本ページではファミコンソフト、『イース』(判定:なし)および『イースII』(判定:良作)について記述する。



イース

【いーす】

ジャンル アクション
対応機種 ファミリーコンピュータ
メディア 2MbitROMカートリッジ
発売元 ビクターエンタテインメント
開発元 アドバンスコミュニケーション
発売日 1988年8月26日
定価 6,200円(税別)
セーブファイル 1つ
判定 なし
ポイント 今、RPGは優しさの時代へ。
難易度は優しくない
半キャラずらし
くちたるとびら
イースシリーズ

概要(FC版I)

  • 名作『イース』がFCでも登場した。まずはタイトル画面が高品質な画像と格調高い音楽とともに迎えてくれる。
  • 冒険家アドルは孤島エステリアを回っていくうちに物語に巻き込まれていく事になる。

特徴(FC版I)

  • ゲーム性
    • 半キャラずらし
      • 敵キャラに正面からぶつかると大きなダメージを受けるが、半キャラずらすことで無傷で楽に倒せる面白いゲーム性を確立。FCイースの個性の1つとも言える。
      • ボスは半キャラではなく普通に触れていればダメージを与えていけるが、ボスからも激しい猛攻が飛んでくるのでバランスは取れている。
  • セーブ
    • セーブファイルは1つのみ。ボス戦を除きいつでもどこでも無制限にセーブが出来る。それでいてゲームバランスは調整が取れている。
    • HPは255、経験値は65535が最大。中途半端な数に見えるが16進数*1で容量の節約のためだと思われる。

評価点(FC版I)

  • グラフィックの描き込み
    • 街や村も「今、RPGは優しさの時代へ。」というフレーズどおり、人々は優しい人たちばかりでそれぞれ一枚絵と専用BGMまで用意されており、温かい雰囲気が伝わって来る。
    • 登場人物も力強い友、ヒロインもいて単なるアクションゲームでは終わらない。
    • 本作は、草原や森、神殿に廃坑などあらゆる舞台が用意。高品質なドット絵で作り込まれているので臨場感は素晴らしい。後のシリーズでも再訪する事になる。
    • アイコン
      • 一般にアイテムや装備品などは名前だけ表示される仕様のものが多いが本作では一つ一つアイコンが用意されている。
    • ボス戦闘
      • 大型で多彩なボスが登場。曲も3曲用意されている
  • 音楽
    • スピーディーさよりも深みに重点を置いているところに好みがあるかも知れないが、例えばフィールド曲は広大さ、平和な町や村、神殿内部では厳かさ、凶悪なボス戦の迫力など良質な曲が冒険している実感を引き立ててくれる。

賛否両論点(FC版I)

  • 難易度が高い
    • ボスは強いのが多い、そして終盤になると経験値カンストが前提につきレベルでごり押しする事も出来ない。
    • 「今、RPGは優しさの時代へ。」とあるが難易度から優しさは伝わっては来ない。
  • 雑魚敵
    • 説明書には突進など色々な特性が書いてあるが実際は移動してくるだけで似たり寄ったり、これは次回作でも相変わらずである。
    • 建物内部は狭い通路も多く敵も密集しやすい。やり過ごすのは非常に難しい。という感じで難易度を上げていたりはする。
      • ただし後のSFC版のYS4では高速移動、軌道弾、擬態など個性を持たせている。
  • 落下はしない
    • 池や崖下などに落ちる事は無い。これを快適と取るか不自然と取るかはプレーヤー次第。
  • 暗闇
    • 廃坑内部ではアドルの円周囲しか見えず視界が悪い状況で進んで行かなければならないので難易度が高い。次回作ではなりを潜め、SFC版YS4でまた再登場する。

問題点(FC版I)

