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術伝流一本鍼no.13 - (2018/07/05 (木) 14:16:23) のソース

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術伝流・先急一本鍼・運動器偏 13.頭刺

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*(1)基本的に
 応急処置の原則は、「遠くに強く引く」でした。患部が
胴頭などの体幹部にある場合には、「遠く」として手足の
甲が使われます。が、患部が手首・足首付近の場合には、
手足の甲は「遠く」とは言えないので、手足の甲を使って
も邪気を引ききれないことがあります。

 こういう場合には、左右反対側や上下反対側、対角反対
側の対称点が「遠く」として使われることをno.12(週刊
『あはきワールド』2009年4月8日号 No.130)で説明
しました。が、足の甲の痛みには、頭が「遠く」として使
われることがあります。頭刺と言われるようです。

 頭刺は、足の甲の「遠く」として使われるだけでなく、
過敏状態を鎮(しず)めるためにも使われます。

 運動器系の痛みでも神経過敏な状態が関係していそうな
時に、準備としての引き鍼の後に、頭のツボに刺鍼して、
そのまま置鍼し、後始末の前に抜鍼するという手順で使い
ます。

&ref(atamakeiraku.jpg)図1

 頭のツボの分布と経絡の関係は、図1のような感じで、
頭の鉢巻をする辺りが陽経、その内側から頭頂部にかけて
が陰経の担当で、頭の右側は右半身、左側は左半身のツボ
が出ます。

 頭の鉢巻をする辺りの前側は陽明、横側は少陽、後ろ側
は太陽になります。鉢巻をする辺りの内側から頭頂部は、
厥陰の領域ですが、前側は太陰、後ろ側は少陰になります。

 過敏症状に頭刺を使うときには、経絡的なことを考えな
がら、一番痛い所と天から見て重なる辺りの頭の部分を探
すと、ツボが見付けやすいです。胴体や大腿部までは図2
のような感じです。

&ref(doutaikeiraku.jpg)図2

 下腿からは、足厥陰と足太陰の交差(注1)、つまり、
足厥陰が前側、足太陰が中央になることも頭に入れて下さ
い。

 また、足の甲の場合には、2~3間が陽明、3~4間が少陽、
4~5間が太陽、1~2間は厥陰と考えると、臨床的には上手
く行くことが多いと思います。隣の指間にツボが出ている
こともありますが。

 頭のツボは、表面の皮膚がブヨブヨしていて、押すとペ
コペコ凹むのが特徴です。ツボが古くなるほど、ブヨブヨ
している所が広く、ペコペコしている感じも強くなる傾向
にあります。

注1: 下腿で太陰と厥陰が交差しているのは面白い現象
ですが、その理由は「ヒトが直立2足歩行している」から
ではないかと、私は考えています。詳しくは「術伝」のH
Pにある「鍼は引き鍼」の「[[経絡の交差と2足歩行]]」
に書きましたので、興味のある方は読んでみてください。

*(2)足の甲の痛みに対する頭刺 
 次のような手順で行います。

①症状の確認
②準備:手甲への引き鍼
③頭刺
④後始末:頭散鍼→手甲への引き鍼

 詳しい説明は、以下の通りです。

**1.症状の確認
 先ず、どういう動作をしたときに、どの辺りが辛いかを
確かめます。動かすのが辛いときには、無理せず、だいた
いの位置を把握します(写真1)。

&ref(DSCF1073.jpg)写真1

 それから、その位置が、左右、陰陽、前横後ろの何処に
なるかを考えます。

 足の甲の場合には、2~3間は鉢巻をする辺りの前側の陽
明、3~4間は鉢巻をする辺りの横側の少陽、4~5間は鉢巻
をする辺りの後ろ側の太陽、1~2間は頭頂部の厥陰が担当
部位になります。

 そういう経絡の関係と左右の関係を考え合わせて、頭に
ツボが出ていそうな所の見当を付け、ツボを探します。頭
を手で触れて、凹んでブヨブヨした所を探します(写真2)。

&ref(DSCF1074.jpg)写真2

**2.準備 
 選んだ頭のツボに経絡的に関連する手甲にツボを探して
(写真3)、引き鍼します(写真4)。

&ref(DSCF1076.jpg)写真3

&ref(DSCF1077.jpg)写真4

 患部が足甲の1~2間などで陰経側のときには、頭のツボ
も手のツボも陰経側になるので、先ず、表裏反対側の陽経
の手甲にツボに引き鍼します。それから、手首近くの列缺
などに引き鍼します(「陽→陰→陽」の原則)。

 手平側は痛いので、手の陰経に引き鍼するときには、手
首近くのツボを使います。

**3.頭刺
 手に引いた後に、探しておいた頭のツボに刺鍼します
(写真5)。

&ref(DSCF1079.jpg)写真5

 押し手を置くとき、刺鍼する所の周りを触って熱かった
ら、念のため、刺鍼する前に熱い所を散鍼した方が良いで
しょう。

 刺鍼中に、患部の足を動かすと運動鍼になります(写真6)。

&ref(DSCF1080.jpg)写真6

 足がブラブラする高さの座位で治療できる場所が有れば、
運動鍼は実行しやすくなります。

 刺鍼後に患部を動かしてみて痛みが減っていたら、痛み
が足甲の他の所に移っていないか、触ったり動かしてもらっ
たりして調べます。

 痛みが移っていたら、そこから頭のツボを予測して、頭
を手で触ってツボを探して、見付かったツボに頭刺します。
足甲を動かしたりしても、痛みが余り出てこなくなるまで
繰り返します。

