本稿はPS2版『ソウルキャリバーIII』を対象とする。同アーケードエディション版については、余談として後段に記す。
ソウルキャリバーIII
【そうるきゃりばーすりー】
ジャンル
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剣劇対戦アクション
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重大なバグあり 購入時要注意!
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対応機種
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プレイステーション2
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メディア
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DVD-ROM
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発売・開発元
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ナムコ
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発売日
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2005年11月23日
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定価
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7,140円(税込)
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プレイ人数
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1人~2人
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レーティング
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CERO:12歳以上対象
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判定
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修正前
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クソゲー
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修正後
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改善
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良作
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ポイント
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2005年クソゲーオブザイヤー次点
発売前から発覚していたと思われるメモカ破損バグが残留 希望者のみに修正版配布 新要素は大好評 出来は非常に良いがバランスはやや悪い
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クソゲーオブザイヤー関連作品一覧
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ソウルシリーズリンク
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概要
ナムコの人気剣劇対戦アクション、ソウルキャリバーシリーズの第三弾(原点である『ソウルエッジ』も含めると四作目)にあたる。前ニ作はアーケードが初出だったが、本作は初めにプレイステーション2版がリリースされ、後にファンの要望に応えてアーケード版(アーケードエディション。通称AE)が稼動したという特殊な経緯を持つ。
ゲーム自体はボリューム、やり込み要素が満載で、良作と評されてもおかしくない出来である。特にキャラクタークリエーションという自作キャラを作ってバトルができるモードは動画に投稿される程人気があり、今もなお本作を愛するプレイヤーは少なくない。
しかしゲームに重大な支障を来すバグによって、2005年KOTYスレで最終候補作として話題となってしまった。
ゲームシステム
ゲームモード
家庭用での発売ということもあり、一人でも遊べるように多彩なモードが収録されている。
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キャラクタークリエーション
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本作の目玉。その名の通り、自分の手でデザインしたオリジナルキャラを作成し、実際の対戦で使うことができる。
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プロレスゲームといったスポーツ寄りのゲームではお馴染みだったが、本作のような本格的な格闘ゲームに搭載されたのは恐らく本作が初めて。
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20項目以上の部位について数百種類ある衣装を着せるだけでなく、衣装の配色や顔などを細かく指定することも可能。
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キャラクターの性能(流派)についてはキャラクタークリエーション汎用のものが使えるほか、特定条件を満たせば通常のプレイヤーキャラの流派を使うこともできる。
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ロストクロニクル
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面クリア型の一人用モード。マップ上のユニットを動かして拠点を奪い合い、最終的には敵本拠地を制圧する・・・という一見ソウルキャリバーとは関係ないシミュレーションRPG(RTS風)だが、戦闘部分がソウルキャリバーのシステムを使った格闘ゲームになっている。
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舞台となる世界やストーリーは本編とは関係がなく、先述のキャラクタークリエーションを使って作られたキャラが主役となる。
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ストーリーモード
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キャラごとにストーリーに沿ってCPUと対戦していく。途中、ルート分岐も存在する。
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ワールドコンペティション
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世界ツアーという設定の下、CPUとの大会を行うモード。12連覇を達成するのが目的だが、トーナメントで一度負けたら即ゲームオーバー・途中セーブやコンティニュー、救済措置一切なしというガチな内容。
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プラクティスモード
