嘘つき姫と盲目王子

【うそつきひめともうもくおうじ】

ジャンル アクションアドベンチャー


対応機種 Nintendo Switch
プレイステーション4
プレイステーション・ヴィータ
発売・開発元 日本一ソフトウェア
発売日 2018年5月31日
定価 【Switch/PS4】6,980円
【PSV】5,980円(税別)
レーティング CERO:B(12才以上対象)
判定 良作
ポイント 可愛くも美しい童話
雰囲気・世界観は満点
ボリュームと定価のミスマッチが痛い


概要

日本一ソフトウェアが開発・発売したゲーム。
「絵本的な世界観」「二つの操作キャラを入れ替える2Dアクション」という要素から、同じく日本一から発売された『ホタルノニッキ』『ロゼと黄昏の古城』の流れを汲む作品とも言えるが
これらの二作でディレクターを務めた古谷氏は今回は裏方に回っており、本作のキャラクターデザインを務めた日本一ソフトウェアの小田沙耶佳氏が中心となって開発されている。
小田氏は本来はゲーム開発部門のスタッフではないのだが、本作のシナリオ・世界観設定・演技指導・ゲーム内外のビジュアル…等々プログラミングや流通以外のほぼ全てに携わっており、全編通して彼女個人の作風が色濃いゲームとなっている。


ストーリー


小さな王国を取り囲む闇深い森の中に、月夜の晩に美しい歌声を響かせる化け物がいました。
その近くにはそんな声の主の正体を知らず、夜ごとその歌を聴きにやってくる王子様もいました。

ある日、王子は不幸な事故により光を失ってしまいます。
顔に深い傷を負い、目の見えなくなった王子は王族に疎んじられ、お城の塔に幽閉されてしまいました。

そんな王子を助けようと決意した化け物は、森の魔女と取引をし、歌声を失う代わりに人間の「姫」の姿を得ました。
「姫」は王子の手を取り魔女の下へと向かいます。

しかし、森の中は危険がいっぱい。

お姫様の姿では王子を守れない。
でも――――――。

本当のわたしでは、あなたに触れられない。

特徴

  • 基本的なゲーム内容としてはステージクリア型の2Dアクションゲーム+要所要所でアドベンチャーパートとなる構成になっている。
  • アクションパートのおおまかな流れとしてはプレイヤーが操作する姫(狼)と、直接操作は出来ないが「おねがい」で特定の行動を指示することが可能な王子、それぞれの特徴を活かして二人をゴールまで導くことになる。
  • 各ステージは一度到達すればポーズメニューからいつでも好きなステージで遊ぶことが出来るようになる。
    • しばらく遊んでもクリアできない場合、そのステージをスキップして次のアドベンチャーパートまで飛ばすことが出来るようになる。
    • 収集要素として各ステージには花びらと花が存在する。詳細は後述。
    • 残機・ゲームオーバーの概念はない。ミスした場合特定のポイントに戻されてやり直しになる。
  • 花と花びら
    • 本作の収集要素。花は特定のステージに一つ、花びらは各ステージに5枚存在する。
      • 公式でも言及されている通り、入手せずともシナリオ的な分岐はない。
    • 花は入手すると王国に伝わる魔女の話が聞ける。
    • 花びらは規定枚数を集めるごとに設定資料やアートワークがアンロックされる。

登場人物

  • 本作の主人公。プレイヤーは基本的にこの姫を操作して先に進むことになる。
    • 姫はYボタンを押すと王子と手をつなぎ、一緒に歩き・ジャンプが出来る。
      • また、この形態の場合狼では動かせないステージ内の仕掛けを動かしたり、収集要素である花を摘むこともできる。
    • 十字ボタンで王子に「おねがい」を頼むことが出来る(後述)。
    • Xで下記の狼に変身出来る。また、月の光が差し込む場所では強制的に狼の姿となる。

