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術伝流一本鍼no.23 - (2019/09/09 (月) 13:10:02) のソース

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&color(green){術伝流一本鍼no.23 (術伝流・先急の一本鍼・内科系編(4))}

&bold(){&size(24){&color(green){表位・少陽経の急性期}}}

めまい、耳鳴り、突発性難聴、偏頭痛など
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#contents

 今回は、表位の急性期の中で、上衝が少陽経に起こる場合で
す。

*(1)表位少陽経の急性症状
 邪気が少陽経を衝き上げれば、体の横側の症状が出ます。と
言うか、上衝が起こり、邪気が頭の方に衝き上げ、元々少陽経
に歪みが合った場合には、体の横側の症状が出ます。横側の症
状の例は、目眩(めまい)、耳鳴り、突発性難聴、偏頭痛など
です。

 聴覚に関係する耳や、体の平衡を取るのに関係する三半規管
が、体の横側にあることに由来すると思われます。

 上衝に伴って少陽経の症状が出た場合には、体の左右差が大
きいことが多いです。ですから、この場合は、応急処置で治まっ
ても、体の左右差を少なくしないと、再発することが多くなり
ます。

 そのため、慢性期の養生では、左右差の改善を、腹の邪毒、
歪み、虚の改善に加える必要が出てきます。

 処置の基本は、陽明経などと同じく、既に頭に上がっている
邪気を少なくすること、邪気を体の外に引き出すことが、基本
になります。手足の末端に引くことと表位の散鍼が具体的手段
です。

 手早い刺鍼が大切で、邪気の波が来終わった時点で抜鍼する
のがコツです。次の波が来てしまうと、また、上衝を引き起こ
し症状が復活することが多くなります。

 時間的にユトリがあり症状を悪化させないようなら、体の左
右差の改善も付け加えてもよいと思います。ただし、加減を間
違えて症状を悪化させないような注意は必要です。

*(2)実技と手順
 姿勢は、基本的には、座位が望ましいです。寝て刺鍼した場
合には、刺鍼した後で起きあがったときに症状が復活しやすい
からです。特に、目眩の場合は、多いです。

 ただし、座位が無理なときは仕方がありません。寝て刺鍼し、
症状が復活したときには、座位でもう一度手甲に引き鍼し、そ
の後に表位に散鍼してから手甲に引き鍼します。

 手順の基本は、陽明などのときと同じです。

1.診察

2.準備:上衝を治める
  ・手甲(手指)に引く

(3.手足に引く          )
( (1) 手足陰経に引く:出ていれば引く)
( (2) 必要があれば、陽経にも引く  )
 
4.陽に引く
  (1) 表位の熱い所を散鍼
  (2) 陽側に出ているツボに引く

(5.左右差解消をする)

6.後始末:上衝をおさめる
  (1) 頭の散鍼
  (2) 手甲に引く

 途中で状況に応じて必要な処置を付け加えたりします。

**1.診察
 繰り返しになりますが、表位の急性症状の診察で、先ず見た
いのは、どの経絡に歪みがあり、上衝した邪気の影響を受けて
いるかです。その目安になるのは、主に3つ、症状、頭の熱さ、
八邪の厚みなど指周りの異常です。

 今回は、それで、主に少陽経が異常だと判断した場合です。

**2.準備:上衝を治めるため手甲に引き鍼
 先ず初めに、頭に上がった邪気を少しでも降ろすために、手
甲のツボに引きます。

&bold(){〈ツボ〉}
 少陽の場合は、眩暈、偏頭痛、耳鳴りなど、耳や内耳の平衡
器官が関係していることが多く、薬指と、その先の手甲のツボ
と経絡的相関が高いです。手甲のツボは、4~5間の中渚の可能
性が高いです。

>「小陽の病たる、口苦く、ノド乾き、目眩(くるめ)くなり」
                        (傷寒論)

