ブレイズ・ユニオン

【ぶれいず・ゆにおん】

ジャンル ファンタジー・タクティカルRPG
対応機種 プレイステーション・ポータブル
発売元 アトラス
開発元 スティング
発売日 2010年5月27日
定価 6,458円
プレイ人数 1人
レーティング CERO: B(12歳以上対象)
廉価版 Sting the Best:2012年2月16日/2,800円
判定 良作
ポイント ユグドラ・ユニオン』の前日譚
主にキャラクター演出が強化
全く異なる結末を迎える分岐ストーリー
Dept.Heaven.Episodes.シリーズ・ユニオンシリーズリンク


概要

ユグドラ・ユニオン』のスピンオフ作品であり、前作から三年前の時代を舞台に描かれる前日譚。既存の作品と世界を共有する関連作品のため、『Dept. Heaven Episodes』シリーズには含まれておらず、そこから独立した『ユニオン』シリーズの2作目となっている。

ストーリー

ブロンキア帝国……
古の魔竜・ブロンガと契約し、力を受け継ぐ者が皇帝として、代々統治する軍事国家である。
ブロンキア帝国・時の皇帝ソルティエは先代である弟の後を継いで戴冠すると、重い徴税を課し、急激なる軍備の増強を行った。
ソルティエ帝の悪政は、民の間で爆発的な不安を引き起こした。
結果、各地では暴動が勃発し、治安は悪化。
略奪行為や、商人らの不正取引が横行する。
人々の平穏は、理不尽という魔物の手で無残にも引き裂かれたのである。
帝国西部に位置する商業都市ティエラ。
ここは搾取を繰り返して財を成す豪商達と、困窮に喘ぐ人々とが分かれ住む、
いわば帝国の理不尽さを象徴した街であった。
このティエラの一角、虐げられる人々が身を寄せ合って暮らすネザー地区から、この物語は幕を開ける……

(説明書より引用)

特徴

  • 本作のストーリーの大筋は、力無き者が理不尽に翻弄される今の世界を変えるために戦い続ける少年の物語という王道な物。パッケージ裏の『炎よ、理不尽な世の中を焼き尽くせ――』というキャッチコピーが妙に不安を煽り、前作同様の血生臭さも時折現れるものの、基本的には勧善懲悪がメインとなっている。
  • ファンタジニア王国を滅亡の危機に追いやった新生ブロンキア帝国、そして焔帝ガルカーサが如何にして誕生したのかを、旧ブロンキア帝国の圧政に抗う少年ガーロットや彼が率いる「ブレイズ義賊団」の視点から見る事となる。
  • ネザー地区で悪徳商人やその配下との戦いを繰り返すブレイズ義賊団の活躍を聞き、その将来性を見込んだ貴族ヴェルマンからのスカウトに応じたブレイズ義賊団はヴェルマンの私兵団「グラムブレイズ」と名を変え、ガーロットらの戦いの舞台は帝国全土へと広がって行く…というのが物語序盤のあらすじである。
    その時点までは『ユグドラ・ユニオン』と殆ど関係の無い話が続くものの、ユグドラとの因縁深いキャラであるアイギナの登場を皮切りに続々と三年後のブロンキア軍を支える名将が現れる。
    • 一般市民として育った故の性格と感性を持つアイギナや彼女の命を執拗に狙うジルヴァ、仮面を付けていないレオン等、同じキャラクターでも前作とは異なる姿が見られる。
  • イラストレーターは前作で担当していたきゆづきさとこ氏から光崎瑠衣氏に交代。
    • 前作とは打って変わって全体的に頭身が高く、大人びた雰囲気や凛々しさを備えるキャラクターが登場する。
  • 前作から続投しているキャラクターでも、大半のキャラクターは担当声優が変更されている。
  • おおよそのシステムは『ユグドラ・ユニオン(PSP版)』に準拠するため、そちらを参照。本項では、変更点を中心に述べる。
    • 各マップでMVPを取った場合のボーナスはランダムに選ばれたステータスの強化から士気の最大値+300に変更され、規定ターン内にクリアした場合にのみ、追加ボーナスとしてマップ毎に定められたステータスの小星が+1される。また、To eatアイテムを使用した際の永続ステータスアップも次の大星まで強化ではなく小星+2へと変更。
      • 短所を補うように大幅なドーピングを行う事は難しくなり、終盤でも各キャラクターの性能に特徴が出やすくなった。
    • 前作と比べると一周のクリアまでにプレイするマップ数はかなり少なくなっており、1マップの長さや敵ユニット、増援の回数も縮小されている傾向にある。そのため、1マップあたりの攻略に要する時間は全体的に短くなり、リセットやリトライを繰り返しながら攻略を進める場合でも遊びやすくなっている。
    • 一部のCHAPTERでは次に攻略するマップをいくつかの選択肢から選ぶ事となる。
      • 規定数、または特定の選択マップを攻略すると次のCHAPTER等へ進む形式となっている。マップ毎の難易度は選択前に確認出来るため、攻略時の指標となる。また、一周で全てのマップを攻略する事は不可能なため、選んだマップによって仲間になるキャラクターや入手出来るアイテム、タクティクスカードが大きく変わり、その周でのプレイスタイルにも影響が出る。
    • システムの追加・変更
      • 斧を扱うSサイズの女性クラス「アクスファイター」やタクティクスカード「ヴァイス」等多数の追加要素が存在。中でも、日中と夜間で武器相性や能力に加えて性別まで変化する*1クラス「プラウラー」は強烈。
      • 既存のユニットやスキルにも弱点の追加、ユニオンリーダーの性別の指定等、変更が加えられた物が存在する。
      • カードパワーの成長上限は9999から5000へと低下。とはいえ、本作のボリュームはゲームクリアするまでにカンストするカードが2枚出るかどうか程度の長さとなっているため、あまり問題にならない。

