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術伝流一本鍼no.43 - (2018/07/05 (木) 14:36:46) のソース

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&color(green){術伝流一本鍼no.43 (術伝流・養生の一本鍼・病証編(2))}

&bold(){&size(24){&color(green){太陽の病}}}
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#contents
*1. 基本的に
 太陽の病は、体の後ろ側に主な症状が出て、痛みが激し
いことが特徴です。坐骨神経痛などが典型例になります。

**1.1. 片寄った使い方と内側の症状が原因
 体の片寄った使い方が主な原因のことが多いです。が、
内臓など体の内側の症状が関係していることもあります。

 肩凝りなど上半身の場合には、腕や目の片寄った使い方
が原因のことが一番多いです。それ以外では、風邪や虫歯
など上半身に関係した病、食べ過ぎ、瘀血証、欲求不満な
どが関係することもあります。

 右利きで左肩凝りのときには、心臓の負担が反映してい
ることがあります。子供の頃に弁膜症だった人や不整脈の
ある人など。こういう人は、普通の肩凝りでは肩甲間部上
半分が凝っているのに対し、肩甲骨の下角辺りの方の凝り
が酷いので区別できます(図1)。

&ref(sinzou-hutan.jpg)図1

 また、左前腕の少陰経の手首付近(陰郄)にツボが出て
いることも多くなります。

 この右利きで左肩凝りで心臓の負担が関係している例は、
何度も経験しているのですが、写真がありません。そうい
う人をご存じなら紹介してください。よろしくおねがいし
ます。

 腰痛など下半身の場合にも、体の片寄った使い方が原因
のことが多いです。それ以外では、下半身の外傷や瘀血症
などに因る腹の痼りが原因のことも結構あります。

 心臓系の疾患と肩甲間部の痛みやツボ、生理痛はじめ瘀
血症と腰痛などの関係は、体の内部の内臓の不調を背中側
の筋肉で庇っていることから出ています。四足動物だった
頃、背中の筋肉で内臓を釣っていた名残ですね。

 それに、人は、体内部や腹側の痛みは感じにくく、それ
らを背中側の痛みとして感じやすいことからも来ていると
思います。

 また、こういう関係があるから、内科系の病のときに、
その横輪切りの背中側にツボが出るので、それを利用して
「陽に引く」という手法を使うわけです。

 そして、太陽経病証として、背中側の痛みがあったとき
にも、再発が多いようなら、内科系や体の前側などが原因
していないかチェックする必要も出てきます。

**1.2. 古くなると特定の所に辛さや痛みが集中
 古くなると特定の所に辛さや痼りが集中する傾向があり
ます。

 上半身の場合には、肩関節の肩峰の周りで、肩峰から3
cm程の窪みに痛みが出ることが多いです。そして、その
原因となるツボは、その裏側の脇の下から上腕陰経に出ま
す。

 下半身の辛さは、膝の皿の周りの窪みに集中することが
多いです。腰痛があった人が坐骨神経痛になり、そして年
をとって膝の痛みを訴えるというのが典型的なパターンで
す。また、足首捻挫を繰り返した人も、年をとると膝が痛
くなることが多いです。

 そして、下半身の辛さの原因となるツボは、膝裏から脹
脛に出ていることが多いです。

 体の裏側の痛みは自覚しにくく、表側の痛みとして感じ
ることが原因のように思います。この場合、患者さんの訴
える肩峰や膝皿の周囲だけの治療では、余り改善しません。

**1.3. 動かないでも痛い方が重い
 一般的に動くと痛いものよりも、動かなくても痛いもの
の方が重く、治療も長く掛かることが多いです。そういう
ときには、腹の邪毒などが関係していることがあり、腹の
邪毒を減らしていく必要があります。

**1.4. 痼りに邪気が入ると、ピリピリビリビリ痛む
 ただ痼りが有るだけでは痛まないこともあります。そう
いうときにも、腹の邪毒からの邪気が入ると、ピリピリビ
リビリと痛み出します。慢性期の型などで養生し、腹の状
態を良くしただけで肩凝りや腰痛が治ったりするのは、腹
の痼り由来の邪気が少なくなるためです。

*2. ツボの出やすい所
 詳しいことは、運動器系の応急処置、養生で書いてきた
ことを参照してください。

 肩では、肩井、首の付け根、膏肓、肩貞、天柱、横頚部
中央、脇の下など。首の付け根は女性に多く、肩貞は慢性
期に多く、天柱は不眠を伴うときに多いです。

 腰では、大腸兪、殿央、環跳、仙骨まわりなど。

 カゼ、便秘、食べ過ぎ、瘀血などが原因のときには、そ
ういう状態に関連する所にツボが出ます。古典にも出てき
ます。

「太陽之為病、脈浮、頭項強痛而悪寒」
(項(うなじ)にも痼りが出る)

