名探偵ホームズ Mからの挑戦状

【めいたんていほーむず えむからのちょうせんじょう】

ジャンル アドベンチャー
対応機種 ファミリーコンピュータ
メディア 2Mbit+64kRAMカートリッジ
発売元 トーワチキ
発売日 1989年5月1日
定価 5,800円
判定 なし
ポイント 迷探偵アホームズ 最後のありがトーワチキ
シャーロック・ホームズシリーズリンク


概要

  • トーワチキのホームズシリーズ第三弾にして最終作。前作同様、普通の推理ADV。悪い意味で有名な、『伯爵令嬢誘拐事件』の路線は放棄されている。
  • シナリオはゲームオリジナル。各章で発生する事件を解決すると次の章に進む。全五章。
    • 著名なバイオリン奏者であるコーネル氏の持つ名器ストラディヴァリを、「M」ことモリアーティ教授*1が狙っているという。護衛を依頼されたホームズは、コーネルが所属する楽団の世界コンサートツアーに同行することになる。だがその矢先、楽団内で殺人事件が発生するのだった…

評価点

  • 前二作よりも難易度が大幅が引き下げられ、サクサクとゲームを進められるようになった。
    • 基本的にコマンド総当りしていけばいいだけの易しい作り。
    • 途中二度ほど、3Dダンジョン探索風モード、暗号解読モードのミニゲーム的なものが挿しこまれる。難易度は低い上に間違えてもノーリスクなので、詰まる心配はまずない。
  • メッセージ表示は何もしないでいると一文字ずつだが、Aボタンを押せば一気に全部表示される。
  • キャラクターがまばたきしたり、痛いところを突かれてギクリとした顔をしたり、美しい女性を見て緩んだ表情をしたりと色々な変化をみせる。
  • パスワードはランダム文字ではなく、カタカナ四文字の作曲家の名前で統一されており分かりやすい。

問題点

  • シナリオのほぼ全て。以下、章ごとに列記。
    + 注:ネタバレ全開です 第一章
  • ずさんな密室トリック。ドアの上に内側から開く窓があり、そこから出たというだけ。
    • 窓に残った血痕からそのことに気付くわけだが、そんなもの血痕がなくても一目瞭然のレベル。その上、血痕を発見したのはホームズではなく単なる守衛
  • 推理をするのはなぜかワトスン。必要な情報が出揃うと、「つまりこういうことだったんだな」と言って解説しだす。ホームズは何もしない。二章以降も同様である。
    • 「本当の名探偵はワトスンで、ホームズは一般ウケ用に雇った三流役者」と言う設定の前年公開映画『迷探偵シャーロック・ホームズ/最後の冒険』でも参考にしたのだろうか?
      • ただし「名探偵ワトソン」説は昔から存在する(詳しくは『空き家の冒険』で検索*2)。余談だが『名探偵コナン』の江戸川コナンと毛利小五郎の関係もこの説を元ネタにした可能性が高い*3
  • 第二章
  • ストラディヴァリの護衛を依頼されてるのに警備も何もしないホームズ。ただ楽団についてきてるだけである。
    • ワトスンに言われてやっと様子を見にいくも、殴られてまんまとストラディヴァリを盗まれてしまう。原作のホームズは格闘戦にも秀でていたのだが。
    • 結局、コーネルが偽物にすりかえていたので問題なかった。その程度のことも思いつかないホームズは素人にすら劣る。
  • この章で出てくるアラン警部はおマヌケな足引っ張りキャラとして描写されているが、実のところホームズもそれと大差ない。

  • 第三章
  • 相変わらず何もしないホームズ。またもストラディヴァリ(今度は本物)が盗まれてから、やっとのことで行動開始。
    • 暗号を解いて3Dダンジョン探索モードに入ることになるが、ここでホームズはあやふやな言動をしてプレイヤーに誤った道を選択させようとする。迷惑。