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従来のトレーニングモードのほか、いわゆるチュートリアルや用語集なども収録されているなどかなり手厚い内容。
新システムなど
対戦面では以下のような新システムが導入されている。
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スタンコンボ。
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キャラごとに設定された特定の技をカウンターヒットさせると起きる、のけぞりの長い特殊やられを本作から「スタン」と呼ぶようになった。スタン発生時にはキャラに黄色い電撃が走る。
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スタン中は全ての技がカウンターヒット扱いになるため、スタン誘発技→スタン誘発技と連続技を繋げられるようになった。これをスタンコンボと呼ぶ。
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これにより地上での連続技の幅が広がった。ただし、スタンはレバガチャで回復可能なため確定しないものも多い。
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ジャストインパクト
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ジャストのタイミングでガードインパクトを成功させるとエフェクトが派手になり、次に当てる攻撃がカウンターヒット扱いになる。ただし、ジャストインパクトをされてもガードインパクト返しは可能。
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挑発
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全キャラ共通でK+Gで挑発が出せるようになった。効果も何も無い。ただそれだけ。
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ただし「ノーマンの傭兵剣技」のみ一部技の強化効果がある。
評価点
グラフィック面
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美麗なグラフィックはPS2では最高レベルといっても過言ではない。細部も書き込まれておりOPムービーは思わず見とれてしまう。
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3Dモデリングもシリーズ最高レベルである。
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キャラも非常にヌルヌル動く。グラフィックが美麗なことを考えると相当な力を入れてたのだろう。
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ステージなどは背景が非常に美しくバトルそっちのけで見入ってしまった人も。
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ステージごとに詳細なストーリーや設定が存在しておりミュージアムモードで閲覧することができる
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まとめると画質、ポリゴンともにPS2の性能の限界に挑んでいると言って良い。次世代機であるWii、PS3、360の3機種の一部のソフトにも見劣りはまったくしない。
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前作『ソウルキャリバーII』は「格ゲーにしてはカメラワークが動かない」「カメラのせいで臨場感が無くなってしまう」との細かい指摘があったのだが今回は激しすぎない程度に動くようになりカメラワークの動きが良くなったので迫力が倍増した。
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前作はお色気や小エロを狙った部分がやや過剰と言われた部分があったが(衣装やパンチラ、胸揺れ)今作は控えめとなった。まあ前作でこういう要素を入れてしまった時点で気に入ってしまった人もいるだろうが…。
キャラ要素
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前作ではソフィーティアなどの一部キャラがリストラされていたが、本作ではシリーズにこれまで参戦してきたキャラのほぼ全てが登場。
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一部のキャラはおまけとしてボーナスキャラとしての登場のため、性能・声がキャラクタークリエーション汎用のものだったりストーリーが無いなどの制限がある。
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クリエイション専用流派も含めると使用可能キャラはシリーズ最多である。
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CPU専用のボスや特殊な敵キャラも多数登場する。
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残念ながら、前作の平八やリンク・スポーンや次回作以降のスター・ウォーズキャラ、クレイトスのようなゲスト参戦は無いが、これは仕方が無いところだろう。
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クリエイション専用流派はモーションが没個性的な分、かえってキャラクターを作りやすい。
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例えば「ノーマンの傭兵剣技」は同じ剣盾スタイルでも女性的なソフィーティア・カサンドラと比べて「女性らしさ」が薄く、男性キャラが作りやすい。
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「キックエッジアーツ」は素手なので格闘家キャラが作りやすい、またランスやダガーなどファンタジーの王道だがキャリバーで持っているキャラがいない系統も用意されている。
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中には如意棒やタンバリンのようなユニークなものまで。
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キャラクタークリエーションがかなりの人気。現在でも動画が投稿されるほどの人気を博している。
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後の作品でも同モードは収録されているが、専用流派の存在や、クリエーションキャラを活かすロストクロニクルなどから、本作のこのモードは特に評価が高い。
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ステージ数やキャラ数など全体的に過去最高のボリュームである。シリーズの中で傑作と言っても過言でない。
ロストクロニクルズ
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ロストクロニクルズは格闘ゲームの一モードにしては独自性が強くボリュームも大きく、高い評価を得ている。
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ストーリーは王道的な戦争もので、後半のストーリー展開は中々熱いものがある。また、登場キャラクター達も個性的で愛着が湧きやすい。
その他
