「アミロペクチン第一章-14話~温泉~」


 ガチャナの市へ出発した我々は晩秋の寒い風の中、黙々と西北西へ進んでいった。
ガチャナの市へは約50カナあるので4日ほどで着くであろう。
いや、我々は馬に乗っている。3日で着くはずだ。

 陽が南の空へ回ってきた。日光が暖かい。
先生が空腹なようなのでオニギリを喰った。
「先生、そんなに喰って馬に乗ったらお腹が痛くなるのでは?」
「大丈夫じゃ大丈夫じゃ。あはは」
そしてまた馬を走らせた。
その後、先生のお腹は痛くならなかった。
長年の鍛錬の結果であろう。さすがだ。

 陽が南の空に沈む頃。寒さが身に凍みる。
「ああ、風呂に入りたいな」
フレシュがわがままを言う。しかし分らぬでもない。
「こんな所で風呂に入れるわけないだろう」
「諸君、ここでは風呂に入れるのじゃぞ」
「どういうことです?」
先生が指をさした。そこには微かに月光に照らされた湯気が見える。
「ここらは地下に海水があってな、それが何らかによって温められて、
温泉として湧き出しているのだ。これを化石海水型温泉と言う。
「おお、早く入ろうではないか!」

 我々は温泉に入った。こんな森の中を通る人などいないであろう。
「ホントだ、しょっぱいんですね」
「なんか塩漬けになっちゃいそう」
「フレシュの塩漬け・・・あまり美味そうではないな」
そして我々は温泉の横にテントを張り、寝た。

 次の日。サトゥール村から出発して5日後である。
周りに漂っているのが霧なのか湯気なのか判然とせずもやもやである。
「おお、起きたか。朝風呂でも入るか」
ということでフレシュを残して朝風呂に入った。
霧が引いてきた頃、フレシュが起きだし、温泉に飛び込んできた。
「おい、飛沫をたてるな」
「うひょひょ」
意味の分らない会話の後、朝食を喰って出発した。

 その後は馬に乗りひたすら進み、おにぎりを喰い、夜になり、寝た。
残念ながら今日の宿泊場所には温泉がなかった。

 今日は特に何もなかったため略してしまった。すまない。
明日にはガチャナの市に着くであろう。




用語集

  • 化石海水型温泉・・・太古の地殻変動によって海水が地下に閉じ込められたと思われる。それが地下熱によって温められ、断層によって押し上げられることによって地上に現れる。しかしこの情報は八幡神社が調べたため、確かではない。


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最終更新:2011年02月16日 21:26