  • カメラワーク
    • かなり前のめりでないとスクロールしないので視界が悪いと言える。出会い頭に敵にやられる事もザラ。
  • 街や村へのアクセス
    • まずは神殿があるが、階層も多くボスが2体いるなど長丁場なのだが回復ポイントなどはなく、態勢を整えるには村まで引き返さなくてはならない。
    • ウイングというアイテムもあるが2000Gもするので気軽に使えない。
    • 街と村は弱い敵しか出ない草原を挟んで近いのでゲームバランス的には実質1つと大差ない。ただし街と村ではそれぞれ異なる音楽が用意されておりどちらも好評。
    • 街や村で立ち止まっているとHPが回復して行くのは良いがその回復速度が遅くていたずらに時間がかかる。
  • 歩行グラ
    • 立ち止まっている際にもアニメーションは止まらない。プログラムを手抜きしたと言われている。
  • BGMの扱い
    • 別な画面へ移動したりメニューを開く度に再生位置がリセットされる。ただし宝箱を開けた際などはBGMが続きから流れるようになっている。
  • ボスの名前は表示されない。
  • フォントは平仮名カタカナのみ
    • ファミコン時代なら仕方のないところである…と言いたいところだが、後述する廃坑では多くのプレーヤーに迷惑をかけた。
  • 廃坑の謎解き
    + 長いので閉じる
    • 実際に廃坑は危険な場所なので封印してあるのは当然としても、あまりにもやり過ぎである。
    • その入口の少し前のシナリオで、泉のフレアから「これから先もっと過酷な試練があなたを待っているでしょう」と言われたが、プレーヤーにとってはまさにそれ。
    • 廃坑の入り口が2つあり、1つは、
      なにか つよいちからで おしもどされる
      
      勿論、強行突破は不可能である。もう片方の入り口は普通に入れて、暗い内部を進んで行くと次のようなものが。
    + 原文
    かべに せいなるもじが きざんである
    くちたる とびら くぐり
    まもりのて の しめす ひとつめの とびら ぬけ
    こうげきのて の しめす ふたつめの とびら ぬけよ
    
    • これが与えられた唯一の情報である。
    + 海外版
    There are words carved in the wall.(壁に文字が刻んである。)
    Enter the decayed gate,(朽ちた門に入り、)
    then the protecting hand's gate,(その際に守りの手の門を、)
    and finally the attacking hand's gate.(そして最後に攻撃の手の門を。)
    
  • こちらもやる事は同じだが、decayedが朽ちたるという意味であり、口たるという誤解だけはないと思われる。
  • + 漢字に直す
    壁に聖なる文字が刻んである
    朽ちたる扉くぐり
    守りの手の示す一つ目の扉抜け
    攻撃の手の示す二つ目の扉抜けよ
    
    + 解法1とびら
    • まず洞窟内を視界の悪い中、探し回ったプレーヤーもいたがそこに扉は無い。とびらというワードから「序盤の町まで引き返す」事に気が付かなくてはならない。
      • 序盤の街の北側に幾つか並んでいる扉が該当するのだが、そもそも扉というものは各地の至るところにあるので、このヒントから場所を絞り込むのは難しい。
      • 廃坑とミネアの街についてのヒントは一切出てこない。海外版なら廃坑(Abandoned Mine)のMineとミネアの街(Minea Town)のMineにかけたかどうかで連想できるかも知れない。
    + 解法2くちたる
    • 次にくちたる朽ちたるという意味だが、平仮名フォントも相まって分かり辛い。口たるだから口の扉と解釈しても何の助けにもならない。
      • その朽ちたるドアも、単にドアノブが取れているだけなのでこちらもまた分かり辛い。こんな事をするくらいならせめてドアを色違いにして朽ちたるを表現して欲しかった。
    + 解法3守りと攻撃
    • 残りのドアも分かり辛い。全く同じ外見の扉が並び見分けが付かない。せめて簡易な剣や盾のマークでも付いていれば全然違った。
      • 「守りの手」は正面を向いたアドルの左手の盾の事でプレーヤーからみて画面右へ隣接した扉、「攻撃の手」はアドルの右手の剣のことでプレーヤーにとって左の扉である。正解の扉に入るとある場所に出る。
    + ある場所
    いずこからともなく 声が聞こえて来る
    勇者よ わしは 大きな 岩すら 砂に 変えるほどの 間 待っておった
    封印 されし 廃坑の 中に お前が 必要とする ものは あるはずじゃ
    わしには 最早 魔物を 退けるほどの力は ない
    封印を 解くのが 精一杯でな
    お主が 廃坑に 着く頃には 封印は 解けておろう
    
    • フォントは左寄せ中央で使い分けられているが割愛した代わりに漢字に直した。
    + 海外版も意味は殆ど同じ
    Brave man from afar.I have been waiting for you.(勇敢な男よ。私は君を待っていた。)
    What you seek can be found in the sealed mine. I don't(封印された炭鉱内部で石板を見つけてくれると思っていた。)
    have the power to fight the demons any more. I will(私にはもう悪魔と戦う力はない。)
    unseal the mine. When you arrive it'll be open.(炭鉱の封印を解除しよう。君がそこに着く頃にはオープンしているはずだ。)
    