  • 第四章
  • ずさんなアリバイトリック。殺人現場への通路が一つしかないと思われていたが、よく見たら別のドアがありそこから現場へと密かに行けた、というだけ。言っておくが隠し通路とかそんなものではない、普通のドアである。
  • みたび盗まれるストラディヴァリ…と思ったら、楽団の一員である女性キャラが「盗まれたらいけないと思い」隠していただけ。
    • 裏をかえせば、彼女が犯人なら完全犯罪で終わっていたということである。やはりホームズは何もしていない。

  • 第五章
  • ストラディヴァリの穴に隠されていた手紙から、殺人犯とその動機があっさりと暴露される。
    • 実は件の女キャラはモリアーティの手下だったが、ホームズに惚れたため裏切って手紙を仕込んでいたのだ。つまり四章以降はほぼこの女性のおかげであり、裏切っていなければとっくの昔にストラディヴァリは盗まれ殺人事件の犯人も分からずじまいになるところだった。
  • 犯人の真の標的である人物を護衛するホームズだが、これまたただそばにいるだけ。
    • 危ういところで先の女が、身を挺してその人物を護った。死にゆくその女性はホームズに、モリアーティを捕まえてと言い残し息絶える。
  • 犯人は警察が捕えたが、モリアーティにはあっさり逃げられてしまった。結局、最後の最後までホームズは徹頭徹尾役に立たないまま終わる。
  • 以上、全編が噴飯もののトリックとアホでマヌケなホームズによって構成されている。
    • 事件解決に貢献したと言えるのはワトスン、守衛、コーネル、女、グレグスン警部のみ。ホームズは何の役にも立っていない。
      • しいて言えば、女に惚れられたのが最大の功績か。
  • ちなみに名前の出てくる楽団員の半数以上がモリアーティの協力者。楽団そのものが犯罪者集団の隠れ蓑みたいになっている。…と言うかホームズ到着前にストラディバリを盗まれて終了じゃね?

その他の問題点

  • 各章は短く、難易度が低いとはいえ二、三時間でオールクリアできてしまう。
  • いちいちAボタンを押さないとコマンド画面が出ない。
    • Aボタンを押してコマンド画面を出す→コマンドを選ぶ→メッセージ表示→終了すると画面にはキャラ絵と背景だけが残される→Aボタンを押してコマンド画面を出す、この繰り返し。
    • メッセージ表示が終了したら自動でコマンド画面が出るようにすればいいだけなのに。まったく無駄な操作。
  • グラフィックはドットの打ち込みが単純で、安っぽいシナリオをさらに安っぽくしている。
  • 細かいことを言うと、「ストラディヴァリ」は楽器製作者のアントニオ・ストラディバリの事であって、彼が作った楽器の方は「ストラディヴァリウス」あるいは略して「ストラド」と呼ぶ。まぁ「ストラディバリウス」はファミコンゲームには長すぎる名前だったのかもしれない。逆に「ストラド」は楽器に詳しい人間にしか通用しないし。
    • SFCのゲームでも同じく「ストラディバリ」の名で出ている。こちらは有名なゲームの隠し最強武器とあって、その名で有名になってしまったふしも……。

総評

前二作と違って詰まるような要素はなく、手軽にサクサクとプレイできる。そのためゲームとしての最低限の体をなしてはいるものの、ひどすぎるシナリオは第一作とは違う意味での原作レイプと言うほかない。


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最終更新:2021年04月17日 16:22

*1 原典でもホームズから「犯罪会のナポレオン」と称された人物。

*2 前述の映画の題名もホームズの死を書いた『最後の事件』と、ホームズの復活(実は死んでいなかった)を書いた『空き家の冒険』の合成であろう。

*3 「コナン(工藤新一)はシャーロキアン(シャーロック・ホームズシリーズの熱狂的なファン)」と言う設定が存在する。そもそも「コナン」という偽名自体がホームズの作者であるコナン・ドイルが元ネタである。