  • 姫状態でXを押すと元の姿である狼に戻ることが出来る。
    • 狼状態はジャンプ性能が強化され落下死することがなくなり、基本的に穴に落ちない限り死ななくなる。こちらでYボタンを押すと敵に攻撃する出来るようになる。
      • 反面、この形態では当然王子と手を繋げなくなるどころか、王子に攻撃が当たってしまうと即死しミスとなってしまう。
    • 姫形態よりも大きくなるためある程度高さに余裕のある位置でしか狼には戻れず、細い通路などには侵入出来ない。
    • 狼状態では人間二人分の重さとなり、一定の重量のいるギミックなどを動かすことできるようになる。

王子

  • 本作のヒロインとも言えるキャラ。基本的に姫形態で手をつないで誘導する。
    • 姫形態で「おねがい」することで、特定の位置まで一人で歩くことと、落ちている物品を持ってもらうことができる。

評価点

  • 世界観・ビジュアル
    • 絵本的な世界観と手書きを意識したグラフィック。
      • 近年のゲームでは珍しい絵本的なビジュアルが採用されており、PVを見た瞬間から世界観に魅了され購入を決定した人も多い。
      • 魔女の森とそこに住む魔物たちは不気味ながらもどこか愛らしいような姿になっており、セピア調の色付けが加わることで独創的な世界観を確立している。
      • 一部イベントCGでは実際に小田氏のアナログイラストを取り込んだ物が使用されている。細部まで美麗に描き込まれたアドベンチャーマップとは違い、こちらはこちらで味わい深く各イベントをより印象深くしている。
    • 近藤玲奈氏が担当する朗読。
      • 全編通して一人で様々な役を演じ分けており、優しくも、時にはおどろおどろしく、時には化物としての残酷な現実も突きつけられるような語り口調は実に見事。本作の世界観への没頭感を深めてくれる。
      • こういった雰囲気そのものは文章では伝えきれないため、本作の世界観を存分に表現している発売前PVも掲載しておく。
        + 朗読ムービー
    • また、(一応シリーズ作ではないが)『ホタル』『ロゼ』はそれぞれプレーヤーの想像に任せすぎた場面やグロ演出等が人を選ぶ側面があったが、本作はそういった賛否の別れる要素は無くなり、万人向けとなっており人に勧めやすくなったのもポイント。
  • ストーリー・登場人物
    • キャッチコピーの「本当の姿では貴方に触れられない」がズシリと来る展開がいくつもあり、それでも健気に振舞う姫の姿に心奪われたユーザーは多い。
      • 姫は先に進むたびに王子への嘘を重ねることとなり、そのたびに胸が締め付けられる思いをする。そしてこれらの嘘が終盤に向けての伏線となっていく構成も素晴らしい。
    • 姫・王子のアニメーションは枚数はそれほどではないがいずれもかわいらしく、特に姫と王子は手をつなぐとちょっと微笑む演出は好評。
    • 登場人物は姫・王子・魔女の3人と旅の途中で会う化物たち程度しかいないが、いずれもキャラ立ちはしっかりしている。
      • 特に旅先で会う化物たちは人間である王子に敵意を向けないが、だからと言って最初から友好的で狼を助けてくれるわけでもないという、テンプレ的なキャラクターから外れているところは本作独自の世界観があると言える。
  • BGM
    • アクションパートのBGMはメルヘンチックながらもどこか後ろ暗さも感じるような曲となっており、作品に非常にマッチした曲揃いとなっている。
      • 一方王子や他の化物との交流イベントでは和やかな楽曲が流れたり、ここぞという場面ではあえて無音になり朗読が強調されたりと場面ごとの演出との噛み合わせが絶妙。ラスボス戦も事前に聞く印象深い曲を大幅にアレンジしたものとなっている。
    • 主題歌/ED曲の「月夜の音楽会」は、ガスト製ゲームでおなじみの志方あきこ氏が作詞作曲を担当している。本作のストーリーを基に作られた曲で、二人の冒険の最後を飾るにふさわしい一曲である。
      • 同曲は発売前のイメージムービーで公開されており、曲調・歌詞からおおよその結末が予想できるものの、エンディングを見たプレイヤーからは衝撃と称賛をもって受け入れられている。
      • ただ諸般の事情でサントラには「月夜の音楽会」のみ未収録のため惜しむ声も多い。