    • 以上。この封印にまつわる人物は長年待っていたという割に名前も姿も見せず一方的に手短に喋って終わってしまうため、誰だったのかは結局のところ分からずじまい。ここから本作を進めても封印の人は会話にも挙がらず、更に後の作品では無かった事にまでされてしまっている。
    • 以上が扉くぐりである。やり方さえ知っていれば5分とかからずに簡単ではある。廃坑の文字、街中での扉くぐり‥‥誰が何故ここまで手の込んだ事をしたのかストーリー的にも意味不明で釈然としない。まあ、その程度で済めば良い方で、人によっては大きな岩すら砂に変えるほど時間をかけても分からないだろう。魔物を退けるほどの力はないとあるが多くのプレーヤーは退けられてしまった。
      • 後にSFCでもイースシリーズが発売され『I』と『II』の街や村を再訪出来るが、くちたるとびらは無かった事にされている。
    • 凶悪なボスならまだしも、こんな事で断念したプレーヤーの心境は無念というもの*2。人によっては本作で一番の問題点になってしまった事だろう。
  • エンディング
    + ネタバレ注意!
  • 原作ではラスボスを倒した後に、そのまま塔の最上階で本を読みエンディングが始まる。
    しかし本作ではメガネがないため老婆ジェバの家の前にワープして、本を読んでもらってからエンディング。
    • スタッフロールでは、眩い光がアドルを祝福するかのように包んで新しい旅が始まるという内容は原作通り。
      • ジェバに本を読んでもらうのが悪いわけではなく、村に移動したはずなのにスタッフロールでは塔の上にいたような扱いのままなので、話の流れがおかしくなってしまっている。
  • なお、サルモンの神殿、女神、溶岩、クレリア、2人の女神と6人の神官というワードは、次回作以降も重要になってくる。

総評(FC版I)

  • 世界観、音楽、グラフィックいずれも最高峰のレベルで更には、半キャラずらしのゲーム性まで持たせて、イースをファミコンで具現化には成功した。しかしながら、優しくないゲームバランス、意味不明の謎解きなどのゲーム単体としての問題点が大きく足を引っ張ってしまった。

イースII

【いーすつー】

ジャンル アクション
対応機種 ファミリーコンピュータ
メディア 3MbitROMカートリッジ
発売元 ビクターエンタテインメント
開発元 アドバンスコミュニケーション
発売日 1990年5月25日
定価 7,500円(税別)
セーブファイル 2つ
判定 良作
ポイント アニメーション
魔法システム
最強の門番

概要(FC版II)

  • 『イースI』の続編である『イースII』がファミコンでも登場。前作から色々改善、進化を遂げている。

特徴(FC版II)

  • ストーリー
    • 前作で6つの書物を集めたアドルは意識を失ったところをリリアに助けられるところから物語は始まる。舞台は前作とはまったくもって異なるところで洞窟、雪原、溶岩地帯、神殿などが立体的に複雑に入り組んで広大なところである。
  • ゲーム性
    • 今作でも半キャラずらしは健在。更に魔法が使えるようになり新しいゲーム性が加わった。
      • 攻撃魔法はファイアーのみでボス戦では必須。MPの補充は利かないが燃費は良いので余程の無駄撃ちをしない限りは尽きる事はない。なお終盤のボスには無効化されるので原点回帰して体当たりで戦うのみ。
  • セーブ
    • セーブファイルは2つに増加。前作同様いつでもどこでもセーブロードは自由。とはいえボス戦の際はこの限りではない。

評価点(FC版II)

