ムシキングバトル 合虫ガッツ!!

【むしきんぐばとる がっちゅうがっつ】

ジャンル トレーディングカードアーケードゲーム
対応機種 アーケード(RINGWIDE)
発売元 セガ
開発元 セガ
小学館
稼働開始日 2010年4月26日
1プレイ料金 100円
判定 バカゲー
シリーズファンから不評
ポイント かのムシキングの後継機
小学館にとっては大失敗
実際はバカな要素が多い
甲虫王者ムシキングシリーズリンク


概要

セガと小学館が共同出資で開発した、かつて国民的キッズカードゲーム(子供向けTCAG)だった『甲虫王者ムシキング』(以下前作)の後継機。

稼働終了からわずか3カ月で稼働、これまでのシステムを大幅に変更し世界観をリセット、まさかの要だったじゃんけんシステムの廃止などの試みがあった。
稼動当時はもはや残っていたかどうかも怪しいムシキングファンから賛否両論だったのだが……。


特徴

  • 上記のとおり前作から大幅なシステム変更がなされている。また前作にはなかったステージの有利不利などといったシステムも搭載されている。
  • 前作には「ダゲキ・ハサミ・ナゲ」という属性があったが、本作の属性はそれとは全く異なる概念となっている。これについては後述で解説する。
  • 旧カードでは『同じ虫だが出ていた時期の問題で専用必殺わざが違う』という大型甲虫*1カードがあったが、本作では全て一つに統一されており、同一カード扱いである。
  • 本作専用のキャラクターも登場している。各キャラクターともそれぞれ愛用属性がいるという設定でありゲーム中でもその属性を使っている。
    • このキャラクターの中で事実上の主人公*2とされている『一本角 甲』以外は全て敵キャラとして登場する。
      • 各キャラとも詳細な設定があるのだが、愛用属性以外の設定はそこまで活かされておらず、キャラ要素は別冊コロコロで連載していた漫画の方に使われた。
      • またキャラクターのグラフィックは前作の3Dモデリングでの表示ではなく、一枚絵となっている。

ゲームシステム

  • ムシキングの1vs1(対戦では2vs2)から3匹を組み合わせる3vs3システムに変更されている。プレイは全て下画面で操作する。
  • まずじゃんけんは廃止され、虫の総合スペックによるパワー差での決め方に変更された。
    • この点に関しては前作よりも運頼みとは言えなくなっており、改良ともいえる。逆に言えば、以前よりレアリティが重視されるようになったとも言える。
  • 先攻側は攻撃する虫をタッチして設定する。対して後攻側は攻撃されると予想した虫に対し、攻撃を無効化できる『シールドトラップ』なるものを設置する。
    • このシールドトラップを張った虫を攻撃した場合、シールドに虫が跳ね飛ばされ、攻撃側は全くダメージを与えられないために1ターンを損してしまう。
    • 一方シールドを張った虫を回避できた場合はシールドは無効化され攻撃が通る。
  • 攻撃が通った場合、画面中央付近に『パワースロットル』なるものが表示される。ここからこのルーレットを止めると、ガッツ球なるものが画面いっぱいに表示。これをタッチしていき一定数集めることによって合体することができる。
    • 逆にこれを妨害する紫色の黒ガッツ球も同時に吹き飛ぶ。間違ってタッチしてしまうこともこのゲームの性質上多いので、非常に厄介。
  • なお相手から攻撃される際は、ダメージ球というものが表示される。これをタッチすると相手の攻撃のダメージが軽減できる。

合虫

  • ガッツ球を一定数集めると画面に巨大化したガッツ球が表示される。これをタッチして回すことによりこのゲーム最大の魅力、3匹の虫を合体させる合虫が出来る。
    • なおこの画面が表示される際に、『超進化カード』をスキャンすると合虫を超えた超進化をする。その姿はもはや虫かどうかを突き抜け、生物かどうかすら怪しい物になり「出てくるゲーム間違えてんじゃねーか!?」と言いたくなる。
  • 合体した3匹の虫の姿はまさにカオス。子供が考えたような「カブトムシとクワガタムシの合体形」やら、胴体と顔部分のバランスが明らかにおかしい物やら様々なバリエーションがあり、無駄に豊か。
    • しかも合体後の昆虫名も無駄に多い。しかも外見がおかしい状態でも、名前だけは変にかっこいいなんてことはよくある。
  • この合虫の技は戦場が火山になったり、上空からフンを落としたりするなどカオスさを発揮。しかも無駄に迫力のみはある。

