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術伝流一本鍼no.22 - (2019/07/01 (月) 11:36:32) のソース

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術伝流・先急一本鍼・運動器偏 22.運動器偏補足 ムチウチ

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#contents
 内科系の表位の応急処置を連載してきましたが、運動器系急性
期のno.16のときに掲載できなかったムチウチの症例を体験しま
したので、割り込みで、書いておきます。

 基本的なことは、no.16で書いた上半身の運動器系応急処置と
同じですので、忘れてしまった人は、no.16を参照してください。

*(1)ムチウチの症状確認でのポイント
**衝撃を受けた姿勢、方向を詳しく聞く
 ムチウチの場合には、症状確認のときに注意することがありま
す。それは、事故などで、どういう方向から衝撃を受けたかとい
うことです。衝撃を受けた方向を、できるだけ、詳しく聞きます。
衝撃の方向と動作制限のラインが一致することが多いので。

 どこの座席で、どういう姿勢で、どういう方向から衝突され、
どういう風に衝撃を受けたか、などを詳しく聞きます。その後に
痛み辛さ動作制限などの症状が出た場所の移り変わり、現在の痛
み辛さ動作制限なども詳しく効きます。

**大きな衝撃を受けた場合には、麻痺して痛みを感じないことも
 交通事故のような大きな衝撃の場合、一番目、二番目に衝撃を
受けた所は麻痺してしまって、その時は痛みを感じないことが多
いです。そのため、治療を受けないことになってしまうことも多
くなります。

 一週間後、一ヶ月後に鈍い痛みが出てきたりします。そういう
痛みは、長引くことが多いです。また、奥の方の場合は自覚痛は
感じないこともあります。

**ツボの見付け方
 念のため、実際にやりにくい動作を無理のない範囲でしてもら
い、確認しておきます。また、日常生活でできなくて困る動作が
あれば、良く聞き、必要なら無理の無い範囲でしてもらい、確認
しておきます。

 また、事故時に衝撃を受けたであろう場所も目安になります。
素直に、動作制限の場所と衝撃を受けた場所がほぼ同じになるこ
とが多いです。が、違う場合もありますので、注意が必要です。

 時間が経過している場合には、動作制限のライン上や、衝撃を
受けただろうと予測した近くに、ペッコリ穴が空いたような所が
見つかります。虚したツボです。見た目にも凹んでいることが多
いし、指で押してみると、指がズブズブと奥まで入ってしまうこ
とが多いです。そこが、改善すべきツボの出ている場所です。

 経過が長いためか麻痺して痛まないことも多いので、患者さん
が痛まないと言ったからという理由で、選穴しない理由にはなり
ません。一番に衝撃を受けたラインか、日常生活で一番に困って
いる動作制限の中で最も伸びるライン、この二つのライン上で、
一番凹んでいる所が候補になります。

*(2)刺鍼手順など
 手順は、五十肩や顎関節症など上半身の運動器系応急処置と同
じで、手甲引き鍼の後、見付けておいた衝撃を受けたラインなど
の虚したツボに刺鍼し、動作制限が残っているようなら動作鍼を
し、頭の散鍼と手甲への引き鍼で仕上げます。

 重い場合には、1回の治療で1方向の動作制限の改善という感
じで数回治療する場合もあります。しかし、軽い場合は1度の治
療ですっかり良くなってしまう場合もありました。

 重い場合は、体全体の調子を整えるために、腹診なども含め、
養生の一本鍼などを併用して治療します。

*(3)症例
 3年近く前にムチウチになった人が講座に見学にいらしたので、
治療させてもらいました。

 始めに経過を聞いたら、バックミラーを見たときに後ろから追
突されたとのことでした。次の日くらいには、腰も痛くなり、日
が経つに連れて、痛みが増していったそうです。

 1年近くシビれた状態が続き、その後も時々痛み、2年経って
からは、左がツレる感じで、使わないせいか左の筋力が落ちた感
じがするとのことでした。

 ムチウチの症状確認でのポイントである、どういう方向から衝
撃を受けたかを考え、この場合には、左斜め上を見た時の姿勢で
真後ろからということになるかなと思いました。

 そこで、左斜め上を見た時に真後ろから衝撃が来た場合に、首
がどういう風に衝撃を受けるか思い浮かべながら、後頸部のツボ
を探しました。そしたら、首左側の背中に近い辺りに古いツボが
ありました(写真1)。

&ref(DSCF2350.jpg)写真1

 先ず準備として、左手の手甲を調べ、出ていたツボに引き鍼し
ました(写真2)。

&ref(DSCF2354.jpg)写真2

 その後、見付けておいた首左後側のツボに刺鍼しました(写真
3)。

&ref(DSCF2356.jpg)写真3

 表層から鍼を入れていくと、非常に硬い筋肉に当りました。ム
チウチの場合には、頚椎の直ぐ上に患部があることが多いので、
この硬い部分は、おそらく奥の患部を庇(かば)っているためだ
ろうと、そこを刺し通していきました。

 硬い部分を通り抜けた感じがしたら、もう一つ非常に硬い筋肉
の層に当りました。そこも、おそらく、奥の患部を庇っているの
だろうと、刺し通していきました。

 そこを抜けたら、やはり、頚椎の直ぐ上にフニャフニャして冷
たい部分がありました。しばらく刺鍼していても動きが鈍かった
ので、真気を誘う(催気?)ように、ゆっくり大きめに鍼を動か
し続けました。