 頭にしばらく刺鍼しても痛みがなかなか少なくならない
時には、そこに鍼を置鍼します。それから、患部と経絡的
に関係する遠くへの引き鍼、患部の刺鍼、経絡的に関連す
る所への刺鍼、動作鍼、巨刺、上下刺、対角刺などをする
と、減りやすいです。

 そういうときには、頭に置鍼した鍼を抜いてから、後始
末に入ります。

**4.後始末
 後始末は、頭の熱いと所を散鍼(写真7)した後に、手
甲を調べ出ているツボに刺鍼します(写真8)。

&ref(DSCF1081.jpg)写真7

&ref(DSCF1082.jpg)写真8

*(2)過敏症候群に対する頭刺 
 治療を始める前に症状の確認をしますが、そのときの話
しぶりなどから興奮してらっしゃるような感じや、物事に
過敏そうな感じを受けたときには、患部の他にも、頭の様
子を調べさせてもらいます。

 「痛みに対する感受性が過敏になっているときには、痛
みを強く感じることがあります。辛い状況の中で、それ以
上辛さの原因を増やさないためです。そういうときには患
部だけでなく、頭のツボを調べて刺鍼すると、ホッとした
感じになり、痛みに対する感受性が適度になり、辛さが減
ることが多いです。」

 というような感じで説明した上で、頭を調べさせてもら
い、ツボが出ていたら頭刺も取り入れた応急処置をします。

 手順は、大雑把には次の通りです。

①症状確認
②準備:手足甲引き鍼
③頭刺、必要なら置鍼
④患部および関連するツボへの刺鍼など
⑤頭に置鍼した鍼の抜鍼
⑥頭散鍼→手甲への引き鍼

 患部の症状を確認した後に、関連すると思われる頭のツ
ボを探しておきます。準備として、頭のツボに経絡的に関
係する手足甲に引き鍼します。

 頭のツボの周りが熱ければ散鍼してから、そのツボに刺
鍼し、しばらく刺鍼しても反応が治まらない所には置鍼し
ます。置鍼するのは、せいぜい2,3カ所位にします。

 その後に、応急処置で今まで書いてきたように、患部と
経絡的に関係する遠くへの引き鍼、患部や経絡的に関連す
る所への刺鍼、動作鍼、手首足首から先なら巨刺&運動鍼
などをして、辛さを軽減していきます。

 充分に応急処置が済んだら、頭に置鍼した鍼を抜きます。
それから後始末に入り、頭の熱い所に散鍼してから、手甲
に引き鍼します。

 過敏症候群の人は敏感なので、話し方に注意しましょう。
「あなたの痛みは、気の持ち方のせいだ」と伝えたように
誤解された場合には、相手が怒ってしまうのも当然だなと
思います。

 そうではなく、心も辛い状況に置かれているので、痛み
に対する感受性を高くして、それ以上辛いことを味あわな
くても済むようにしているわけです。

 そのことを理解して、ホッとする状況を作ることが、心
が落ち着くだけでなく、患部の痛みを軽減するのにも役立
つし、実際に、患部への鍼の効果も上がりやすいことを理
解してもらいましょう。

*(3)応用:下腿の痛み
 足の甲だけでなく、下腿などの痛みにも応用できます。
足首の少し膝寄りの下腿前面が痛く、少し過敏傾向もある
人に施術した例を出します。

**1.症状確認
 左下腿前面の足首寄り(写真9)が痛いということで、
調べたら、患側の前頭部にもツボが出ていました(写真10)。

&ref(DSCF1084.jpg)写真9

&ref(DSCF1085.jpg)写真10

**2.準備 
 見付けた頭のツボに経絡的に関係する手甲の陽明側を調
べたら、合谷にツボが出ていた(写真11)ので、そこに引
き鍼しました。

&ref(DSCF1086.jpg)写真11

**3.頭刺
 頭に見付けておいたツボに刺鍼しました。

 こういう場所に置鍼するときには、抜けないように少し
鍼を入れた方が良いので、横刺にします。彈入した後に、
鍼を横にして、頭蓋骨と指で押し手を作るようにすると、
刺入しやすいです(写真12)。

&ref(DSCF1088.jpg)写真12

 少し頭頂寄りも探したら、ツボが出ていました。そこに
も置鍼しておきました(写真13,14)。

&ref(DSCF1090.jpg)写真13

&ref(DSCF1091.jpg)写真14

**4.対角刺での運動鍼と、末端への引き鍼
 患部の対角の右前腕に出ていたツボに刺鍼しながら、患
部近くの足首を、痛くない範囲で、ゆっくり動かしてもら
いました(写真15)。

&ref(DSCF1092.jpg)写真15

 その後に、患部の末端側の足甲2~3間(内庭の辺り)に
出ていたツボに引き鍼しました(写真16)。

&ref(DSCF1093.jpg)写真16

**5.後始末 
 後始末に入り、先ず、頭に置鍼していた鍼を抜きました。
それから、頭の熱い所に散鍼し(写真17)、手甲に引き鍼
して(写真18)、仕上げました。

&ref(DSCF1094.jpg)写真17

&ref(DSCF1095.jpg)写真18

 こんな風に、今まで書いてきたことを組み合わせて治療
することもできます。色々と工夫してみてください。


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いる方の治療を見たほうが勉強になります。そこで、講座で患者さん役
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 くわしくは、[[術伝流のモデル]]をみてください。

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