真・三國無双

【しん さんごくむそう】

ジャンル タクティカルアクション
対応機種 プレイステーション2
メディア CD-ROM 1枚
発売元 コーエー
開発元 コーエー(オメガフォース)
発売日 2000年8月3日
定価 6,800円(税別)
プレイ人数 1人
セーブデータ 128KB以上
レーティング CERO:12歳以上対象*1
廉価版 PlayStation2 the Best
2002年9月26日/3,000円
コーエー定番シリーズ
2004年12月16日/1,680円
配信 PS2アーカイブス
2012年11月28日/1,429円
判定 良作
無双シリーズ


概要

三国志(演義)』に登場する武将を操作して戦う、対戦型格闘ゲーム『三國無双』の流れを汲むゲーム。
発売からわずか半年足らずの新機種・PS2に舞台を移した本作はゲームシステムも大幅に刷新。
約1キロ四方の戦場を駆け、群がるように立ちはだかる敵武将や兵士を薙ぎ倒し、所属する軍の勝利を目指すアクションゲームになった。

なお、ステージとなる戦場はプレイヤー以外の武将や兵士も各地で戦いを繰り広げており、プレイヤーはそこに介入することとなる。
プレイヤーを含め、活躍した武将の近くの味方部隊は士気が少し上がり、逆に消耗した部隊は少しずつ士気が減少する*2という仕組みがある。
そして、ステージ開始時は士気や物量と言った形で基本的に敵側が優位な戦局にあるので、適宜味方の援護に回らなければ、最終的にプレイヤーではなく自軍の総大将が討ち取られて敗北となってしまうこともある。

このように全体の戦況を見極めて動くリアルタイムシミュレーションの要素も含んでおり、本作や以降の一部を除いたシリーズ作品のメーカー公称のジャンル名は「アクション」ではなく「タクティカルアクション」となっている。

なお、PSP用ソフトとして同名の『真・三國無双』が発売されているが、これは本作の移植ではなく『真・三國無双3』をベースにした別物である。


操作可能武将(無双武将)

本作で操作可能となっている武将(無双武将)は下記の通り。

勢力 武将
劉備 諸葛亮 関羽 張飛 趙雲 馬超 黄忠 姜維
曹操 司馬懿 夏侯惇 典韋 許褚 夏侯淵 張遼
孫堅 孫権 周瑜 陸遜 孫尚香 太史慈 甘寧 呂蒙
張角 袁紹 董卓 貂蝉 呂布

最初は蜀(趙雲関羽張飛)、呉(周瑜陸遜孫尚香)、魏(夏侯惇典韋許褚)の各3人ずつ。
条件を満たすと他の武将が追加されるが、ここに記載されていない武将は固有のグラフィックを持たない一般武将として登場し、プレイヤーは一切操作出来ない。


戦場

本作に用意されている戦場は下記の通り。なお、上3つのステージは無双モードを魏呉蜀3勢力で1人ずつ完走すれば、フリーモードにて敵勢力側(上から黄巾党・董卓軍・袁紹軍)でプレイする事が可能になる。

年代
(西暦)
戦闘名 交戦勢力
184年 黄巾の乱 討伐軍 黄巾党
190年 虎牢関の戦い 反董卓連合軍 董卓軍
200年 官渡の戦い 曹操軍 袁紹軍
208年 長坂の戦い 曹操軍 劉備軍
208年 赤壁の戦い 連合軍 曹操軍
215年 合肥の戦い 魏軍 呉軍
222年 夷陵の戦い 呉軍 蜀軍
234年 五丈原の戦い 魏軍 蜀軍

さすがに現在の視点で見るとボリューム不足は否めないが、三国志を語る上で最低限必要かつスケールの大きい戦場を選出している。
概要での説明だけでなく、場合によってはステージ展開を上手くアレンジする形で補完している部分もあるので、ストーリーなどもあまり破綻していない。

