SD刑事ブレイダー
【えすでぃけいじぶれいだー】
ジャンル
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RPG
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対応機種
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ファミリーコンピュータ
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発売元
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タイトー
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開発元
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NMK
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発売日
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1991年8月2日
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定価
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6,400円
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プレイ人数
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1人
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判定
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なし
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ポイント
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宇宙刑事モノのお約束に忠実なシナリオ レトロゲーのお約束な戦闘難
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概要
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80年代前半に放送された特撮ヒーロー番組『宇宙刑事』シリーズを意識しつつ、80年代中盤から登場して大ブームを起こしたSD要素をかけ合わせたRPG。
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シナリオ自体は『宇宙刑事』シリーズを知る人からすればやや早巻きなものの、良質な展開に仕上がっている。
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しかし、レトロゲー特有の戦闘のシビアさが評価の足を引っ張る事に……。
あらすじ
怪人・キングジャドー率いる悪の秘密結社「ジャドー」が地球征服計画を開始した。
一方、すぐさま悪の動きを察知した宇宙警察は、新米の宇宙刑事「ブレイダー」である主人公に、ジャドー壊滅を命令する。
世界の平和を守る為、主人公は仲間達と共に、暗躍するジャドーに挑むのだった。
システム
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ランダムエンカウントによる1vs1戦闘システムRPG。
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攻撃手段として、通常攻撃に当たる通常武器と、威力や攻撃回数の高い重火器を装備することが可能。(合計3つまで)
通常武器に使用制限はないが、重火器はターン経過で回復するE(エネルギー)が、武器個別の数値に満ちると使用可能となる。
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特技や魔法に当たるユニットは体力回復やワープ、バフとデバフといった回復・補助的な物のみで、いわゆる攻撃魔法に当たるものはない。UEの数値を消費して使用する。
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1vs1のため防御が存在しない。
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ストーリー進行や特定の条件で味方NPCが加わる。キャラの種類によって回復や追加攻撃といった行動をランダムで取ってくれる。
問題点
戦闘システムに問題がある。
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エンカウント率がかなり高い。
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80年~90年代のRPG作品はエンカウント率の高さが難点に挙がるものも多いが、本作はエンカウント率が高い方に分類されると思われる。
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100回戦闘して平均値を計測したところ、
約8歩に1回エンカウントする
という結果となった。
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その原因は、
前の戦闘から特定の歩数を歩くと、確実にエンカウントする
仕様にある。
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フィールドでは
21歩目
。ダンジョンでは
17歩目
で
エンカウントが確定する。
この歩数カウントは、マップを跨いでもリセットされない。(マップを切り替える1歩はカウントされないため、少しずれる。)
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このことから、多くの戦闘が発生することが確実となり、アイテム、UEの消耗が激しくなってしまう。
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効果が切れるまでエンカウントを完全防止するユニットが後半のレベルで使用可能になるが、
何故かダンジョンでは効果を発揮しない
。
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逃走の成功率も低く、6回、7回連続で失敗することも珍しくない。
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また、一部の雑魚敵は100%逃走不可能だが、それを知らせるメッセージは無いため、何度も逃走ミスを重ね、経験から判断するしかない。
