大逆転裁判2 -成歩堂龍ノ介の覺悟-

【だいぎゃくてんさいばんつー なるほどうりゅうのすけのかくご】

ジャンル 大法廷バトル
対応機種 ニンテンドー3DS
発売・開発元 カプコン
発売日 2017年8月3日
定価 5,800円
DL版:5,546円
レーティング CERO:B(12才以上対象)
廉価版 Best Price!:2018年10月18日/2,990円
判定 良作
ポイント 前作の完結編
伏線を余すことなく全て回収
前作とのセットプレイ推奨
逆転裁判シリーズ


概要

大逆転裁判 -成歩堂龍ノ介の冒險-』の続編にして完結編。基本的なシステムは前作とほぼ同じなため、そちらの記事を参照。
前作は続編を前提としたかのような消化不良気味のシナリオが不評を買ってしまい、続編である本作の発売が発表されひとまず安堵する声もあったものの、あまり期待していないという意見が大半であった。しかし発売後、そういった前評判を見事に『大逆転』させた。


評価点

ストーリー

  • 前作で残された伏線を見事に回収し完結させたシナリオは非常に評価が高い。『すべての謎が今。解き明かされる』のキャッチコピーは伊達じゃない。
  • 前作前半で起こったある重大な出来事が本作中盤で覆され、そこから物語は急展開を迎える。
  • そして最終話で主人公に立ちはだかる"権力"および明かされる"闇"は歴代でもトップクラス。そんなあまりにも強大な力を前に龍ノ介の示す"覺悟"とは…
  • 前作と同じ全五話構成だが今作ではチュートリアルの第一話の事件を除いてはすべての裁判が2日以上にわたって行われるため前作のようなボリューム不足は感じられない。
    • なお、事件のスケールの大きさからか4話は2日目の探偵パートで終了、最終話はその直後の法廷パートからスタートという前後編構成になっている。

キャラクター

  • 前作でプレイヤーからの評価が低かったキャラクターにフォローが入った。
    • ヒロインの御琴羽寿沙都は、どちらかというと龍ノ介より亜双義やホームズを信頼しているなどの要素からプレイヤーからの心証は良くなかったが、本作ではホームズの奇行言動に対する呆れた反応やツッコミが増え「多少の甘さはファン故」程度に落ち着いた。亜双義に対しては相変わらずではあるが、もとより彼の助手だったことや*1彼の行方を考えると別段不自然ではない。また、本作第一話では彼女をプレイヤーキャラクターとして操作可能になる*2。依頼人である親友を信じぬく姿や慣れない弁護に慌てふためく様子が描かれ感情移入がしやすくなった。エピローグにおける彼女のある決意と、龍ノ介とのやり取りは必見。
    • 刑事のトバイアス・グレグソンは前作最終話でやむにやまれぬ事情があったとはいえ一人の少女に無実と知っていながら殺人の罪を着せようとしていたが、本作ではそのような汚れ仕事を請け負うことになった経緯及び彼の背景事情が明かされた。また、その少女に対し面倒見の良い部分も描写されている。エピローグで語られる二人の信頼関係は必ず見逃さないよう。
    • ライバル検事のバロック・バンジークスは前作では彼の心情や背景がほとんど明かされず、好き嫌い以前に印象に残りにくいキャラクターだった。しかし本作では彼の友人が登場するなどその辺がしっかりと掘り下げられている。また、彼の執務室を調べることが可能であり、龍ノ介たちの失礼な反応に対し律儀に面白いツッコミを入れてくれる。最後の事件においては、これまでのライバル検事におけるある種の「通例」に彼も巻き込まれる事となり…。
    • シャーロック・ホームズは人を食ったような態度や飄々とした言動、共同推理でのふざけっぷりから一部プレイヤーからうっとうしがられていたが、本作終盤では彼の本気を見ることができる。「遊びは無し」の名探偵の名に恥じない活躍に彼を見直したプレイヤーは数知れず。
    • 本作には登場しないものの、前作の犯人の一人は本作で明かされた事実により少しだけ救われることになった。もちろん作中で言及されている通り完全無罪ではないのだが。
  • もちろんそれ以外のキャラクターも新規、続投含めいい意味でアクが強く魅力的な人物ばかり。
  • 前作では真犯人のブレイクモーションの地味さが問題点として挙げられていたが、本作ラスボスのブレイクモーションは歴代随一ともいえるド派手な演出。ぜひ3Dボリュームを最大にして見てもらいたい。

BGM

  • 賛否両論点にも述べるように前作からの続投BGMも多いのだが新規BGMはいずれも好評である。特に『相棒 ~The game is afoot!』は、あるキャラクターの意外な正体と活躍、演出も相まってプレイヤーに強烈なインパクトを与えた。
    • メロディー内にタップダンスが組み込まれているのが特徴で、実際にプロのダンサーに踊ってもらった音とモーションをキャプチャーしている。キャプチャーされたモーションがどのように使われているかはぜひ自分の目で確かめていただきたい。