  • 例として…
    • 全てのステージで開始前に見られる「概要」で戦いに至るまでの経緯を説明している。内容は同じ状況なら史実でもありえそうな展開なので、違和感を覚えさせにくくなっている。
    • 一ステージには主題のものだけでなく、近い時期における複数の戦いの展開がある程度統合されて組み込まれていることもある。虎牢関の戦いで、汜水関を守る華雄がステージ中盤に登場するのもその1つ。
    • また夷陵の戦いでは関羽と張飛が出陣しているが、どちらも史実に似た展開*3で壊滅の危機に陥る構成になっている。

評価点

並み居る敵を薙ぎ倒す「一騎当千の爽快感」

  • そしてその爽快感を後述する簡単操作で味わうことができる、というのが無双シリーズ全体のコンセプトである。
    • さすがに現行の機種と比べると敵の群がりや攻撃範囲は大人しめで立ち回り重視の傾向が強いが、コーエーのPS2ロンチタイトル同様に、PS2の映像スペックを率先して示したという点でも意義は大きい。
      • アーケード限定作品ですらここまで大勢を相手にするゲームはなかったのである。一度に襲いかかる敵の数・まとめて相手できる数はどちらも格闘アクションの『ファイナルファイト』(カプコン)や『スパイクアウト』(セガ)などが比較対象になり得ないほど。
      • 前述したように群がり具合が大人しめである代わりに処理落ちやステルス*4も深刻ではないので、後のシリーズ作品で指摘されるそれらが原因のストレスは感じにくい。
      • また、プレイヤーが1000人斬りを達成すると、味方武将から「お前こそ真の三國無双よ!」と特別な賞賛台詞が掛けられると共に、味方全軍の士気が最大値まで上昇する。この特別賞賛は無双シリーズを象徴する台詞として定番の1つとなった。

操作が簡潔に纏まっている

  • 攻撃に関しての操作は最低限「十字キーでの移動」「□ボタンの通常攻撃」だけで渡り合えるようにできている。
    • そして「通常攻撃中に△ボタンのチャージ攻撃」「無双ゲージが満タンなら、危なくなった時に○ボタンの無双乱舞」でアクションはほとんど網羅でき、複雑・シビアなコマンド操作は要らないのでアクションゲームが苦手な人でも取っつきやすい。
    • ×ボタンのジャンプからの攻撃やR1ボタンからの弓攻撃も使いこなせれば、戦い方の幅も広がる。
    • さすがに初期作なので出来る行動も最近のシリーズ作品に比べれば少ないのは致し方ない所だが、好意的に解釈すれば操作がごちゃごちゃしていなくて解りやすいとも言える。
    • 一方で、相手の無双乱舞にも割り込めるカウンター攻撃など、本作でしか行えないようなアクションもある。
      • しかし相手をダウンさせてしまうため、後述のダウン問題がネックとなってくる。

育成要素がある

  • 敵武将や拠点兵長を倒した時に落とす剣・盾アイテムを拾うことでプレイヤー武将の攻撃力・防御力をアップさせ、極めて稀にステージ上で見つかる点心を拾うことで体力ゲージと無双ゲージの上限を増やすことができる。
    • この内剣と盾は撃破時のコンボ数によって質が段階的に上がる。本作のみ、最弱の青銅の剣/盾を落とす敵でも、倒した際に24コンボを決めることができれば一気に黄金の剣/盾に変化させられる。
    • 敵武将の半数以上は剣を落とすが、マップ外部に多い兵士の出入口にいる拠点兵長は必ず盾を落とす。この関係から本作では防御値の方を育てやすくなっており、初心者救済にも繋がっている。
  • 無双モード(ストーリーモード)をクリアした武将の以降のプレイや他勢力の武将*5でのプレイでは敵パラメータが若干強化された状態になっている。
    • これらも合わせ、武将の育成にはちゃんと難易度設定以上の意義がある。

アクションゲームであることを重視したBGM

  • これまで『三国志(演義)』を題材にしたゲームでかかるような曲ではなく、あくまでも「歴史ゲームではなく、(中国の三国時代を題材にした)アクションゲーム」であることを重視したハードロック調のBGMが用意されており、非常にノリの良い曲が揃っている。
    • だが、五丈原の戦い・蜀軍のBGMである「SACRED GROUND」のように、どこか悲哀を感じさせるような重い曲もあったりと、その曲調はワンパターンではない。
      • また、三国同士が戦う戦場の一部では勢力ごとに違う曲*6を用意しており、それぞれの勢力の状況や心情が伝わるようになっている。

