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術伝流一本鍼no.9 - (2022/02/19 (土) 23:39:14) のソース

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術伝流・先急一本鍼・運動器偏 9.膝の痛み

&size(24){&color(green){膝の痛みは、脹脛から}}
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#contents
*(1)はじめに 
 膝の痛みは、下半身の痛みの「成れの果て」という感じで、
膝の痛みを訴える人は、昔、腰痛、坐骨神経痛、足首痛など
の有った人が殆どです。それらが軽くて治療を受けるほどで
無かった場合もありますが。

 そのため、そのとき痛い急性症状が出ていても慢性期の要
素も多く、応急処置では辛さが減りきらずに残ってしまうこ
とや、痛みがぶり返すこと、再発も多くなります。

 治療の経過も長くなることも多いので、2,3回応急処置を
しても再発するようなら、慢性期の型(養生の一本鍼で解説
予定)を併用して、腹を中心に全身を整える必要も出てきま
す。患者さんには、治療が長びく可能性のあることを伝えて
おくとよいでしょう。

 とはいえ、1回の応急処置で長年の膝痛がすっかり治り、
伝えた操体などの自己養生を続けることで再発していない人
もいます。

 それに、例え、ぶり返しがあるとは言え、初めての応急処
置である程度改善しないと、患者さんには信用してもらえな
いので、よく練習して結果が出せるような技術を身に付けて
ください。

 また、膝の痛い人は、膝の皿まわりの痛みを訴えることが
多いですが、原因となるツボは膝裏側に出ていることが多く、
大腿裏から膝裏、そして下腿裏側に出ているツボを先ず改善
しないと膝の痛みは減りにくく、ぶり返すのも早くなります。

 「膝の痛みの改善は膝裏側、特に脹脛から」ということを
忘れないようにしてください。

*(2)膝の痛みの応急処置の手順(図1)

&ref(hiza-oukyuu-tejun.jpg)

 これまでにやってきた応急処置の総まとめという感じで、
練習してきた技を全て使います。今までの練習を思い出しな
がら練習してください。

 膝の応急処置も、前半、動作鍼、後始末に分けられます。
痛みが陽経側だけの時は応急処置も陽経側だけにしますが、
経過が長いせいかツボや痛みが陰経側にも出ていて、陰経側
も刺鍼する必要があることが多くなります。

 以下、陰経側も痛い場合を例に解説します。陽経側のみ痛
い場合には陰経側の刺鍼を省略します。

 応急処置の前半では、症状を良く確認したあと、先ずは陽
経側、陰経側の順で引き鍼をしてから、陽経側、陰経側に出
ているツボに刺鍼します。

 動作鍼も陽経側動作鍼をした後、陰経側の動作鍼も加える
のが基本ですが、膝の場合には、陰経側と陽経側が混ざって
しまうことも多いです。その動作が辛い時にどの辺りが原因
になっているかを考え刺鍼していきます。

 後始末は、頭に散鍼した後に手の甲に引き鍼します。

**1.症状確認
 症状確認では、どのような動きが辛いか、日常生活で困っ
ていることをよく聞きます(写真1)。

&ref(p1hari09#0101.jpg)写真1

 その1番目と2番目を日常生活に支障が無い位に改善する
ことを応急処置の目標にします。

 正座ができない、階段を降りるのが辛いという訴えが多い
です。正座ができない場合には、どの位までなら可能か(写
真2)、階段を降りるのが辛い場合には、膝をどのぐらい曲
げた状態で痛みが出るかを調べます(写真3)。

&ref(p1hari09#02.jpg)写真2

&ref(p1hari09#03.jpg)写真3

 どちらも痛みが出る直前の膝の曲がる角度を確認しておき
ます。

 膝の痛みに関係するツボは膝裏に出ているので、膝裏から
下腿にかけて、丁寧に調べます。

**2.引き鍼と大腿裏〜膝裏〜下腿の刺鍼
 先ず足の甲に準備の引き鍼をするために、ツボを探します
(写真4)。

&ref(p1hari09#04.jpg)写真4

 陽経側は、4~5間が多いですが、3~4間のこともあります。 
陰経側は、1~2間が多いです。陽経側に引き鍼した(写真5)
後、陰経側の足甲1~2間に引き鍼します(写真6)。引き鍼
をしながら動けるような運動鍼をしても良いです。

&ref(p1hari09#05.jpg)写真5

&ref(p1hari09#06.jpg)写真6


 その後にうつ伏せになってもらい、大腿裏から膝裏、下腿
裏にかけて、外側、中央、内側の3本のラインを調べます
(写真7)。

&ref(p1hari09#07.jpg)写真7

 外側は、膝裏のH字状の窪みの小指側の延長ラインで、委
陽を通ります。中央は、足裏中央のラインで、委中を通りま
す。内側は、膝裏のH字状の窪みの親指側の延長ラインで、
陰谷を通ります。