スキップ機能の改善

  • 6』から未読スキップが可能になったが、前作ではスキップを使うとモーションがカットされてしまい味気なく、逆に『6』ではやたら長いモーションがカット出来ずイライラさせられていたが、今作ではモーションが早送りする様になり、前作と『6』の不満点を同時に解消した。

賛否両論点

最終話ラストの展開

+ ネタバレ注意
  • 全ての真実が明るみに出てなお食い下がるラスボスに対し、ホームズが裁判の様子を「ある人物」に生中継で伝えてラスボスを失脚させるという展開。
    • 主人公がとどめを刺せない、他人にいいところを持っていかれるという点で『4』のラストを彷彿とさせる。推理ゲームとしてプレイヤーがすべきことも、それまでの難しさとは対照的に非常に単純。
    • 『4』では決定的な証拠をつきつけることができず、やや強引とも取れる手段で有罪にするのに対し、本作では決定的な証拠をつきつけられても開き直り、自らの正当性を傍聴人に主張し味方につけようとするラスボスに引導を渡すというもので、物語としての必然性がある。そしてホームズも君たちが真実を追究してくれたからこそ人物を味方につけることができたと龍ノ介を称賛してくれる。当該シーンの演出は歴代随一の盛り上がりを見せ、「大逆転裁判」というシリーズのクライマックスをこの上なく飾っている。
      • 「ある人物」の伏線自体は作中に出てくるものの、実際に姿を現さず、設定資料などを見る限りキャラクターデザインもされていないと思われる。一度も登場しない人物がいきなり現場を裁定するのは、ご都合主義と捉えられても仕方がない。また、その人物の立場を考えると、裁定を下す権限はなかったのではないかという疑問の意見もある。せめて事後でいいから姿を出せば幾分か改善されていたと思われるが…
    • また、裁判を生中継する技術も大正はおろか平成にすらないホログラフィーというオーバーテクノロジーである。一応そのことに作中でツッコミは入っている。ホームズ曰く電話を応用したものらしいが…。
      • その陰に隠れがちだが、4話に登場した倫敦~ダンケルク(直線距離で約100km)間でリアルタイム通話できるイヤーマウント型の無線通信端末も十二分にオーバーテクノロジーである。
      • オーバーテクノロジーは『逆転検事』のぬすみちゃん等他のシリーズ作品にも存在するので決して本作特有ではないのだが、シリーズの現代時系列は現実時間から見ると近未来にあたる*3為、微妙にフォローし難い。
      • 一方、指紋や血液検査*4やビデオカメラ*5はないと妙な事になっている。
    • 「先に真相に辿り着いた他人にいいところをもっていかれる」という点は同じく巧氏が手掛けた『レイトン教授VS逆転裁判』にも通じる。ただでさえプレイヤーに受け入れられ難い展開なのに、こう何度も続けるのはそれ自体が如何なものか。

法廷関係のBGMが前作の流用

  • シリーズにおいては法廷パート(検事なら対決)のBGMは毎作新規であった為、今回初めてこういう形となった。
    • しかし曲のクオリティは高いためそれほど批判はない。さらに本作では新規*6BGMとして『追求への前奏曲』が登場。前奏曲から追求へと繋がる流れは非常にアツい。

一部スッキリしない点

  • 本筋には深くかかわらないものの明かされない謎や不自然な描写が一部ある。
+ ネタバレ有
  • ある母娘は別姓を名乗っているのだが作中では家庭の事情と説明されるだけでそれ以上は一切言及されない。ちなみに裁判の過程で母親の旧姓も判明するのだが娘が名乗っている姓はそれとも違う。
  • ある女性は10年前の事件で死刑囚の遺体から顔の型を取るなど大胆な行為をとっているのだが彼女は現在26歳、つまり事件当時は16歳の少女だったことになる。
    • これがストーリーに直接的に反映されない設定年齢だけなら気になりにくなかったかもしれないが、わざわざ会話中に年齢に対する言及があるので必ず目につく。
    • 一応、時代背景や特殊な職人一族である点を考慮すれば、まだ納得の余地はある。しかし彼女と10年前に会った人物は当時16歳で自分より10歳ほど年下の少女を「美しい女性」と表しており、違和感は拭いきれない。

問題点

難易度が高い

  • 全体的にヒントが少ない。証拠品を詳しく調べることで新たな事実が判明することが多いのだが事前に「証拠品をよく調べてみましょう」といった提案をされることも少ない。また、法廷記録に載っていない情報、つまりプレイヤーの記憶力が問われる場面もある。
  • 単純に難易度が高いというよりも意地悪な箇所もある。
    + 軽度のネタバレ有
  • ゆさぶって証言を変更させたうえで別の証言に証拠品をつきつけるという場面がある。逆転シリーズでは変更、追加された証言に矛盾が潜んでいるというのがセオリーなのでシリーズ経験者ほどここで引っ掛かりやすい。
    • 第一話の尋問を一周させると証拠品を詳しく調べるチュートリアルが入るのだが、ここで調べるのは万年筆。一方この尋問でつきつける正解の証拠品は新聞記事を調べることで手に入る。チュートリアルなのだから最初から新聞記事を調べさせればよかったのでは…?
      • さらにこの万年筆、チュートリアルではカーソルが反応しないポイントがあり、後で自分で調べる必要がある。