属性

  • 前述の通り過去のじゃんけんにちなんだ属性は全て廃止されている。そのかわりに導入された属性について解説する。
  • オリジン
    • オリジンはこのゲームでは特に特徴のない、つまりは実際に存在する虫が属する属性。主人公の愛用属性であり、全て高レアリティのみの収録である。
    • 合虫後のデザインは本作では一番正気を保っているデザインといっても過言ではない。
      • もっとも、比較対象が無茶苦茶なだけでこちらも十分におかしい。また、学年誌で掲載されたコミカライズ版『甲虫王者ムシキング 森の救世主』の6巻に登場する中での「デスビートル」と酷似した姿になっている。
      • コロコロイチバン!では「オキテ破りの虫」とあるが、他と比べたらまるっきりおきて破りではない。「唯一オキテを守っている」と言っても過言ではない。
    • 過去のムシキング用の虫は全てこの属性での扱いとなる。実際にこの属性で低レアリティが存在しないのは旧ムシキングカードがその役割を担っているからと推測される。
  • メカ
    • メカは家電製品や特殊車両と虫が組み合わさったようなデザインをしている虫の属性。カードイラストも虫が料理を作ってるイラストだったりする。
    • 合虫後の姿はまさかの専用車両や戦車。虫とはなんだったのだろう。
  • メタル
    • メタルは金属や鋼鉄のデザインをした虫の属性。虫とは言い難く「上記のメカと統合して良かったんじゃないか?」と思いたくなるが、デザインや名前だけはかなり優秀なものとなっている。
    • 合虫後の姿はモビルスーツのような姿。
  • クリスタル
    • クリスタルは宝石のような姿をしている虫の属性。上記の属性がぶっ飛んでいるのと比べると、実際に置物としてはありそうなデザインなのでこれでもマシに見えてしまう。
      • 合虫後は何故かトンボの姿になったりする。一応昆虫ではあるだけまともに思えてしまう。
  • ヨロイ
    • ヨロイは古来の日本兵や武士をイメージした姿をした虫の属性。重武装のイメージなのか、アクティオンやヘルクレスなどのカブトムシが比較的多い。合虫後は人の姿を模した兵士で、面影は腕と足が6本という点くらい。
  • バイオ
    • バイオは骨のみの姿や、他の動植物が合成したような姿の虫の属性。合虫後は恐竜になったり、明らかにおかしい羽根が生えたりする。一応、節足動物らしさはあるため、オリジンの次にまともと言う意見もある。
      • ちなみにこのバイオ属性、設定を見るに『実験目的や環境の変化で登場したキメラ』のようだが、実験目的の虫改造は前作のアダーがストーリー中にしていたりする。外見上の変化は目が赤く光るようになるだけで、わざも同じだが。

評価点

  • 前作のカードを使用可能(一部)。また本作に登場しなかった高レアリティの使えないカードもパワーアップ用として使える。ただしこの互換には問題が無いわけではない。
    • 前作の大会の優勝時にもらえた『グレイテストプレイヤー』『グレイテストチャンピオン』カードも使えるようになっている。ただし、画面上に称号が出るのみで特に効果はない。
      • 他にはキャンペーンで当時のムシキングカードのデザインを復刻した物を出したり、前作ファンにはなるべく配慮していたようである。
  • 本作は3体の虫を合体させるのだが、失敗するとキモイ姿に。果てはウンコ(通称ウン虫)になる始末*3。でも意外と好評。
    • ちなみに成功した場合は中々かっこいい。またバリエーションも多いので組み合わせるのが楽しくなる。
  • 前作はブラウン管の画質だったが今作は高性能機と言える高性能の液晶ディスプレイと性能でグラフィック、画質が美麗になった。
    • またオリジンカードの虫は現実のものと比べ、前作以上に現実に近いグラフィックになっている。
  • タランドゥスツヤクワガタが一般に用いられる正式和名「タランドゥスオオツヤクワガタ」へと名前が改められた。
    • 細かな点ではあるものの、は本作にも登場する「ブルマイスターツヤクワガタ」などのオドントラビス属のツヤクワガタとは全く異なる種のメソトプス属に該当するクワガタムシであり、ムシキングの影響でこの2属を混同してしまうユーザーも見受けられた。流石に前作のタッグマッチでは当然別属と扱われていたが。
      • 次作『新甲虫王者ムシキング』では「タランドゥスツヤクワガタ」表記に戻っており、新規追加された亜種の「レギウスオオツヤクワガタ」も「レギウスツヤクワガタ」表記になってしまっている。