 その3本のラインを足の付け根の方から踵まで順に凹んで
いる所を押して圧痛がないか聞き(写真8,9)、圧痛のある
所を覚えておきます。印を付けてもよいと思います。

&ref(p1hari09#08.jpg)写真8

&ref(p1hari09#09.jpg)写真9


 外側では、委陽の2,3cm足首よりの下委陽、そのラインを
そのまま辿って脹ら脛が終わる辺りの飛揚〜外丘、踵の上の
陽大鐘など。中央では、委中の2,3cm足首よりの下委中、承
筋、承山、アキレス腱中央部など。内側では、陰谷の2,3cm
足首よりの下陰谷、築賓、大鐘など。そういう所に圧痛のあ
ることが多いです。

 古くなるとそのラインの延長線上の大腿部にも出ているこ
とが多くなります。踵の上の大鐘や陽大鐘は、踵の骨に足底
に向かって押し付けるように押すと圧痛がわかりやすいです
(写真10)。

&ref(p1hari09#10.jpg)写真10

 調べた3本のラインの圧痛のあったツボを外側、中央、内
側の順で、それぞれのラインでは腰の近い側から足首に向かっ
て順に刺鍼していきます(写真11,12)。

&ref(p1hari09#11.jpg)写真11

&ref(p1hari09#12.jpg)写真12

 踵の上の大鐘や陽大鐘は、踵の骨に足底に向かって、つま
り圧痛の有った方向に鍼を置いてから刺鍼します(写13)。

&ref(p1hari09#13.jpg)写真13

 この足裏側の刺鍼だけで膝の痛みがかなり改善され、膝を
動かして動診できるようになることが多いので、直ぐ動作鍼
に移ります。

 余り無いと思いますが、膝裏側だけの刺鍼では膝が動かし
にくい場合には、膝の表側、膝の皿の外側、内側、中央のラ
インを調べ圧痛のあるツボを探し刺鍼します。

 膝裏側と表側のツボの出やすいラインについては、図2も
参考にしてください。

**3.膝の動作鍼
 今までしてきた動作鍼と基本的には同じで、できない動作
で最も伸びようとしている筋肉にツボが出ていることが多い
です。

 正座不可という動作制限が多いので、先ずは、その動作が
ラクにできる範囲で痛くなる直前まで曲げてみて(写14)、
膝の皿周りの窪みを調べ、一番痛い所を見付け、そこに先ず
刺鍼します(写真15)。

&ref(p1hari09#14.jpg)写真14

&ref(p1hari09#15.jpg)写真15

 いったん戻してから調べ直すと少し可動域が広がりますか
ら、先ほど刺鍼した所から下腿方向と大腿方向に溝を辿って
次のツボを見付け(写真16)、見付かったツボに刺鍼します
(写真17)。

&ref(p1hari09#16.jpg)写真16

&ref(p1hari09#17.jpg)写真17

 すると、また少し可動域が広がり次のツボは膝から先程よ
り遠くに出ます(写真18)。繰り返します。

&ref(p1hari09#18.jpg)写真18

 写真のモデル患者さんは比較的軽かったので、表側1ライ
ン3カ所の刺鍼で済みましたが、辛い動作によっては、足裏
の側に刺鍼する必要がある場合もあります。

 座位で症状が確認しにくい場合には、立って確認したり、
横向きなどの寝た姿勢で確認したりもします。

***もう少しで正座ができそうなとき
 もう少しで正座が可能な場合や、できるけれど体重が掛け
られない場合には、ツボは大腿の胴体より、鼡径部や尻近く
に出ています。特に伸びる側の大腿付け根から尻にかけてツ
ボが出ていることが多いです。

 痛い側を上にした横向き寝で正座をした時と同じ位に膝を
深く曲げた姿勢でツボを探し刺鍼します。

***階段を降りるのが辛いとき
 また、階段を降りる動作が辛いときなどは、ある程度改善
してからは、実際に階段を降りてもらうか、階段と同じ位の
段差で降りる格好してもらって、痛む所と曲がり具合を確認
します。

 実際に階段で検査するときには、手すりに掴まりながら降
りてもらい下で待つか、一段下から手を添えながら降りても
らいます。

 座位になれるところに戻って、同じ曲がり具合に膝を曲げ
痛んだ所辺りを探して圧痛のあるツボを見付け刺鍼します。

 何回か繰り返しになることもありますが、一鍼するたびに
改善していくので、それほどイヤがらずに試させてくれるこ
とが多いです。

**4.後始末
 陰経側にも刺鍼したときには、後で腹の邪気が上衝する現
象が起きて、頭が痛くなったり熱が出たりする可能性もある
ので、念のため、頭に散鍼した後に手甲に引き鍼しておきます。

 手甲は、肩こりなどの仕上げの引き鍼と同じように、井穴
を摘んだり、指を反らせたり、甲の骨間を押したりして、出
ているツボを探します。

 余り無いと思いますが、陽経側だけに刺鍼したときは、足
甲の陽経側2~3、3~4,4~5間の何れか一番痛い所に刺鍼し
て終えます。

*(3)おわりに 
 膝の痛みの治療ができるようになると、それを応用して肘
や股関節の治療もできるようになります。

 肘については、腱付着部痛への鍼、捻転時の動作鍼という
技術がありますので次回解説します。が、股関節については、
膝と余り変わらないので、工夫して試してみてください。


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