 しばらくして温まった感じがしたので、患者さん本人にも改善
したことを確認してもらってから、抜鍼しました。

 このように、冷たい部分を温めたり、虚している部分を補すた
めには、細かく速い動きで邪気を抜き出した後、ゆっくり大きめ
に鍼を動かしながら待つのが、コツだと思います。
(細かく速く動かし邪気を抜き出す>>>[[術伝流一本鍼no.77]])
(ゆっくり大き目で虚を補し温かく>>>[[術伝流一本鍼no.78]])

 抜鍼した後、ツボの出ていた所は、フニャフニャした感じや凹
みが、すっかり無くなっていました。周りで見ていた人にも確認
してもらいました。また、患者さんは、息が深くできるようになっ
たとのことでした。

 その後に、動作鍼に移り、首を動かしてもらい、動かしづらい
所、痛みが出る所を探してもらいました。ある角度で、左肩甲骨
上辺りが突っ張るというので、突っ張りを感じる角度に首を固定
し、ツボを探して刺鍼しました(写真4)。

&ref(DSCF2362.jpg)写真4

 その後、また動いてもらうと、背骨側と肩甲間部側に突っ張る
所が移動しました。3回ほど動作鍼を繰り返して、不自由なく首
や腕が動かせるようになりました。

 事故の次の日くらいから、左腰も痛くなったと言うことでした。
それで、うつ伏せになってもらいました。すると、左脊柱起立筋
が盛り上がっているのが、目に付きました。これも、多分、悪い
所を庇っているのだろうなと、左腰を探したら(写真5)、虚し
ているツボを2つ発見しました(写真6)。

&ref(DSCF2374.jpg)写真5

&ref(DSCF2376.jpg)写真6

 そこに順に刺鍼していきました(写真7)。

&ref(DSCF2379.jpg)写真7

 ここも古い虚したツボのせいか、なかなか変化しなかったので、
じっくりゆっくり大きく鍼を動かしながら、温まるのを待ちまし
た。2カ所刺鍼したら、案の定、左脊柱起立筋の盛り上がりは消
えました。

 その後、左痞根、仙腸関節、下腿、足首の周りなどに出ていた、
関連しそうなツボに刺鍼しました。

 左痞根のツボは、脊柱起立筋の外端で肋骨の近くです。脊柱起
立筋を横から突き刺すように、畳に平行に刺鍼します。途中で大
量に邪気が出てきたので、弾鍼して抜き出しました(写真8)。

&ref(DSCF2383.jpg)写真8

 仙腸関節は、子供の頃から弱点だったとか、ここも大量の邪気
が溜まっていました(写真9)。

&ref(DSCF2388.jpg)写真9

 下腿は、飛揚〜外丘の辺り(写真10)と築賓の辺り(写真11)。

&ref(DSCF2390.jpg)写真10

&ref(DSCF2391.jpg)写真11

 足首の周りは、大鐘(写真12)と陽大鐘(写真13)。

&ref(DSCF2392.jpg)写真12

&ref(DSCF2396.jpg)写真13

 この辺りは、腰痛や膝痛のときと同じような感じで、陽陰陽の
手順で、刺鍼しました。

 ゆっくり立ち上がってもらい、腰の前後屈(写真14)、左右捻
転(写真15)、そして、首を動かしてもらい(写真16)、違和感
の無いことを確認してもらいました。

&ref(DSCF2402.jpg)写真14

&ref(DSCF2404.jpg)写真15

&ref(DSCF2406.jpg)写真16

 その後、頭に散鍼し(写真17)、手甲に引き鍼して仕上げまし
た(写真18)。

&ref(DSCF2397.jpg)写真17

&ref(DSCF2401.jpg)写真18

 古いツボを動かしたせいか、治療後に、温泉に長く入りすぎた
時のようなダルさが出てきたようでした。そのためか、時々しば
らく横になったりしていました。が、講座終了時には、すっかり
元気になっていました。

 1週間後に、また治療させてもらいました。

 初めに経過を聞いたら、左が柔らかくなって力が入らなかった
そうです。右で支えて仕事をしたので、右を治療しないで良かっ
たとのことでした。

 左首の肩寄り(写真19)や腰にはツボが出ていましたので、そ
の辺りを中心に同じような手順で刺鍼しました(写真20、21)。

&ref(DSCF2435.jpg)写真19

&ref(DSCF2439.jpg)写真20

&ref(DSCF2441.jpg)写真21

 バックミラーを見たときに追突されたので、右腰が少し浮き気
味で左腰に体重が掛かった状態だったで、左首だけでなく、左腰
でも衝撃を受けたのかなと思いました。

 ムチウチの症例としては、興味深い症例を体験でき、ありがた
いなと思いました。 

*追記2019.07.01

 ムチウチのツボは深いです。が、古くなる(発症から時間が経
つ)ほど深くなるような気がしてます。また、古くなるほど、奥
のフニャフニャの幹部の直ぐ上のカチカチ部分も硬さも酷くなる
傾向に有るように思います。

 ですから、発症後できるだけ早く鍼などで改善した方が治りや
すいように思います。




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いる方の治療を見たほうが勉強になります。そこで、講座で患者さん役
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