問題点

ボリュームが少ない

  • さすがにメディアがCD-ROMである以上は仕方ない所もあるが、プレイ出来る戦場の数はかなり少ないものになっている。
  • 武将のモーション総数が少ない
    • 具体的には前作から登場していた蜀・魏・呉各勢力の4人と他勢力の貂蝉・呂布が固有モーションとなっているが、趙雲以外の槍・戟使い、曹操以外の剣使い、黄忠や夏侯淵などの刀使いは一般武将のモーションとコンパチ*7
      • といっても最初から使える武将は専用のモーションで、コンパチはクリア後の追加武将のみだけ。CD-ROMソフトという容量を考えれば、これでも健闘したほうだろう。
    • 隠しのコンパチキャラで差別化が図られているのは外見の他にはパラメーター、および勢力別である無双モードのステージ順だけ。
      • 黄忠や夏侯淵は演義通りに弓攻撃の威力が他より高い。
  • 無双モードのシナリオが他勢力の武将には用意されていない
    • 本作に限らず、以降の作品でも他勢力の武将にシナリオが用意されていないことは少なくなかった。
  • やり込まないとなると無双モードは勢力ごとに完全に固定になっていたり、プレイ出来る戦場の少なさといった要素はそのまま飽きを呼ぶ要素になってしまう。
    • 勢力別に無双モードのステージが分かれているにもかかわらず、無双モード5ステージ中、「黄巾の乱」と「虎牢関の戦い」は状況が初期位置以外全く同じ。

ボイスはキャラクター選択時・プリレンダムービーとアクション時のみで、イベント関連は字幕表示オンリー

  • このため、邂逅時や死亡時など口パクはあるのに無音なので物足りなく感じてしまう。
  • これもCDメディアである以上は仕方ない所であり、次作『2』でメディアがDVDになったことで戦闘中もフルボイスになり、戦場の雰囲気もより盛り上がるものとなった。
    • もっとも、『2』以降ではボイスが再生されている間はイベントが発生しなくなるため、門が開くまで延々と喋り終わるのを待たされるといった状況も目立つようになってしまい、「ボイスが無い方が良かった」という意見もあったりするのだが。
    • プレイするキャラクターを選択した際に喋る台詞は戦闘中に対峙した敵無双武将からの邂逅台詞であるため、趙雲のように様になっている台詞もあれば、呂蒙のように物騒な内容のものもある。
      • 当然ながら後者程、キャラクターを選択した時にいきなり台詞を投げられると複雑な印象を受けることも。