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フィールドでの敵分布の境界がわかりにくい。
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進行具合で敵の強さが違うのは当然の話だが、本作では一つの町の周辺の東西南北で登場する敵の強さが一段階違うことも多い為、知らずに町の周辺をウロチョロするだけで現レベルに見合わない強敵と遭遇する事もザラにある。
ゲーム前半は多少手こずる程度で終わるが、中盤からは一歩の間違いが命取りなので、エンカウント率の高さと相まってシビア。
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ダンジョンでは階層別か、ダンジョン別のためこの点では戦う敵を把握しやすい。
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レベルアップで、攻撃力と防御力がほとんど上がらない。
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レベルアップによる主人公の成長と、敵の強さのバランスが取れておらず、いくらレベルを上げても、なかなか戦闘が楽にならない。
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バランスが取れているのは最序盤だけ。最初のダンジョンで直前の街周辺に対し二回り以上の強さを誇る。
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街周辺が楽になったからといって先に進むと、高エンカと共に痛い目を見るため、過剰なまでに稼いで進んで行く必要がある。
と言っても、主人公のステータスのうちHP・MPに当たるLE・UE以外の能力はほとんど成長しないので、戦闘で苦しいのはあまり変わらない。攻撃力と防御力の強化は装備のステップアップ頼り。
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レベルアップ毎の攻撃力と防御力の上昇値は、基本的に1上がるか上がらないか。レベルによっては、両方上がらないケースも存在する。
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それでいて経験値とお金は辛さに見合う程には貰えないので、安定して戦うためにも、格下を延々と狩り続ける退屈な作業に従事しなければならない。
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LEはアイテムを買い込むことで戦闘ごとに回復可能だが、UEは回復アイテムの入手機会に乏しく、毎回基地に戻るか宿で回復しなければならず、レベル上げにしろダンジョンの突破にしろ、数少ないリソースをやりくりする必要がある。
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敵が特技を使い放題
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主人公は通常攻撃以外には2~3ターンに1回使える重火器と、UEに左右されるユニット技だけだが、敵は毎ターンのように特技を放ってくる。
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雑魚敵は通常攻撃のみか、通常攻撃とダメージの高い一撃、後述するテクター破壊、あるいはショック状態(数ターン行動不能)にする攻撃のうち1つを持っているものに分けられるが、通常攻撃と二者択一のため特殊行動を取る可能性はかなり高い。
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なお「痛恨+テクター破壊」といった複合攻撃や、これら全てを持つボスもいる。
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テクター破壊の鬱陶しさ
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このゲームはテクターが防具として存在するが、戦闘による摩耗こそしないものの、敵の特技の一つ「テクター破壊」によって一撃で破壊される。故障している間は防御が下がるため、熾烈な戦闘の最中破壊されるのは厄介。
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ただでさえ苛烈極まる雑魚敵が使ってくるだけでも大変なのに、よりにもよって破壊してくるボスがいる。
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ユニットや店売りアイテムで修理は可能だが、戦闘中に使う余裕があるかどうかは怪しく、前述の通り連発してくる為、1ターン使って修理したところでまた特技を打たれて破壊されるリスクがある。
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ショックハメでそのまま全滅する可能性がある
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前述したようにこちらを行動不能にする「ショック」という効果があるが、よりにもよってショック攻撃は回避不可の必中なので敵先制のショック→行動不能後同一ターンで回復→敵先制でショックと延々とハメられる可能性がある。レベルが上がって先制できても、一撃で倒せない限り動けないまま倒される事がある。
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行動不能の回復までのターンにばらつきがあり、1ターンで復帰することもあれば3~4ターン回復しないこともあるなど安定しない。
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案の定この技を使うボスまでいる始末。 1vs1の戦闘で行動不能によるハメはご法度だと思うのだが……。
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当然、これらの厄介な特技を防いだり軽減したりする方法やアイテムは存在しないので、ヤバい状況で使われないことを祈るしかない。
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また主人公自身は、ショックのように敵の行動を封じる行動が存在しない。
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強制連続戦闘の敵が存在する。
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特定の雑魚敵は、戦闘終了後に続けて第二戦へ突入する。強い敵ほど連戦になるため、初戦に苦労すると負ける可能性が出てくる。第三戦に突入する雑魚敵はいない。
