WiZmans World

【わいずまんず わーるど】

ジャンル RPG
対応機種 ニンテンドーDS
メディア 1024MbitDSカード
発売元 ジャレコ
開発元 ランカース
発売日 2010年2月25日
定価 4,980円(税別)
セーブデータ 3個
レーティング CERO:A(全年齢対象)
判定 良作
ポイント 「ジャレコ再生プロジェクト」第一弾として発売されたRPG
良質のドット絵で描かれる崩壊した世界と再生する世界
システムと上手く噛み合っている「手ごたえのある」戦闘
敵の魂と融合させ味方を強化するアニマフュージョンシステム


概要

  • 2009年、ジャレコが突如打ち出した「ジャレコ再生プロジェクト」、その第一弾として発売されたRPG。ちなみに『WiZmans World』と書いて『ワイズマンズワールド』と読む。なお、プロジェクト当初はthe:rpg(仮)と呼ばれていた。また、発売までの間、敵モンスターを始めとするアイディアをユーザーから募集するなどしていた。
  • キャッチコピーは「あの頃の“RPG”をもう一度」。それを示すが如く、ゲーム中のグラフィックは全てドット絵で描かれている。
  • 同社がその前に発売した『黄金の絆』がジャレコ社長自ら認めるほどのクソゲーだった事や、発表されたキャラクターデザインの癖の強さ、ユーザー募集のアイディアやデザインの9割がネタ投稿だったり、挙句の果てに2ちゃんねるのコテハン「まこ8」が前述の敵モンスター募集で採用されてしまったなどで、発売前の期待はほぼ皆無であったが…。
  • 開発は、『世界樹の迷宮』シリーズなどの開発に携わったランカースが担当。

ストーリー

「今を遡ること百数十年前、人々は見知らぬ街で目を覚ました……。
彼等は、なぜ自分達がそこにいるのか、ここは一体
どこであるのか、そして、自分達は何者なのか、
全ての記憶を失っていた。唯一あった記憶、それは……
自分達が魔法使いであるという認識と、膨大な魔法の知識、
身体に染み付いた、魔法の術だった……。
人々が目覚めたその街のまわりは、恐ろしい悪獣や、
異形の怪物が棲む、険しいダンジョンによって
外界との一切の繋がりを遮断されていた。
人々は、知恵と魔法を駆使し
脅威の魔窟へと挑む事となった……。

しかし望みは叶わぬまま時は流れ、希望よりも
諦めが勝り始めた頃、新たな絶望が
彼らを襲う。世界が崩壊を始めたのだ。
突如として、大地が崩れ、
残った大地も異形と呼ぶに
相応しい姿に変わり始めた。
危険と隣り合わせの世界から
抜け出す為の努力に、
迫り来る世界の崩壊から
逃げ出す為の徒労が加わった。
迫りくる世界の崩壊を阻止するため、
失いかけた希望を取り戻すため、
険しきダンジョンへ挑戦が始まった。」
(※説明書のストーリーより抜粋)


