]] -----    >>>目次へ・・・・・・・・・[[術伝流一本鍼(あ)]]    >>>このページのトップヘ・・[[術伝流一本鍼no.31]]    >>>術伝HPトップへ ・・・・[[トップページ]] ----- 術伝HP内検索:上の@wikiメニューの「wiki内検索」 ----- ----- *お知らせとお願い **術伝流鍼灸操体講座で患者さん役を募集  術伝流鍼灸操体講座は、実践面を重視しています。実際に症状が出て いる方の治療を見たほうが勉強になります。そこで、講座で患者さん役 をしてくださる方を募集しています。  くわしくは、[[術伝流のモデル]]をみてください。  よろしくお願いします。 **感想など  感想などありましたら、[[「術伝」掲示板>http://jutsuden.bbs.fc2.com/]]に書いてください。  また、「術伝」掲示板でも、旧掲示板「養生の杜」と同じように、 養生についての雑談や症例相談などもしていきたいと思っています。  よろしくお願いします。 **間違いなど  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