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前作ではあまり使えなかった縦斬りが今作は多少使いやすくなっている。
賛否両論点
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前作に比べて8WAY-RUNの動きが鈍くなった。
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縦斬りが使いやすくなったのもこのためだが、前作に慣れたプレイヤーからは操作性の劣化と感じられることも。
問題点
メモリーカード破損バグ
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本作がKOTY2005に推される程問題視された最大の要因は、ずばりPS2のメモリカードのデータを破損させてしまう可能性があるバグの存在にある。
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これは「本作に関するデータがメモリーカード内に存在する状態で、他のゲームのデータを削除、移動、更新など、他のゲームのデータが何らかの形で容量、記憶場所が変化したときに起こる」というもの(wikipediaの記述より引用)。
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最悪の場合は本作のデータはおろか、カードの他のゲームのデータに影響を及ばす可能性があるという、商品としてあるまじき致命的バグを搭載してしまった。
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公式曰く他のゲームデータに関してはあくまで他データの書き換えで本作のデータ破壊は起きるが他データは破壊はしないとのこと。
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なおデータ破壊に関しては3つのパターンがあり多いのは「ロストクロニクルのデータ」「SC3全部」の2つ。起こるが報告が多くないのは「メモカごと破壊」のパターン。これは公式では起きないと書いてあるのでソフトに違いがあるのかメモカ自体が悪いのかPS2の何かが影響するのかは分かってない。
ゲーム自体の問題点
一部のゲームバランス
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ロストクロニクルズはゲームバランスが少し悪い。途中から極端な難易度と化す、作業ゲーになりがちなどの細かい問題点がある。
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キャラクターの能力値は選んだ職業で決まるのだが、職業ごとの能力差が激しく、能力値の低い職業を選んでしまうと苦労しやすい。特に、シーフやダンサーなどは後半になると攻撃力やHPの低さが致命的になってくる。
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家庭用ゲームなだけあってか、対戦ゲームとしては調整不足な面が大きい。
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ガードバックが小さく後退も遅い為に攻撃をガードしてからの確定反撃が強すぎる「待ちゲー」化している。
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ガードインパクトされた時の硬直を消せる、御剣の「88Bバグ」など、対戦部分に多大な影響を及ぼすバグが多い。
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スタンコンボを使ったお手軽凶悪コンボを持つキャラがいるが、一方でスタンコンボというシステムをさっぱり生かせないキャラも。
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こういった問題点は開発陣もある程度認識していたようで、アーケード逆移植のAEでは多少修正されている。
キャラ要素の問題点
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キャラクタークリエーションオリジナル汎用の流派は技名が無いのをはじめ、モーションが垢抜けない、通常キャラにはある横投げが無い、性能的にも練りこまれていないなど、やはり本編のキャラと比べると見劣りする。
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ただし次回作『IV』ではキャラクリオリジナルの流派が全て削除され、こちらはこちらで寂しいという意見も。
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前作と同じくキャラクターの武器変更が可能となっているが、キャラクリ流派の登場により1キャラあたりの武器の種類が減少している。
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特に最強の武器にあたるものも前作では「ソウルエッジ」と「ソウルキャリバー(もしくはそれと同様の装備効果を持った最強武器)」の2種が全キャラに存在したが、今作ではそのどちらかのみという形になった。
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例えばナイトメアやティラ、リザードマンのみはエッジのみでキャリバーにあたる武器が無く、ソフィーティアやキリク、シャンファはキャリバーのみでエッジにあたる武器は無い。
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新キャラクターの3人が微妙。ティラはフラフープのような「リングブレード」という武器が非常に特徴的にもかかわらず、性能に特徴がなく平凡。ザサラメールと雪華に至っては武器や流派が従来のキャラと似たり寄ったり感があり目新しさに欠ける。
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後のシリーズでは、ティラは2つの形態(構えではない)を使い分けるという性能面での個性付けがされた。
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ジークフリードと別キャラになり、新規ボイスがついたナイトメアは小物臭いと不評。
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ストーリーの立場では大ボスのポジションなのにもかかわらず、まるでそこらのチンピラのようなキャラになってしまっている。
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担当したのはベテラン声優の立木文彦氏。立木氏の演技力が低いというわけではなく演技指導がズレていると言った方がいいだろう。ちなみにナイトメアは全てのシリーズで声優が異なり、今作以降は声にエフェクトがかかるようになった。
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過去作から何故か技数が減少しており攻撃パターンや対戦の駆け引きが減少。
その他
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QTEの関係でストーリーモードのムービーがスキップできない。最初は我慢できるが、グラフィックに飽きると鬱陶しいだけである。
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一度見たムービーはギャラリーに追加されるのだが、全て埋めるには最低でも三周はプレイする必要がある。特定の手順を踏まないと見られないものもあるため、全員分のムービーを集めるにはかなりの根気がいる。