賛否両論点

  • 外国産の虫しか登場しない。
    • 日本産の虫またはそれをモチーフにした虫は誇張抜きに''一切登場しない。同じく北アメリカやオーストラリアの虫も登場しない*4
      • コロコロイチバン!では「世界中の有名甲虫」とあるが、誇大広告気味。
    • 今作に登場するのは前作における大型甲虫だが、「グランディスオオクワガタ」「マンディブラリスフタマタクワガタ」「ヘルクレスリッキーブルー」「マルスゾウカブト」「ヘルクレスエクアトリアヌス」といった一部の大型甲虫*5が登場しないため、好きな虫が登場しない際にはテンションを下げてしまったことも。パワーアップシステム(後述)では使用できるが。
    • 一応、台湾でのみ稼働した第4弾においては日本の虫として「ムシキング」と「コクワガタ」が、オーストラリアの虫として「ニジイロクワガタ」が登場している。また日本にもオーストラリアにも北アメリカにもいないものの、「ネプチューンオオカブト」も台湾版でのみ登場した。
  • ナイフで相手を滅多刺しにしたりビームやミサイルを発射する虫などのバカゲーっぷり。おそらくまともな虫はこのゲームでは存在しない。カード次第では肉弾戦を全く行わない。
    • 車や包丁のデザインをした虫には「キモイ」という不評の声もあるなど、従来のムシキングファンには受け入れがたいデザインも多かった。
  • 折角変更されたルールも、じゃんけん程ではないが単純。基本的に対人戦は前作と然程変わらない運頼みである。
    • とはいえ、前作の単純かつ深い読み合いについては進化している部分も無い訳ではないのだが。

問題点

前作との互換性

  • 前作のカードはかなり弱体化されてしまった。前作のカードのみで強い虫を作るのはまず不可能に近く、大量に旧作のムシカードを使用したパワーアップシステムに頼るほかない。
    • 前作のカードは全て前述したオリジン属性と扱われるが、その殆どが☆1となる。アダーコレクションやアダー完結編のカードは☆2。
    • なお、レアリティの異なるカードは同じ外見でも別の虫と扱われる。その為、前作のカードと本作のオリジン属性のカードを使えば同じ甲虫を3体並ばせることも可能。
    • パワーアップシステムでは、本作に登場しない甲虫を含めた強さ160以上のカードが全て使用可能。アダー完結編になってから登場した「ニジイロクワガタ」等も含む。
    • ウン虫にはなれるが、一枚でも合虫ガッツのオリジン属性のカードを使わないと☆1つに等しい性能でしかない。また本作のカードを使用しても、ステージや合体の仕方が悪いと普通に実戦に耐えられない性能になることもある。
  • 単純に前作から引き続いて出ている虫が少なく、互換以前にそもそもカードを揃えにくい。
    • 続投したカードはその全てが前作で高レアリティであったものであり、純粋に手に入りにくい。
  • 前作とカードのスキャンの仕方が違うことが原因で、旧ムシキングカードがややスキャンしにくい。
    • 前作は縦にスキャンする形式だったが、本作は『ガンバライド』や『ダイスオー』と同じ形式のスキャン体制をとっているからである。そのためスキャン認識がされないことも割とよくある。
  • 前作との世界観が繋がっていない点や、前作の小ネタがない点が不人気に更に拍車をかけた。
    • 前作の舞台が「過去の日本の森」、そして本作の舞台は「近未来の世界」なので無理矢理繋げる解釈は可能かもしれない。……かえって前作ファンの心情を逆撫でするだけかもしれないが。
    • オリジンのカード登場の時には前作の肩書が流用されている。
      • 『南米の巨人』のネームのアクティオンゾウカブトや『世界最大のノコギリ』のネームのギラファノコギリクワガタなど。
    • またほかの一部の属性の虫の肩書には前作のカードナンバーが記されている虫もいる(例えばCAUCASUS TRの肩書は『MB-004-TR』)。

単体での問題

  • タッチパネルで指が汚れやすい。
    • 低年齢向けのゲームであると共に、そもそもゲーセンに設置されている為に手の汚れが目立ちやすい。
  • 稼働当初のバージョンでは対戦ができなかった。途中から店内対戦に対応した。

総評

出来そのものは悪くない。むしろ前作の出来より良くなっているかもしれない。
……ただ「無暗に大ヒット作品の後継作を作っても成功はしない」という当たり前の事実が証明されたというだけであった。
前作からの大幅なリニューアルを目指したのに、完全な切捨てができず中途半端に前作の要素が残ってしまった為に、旧ムシキングファン、子供、新規プレイヤーのいずれも取り逃し、『百獣大戦アニマルカイザー』『ポケモンバトリオ』などの競合タイトルにも対抗できず、結局復権に繋がることはなかった。
バカゲーとしては非常に見所が多いのだが、「甲虫王者ムシキング」の名前は本作が背負うには重すぎたと言わざるを得ない。そもそも「甲虫王者ムシキング」でやる意味がないと言っても過言ではないため、「甲虫王者ムシキング」の要素を一切残さない方が良かっただろう。