 頭のハチマキをする辺りを触って一番熱い所と経絡的(前・
横・後ろ)に関連する手甲のツボを選んでもよいです。

 少しズレて、隣の指の周りにも出ることもあります。

 症状の出ている場所、頭の熱い所、手甲や指にツボの出てい
る所、その3つが経絡的関係で同じでない場合には、手甲や指
に出ているツボを先ず優先します。この辺りも陽明などと同じ
です。

&bold(){〈刺法〉}
 瞬き、顔の赤み、声のトーンや、目眩などの症状を参考に上
衝が治まるように刺鍼します。

 刺法は、基本的には、速刺除抜です。邪気を感じたり、瞬き
が始まったりしたら、深さを変えずに、抜く方向に力を加えな
がら、横揺らし、旋捻などし、来ている邪気を、全て、体の外
に引き出すように刺鍼します。

 そして、繰り返しますが、邪気の波が来終わったときに抜く
のがコツです。

**3.手足に引く
 上衝が酷く頭の熱感が冷めないときには、手の陰経にも逃げ
道を作ります。腹から頭へ行く途中で胸を通るので、胸と関係
が深い手陰経に引くわけです。

 表位少陽の症状の場合は、内関にツボが出ていることが多い
です。

 ただし、2.準備で、上衝が少しでも治まっている場合には、
この刺鍼は省略します。特に、初心者のうちは、省略した方が
無難です。抜き時を間違えると、上衝が復活することがあるか
らです。これも陽明などと同じです。

**4.陽に引く
***4.1.表位の熱い所を散鍼
 先ず表位を触って、熱い所があれば、刺鍼する前に散鍼しま
す。

 眩暈、偏頭痛、耳鳴りなど少陽の場合には、側頭部や耳周囲、
横頚部が多いです。
 
***4.2.表位陽側に引く
 それから、症状の出ている表位の背中側に出ているツボに引
きます。

 ただし、表位少陽のごく軽い症状の場合には、手足への引き
鍼だけで症状が消えてしまう場合も多く、そういう場合には、
陽に引くことを省略する場合もあります。

&bold(){〈ツボ〉}
 各症状の出ている横輪切りの背中側にツボを探すのが基本で
すが、少陽の場合には、体の横側にツボが出ている場合が多い
です。側頭部と横頚部などが候補になります。

 また、首から上の病では、後頚部にツボが出ていることが多
いです。例えば、天柱風池への刺鍼で眼圧が低下したという報
告もあります。

 それと、表位の症状のときは、陽位の代表である大椎周囲の
筋肉が硬く強ばっていることが多いです。そういうときは、そ
の辺りも弛めた方がよいです。

 この辺りも陽明と同じですが、少陽経の症状が出ている場合
には、左右差が大きいことが多いです。また、片側の肩や肩甲
骨周囲の凝りが酷いことも多くなります。
 
&bold(){〈刺法〉}
 陽位の刺鍼は、基本的に、陽経と同じく速刺徐抜です。繰り
返しになりますが、蠢(うごめ)く邪気を抜き出せるよう、ま
た、次の邪気が来ないうちに抜鍼するようにしてください。

**5.左右差の解消をする
 時間的に余裕があれば、左右差の解消をするのも良いと思い
ます。

 側頭部や横頚部以外でも、肩甲骨外側の肩貞、脇、脊柱起立
筋外端の痞根・徹腹、腰臀部横側など体側部の左右差を改善し
たり、脹ら脛など下半身の左右差を改善します。

 ただし、加減の仕方によっては悪化することも考えられます
ので、注意しながら実行してください。また、時間が掛かり過
ぎても症状が復活しやすくなりますので、手早い治療が必要で
す。