システム面の練り込み不足

  • 敵将が「起き上がり時に中確率で回復する」という仕様が特に問題視されていた。
    • 敵武将が体力が半分以下のときにダウン状態から復帰すると、ランダムでアイテム効果能力*8を発生させる。時として全回復をすることもある。
    • 故に効率重視で戦うとなると、ダウンしない通常攻撃の3段目までに攻撃を留める必要があり、それ以外の攻撃はほぼすべてダウンに直結してしまうため、他にできることも少なく、アクションも単調になってしまう。
      • 『2』ではタメ時間を経て回復するが、本作では起き上がった瞬間である。さらに本作は…(後述)。
  • 護衛兵関連にも欠陥が多い
    • プレイヤーを守る「護衛兵」がおり、彼らに関しては武功ポイントでのみ成長する。
    • しかし、彼らに行動方針の指示を出せないため、成長していない序盤でも無謀にも敵に挑みかかって返り討ちに遭うなどして犬死にしたり、それ以外でも敵兵を吹っ飛ばしてそれが護衛兵に当たってしまうと大ダメージを受けてしまうこともあり、容易に全滅してしまいかねない。
    • プレイヤー側がその辺を意識した立ち回りと共に回復アイテムを拾って護衛兵を死なせないようにする*9必要がある。
      • 無視する場合もいちいち遺言メッセージが出てきて、獲得武功も下がるので鬱陶しいことこの上ない。
    • 逆に成長した場合は一般武将並の能力*10になり、人数も8人になる。ただ足早に進めない限りは自分だけで充分なまでに強くなっていることが多く、そしてこちらの状況などお構いなしに脇から茶々を入れてくる。
    • 護衛兵を出撃させないということもできないため、彼らの存在がストレスや難易度を変に上げる要因になってしまっている所がある。例えば…
      • 前述の通り敵武将をダウンさせると面倒なため、プレイヤー側がそれを嫌ってダウンさせないように戦っているにもかかわらず、攻撃を当てて敵武将をダウンさせてしまう。運が悪いとそのまま起き上がった敵将が全快してしまう。
      • 敵武将や拠点兵長に対して、成長アイテムのランクアップを狙ってコンボ数稼ぎをしている時にも関係なく脇からふっ飛ばし攻撃を挟んでくるので、こちらのコンボを潰されてしまう。
      • 弱っている敵武将のトドメを横からかっ攫われる。
  • 平均すると激し目の難易度カーブ
    • 後述するようにステージ数が少ない本作では1ステージごとの難易度上昇が現在のシリーズ作品より強いペースで行われる。
    • その中で武将を倒さねばプレイヤーは成長できないため、総合的な難易度としてはデフォルト設定のNORMALですら今の無双シリーズからすれば意外にシビアなバランスになっている節がある。
      • 初期作独特の仕様として「能力差をつけていなければ敵将のガードを崩せない」こともこれに拍車をかけているため、稼ぎなしで進むのはかなり困難。
    • 本作に限らずほぼ全ての無双シリーズ共通の仕様だが、プレイヤーが戦死したり敗北条件を満たしてゲームオーバーになると、そのステージ中に得た武勲・アイテムが全て無効となってしまう。そのため本作ではなおさら、EASY設定にしてでもクリア済みのステージで稼ぐ必要に迫られる。
      • 難易度EASY設定では敵パラメータが控え目になる上に敵の攻撃でこちらの攻撃を中断されることも少なくなるので、ゴリ押しが効きやすい。
  • 体力と無双がとても成長させにくい
    • 成長アイテムの剣や盾は敵将や拠点兵長を倒せば数は集まるので、普通にプレイしていればそれなりに成長させることが出来る。
      しかし体力と無双を成長させる点心は入手が極めて困難なレア物になっている。
      • 各マップ中に1つしかない特定の壷を壊す特定武将を特定ステージで撃破する*11ことで見つかるが、ほとんどの広いステージにたった1個という希少品なので相当見つけにくくなっており、結果としてこのパラメータは成長が非常に遅れてしまう。
      • 黄巾の乱や虎牢関の戦いの裏シナリオ*12の場合、点心を落とす劉備・孫堅・曹操ら三将とまとめて戦えるため、戦場の壺の分も含め最大4つ分の稼ぎになる。とはいえそれぞれ難易度も相応なので初期状態で挑むのはやや難しい。また裏シナリオ自体も裏技*13を使わないならば無双モード数人のクリアが必要。
  • 他にもスコア・経験値のような存在である「武功」ポイントでは自分は全く成長しない(護衛兵のみ)ため、否が応でも武将との戦いを多く制さねばならない。せっかくの撃破数が成長に生かされないというのは、人によっては気になる点になるだろう。
    • 続編シリーズでは武功による昇級でも能力値が上がるなどの所謂経験値レベル制も導入され、撃破数を稼ぐことでも成長面での意義がもたらされることになる。
  • 弓兵の凶悪さ
    • 本作の弓兵はプレイヤーを優先に狙い威力も高い。敵兵の直接攻撃による怯み効果が低減されるEASY設定ですら弓矢のひるみ効果は高く厄介なので、弓兵の最優先排除が攻略のコツと言っても過言ではない。
      • しかも櫓や崖の上などプレイヤーが到達できない*14、又は到達に手間が掛かる所にいるのが大半である。こちらも弓で対処するしかないことが多く、矢を常にストックしておかなければならない。
    • ちなみにこちらの弓も威力は充分であり、残り数に余裕があれば無双ゲージを消費して連射することで、普段はかなり困難なコンボ数を決めて敵将を一気に仕留めることも可能。
  • 落石の仕様
    • 一部のステージでは、敵の武将が高所から落石による攻撃を仕掛けてくるギミックが存在する。プレイヤーに直撃すると体力全快からでも半分以上のダメージを受けるなど相応に危険な罠だが、ある程度避けることは可能。
    • 問題は画面外のNPCに対する仕様。落石攻撃の起きているエリアをプレイヤーの画面外で通過した味方武将は持続的にダメージを受け続ける(敗走はしない)のだが、これによってあっさり体力がほぼ尽きた瀕死の状態になって戦闘を開始した途端敗走、といった現象が起きる。
      • この罠の影響が最も顕著なのは総大将である曹操の駐在するエリアに落石が直撃する「官渡の戦い・曹操軍」で、曹操軍本陣への投石を放置していると、何の前兆もなく曹操死亡のムービーと共に突如として敗北、といったことも平気で起きる。
    • この問題は次作の『2』でも残っている。「黄巾の乱」の盧植や、「南蛮夷平定戦」の馬超・呂蒙などが該当し、「配下の兵士が全滅し、体力ゲージが真っ黒」の状態になっていることがある。
      • 兵士と異なり、武将をイベントによって敗走させることができなかったための仕様と思われる。
    • ただこの落石攻撃のギミックに関しては、上記のような問題に加えて武将を落石ギミックよって敗走させる表現の場合、近年のリアルかつハイクオリティな表現で再現すると相当過激な描写にもなりうる。
    • そのため、現在に至るまで諸外国並みの厳格化が進んでいる近年の日本のレーティングに引っかかるという問題が発生するということなのか、後期のシリーズ作品では廃止されている。
  • アイテムドロップが解りにくい。
    • 本作はアイテム出現時に飛び出す描写のみで、後の作品で導入された出現音や目印となるオーラは発生しない。
    • そのため、画面外へ吹っ飛んだ敵が落としたアイテムを拾うのが困難になっている。
  • 途中セーブ不能
    • 移動速度が全体的に遅く、1ステージの攻略にどうしても十数分以上*15の時間がかかってしまうゲームだが、本作は戦闘を途中でセーブして中断することができない。「空いた時間に気軽にプレイ」とは言い難い。
  • 2人同時プレイ不可
    • 2人同時プレイが出来れば盛り上がれること間違いなしのゲームではあるのだが、本作ではまだ未実装だった。
      • もっとも、これも当時の技術力やメディアがCD-ROMであることを考えれば仕方がないレベルのものである。