シナリオの分割

  • 前作を含めた本作最大の問題点。『1』が発売されてから『2』まで実に2年もの期間があり、いくらなんでも待たせすぎである。結果として前作で残された謎や伏線がうろ覚えで本作を100%楽しめなかったというファンもいた。
    • また本作は、前作プレイ済みであることを前提として作られておりネタバレも多いため、本作から入ったプレイヤーが後から前作をプレイしてもあまり楽しめないと思われる。
    • そのため本作を評価するプレイヤーたちから大逆転裁判最大の問題点は分割して売った事と言われるほど。
      • もっとも、前作も前作で最後に次回作を前提としていたと思われる伏線があったため「これなら発売延期・値上げしてでも統合した方が良かったのでは…」という声もある。

総評

2作品を合わせたシナリオは逆転シリーズ最高傑作と言っても過言ではないほどで、前作の低評価やスタッフへの不信感を文字通り『大逆転』させた良作と言える。

惜しむらくはシナリオを分割したことであり、前作の時点で見切りをつけてしまった人も少なくはないだろう。
だがそのまま前作に駄作のレッテルを貼って終えるのはあまりにももったいない。そうしたプレイヤーにこそ是非本作を手に取って頂きたい。


余談

  • 前作と本作とミニサウンドトラックCDのセット商品である『大逆転裁判1&2限定版 -成歩堂龍ノ介の冒險と覺悟-』が発売された。また、本作の発売と同時に前作DLCの期間限定半額セールが実施された。やはり制作陣としても前作と一緒に遊んでもらいたいようだ。
  • 3DS版逆転シリーズにしては珍しくアニメーションムービーが収録されていない。
  • 前作と本作を一つに纏めた『大逆転裁判1&2 -成歩堂龍ノ介の冒險と覺悟-』の移植版が、2021年7月29日にSwitch、PS4、Steamで発売されることが決定した。これなら前述した「最大の問題点」が改善されている為、今からやるなら3DSにこだわる人でない限りこちらの購入が勧められる。
    • PS4やSteamでも同時発売されるのは『成歩堂コレクション123』と同様。
    • オート進行してくれるモードや制作資料なども付属し、『1』のDLCも全て収録している。
    • 様々な事情から海外ローカライズが困難とされてきた『大逆転裁判』二部作だが、これを機に海外版も発売される事となった。
      • 海外ではホームズの版権周りで複雑な事情があり、ローカライズにあたって「ハーロック・ショームズ(またはエルロック・ショルメ)*7」という全く別の人物に差し替えられる事となった。そのインパクトから、英語圏のツイッターでは作品よりこの名称がトレンド上位に来る事態に。
      • ちなみにアイリスも「アイリス・ウィルソン」になっている*8。一方で同じホームズの登場人物を元としていたグレグソンやジーナ・レストレードは日本版と同じ名前がそのまま使用されている。
      • ナンバリング作品や『逆転検事』の海外版は舞台をアメリカに変更し、キャラクターの名前も一から作り直されているが、『大逆転裁判』シリーズは海外版の舞台も日本+イギリスのままで、主要キャラクターも日本版と同じ設定となった。例えば本編の主人公・成歩堂龍一はローカライズにあたり"Pheonix Wright"という名前のアメリカ人に変更されていたが(参考:英語版Wikipedia)、『大逆転裁判』の主人公は海外でも日本人の"Ryunosuke Naruhodo"であり、"Pheonix"の先祖という設定は据え置きとなっている。
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最終更新:2024年04月10日 13:25

*1 前作に置いて龍ノ介に対する態度の違いがあった事も、それまで龍ノ介自身との面識はほぼ無かった為に当然である。

*2 一応公式サイトでは伏せられているが体験版をプレイしてみればバレバレである。

*3 初代の迷宮入り寸前案件であったDL6号事件の発生が本編の15年前の2001年。つまり、初代の発売年。

*4 アイリスが開発しているが、証拠品としては認めてもらえない。

*5 店に監視カメラはあるが、こちらはポラロイドカメラで30分おきに撮影するというもの。フイルムの費用が莫大なのだという。

*6 どちらかと言えば、前奏を追加したアレンジだが。

*7 ちなみにこの名前は本作のオリジナルではなく、かの「怪盗ルパン」シリーズに登場するホームズのパロディキャラが元ネタ。

*8 『1』に登場するジョン・H・ワトソンも同様。