**6.仕上げ
***6.1.頭の散鍼
 頭の散鍼は、片手で頭を撫でて熱い所を探し、もう一方の手
で熱い所を散鍼をします。

***6.2.手甲に引き鍼
 終わりに、もう一度、手甲に引き鍼して仕上げます。手指、
手甲、八邪を調べ、一番悪そうな手甲のツボに刺鍼します。初
めと同じ指間になったら八邪を使います。

**&bold(){〈灸の場合〉}
 陽明経ほどではありませんが、指のツボへの灸だけで解消で
きることもあります。 目尻〜頬の腫れ痛みなら中指、耳鳴目
眩なら薬指の骨空などが候補です。

 ただし、体が動きやすい場合には、難しくなります。その辺
りも考えて、手段を選んでください。

*(3)代表例
**1.偏頭痛
 偏頭痛の場合は、手甲のツボに刺鍼しながら、軽く頭を動か
してもらうと、邪気が出ていきやすいです。ただし、動かして
頭痛が激しくなったり、目眩が出るようなら、頭は動かさない
方が良いです。

**2.目眩(めまい)
 目眩の場合は、灸はしにくいことが多いです。動くことも考
え、刺鍼も浅目の方が良いでしょう。

 座位でする場合も、背凭れ(せもたれ)などで、体が倒れな
い工夫も必要です。

**3.突発性難聴
 上手く行いけば、手甲への引き鍼だけで、軽くなることがあ
ります。手甲への引き鍼をしながら、口を開け閉めしてもらっ
たら、邪気が出て行きやすかったこともありました。

*(4)体の左右差を少なくする
 繰り返しになりますが、少陽の症状の出やすい人は、体の左
右差が大きいことが多いです。そのため、応急処置をしても、
体の左右差が残っていると、症状が復活しやすいです。

 急性症状が治まっても、体の左右差の改善という慢性期治療
が必要ですので、事情を説明し治療機会を作りましょう。

 少陽経病証の慢性期治療は、「養生」の「少陽経病証」のと
きに、左右差の解消法も含め、詳しく書く予定です。
(追記:2016.8.15 「少陽の病」[[術伝流一本鍼no.45]])

*(5)自己養生
 再発が多いので、自己養生を伝えておくのも良いかと思いま
す。

**1.薬指反らし
 目眩、偏頭痛、突発性難聴は、薬指を反らすだけで軽くなる
ことも多いです。

 電話で、職場の同僚が突発性難聴という相談を受けたときに、
取り敢えず、患側の薬指を反らしたり、周りの指も含めて、揉
んだりしたらとアドバイスしたら、しばらくして治ったという
電話がありました。

 ただし、隣の指に出ることもあるのは、伝えておいた方が良
いでしょう。

 体の左右差は残るので、説明して、その解消のための治療を
させてもらいましょう。

 また、体が動いて鍼灸しにくい場合には、取り敢えず薬指な
どを反らせて、症状を少し治めてから、鍼灸するということも
できます。ちょっとしたコツですが。
 
**2.立位の重さの操体
 立った姿勢で、体重を移しやすい方に少し余分に移します。
体重を戻したくなったら終わりにします。

 この立位での重さの操体を、机、椅子の背、テーブル、洗濯
機、調理台などに手を付いて、空いた時間にするのを習慣にす
ると、体の左右差が解消されやすいです。座位で実行するのも
よいです。

 詳しくは、[[術伝流操体no.11]]を参照してください。

*(6)おわりに
 今のところ、残念ながら、患者さんが見付からず、写真が取
れないでいます。偏頭痛、目眩、耳鳴りなどの症状がある人で、
治療写真をとらせてくださる方は、術伝事務局までメールをく
ださると、ありがたいです。

 よろしくおねがいします。

ーーー 追記: ーーー
慢性期の場合は、以下も参照してください。

[[術伝流一本鍼no.45]] 少陽の病

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   つぎへ>>>[[術伝流一本鍼no.24]]


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*お知らせとお願い
**術伝流鍼灸操体講座で患者さん役を募集
 術伝流鍼灸操体講座は、実践面を重視しています。実際に症状が出て
いる方の治療を見たほうが勉強になります。そこで、講座で患者さん役
をしてくださる方を募集しています。

 くわしくは、[[術伝流のモデル]]をみてください。

 よろしくお願いします。

**感想など
 感想などありましたら、術伝事務局までメールをください。

 よろしくお願いします。

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