なお、これらのシステム面は弓兵など一部を除いて次作である程度の改良を見ることになる。


総評

このWikiでの判定を良作に分類しているが、先述の通りシステム面などに引っかかりを覚える難点も少なくないため、現代の観点から本作を素直に良作と呼ぶには些か疑問符が付いてしまうのは否定出来ない。
しかし、もはや本作に関しては1つのゲームとしてよりも、本作が1つのジャンルとして後に確立されていくことになる「一対多の群がる敵を薙ぎ倒す無双(系)アクションゲームの土台を作った点」を評価されるべきであろう。

類似した特徴を持つゲームタイトルを除いて無双シリーズだけで見ても、さらにシステムが洗練されてボリュームも飛躍的に増大している後継作品が発売されている。
シリーズ後継作とのスタイルの違いを楽しむ以外、今さら敢えて本作をプレイする理由は無いかも知れない。
だが、本作の存在が後に10年以上にわたって続いていくことになる『真・三國無双シリーズ』はもちろんのこと、『戦国無双シリーズ』などといった「無双シリーズ」に成長し、コーエーの新たな代名詞となったのは確かである。

本作がただ敵が群がる以外に特徴を持たず、むしろそれ以外がもっとお粗末なゲーム性、あるいは発売時期が遅すぎたならここまで息の長いシリーズにはならず、3D格ゲーの後塵を拝した『三國無双』の時のように「コーエーの一発ネタ」扱いで終わってしまっていたかも知れない。
そうなれば当然1つのジャンルとして確立せずに流された可能性もあり得た事を考えれば、本作がハード初期の完全新作としてそれだけの完成度・インパクトを誇っていたということの証左に他ならない。