評価点

  • 全編ドット絵で描かれた、美しいグラフィック。
    • 本作はプレイヤーの行動でダンジョンが崩壊、再生するのが特徴となっているが、特にダンジョン崩壊時のグラフィックはよく雰囲気が出ている(例を挙げると、周りが暗くなり木々や大地が朽ち果てる森、溶岩が剥き出しになり地獄のような様相を見せる火山、ただれた生物の内臓のような、異形と呼ぶに相応しい姿となる洞窟、など)。
    • それらの崩壊したダンジョンも、再生させる事により美しい姿を見せる(木が生い茂り緑に満ちる森、美しい岩肌と水を湛える洞窟など)。それらの激変っぷりがプレイヤーに強い印象を与える。
  • シビアなバランスだが、システムや属性を把握する事によって勝てる「手ごたえのある」戦闘。
    • 戦闘はオーソドックスなターン制バトル。敵味方問わず素早い順からターンが回ってくる。
    • 主人公など一部の例外を除き、全てのキャラクターは敵味方問わず火、水、風、土のいずれかの属性を持っている。本作は属性の相性によるダメージの増減が激しく、弱点を突けば相手に大ダメージを与えられるが、逆に同じ属性同士の場合ダメージは雀の涙程度しか入らない(ちなみに通常攻撃の属性はそのキャラクターの属性に依存)。そのため属性の偏ったパーティ編成をするとあっという間に全滅、なんていう事もあり得るが、逆に相手の弱点をうまく攻めるように攻撃すれば大ダメージが期待できる。
    • 攻撃を連続で繋ぐとチェインが発生し、敵に与えるダメージが増加するほか、様々な効果を得る事ができる。チェインを繋ぎつつ、前述の属性の相性を考え、敵に大ダメージを与えていくのが本作の戦闘の基本と言える。
      • なお、ガードコマンドを選ぶと、次にターンが回ってくるのが早くなる。これを利用して「意図的にチェインを組ませられるようにする」「敵の弱点属性となっている味方を最後に行動させ、敵に大ダメージを与える」といった事もできる。本作は戦闘中にMP、SPを回復する手段がほとんど無い*1ため、基本的に戦闘は長引けば長引くほどこちらが不利になる。そのため、特にボスなどの短期決着が相応しい相手には上記の戦術が有効に働く。
    • 主人公のMPは戦闘後に全回復する(仲間のホムンクルスのSPはしない)、また、主人公はあらゆる属性魔法を使う事ができる*2。そのため、チェインを繋いで攻撃力を高めた後、主人公の属性魔法で敵にトドメをさす、全体魔法で敵を一掃する、といった事をためらい無くできる。RPGにありがちな、「ここでこの魔法を使うと敵に大ダメージを与えられるけど、MPが厳しい…」と言った事が(主人公に関しては)無く、チェインシステムと相性がいい。
    • 通常攻撃を通常攻撃で繋ぐと味方全体のAGI(素早さ)が上がり、敵が行動する前に攻撃できる。また、魔法攻撃を魔法攻撃で繋ぐとある程度魔法使用者のMP、SPが回復し、魔法使用時のコストが少なくなる。物理攻撃メインで畳みかけるように攻めるか、魔法攻撃メインで全体魔法や強力な魔法で敵を殲滅するように攻めるかという戦略の幅が広がるのと同時に、物理メインのパーティにするか魔法メインのパーティにするかというパーティ編成を一考する要素にもなっている。また、魔法メインに攻める場合は戦闘終了後にMPが全回復する主人公に最初に魔法を使わせる事で、パーティ全体のSPを節約させるといった戦略を取る事も可能。ここでも戦闘後にMPが全回復する仕様が生きていく。
    • 戦闘終了後、味方キャラ全員のHPは全回復する。また、本作はシンボルエンカウント制*3だが、敵に接触した際周りに他の敵がいると連戦に突入し、最初の敵パーティを全滅させても、続けて他の敵パーティとのバトルに突入する。連戦中はバトル終了後のHP全回復が無いなどのデメリットも存在するが、取得経験値の増加、取得金額の増加、アイテムドロップ率の上昇などメリットも多い(特に後半敵の魂ドロップ率は軒並み低く、連戦がほぼ前提となっている感がある)。バトルから逃走した際にもHPは全回復するため、「連戦を狙って周りの敵を巻き込もうとしたが失敗→一度バトルから逃走し再び連戦にチャレンジ」、といった事も気軽にできるようになっている。