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ボス敵は最大三戦までの連戦になる者がいるが、ギリギリの状態で勝つと、続戦で先攻を取られ、何もできずに1ターンキルされることがある。
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なお雑魚敵の場合、連戦するからと言って経験値が余計にもらえるなどと言う親切設計は無く、一戦目では経験値を得られず、二戦目も経験値は一人分なので、こういう敵は倒す旨味が全くない。
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効果が微弱すぎるユニットが存在する
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戦闘におけるバフ、デバフの効果を持つユニットのうち、ターボパワーだけ実用性が低すぎる。通常攻撃の威力を上げる効果があるが、上昇量が低いのか、あるいは敵が強すぎるのか、ブレイダーの基礎ステータスが低すぎるのか、ほとんど上昇を実感することができない。
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なお「アームバースト」は敵の通常攻撃で受けるダメージを軽減、「フルバリアー」は敵の特技で受けるダメージを軽減する効果がある。
とはいえ、「フルバリアー」の効果は特技ダメージ軽減のみで、もっとも防いでほしいテクター破壊やショックといった追加効果は防げないため、名前負けしている感じは否めない。
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変身という要素がほぼ死んでいる。
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変身ヒーローということもあり、コマンドの一番上に「チェンジ」という項目があり、ブレイダーは生身モードと宇宙刑事モードを切り替える事ができるが、切り替えて何が変わるかというと、まさかの
見た目だけ
。
宇宙刑事モードだと戦闘ステータスが上がるとか、生身モードだと怪しまれずエンカウントしにくいとかいう使い分けは一切無い。
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せっかくの変身ヒーローものにもかかわらず、変身を使い分ける意義がほとんどない。
数少ない利点として、ヒートテクターかアクアテクターを装備し宇宙刑事モードに変身した際、ダンジョンの火、水のマスをノーダメージで通過できるというものがある。
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ストーリーでも、敵に追い込まれピンチの時に宇宙刑事に変身!……といった様なヒーローものお決まりのイベントは一切無く、生身だろうが宇宙刑事だろうがイベントは滞りなく進む。
一体何故この題材を選んだのかわからないレベルである。
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仲間があまり役に立たない。
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前述の通りこのゲームは1vs1だが、ゲームを進めて加わったり入れ替わったりと仲間を連れている場合、戦闘中はNPCとして回復や攻撃など何らかの追加行動をしてくれる。
…のだが、行動してくれる確率が低い。体力が低い時にたまたま回復してくれたらかなりのラッキーレベルで、とても戦術には組み込めない。
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攻撃行動はダメージが低い。仲間になった時点では、主人公の通常攻撃に近いダメージを出すが、長期間連れ歩く間に主人公と敵のインフレが進んでも、仲間の攻撃力は全く上がることがない。
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最終的には、主人公が500ダメージ叩き出す状況で、仲間の攻撃は1桁程度のダメージしか出せなくなる。
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ただ本家の宇宙刑事でも基本的に主人公が孤軍奮闘しており、サポーターはサポーターの域を出ず直接戦闘の手助けをしてくれるわけではないので、そういう意味では妥当か。
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擁護すると、最終盤は全ての戦闘が長期化するため、低確率であっても回復行動はかなり助かる。
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バイクが高速道路でしか乗れない。
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ストーリーの途中で「ターボギア」というバイクを手に入れるが、マップの一部に設置してある高速道路専用で、移動手段というよりは次の街へ行くフラグ解除に近い。
一般道でも使わせてくれればテンポアップに繋がったのだが。
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一応、高速でフィールドを飛行移動できる「スカイギア」も手に入るが、貰えるのは最終盤で、ストーリー上の使い道はラスト前のダンジョンと、ラストダンジョンへ乗り込むだけ。
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全体的にダンジョンが長丁場
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最初の本格的なダンジョンから、下水道→ビル登頂でボス戦→下水道という、そこそこ長いダンジョンの3連続を回復・セーブポイント無しでこなさなければならず、難易度に拍車をかけている。
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特にラスト前のダンジョンは、逃走不可で且つ連戦の敵が高確率でエンカウントするダンジョンを、たらい回しにされる地獄の三重苦。
脱出が可能なので詰みにはならないが、順当にレベルを上げても辛い。
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テクターを外すことができない。
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最初に装備して以降、外して売却後新しいテクターを購入して装備という手段が取れず手間。新しいテクターを購入し装備、古いテクターを売却という手順で可能。
お金がカツカツになりやすいバランスでこれはかなり不親切。