シリーズについて

海外版におけるシリーズ分類

本作はタクティカルアクションゲームである『真・三國無双』シリーズとして見た場合はシリーズ第1作となる。
一方、『三國無双』の海外版タイトルは『Dynasty Warriors』、本作の海外版タイトルが『Dynasty Warriors 2』となっているように、海外では本作は「『三國無双』シリーズの第2作」として扱われているため、以降のナンバリングは日本版と1つずつずれている。

海外版タイトル

無双シリーズの日本と海外版タイトルを比較すると下記の通りになる。

日本版 海外版 日本版 海外版 日本版 海外版
(真・)三國無双 Dynasty Warriors ガンダム無双 Dynasty Warriors: Gundam ゼルダ無双 Hyrule Warriors
戦国無双 Samurai Warriors 北斗無双 Fist of the North Star: Ken's Rage ファイアーエムブレム無双 Fire Emblem Warriors
無双OROCHI Warriors: Orochi TROY無双 Warriors: Legends of Troy
猛将伝 Xtreme Legends ワンピース海賊無双 One Piece: Pirate Warriors

※『猛将伝』は無印タイトルの後ろにそのまま付記される形となるため、『真・三國無双6 猛将伝』ならば『Dynasty Warriors 7: Xtreme Legends』となる。
『真・三國無双7 with 猛将伝』の場合、『Dynasty Warriors 8: Xtreme Legends Complete Edition』になる。

詰まる所、海外では「無双シリーズ = Warriorsシリーズ」であるということになるが、『北斗無双』だけは例外として「Warriors」が付いていない。
また『無双OROCHI』の続編である『無双OROCHI 魔王再臨』は海外では『Warriors: Orochi 2』のタイトルで発売されているため、こちらも『真・三國無双』シリーズ同様にナンバリングがずれている。

武将の呼び名について

無双シリーズでは、特定の武将に対して特殊な呼び方を設定されている武将が存在する。
例えば関羽や張飛が劉備を「兄者」と呼ぶことや、夏侯惇が曹操を「 孟徳 (もうとく)*16」と呼ぶことが当てはまる。
本作のみフルボイスでないからか、敵武将を撃破したり味方を賞賛する時にはその武将の名前を呼ぶようになっている。
つまり「敵将○○、討ち取ったり!」になるし、味方を賞賛する時は「さすがだな、○○(殿)!」となり、後者にはその呼び方が適用されるのだ。

ちなみに本作の中でよくネタになっているものに、夏侯淵と夏侯惇の呼び方の差がある。
夏侯淵はシリーズ通して夏侯惇のことを「 惇兄 (とんにい)*17」と呼び、夏侯惇は最近の作品になって「淵」と呼ぶようになっている。
だが、本作では夏侯淵は「惇兄」と呼ぶのに対し、夏侯惇はこの作品では特別な呼び方の設定がされておらず、「夏侯淵殿」呼びである*18
これによって、夏侯淵が夏侯惇を賞賛する時は「さすがだな、惇兄!」となるにもかかわらず、その逆が「さすがだな、夏侯淵殿!」という、ある種シュールな光景になっている。
この2名が有名だが、それ以外にも孫尚香は何故か父や兄を褒めるのに「孫堅殿」「孫権殿」呼びしたり、臣下であるはずの周瑜が「孫尚香」と呼び捨てにするシーンも存在するなど、この辺でもまだまだ練られていない所が散見される。
以降の作品ではこの辺も徐々に改良されていき、違和感が解消されていっている。
…もっとも『2』では「樊城の戦い・蜀軍」ステージで、何故か格上扱いの一般武将であるが故に父親である関羽に上から目線で話す関平*19がネタにされていたのだが。