また、敵に行動させなければ、前述のチェインを連戦中ずっと繋げる事も可能なので、「最初の敵パーティをある程度チェインを繋がった状態で撃破→チェインが繋がったままなので攻撃力の高い状態で次の戦闘がスタート、敵が行動する前に敵を全滅させる→さらに攻撃力が上がった状態で次の戦闘に突入」、といった戦い方もできる。この状態なら普段はそこそこ苦戦する敵でも、主人公の全体魔法で一掃する事ができたりするのでなかなか爽快(前述のようにMP消費に関しては気にする必要は無い)。連戦システム、戦闘後にHP、MPが全回復する仕様、チェインシステムがうまく噛み合っている。
      • 「戦闘終了後にHP、MPが全回復するのはヌルくないか?」という意見もあるが、先に述べたとおり一戦一戦のバランスがややシビアなので、決してヌルいという訳ではない。また、ホムンクルスのSP(主人公のMPに相当するもの)は戦闘後に回復せず、レベルアップした時や街の自宅で休まないと回復しないので、計画的にレベルアップする(ある程度連戦をこなせばそう難しい事ではない)、自宅へと引き返す(後述するが自宅に戻るのは非常に楽になっている)と言った事をしなければならない。
      • 戦闘後にHP、MPが全回復するので、RPGでよくある「戦闘後にメニューを開いて、アイテムなり魔法を使ってHPを回復させる」、と言った事をする必要がなく、とてもスムーズに先へ進む事が可能。
  • 魂と融合させる事によってホムンクルスを強化するアニマフュージョンシステム。
    • 主人公の味方であるホムンクルスは戦闘後に敵モンスターが落とす魂と融合する事により、その姿を変え、戦闘力を上げることができる。
    • ゲーム中に登場する魂の種類は全132種類。ほぼ全てのザコ敵が魂を落とす。その一つ一つに固有のパラメータが用意されている。また、融合後のホムンクルスの姿も多彩で、見ていて楽しいものがある。
    • 同じ魂を重ねて融合すると、ホムンクルスのパラメータが全てアップし、凄まじい時間が掛かるが最終的にはパラメータをカンストさせる事も可能。その気になれば気に入った特定の魂でずっと物語を進める最序盤の激弱魂でラスボスを撃破なんて事も一応は可能となっている。
      • ただしこれには時間が掛かるのとは別の問題が含まれている。詳細は問題点の項目で。
    • アニマフュージョン時には触媒と呼ばれるアイテムを一緒に融合させる事により、ホムンクルスのステータスをアップさせたり、特定のスキルを覚えさせる事が出来る。(触媒によるステータス上昇分は次のアニマフュージョン時にはリセットされるので、フュージョンごとに付け替えられるホムンクルスの装備品、といえば分かりやすいか。)触媒は大量に手に入り、なおかつそのステータス上昇値もバカには出来ない値なので、有用な触媒を見つける事もストーリーを有利に進める上で重要になってくる。
    • ホムンクルスの使うスキルは融合させた魂のモンスターの所持スキルに準拠している。ただし別のモンスターの魂と融合させた際、2つまでスキルを引き継がせる事が可能(ある触媒を使うと3つまで可能)。自由度はそれほど高くないが、ある程度ホムンクルスのカスタマイズが可能となっている。
  • 良質のBGM。街では建物ごとに、ダンジョンでは再生、通常、崩壊、大崩壊4つの状況それぞれで違った、なおかつ雰囲気に合ったBGMが用意されており、場を盛り上げてくれる。
    • 本作はサウンドトラックの類は発売されていないが、終盤のとあるサブクエストをこなす事で、サウンドテストが解禁される(なお、初回特典のCDに収録されている、オープニング曲とエンディング曲もサウンドテストで聴く事ができる)。
  • メニュー画面にあるReturnという項目を選ぶ事で、ダンジョン探索中にノーコスト、ノーリスクで瞬時に主人公の自宅へと戻れる(リレミトやあなぬけのヒモが無限に使えるようなもの)。地味だが便利な機能である。
    • このようなシステムはゲームバランスを崩しかねないが、本作では戦闘終了後にHP、MPが全回復するため、特に問題にはならないと思われる。