「太陽病、項背強几几、無汗、悪風、葛根湯主之」
(項から背中が強く強張って、鳥が羽ばたくような姿勢に)

 患部や腹の邪などと経絡的に関係する所にも出ます。手
陽経なら、中渚、上小海、合谷など。手陰経なら、上腕の
脇の下からの溝の中など。足陽経なら、下委中、飛揚〜外
丘、陽大鐘、丘墟、足甲4~5間など。足陰経なら、下陰谷、
築賓、大鐘、曲泉、中封など。

*3. 手順
 手順も、詳しいことは、運動器系の養生で書いてきたこ
とを参照してください。

 慢性期の養生の型で、患部や関連する所を丁寧に四診し
刺鍼ます。鍼のみで変わりにくい所は、灸や灸頭鍼をしま
す。

*4.繰り返す痛みは、古い打撲が原因のことも 
 打撲の影響が後で出ることが結構あります。急な打撲で
麻痺したものが後で痛み出す典型例は、交通事故の後のム
チウチ症です。また、子供や若い頃の打撲が中年すぎに痛
み出すことも多いです。

 特に、仙骨下部〜尾骨の打撲の場合は、原因が分からな
いで、体全体が不調になったり、背中側全体に痛みが出た
りします。そういう状態のときに尾骨の周りが原因なら、
そこの治療をした途端に症状が消えていくことが多いです。

 今年は、繰り返す背中側の症状の原因が尾骨の周辺の打
撲だった例を3つ経験しました。そのうち一人は、小学生
の頃の打撲が中年になって影響した例でした。

 これらも、打撲した痕の瘀血などが邪気の発生源になっ
ていて、そこからの邪気が体の背中側のツボが出ている所
に影響し、痛みや辛さが出ています。痛みや辛さが出てい
る所だけ治療しても、ぶり返し、再発することが多いです。
邪気の発生源である古い打撲を治療すると、大きく改善し
ます。

 古い打撲は、患者さん自身も忘れている場合も多く、麻
痺に近い状態で、その部分の辛さを感じないことが多いの
で、見付けにくいです。特に、尾骨の周辺は、患者さんの
意識に上りにくいようです。

*5. 写真付き症例
**5.1. 交通事故の後遺症、ムチウチか
 交通事故の後に、首が動かしづらくなった例です。脇道
から飛び出した車に追突し、エアバックに顔が突っ込んだ
ということでした。うつ向きは少しできるけれど、それ以
外の首の動作制限が酷い状態でした。

 慢性期の型で治療していき、座位になったときに調べて
みると、背中(特に肩甲間部左側)にツボが並んで出てい
ました。そこに刺鍼しながら、できる範囲でゆっくり首や
腕を動かしてもらったら(運動鍼)、改善していきました
(写真1,2,3)。

&ref(DSCF0085.jpg)写真1

&ref(DSCF0088.jpg)写真2

&ref(DSCF0093.jpg)写真3

 エアバックに顔が密着し、首が余り動かなかったことで、
肩甲間部の背骨で衝撃を受けたせいかなと思いました。

**5.2. 長引く坐骨神経痛と尾骨の打撲
 坐骨神経痛が長引き、しかも、治療しても再発を繰り返
した例です。

 よくよく話を聞いてみると、バイクで衝突し前に投げ出
されたのだが、ザックを背負っていて、背中の衝撃は避け
られたということでした。要するに、直接道路と衝突した
のは、左側臀部、仙骨下部から尾骨あたりなのかなと思い
ました。が、麻痺して、その部分の痛みを余り感じなかっ
たようです。

 そこを治療した(写真4,5)ら、治療間隔を空けても大
丈夫になりました。

&ref(DSCF9447.jpg)写真4

&ref(DSCF9448.jpg)写真5

 どちらの例も患者さんが訴える場所だけを治療したので
は、改善が進まないで、症状の再発を繰り返した可能性が
高いです。

 再発が多いときには、邪気の発生源が別にあるかもしれ
ないことも考え、古いツボの出やすい所を探す必要が出て
きます。打撲の場合には、打撲の衝撃を受け止めた所、そ
の中でも経過の古い物というのも、古いツボの出やすい典
型例の一つです。


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