余談

  • 先の脚注にて触れているが、メニュー画面で特定のコマンドを入力することでキャラクターやサウンドテストを解禁できるシステムが用意されているほか、「START」+「SELECT」の同時押しによるソフトリセットに対応している。
    • ソフトリセットは以後、『7 Empires』などPS3での無双シリーズ作品までに共通するコマンドの一種として伝統の1つとなり、キャラクター解禁の隠しコマンドも『2』へと密かに続投されている。
  • ステージをクリアすると、そのステージにおける敵撃破数の上位10部隊が表示される。
    • 当然ながらプレイヤーの操作武将がぶっちぎりで一位になる事が多いが、自分以外の武将がどれだけ活躍していたのかもわかる面白い要素だった。この要素は本作限りであり、マップ全体の行動履歴リプレイも『3』を最後に廃止された。
  • シリーズ作品の中でも珍しく、黄金の剣(攻撃+8の成長アイテム)に加えてさらに上級品となる青釭の剣(攻撃+10)がドロップアイテムとして存在しているタイトル。
    • 黄金の剣は24コンボを達成することでも入手できるが、青釭は通常の方法で出現させることはできず、特定の武将からのドロップでのみ入手できるレアアイテムという位置付けだった。
    • 入手するためには特定の条件が必要、という意味では後の作品におけるユニーク武器や貴重品などにも通じる収集要素の先駆けの1つともいえるかもしれない。
  • 本作より確立された勢力毎の配色(魏:青 / 呉:赤 / 蜀:緑etc.)は続編に留まらず、その後様々な三国志を題材とした作品群にも取り入れられている。
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最終更新:2024年02月06日 00:51

*1 廉価版で付与されたレーティングを記載。

*2 部隊ごとの士気ゲージが敵体力ゲージに表示されている本作の他、士気マーカーのみ表示されている『真・三國無双2』~『4』でもこの基本仕様は変わらない。

*3 関羽と張飛は史実では夷陵の戦い以前に死亡している。また本作で関羽と交戦する呂蒙は、史実でも関羽を追い詰めた武将。

*4 このシリーズでの「ステルス」とは「隠れて」「こっそりと」といった本来の意味の「Stealth(ステルス)」ではなく、画面描写処理が追いつかず、そこに居るはずなのに画面内に描写されない敵の兵士や武将のことを指したり(「ステルス兵士」など)、その現象そのものの呼称である。

*5 他勢力とはシリーズを通して、魏(『6』以降の晋も含む)呉蜀の三国勢力に属さない群雄達を指す。

*6 一例として、五丈原の戦い・魏軍は「GRAVITY」がかかり、曲調も蜀軍の「SACRED GROUND」とはまるで違うものとなる。

*7 コンパチ武将同士に関しては武器のデザインも流用されており、キャラクター選択画面で同モーション同士で隣り合わせの位置関係になる馬超と姜維や他勢力の君主武将などで顕著にわかる。

*8 能力の一時上昇、または体力回復。

*9 護衛兵を引き連れている場合、プレイヤーが肉まんなどの回復アイテムを拾うと引き連れている護衛兵の体力も同量回復する。ただしこれ以外の回復手段が無いため、護衛兵を死なせないようにするためにはプレイヤーの体力に関係なくアイテムを拾っていくことになる。

*10 無双乱舞も放つようになる。

*11 主に劉備、孫堅、曹操、孫尚香、曹丕などといった、君主クラスの武将が落とすようになっているが、総大将として出現した場合はアイテムを落とさない。あくまで「一武将扱いで参戦」するステージのみ。

*12 敵軍サイドのフリーモード専用ステージ。

*13 特定のコマンドを入れることで全武将を無条件で解禁できる、というものが存在している。

*14 後の作品ではプレイヤーが到達出来ない場所からの一方的な攻撃自体が軽減、もしくはほとんど排除されている。櫓をとっても備え付けのはしごを登れたり、櫓を壊すことも出来るようになっていくが、本作ではそのどちらも不可能。

*15 HARDでの攻略だとさらにその数倍の時間がかかる。

*16 曹操の字(あざな)。

*17 夏侯淵から見て夏侯惇は従兄に当たることから。これの影響か、本シリーズファンが夏侯惇を呼ぶ時も「惇兄」呼びだったりすることもあり、一種の愛称と化している。

*18 本作以降の作品ではそもそも夏侯淵の名前を呼ぶ場面が無いと言うこともあった。

*19 ステージ開始前のムービーでは汎用と違う声で丁寧な喋りをしていたのが、ステージが始まった途端に関羽に対して汎用ボイスで「うむ、さすがだ!」「出過ぎだぞ、自重せよ!」などと言うようになる。