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武器に関しては外して売却が可能であり、なぜテクターだけそうなってしまったのだろうか。
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道具が15個しか持てない
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十分では、と思うだろうが、消耗品の同じ道具のまとめ持ちができず、重要アイテムもすべて含めて15個というのは意外と少なく感じる。
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3個揃ってから使う重要アイテムは揃うまで枠を圧迫し続け、ダンジョン一つで宝箱が5個あったり敵からのドロップ品で簡単に埋まってしまう。
ゲーム進行不可能になるバグが存在する。
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ゲーム中盤、ズノウマンというボスと戦う場面が存在するが、この戦闘で負けると、以後ズノウマンと戦う場所に行っても、ズノウマンが登場せず、イベントを先へ進めることができなくなる。
もしセーブしてしまった場合は詰みとなる。
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ラストダンジョンで戦う中ボスも、戦闘に負けるとイベント進行がおかしくなる。
ただし、こちらは再度ボスと戦闘した場所に向かうと、
既にボスを倒した扱いになっており、そのまま先へ進めることができる
ため実害はない。
賛否両論点
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固定敵によるレベル上げが可能
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序盤に2種類だけだが、シンボルエンカウントで戦える敵がいる。はっきり言ってそこに到達する時点でもかなりの弱さであり、おまけに倒してすぐ復活するため、復活地点の目の前で待機しボタン連打するだけでレベル上げが可能。
それを用意するなら道中の厳しさを調整すべきだったのではないだろうか。
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レベル上げに加え、ある程度のお金をもらえるため金策としても優秀。さらに武器がドロップアイテムとして入手できるため売却資産にもなるなど、完全にお助け雑魚状態。
評価点
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お約束を踏襲したシナリオ
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主人公は「宇宙刑事」であるため、当然宇宙基地を拠点として戦いを進めていく。回復や購入といったゲーム上の支援要素は勿論、主人公に指令を下す「長官」も存在する。
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世界征服を企む敵組織「ジャドー」も、その作戦が「アニマルビームで人間を動物に変えてしまう作戦」「宇宙植物で人間を襲う作戦」等といった昭和特撮らしさに溢れている。ジャドー四天王の存在や敵ボスの息子の登場など、脇役もバラエティに富んでいる。
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ボスと相対する時には、敵の挑発と主人公の決め台詞の応酬もあり、これまたらしさの評価点が高い。
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「銀河連邦刑法」を敵に宣言する、EDで「太陽系方面宇宙刑事の隊長」に任命される、カウボーイ姿にテンガロンハットで白いギターをかついで持つキャラ…など往年の特撮ファンがニヤリとする場面が多い。
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容量に都合が付けられなかったためか、後半はややストーリーが巻き気味なのが勿体無いところ。
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敵デザインの秀逸さ
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「SD」とタイトルに冠するだけあり、コミカルさを維持しつつも格好良さを確立出来ている。
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不気味なメカメカしさやいかにもそれっぽい四天王など想定されたキャラクターデザインがドット絵でしっかり書き起こされている。
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どこかで見たことあるようなパロディデザインの敵も多く存在する。大ボスの「ジャドー」からして、普段の姿はどこかの閣下そっくりである。
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親切で遊びやすいシステム
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問題点の通り新しい場所に行くには強い敵と高いエンカウントで一苦労だが、一旦着いてしまえばユニットの「ワープ」で瞬時に移動できる。
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FCのRPGとしてはこの手のワープ手段が最序盤から使えるようになるのも便利な点。最初から使える、基地に戻る「ギャラクシー」と組み合わせば、一旦新しい町に着いて基地に戻って回復して町に戻るといった事も可能。
また町だけではなく、一部ダンジョンもワープ先に登録できる。
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その他にもフィールド限定だが敵の強さ関係なく一定歩数エンカウントを防げる「ステルス」等も便利。
実際、エンカウントと戦闘周り以外はかなり親切な部類といえる。
総評
変身要素こそ腐ってしまったものの、宇宙刑事モノとしてのお約束がきっちり押さえられており、シナリオの完成度は高い。
ただ当時のゲームにありがちな戦闘バランスの壊れ具合が、大幅に足を引っ張ってしまっているのが残念。ここのバランスが取れていれば、宇宙刑事シリーズをオマージュしたオリジナル作品として一定の評価を得られたことは想像に難くない。
余談
バグとしてアームの武器を一つだけ残し、使用時に↑か↓と同時にAボタンを押すと武器以上の連続攻撃が発動する。
他、デバッグモードとしてレベルがある程度上がった状態から開始出来るモード、プログラムをチェック出来るモードが存在する。
他に宇宙刑事シリーズをオマージュしたゲーム作品としては、日本物産の『コスモポリス ギャリバン』がある。
最終更新:2024年04月11日 06:05