賛否両論点

  • 少々もどかしいアクションパート
    • 本作はプレイヤーのスーパープレイでサクサク進めるようなゲームではなく、微妙にテンポが悪いと感じる場面もある。
    • 一定の高度から落ちてしまうと毎度倒れるモーションが発生し、高い位置から飛び降りた場合は即死となる。
    • とはいえ、これは非力な姫&王子と無敵に近い狼の表現上の演出とゲームデザイン上の使い分けの結果そうなっているとも言えるので、一概に悪いとも言い切れない。
    • 敵の攻撃を食らうと即死するためちょっとした操作ミスでやり直しになることが多々ある。
      • しかし体力ケージのようなゲーム的なHUDがあると世界観への没頭感も薄れてしまうので、(スタッフがこれを意図したかはともかく)本作の作風上正解だっただろう。

問題点

  • ゲームとしてのボリュームが定価6000~7000円のゲームとしては薄すぎる。
    • 花と花びら集めやトロフィーコンプをしない場合、4~5時間程度でクリアできてしまう。それらを全部埋めたとしてもプレイ時間は10時間にすら満たない。
    • 評価の高さ故か中古価格も高値をキープしており、世界観やビジュアルが素晴らしいにもかかわらず人に薦めたいときに足踏みする要因になってしまっている。
    • シナリオ面に関しては、クリア済みのプレイヤーから「これ以上シナリオに何かを足しても蛇足になっていただろう」という意見が多い。そのため、価格を下げて総合的な満足度や手の取りやすさを重視すべきだったと思われる。
  • イベントスキップがない。
    • トロコンなどのやり込み目的で再プレイをしているときなど、少々煩わしい。

総評

「ビデオゲームは芸術たりえるか?」という議論に対し、本作はその解答の一つといえる作品だろう。
王道的ながらも胸に響くストーリー、時には荒く時には温かみのある手書き風のグラフィック、世界観への没頭感を深めるBGM、そして最後に迎えるエンディング…とそれぞれの要素の調和ぶりは実に見事である。

アクションゲームとしてひねりが足りなかったりボリュームの薄さが問題視されるものの、本作に心奪われたプレイヤーからは概ね高い支持を得ている。
イメージビジュアルやPVを見て琴線に触れたのであれば損はしないと思われるので、ぜひプレイしてほしい。


余談

  • 何かと値段ばかり取りざたされてしまうが、日本一ソフトウェアの公式生放送では「 これで6,000円は安い 」とまで豪語していた。本作に対する自信が伺えるが、この発言に関しては厳しい意見が多い。
    • 一方海外では19.99ドル(約2000円!)で発売されたのだが、それでも日本同様「価格が高い」というレビューも多く*1、国内ほどシナリオを重視しない嗜好もあってか(値段込みの評価として)やや厳しめの点数がつけられているサイトもある。
  • 他方で、発売後行われた作中及び開発用に使用されたアナログイラストの原画展は当初一か月の予定だったが好評を受けて延長しており、本作の評価の高さが窺い知れる。
    • 繰り返しになるが価格がネックと言われ続けてはいたものの、セールス自体は好調で発売一か月間でDL版含め約3万本程度の売り上げがあり売り切れになった店舗もあったとのことである。
    • これを受けてか当初から期間限定と言っていた公式Twitterアカウントも発売から一年近くなった現在も定期的に更新がなされており、当初発売予定がなかったであろう関連グッズが販売されたりと商業的にはかなりの成功作だったと言える。
  • 音楽面の評価が高かったからか、2019年6月1日開催の「東京ゲームタクト2019」では「近年話題のゲーム音楽」の枠で本作の楽曲がオーケストラで演奏された。
    • 「月夜の音楽会」をはじめとする10曲が演奏されている。採用曲数は別の日に演奏された『ポケモン金銀』と並び最多。