  • 演出
    • 3分以上にわたるオープニング。リリアが振り返る、瞬き、口パクなどのアニメーションは話題を呼んだ。SFCでさえ一枚絵の静止画が使われている事を考えるといかにこれが飛びぬけているかが分かるだろう。
  • グラフィック
    • 今作でも、人々にも一枚絵が用意、アイテム、装備には高品質なアイコンも健在。
    • 廃墟、炭鉱、雪原、溶岩、神殿など、色々な舞台が精緻に描き込まれている。
      • 雑魚敵もアドルに近付いて来るだけなのは相変わらずだが、モンスターに変身して話した際は異なる台詞が用意されており個性が強くなっている。
  • 立体感の表現
    • 前作では広大だと言ったが殆どが平坦なものだった。本作では立体感の表現に磨きがかかっている。なお、アドルがジャンプするわけでもなく溶岩や水路などに落ちる事は無いのも相変わらずなのでゲーム性に高さと言う概念があるわけではないが、雪原や神殿や水路などの表現は見事なもので、階段を組み合わせて複雑な構成の場所を冒険している実感はある。
  • BGMの扱い
    • 以前は、別な画面へ移動したりメニューを開く度に再生位置がリセットされたが本作では解消されている。
    • 前作ではスローテンポの曲が多くアクションというよりもRPG向きとしたものだが、本作では激しい曲が多くアクションという実感がある。
  • 町や村へのアクセス
    • 前作では街と村が近くにあり2つある有難味が薄かったが、本作では村と街が離れて点在するので遠くへ旅をした実感がある。ワープで色々な場所へ飛べて、サルモンの神殿の内部にも回復する場所がありアクセスし易い。
    • ウイングが100Gとお求めやすくなったのもあり広大さを表現しつつ不便さを感じる事も無い。
  • ラスボス戦
    • 詳細は伏せるが、背景の色が派手に変化する。これにより動きを持たせ、臨場感がある。

賛否両論点(FC版II)

  • 難易度は高い
    • 特に終盤はレベルをカンストさせた状態で挑むのが前提で、レベル上げでごり押しは出来ない。
    • ラスボスは、レベルが最大かつ装備なども最高の物を揃えて万全な態勢から挑んで辛うじて勝てるかどうかというもの。カンストでない場合は与えるダメージが僅かで被弾ダメージも尋常ではなく、最高レベル未満で倒せたという報告は無い。
  • 落下はしない
  • サルモンの神殿にいる門番
    • 変身魔法で中に入れてもらうのだが、戦いを挑んでも最高レベルと装備品でも絶対に勝てない、そのため最強の門番コンビと言われる。倒せなくて困る事は無いが気になる人は気になる。

問題点(FC版II)

  • カメラワーク
    • かなり前進しないと画面がスクロールしない。切り替わり後、出会い頭に敵にやられる事もザラ。
  • フォントは平仮名カタカナのみ
    • ファミコン時代なら仕方のないところである。
  • レベル上げ作業
    • 最初のレベルアップからして100EXP必要。最初に倒せる敵の経験値が2~3なので最低でも34体以上は倒す計算になる。
    • 今作でも雑魚敵は相変わらず、マニュアルの説明文にあった突進などは仕掛けて来ず、近寄ってくるだけで姿と数値は違えど似たり寄ったり…なのも相まって飽きやすい。
    • レベルが低いうちはボスに攻撃は通らない。また炎魔法で道中の氷を溶かす場所もあるがレベルが足りないと何も起こらない。こうした箇所はプレイヤーの技量で覆せるものではなく、地道にレベルを上げるしかない。
    • 戦っているというよりも作業感の方が強い。ただ、終盤では高性能な魔法で雑魚敵を倒しまくるのは楽しい。
  • グラフのメモリは黄色だけ。満タンで緑色、瀕死で点滅とかはしない。
  • HP回復が遅い
    • 村などでは待っているだけで回復できるのは良いが、時間がかかる。
  • 雪原に分かりにくいアイテムがある。無くてもゲームの進行に支障がなく、作中でも全くノーヒントなので存在自体を知らないプレーヤーも多い。

総評(FC版II)

  • 前作から色々と大きく進化を遂げた作品。ファミコンゲームの中では高い人気を誇る作品と言える。

余談

  • イース『I』と『II』はあらゆる機種で展開されており後々リメイク作品も登場している。詳細は『イースI/II』のページを参照。
  • 本作の成功をうけ、1年以上後に『イースIII』も引き続き登場。
    • この『III』、任天堂機においてはSFC版の後にFC版が発売されるという、珍しい作品となっている。両者とも『I』と『II』の流れを汲んでおりストーリーは大差ないが、横スクロールアクションの仕様などで好みが大きく分かれるかも知れない。
    • 更にSFC版『IV』が発売されるが、ストーリーの時系列では『II』と『III』の間に位置するもので本作の直接の続編と言える作品である。

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最終更新:2023年07月13日 21:28

*1 ゲームに限らずコンピューターではこれが多用。詳細は割愛するがFFは255、FFFFは65535の事

*2 当時はインターネットなどもなく攻略法を検索する事も出来ない時代だった