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格ゲー用語辞典を搭載してるのにコマンドリストの内容は中途半端。
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ノーマンの傭兵剣技のK+Gで強化される技が把握できるのに対し、全キャラが持っているソウルチャージ対応技は把握できない。
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ジャスト入力でなければ出せない技やジャスト、最速入力対応技も普通の技と同じように表記されている。
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そもそも技自体書かれてない。
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黒縄流剣術の三角飛びからの蹴り、アビスのB+K>Bの前半二段階と最後の一段階など。
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ギャラリーモード及び公式攻略本ではキリク役の保志総一朗氏が総一郎とクレジットされている。
総評
はっきりいってバグの凶悪さは商品失格というレベルに達している一作。いくらゲーム自体の評価が高くても、デバッグなどのバグチェックをしないと宝の持ち腐れになってしまうという事を実証してくれたソフトであろう。
ただしそれを除くと、家庭用のキャリバーシリーズでは傑作と言われる過去作(DC版ソウルキャリバーなど)と同等かそれ以上の出来であり、グラフィックやボリュームなどはトップレベルと言って過言ではない。それだけに一歩間違えば大騒ぎ、最悪回収になるバグの存在が残念でしょうがない。
キャリバーシリーズには致命的なバグがある家庭用版はこれ以外に無く、よりによって傑作クラスのこの作品にバグが付いてしまったのは運が悪いというか…
絶対に購入して損はないが、どれぐらい修正版が出回っているかは不明である。
データさえ無事であればディスクを交換しても通常と変わらずに遊べるため、交換後のユーザーからの反発は特に見られていないが、このような事態に陥ってしまったことが返す返すも悔やまれるところである。
余談
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ナムコ改めバンダイナムコゲームスの関連会社だったバンプレストから2007年に発売された『四八(仮)』でも、メモカ破損バグ騒動を引き起こしている。
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この時のバンプレの対応はやはり「こっそり対応&公式での謝罪無し」というものであった。四八自体はクソゲーであり交換しても誰得&PS2末期ということもあったが、ちゃんとした対応をしてもらいたいものである。
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その後、バンナムは2008年発売の『太鼓の達人DS』や2009年発売の『テイルズ オブ グレイセス』でもバグ・不具合を出してしまっているが、これらは公式に謝罪や修正版の配布などの対応を行っている。企業対応の面は、多少改善の兆しがあるようだ。
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もっとも、太鼓の達人の開発チームに関しては丁寧かつ迅速な対応が心掛けられていることもあってユーザーからの評判は元から高い。
企業対応についての批判
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本作のメモリーカード破損バグについては企業対応の悪さも問題視された。
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そもそも、本作日本版が発売される前に先行でリリースされていた海外版にて存在が確認されていたバグであり、修正せずにそのまま国内で発売してしまったのである。
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見方を変えれば修正する時間が無かったとも取れるが、国内軽視の姿勢と受け取られても仕方ない対応であり、これまで重大なバグを放置したまま出してしまった責任はやはり重いだろう。
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また、そのバグに関するユーザーの苦情に対しナムコ側は「本作専用のメモカ買って下さい」という無責任なメーカーがよく使う対応をしてしまった。
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ネットで大きく取り上げられたこともあってか、最終的には希望者のみに修正ディスクを交換する(言い換えれば交換受付の事実は公式に発表されていないということ)というフォローを行った。何も行わないよりはマシではあるが、企業の対応としては中途半端といわざるを得ない。
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謝罪文はこれ。
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ディスクが修正版かどうかを判断するには、ゲームディスクをPCにセットしてSYSTEM.CNFファイルをメモ帳で開いた時に確認できるバージョンが2.00であれば修正版である。
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当時のKOTYはいわゆる「四八ショック」以前の評価基準だった為「ガッカリゲー」「メーカーの態度が香ばしい」と言った評価基準が認められていたため、本作は「名作なのに致命的バグ」と言う形でKOTYに話題にされるまでに至るのである。
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その後はバグ修正されたBest版も出ることはなかった。
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ちなみに日本版の発売後にベスト版にあたる『Greatest Hits』(北米版)と『Platinum』(欧州版)が発売されている。バグは修正されている可能性は高い。
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なお、修正ディスクの交換は現在でもバンナムに連絡すれば可能であるようで、ネット上では2017年12月でも交換してくれたという報告がある。
アーケード版への逆輸入
本作品はPS2でのみの販売の予定だったのだが、一部の熱心なファンによりアーケードに移植してほしいという署名活動が行われ、結果としてアーケードエディション版が稼動することになった。
元々の出来が良かった上、バグしか大きい問題点が無かったので希望が大きいのは当たり前だった…のだが…。
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アーケード版ではエイミ、リ・ロン、ファンの3キャラがメインキャラに(再)抜擢され、特徴が薄いとされた新キャラのティラとザサラメールも技を一から再構築。その他にも細かい調整が加えられ、ガチ対戦に耐えうる内容になった。
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しかし、東京都内ですら、本当にごく一部のゲームセンターでしか対戦できないほど客はつかなかったのだった。地方は言うまでもなく絶望的。せっかくバランスを良くしたのに、肝心の対戦相手がいない始末となる。
結果的に、ユーザー側の署名も一種の詐欺的行為になったという皮肉が生まれてしまった。基板が非常に安い為、オペレーター受けは悪くなかったのが幸いか。
最終更新:2022年01月28日 18:30