パナソニック食洗機50年 小型化・洗浄能力向上で普及

パナソニックが国産初の食器洗い機(食洗機)を発売してから今年で50年。11日に発表した最新機種は大きさが1号機の3分の2になり、洗える食器数は30点から53点に増加した。初期には女性誌で「主婦を馬鹿にする商品」と批判されるなど逆風を受ける中で地道に小型化と洗浄能力向上に努め、大画面テレビなどと並ぶ「あこがれの家電」に成長した。
 食洗機の国内市場はここ数年、年間60万台超で推移しており、パナソニックは2009年の国内シェア65%。累計生産台数は660万台に達している。
 1960年に松下電器産業が発売した国産第1号の「MR―500」は洗濯機の本体を流用しており、本体の体積は160リットル。定価は高卒初任給のおよそ半年分にあたる5万9千円という超高級品で、「ほとんど売れなかった」という。
 高価さと大きさに加え、皿は主婦が手で洗うものという意識が根強かったのも不振の原因で、食洗機は女性誌の記事で「主婦を馬鹿にする愚劣な商品」と厳しい評価を受けた。発明された米国との食文化の違いから、お茶わんのご飯粒が落ちにくい点も悪評につながったという。
 転機は1999年に売り出した「これなら置ける NP―33S1」(標準価格税別7万7千円)の大ヒット。従来商品の半分以下となる奥行き約30センチでシンクわきのわずかなスペースにも置けるようになり、当時としては記録的な年間7万台を記録した。
 04年発売の機種からは高濃度の洗剤液を霧状にして噴き出し、汚れを浮かせてはがす「汚れはがしミスト」機能で洗浄能力を大幅に向上させた。5月1日発売の最新機種「NP―TR3」(想定価格8万5千円程度)は汚れ具合や食器の量、泡の状態をセンサーで見分けて最適な出力で運転することで、使う水量を1号機の9分の1の11リットルにまで低減した。
普及し始めた当初は、

「水道代や電気代がかかりそう」

「音がうるさいだろう」

「本当に綺麗になるのか心配」などの声が強かった。

しかし、実際は本体内に貯めた水を循環させて洗浄やすすぎに使うため、手洗いの場合の数分の一の水量しか使わない。また、通常の手洗いでは使用出来ないほど高温のお湯(摂氏70℃から85℃)を使うことにより、汚れを効果的に落とすとともに、水道では出せない高圧水流で手洗い以上にしっかりと汚れを落とすことができる。また、高温洗浄・高温乾燥は食器の殺菌効果が非常に高く、幼児がいる家庭で需要が高い。
ただし、専用の洗剤の中には、過炭酸ナトリウムなどのアルカリ性を示す成分が入っている場合が多く、高価な食器や漆器、美術的価値のあるもの、上薬をかけてある食器には使用が出来ない点や、正しくノズルに向くように並べる必要がある点は、気をつけなければいけない。また、予洗を行わずに洗浄をした場合、食べかすが蓄積してお湯の循環が鈍り、温度ヒューズ(またはサーモスタット)が働いてしまうこともある。サーモスタット式の場合は、しばらく時間をおいて庫内温度を下げれば再度使用できる状態となるが、ヒューズ式の場合は復帰できないため、メーカへの修理を依頼することになる。特にジャガイモには注意が必要である。
汚れ落ち、収納力、省エネ、省スペースなど、メーカーは消費者の多様なニーズに対応できるようにして差別化を図っているが、大手メーカーの中にも撤退しているところがある。
2003年1月31日の施政方針演説で小泉純一郎首相(当時)は、食器洗い乾燥機・薄型テレビ・カメラ付携帯電話を「新三種の神器」と命名した。2004年(平成16年)4月13日にパナソニック(当時・松下電器産業)が、白物家電の食器洗い乾燥機、IHクッキングヒーター、生ゴミ処理機のことをキッチン三種の神器であると提唱したのは記憶に新しい。また衣類乾燥機が入る場合もある。(今思うとIHだけが残った感がある…)
 食洗機の世帯普及率は現在約23.5%。パナソニックは「本格的な普及はまだこれから。さらに革新と進化を続けていきたい」としている。
節水効果の高さは申し分がないが、洗えない食器があり、仕分けをするのが面倒なのが難点。節水効果があるため補助金を出す自治体がある反面、卓上型にしろビルトイン型にしろ洗えない食器がない機種の誕生が臨まれる。

HN
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最終更新:2010年10月02日 12:48