結局2011年9月にて稼動終了が決定し、今では見かける機会はないだろう。


余談

  • 設置数が少ない。前作とは違い、本作で対戦するには筐体が2台必要なため、そもそも対戦すらできない場所も多かった。
    • 当時の公式サイトの様子を見る限り、元々は一部のゲームセンターに設置をして、人気の出たところで一気に台の数を増やす予定だったらしい。しかし結局は人気の出る兆しすら見せずに稼働終了してしまった。
  • アニメ版「こち亀」の「アニメで儲けろ!」には今作に匹敵するほど原作をめちゃくちゃに改変した作中作「メヌエット」が登場している。
    • 作中でのネタが後に現実のものになる事でしばしば話題になるが、これもある意味その中の1つと言えるかもしれない。
      • こちらも「メヌエットでやる意味がない」「原作通りにやれ」「完全オリジナルでやれ」といった苦情のはがきが来ていた。
  • 当時の月刊コロコロコミックではコロコロの出版元である小学館が開発に関与していたためか、本作専用の特集や付録カードなどもコロコロに同梱していたようだ。小学館にとってはかなりのビックプロジェクトだったのであろう。
    • 小学館が共同出資していた為か別冊コロコロで本作の漫画が連載していたが、すぐに連載終了してしまって単行本にもなっていない。内容についてはお察しください。
  • 稼働後も、ムシキング関連の掲示板やサイトは更新が伸びなかった(一部には本作のアンチサイト状態になっているところもあった)。
  • セガらしいというか何というか、不人気になった後はムシキングのマシン本体(家庭用にしてはあるが)を1名にプレゼントという誰得企画を展開。
    • プレゼントされたマシン筐体のデータは最盛期から落ちぶれていく頃の2007年の物。家でもっと手軽にムシキングがしたいなら『甲虫王者ムシキング スーパーコレクション』があるのだが……一体セガはどこに需要があると思っていたのだろうか*6
  • 本作のカードは稼働開始直後であっても中古屋で買い取られないことが多かった。レアカードであっても良くて50円になるかどうかで、稼働終了したはずの前作カードのほうがまだ高額で買い取られるという惨状であった。
    • 転売しようにも1枚100円なので黒字にするのは不可能だった。 今だったら転売屋を騙して大量購入させるためにデマを流す人が出てきそうな話である
      • 前作カードは「アダー完結編」のカードを除き*7前述のプレゼントマシンやスーパーコレクションで使えるし、カードを集めるコレクターもいるが……本作のカードにはそんなものは一切存在しない*8。本作が稼働終了した現在は使う方法が一切存在せず、文字通りの紙屑と化してしまっている。
  • 公式Twitterも存在しているが、今は更新されず事実上の放置状態。公式サイトも放置されている。
  • 前作のブームの頃にタイトーから発売され、セガに特許侵害で訴えられたキッズカードゲーム『ダイノキングバトル』*9に名前が若干似ている。意識していたのだろうか?
  • セガのキッズカードゲームとしては本作と同時期に稼働開始した女児向けカードゲーム『リルぷりっ ゆびぷるひめチェン!』があったが、こちらも人気を得ることができず、本作とほぼ同時に稼働終了した。後の2014年に稼働した『ヒーローバンクアーケード』も人気を得られず一年の短命に終わってしまう。
  • そして2015年7月、長い沈黙を破ってシリーズ最新作『新甲虫王者ムシキング』が稼動開始した。
    • 従来作品からまたしても世界観を一新し、ギャグ色が強くコミカルな内容になっている。
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  • 甲虫王者ムシキング

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最終更新:2023年12月27日 14:38

*1 フォレストグリーンからは中型甲虫、アダー完結編では小型甲虫も変更された。

*2 別冊コロコロで連載された漫画でも主人公になっている。

*3 海外版では流石にまずかったのか、「カメ虫」になる。ただし、見た目はウン虫の脚部以外をカメのような形に変えただけ。

*4 それらの虫は何れも前作でレアリティは高くはなかった。特に北アメリカは「グラントシロカブト」「ティティウスシロカブト」の2種だけだった。一応、「パラワンオオヒラタクワガタ」は「ヒラタクワガタ」と同一種。

*5 それらの甲虫は前作のカードも使えない。

*6 アーケードに比べると画質も悪くて処理落ちも多いが。

*7 ライセンスカードの「むしつかいのあかし」に限りアダー完結編のカードも使用可能。

*8 オリジンのカードでさえ使えない。

*9 同作とセガ製の『古代王者 恐竜キング』がAMショーにおいて出展された際、セガブースでは「類似品にご注意下さい(意訳)」の警告文が張られていた。その後、ムシキングブームがさめない為に市場投入を渋っていた恐竜キングの稼動が予定よりも早められ、訴訟に至った。