賛否両論点

  • よく言えば手堅く丁寧な作り、悪く言えば特徴の見えにくいゲーム性。
    • 先に述べたようにきちんと長所、特徴のあるゲームなのだが、プレイしたての頃などは「ごく普通のRPG」という印象をもたれやすい。
  • 前述の通りキャラクターデザインの癖が強い。
    • とくにパッケージは、見て頂ければ分かると思うが、主人公がこちらを見つめている(というより睨みつけている)という構図で、一見さんには手が出にくい。そのため、中身はオーソドックスなRPGなのに外見で敬遠されるというわけの分からない事となっている。
  • ストーリーがやや暗い。
    • 特にプレイヤーの選択によって人が死ぬ事もあるため、そこの所はプレイヤーを選ぶかもしれない。

問題点

  • 崩壊と再生システムがそれほどうまく機能していない。
    • ダンジョンが崩壊、再生するのが本作の特徴のひとつなのだが、ダンジョン再生の仕方が初プレイではまず分からない。
+ ダンジョン崩壊と再生の条件。ネタバレ含む
  • ダンジョン再生と崩壊の条件は、主人公が属性魔法を使うとダンジョンの崩壊が進み、無属性魔法を使うとダンジョンが再生していくというもの。前述のとおり、本作は属性の相性に重点を置かれており、特に無属性魔法も強力と言うわけではないので、普通にプレイしていたらダンジョンはどんどん崩壊し、再生する事はまず無い。
  • なお、ダンジョン再生の仕方は、終盤のダンジョンクリア時に、とあるキャラクターによって教えてくれる。
  • それに加えて、ダンジョンが崩壊する事のデメリットもほとんど無く、また再生させる事のメリットも薄い(希少品が数個手に入るか入らないかくらい)。つまりダンジョンは崩壊したままにしておいてなんら問題も無い。
    • ダンジョンをわざわざ崩壊、再生させなくても先に進めるので、さっさとストーリーを進めたい人にはいいかもしれない。
    • ただし、ゲームクリアの為には物語の終盤、必ずダンジョンを再生させなくてはならない。
  • また、ダンジョンが崩壊または再生する際に、ダンジョンの一定区間まで戻されるため、探索のテンポをやや削いでいる。
  • 先に述べた通り本作では大量に触媒と呼ばれるアイテムが手に入る(1モンスターにつき、固有の触媒を1~2個持っていると言っていい)。が、その触媒の使い道はアニマフュージョン時にホムンクルスのパラメータをアップさせる、新たなスキルを取得させる、といったものしかないので*4、使わない、もしくは余った触媒はクローゼットの肥やしにするか店に売り出すくらいしか使い道がない。
  • ホムンクルスのパラメータは魂を重ねる事でカンストさせる事ができ、序盤のモンスターでも魂を重ねる事で強くできるのだが、使えるスキル自体は変化したりレベルアップする事は無いため、どうしても終盤に出てくるモンスターに劣ってしまう。また、他の魂を融合させると、魂重ねでアップしたパラメータは0に戻ってしまう。そのため、序盤に出てくるモンスターの魂を重ね強くしたホムンクルスを、強力なスキル引き継ぎの為に他のモンスターの魂と融合させるといった事をすると、いままでの努力が無駄になってしまう。
    • 一応いくつかのスキルは触媒で取得する事ができるので、他のモンスターの魂と融合させなくてもある程度はフォローが可能。
  • 主人公の育成制限
    • 前述の通りホムンクルスは同じ魂を重ねる事でパラメータをカンストさせるまで育てる事が可能だが、主人公の場合レベルが99になってしまうと、それ以上成長はしないし、ステータスを上げる育成アイテムのような物もない。
      • そのため、やり込んだ場合、主人公よりホムンクルスの方が圧倒的に強い、という事が多々ある。
      • ただし、主人公は攻撃、回復、補助と多様な魔法を使いこなせるため(ホムンクルスは6つまでしかスキルを覚えられない)、役立たずに成り下がると言う事はまず無い。
  • ボタンによる操作性自体は良好だが、DSなのにタッチパネルを一切使わない。接触時に背後を取る・取られると有利不利が変わる=細かな操作を要求されるシンボルエンカウントや、レベルを上げた主人公の魔法等何ページもズラリと並んだコマンドなど、本作のシステムとタッチペンとの相性は良さそうなものなのだが。

総評

  • 発売前のカオスっぷりや敵モンスターにまこ8が採用されてしまった事などから、発売前はユーザーからほとんど期待されていなかった本作だが、いざ発売されてみれば戦闘、成長システム、インターフェイス、グラフィック、音楽など全体的に高水準なクオリティのゲームであった。
  • RPGが好きな(とくにSFC時代の)ユーザーで、キャラクターデザインの癖の強さが気にならないのならばプレイしてみて損の無いゲームだろう。

余談

  • 発売前に散々話題を振りまいた(と思われる)マコハチは終盤のとあるサブクエストで登場。ストーリーの本筋に絡まないオマケモンスターのような物なので、世界観を著しく壊すと言った事はないと思われる。
  • 本作発売前の何やかんや。
    • ゲーム内容とは直接関係はないが、敵モンスターでまこ8が採用されてしまったのを筆頭に、『黄金の絆』をジャレコ社長自ら(貶されても仕方のない内容だったとはいえ)クソゲーと貶したり、2ちゃんねるのゲハ板にジャレコ社員が降臨したり、ユーザー募集の9割方がネタ投稿だったりと、かなりのカオス具合を呈し、本作の名前を悪い方向に有名にしてしまった。
    • もっとも、何かやらなければ本作はそのまま名も知られずに葬り去られていたかもしれないので、一概に悪いとは言えない。一連の宣伝や行動がユーザーにいい印象を与えたかと言われれば、間違いなくNoだが
  • 本作の発売からおよそ12年後、東京ゲームショウ2022にてリメイク作品『ワイズマンズワールド リトライ』が発表された。発売はジャレコのIPを継承したシティコネクション。Nintendo Switch版、PlayStation5版、PlayStation4版は2024年5月30日、Xbox One版、Steam版で2024年内に発売予定。Switch版とPS5版はパッケージ版の発売も予定されている。
    • グラフィックをHD化し、一部キャラクターグラフィックやUIもリファイン。メインテーマと新BGMをインストゥルメンタル・ユニットsoLiが担当するとの事。
      • なお、「マコハチはオミット」と断言されている。

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最終更新:2024年01月11日 18:41

*1 魔法攻撃を魔法攻撃で繋ぐ、「マインドスティル」というスキルを使う、といった事で回復できるが、ザコ戦ならともかくボスなどの強敵相手に実用的とは言いがたい。

*2 魔法使いが主人公である珍しいRPGでもある。

*3 本作含むこの方式のゲームは普通、敵シンボルの背後から接触した場合はこちらの先制攻撃となり、逆に背後から接触されると敵の先制攻撃となる。その他は通常のバトルとなる。

*4 一部の触媒は、ゲーム中のサブクエストを完了させるのに必要となる。