評価点

  • 個性豊かな新キャラクター
    • 前作とは舞台となる国自体が異なる為、登場キャラクターの多くは本作からの新キャラクターである。
      • 浮き沈みの激しいガーロットを励まし彼を支える幼馴染シスキアとジェノン、革命を目論み冷徹に事を運ぶ貴族ヴェルマン等、キーパーソンは正統派なキャラ付けをされている。
      • 一方で物語の本筋に影響を与えないキャラクターには、厳つい見た目に反して駄洒落好きでノリが軽い獣人バイフー、凄惨な生い立ちを持ちながらもそれ故呑まずにいられるかと開き直る酔いどれウンディーネのスレイプといった色物もいる。
      • 敵方もお気楽な性格でありながら常々ガーロットへの憎悪を見せる傭兵セリカ、悪党としての王道を行く程に利己的な逆賊パンドラが印象に残りやすい。
  • 多数の新生帝国将軍を自軍で使用出来る
    • 前作においてブロンキア帝国軍に所属していた名有りのキャラクターはインザーギ、及び3年前の時点では帝国軍に与する理由の無いラッセルとエレナ、その他負傷中の一人を除き全員仲間にする事が出来、残りの4人も何らかの形で本作に登場する。独自のカリスマや信念等を持っている個性的かつ魅力的なキャラクターが多いので、彼らのファンには嬉しい作品だろう。
      • ただし、分岐により仲間になるキャラクターは変わる為、ラッセル以外の五頭竜将を4人とも同時に使う事は出来ない。とあるマップに限り、マップ上に五頭竜将全員を揃える事は可能。
    • 多少弱体化してはいるが高いATKや鎌の武器相性とジェノサイドの性能によるガルカーサの猛威も健在であり、その圧倒的な制圧力の前にはラスボスもたじろぐ。
  • 大きく分岐するストーリー
    • 『ユグドラ・ユニオン』の前日譚である以上、新生ブロンキア帝国がどのような末路を辿るのかを知っているプレイヤーはやるせない気持ちでプレイする事となるが、ゲームの進め方次第では『ユグドラ・ユニオン』に繋がらない独自の展開へと分岐する。所謂ifルートであり、大団円を迎えるルートもあるのでアイギナらの破滅を望まない、ないしは愛着が沸いて望めなくなったプレイヤーでも安心してプレイ出来る。
      • とあるルートでは、詳細に語られる事の無かったアイギナの出生やユグドラへの執着心、ガルカーサの妹でありながら殆ど触れられていないエミリオに流れる魔竜の血など、前作であまり掘り下げられていない要素を取り組んでいる。一方で、前作の味方キャラクターが盛大なとばっちりを受け、その後もなんらフォローがないままスルーされてしまう。冗談では済まされない被害を受けてしまうため、そのままグッドエンディングを迎えた場合は釈然としない。
      • 反面、分岐後はクリアまでのマップ数が少なめであり、展開も要所は抑えているがやや巻き気味。前作なら数マップかけていたであろう一か月間の遠征等があらすじによりざっくりと済まされる事も多い。正史ルート以外では自軍に味方するキャラクターがやたらと物分かりが良い点にも違和感がある。
      • 分岐条件は選択マップの中から攻略したマップの種類となっており、攻略した選択マップ毎に定められているフラグポイントの統計と、特定のマップを攻略したか否かで分岐先のルートは決められる。上手く調節すれば、分岐前のCHAPTERで全ての分岐ルートへ行けるようにセーブデータを残す事も可能。
  • 幅の広がったキャラクター同士の掛け合い
    • 前作ではブロンキア帝国という外敵が常に付き纏う都合、王国軍はあまり余裕のない行軍が続き、会話も敵情や作戦内容に関する物等が多く全体的にシリアスだったが、本作ではグラムブレイズが帝国を始めとした巨大な組織と表立って対立している期間は終盤のみであるため自軍キャラクターは精神的に余裕のある場合が大半であり、軽口を叩き合ったり雑談をする、昔話や説得で思いの丈を語るといったように人情味溢れるやりとりも多い。一方で殆どのキャラクターは戦いとなればメリハリも付けるため、賊軍との戦いなどでは凛とした行動を見せる。
      • 選択マップではその違いが顕著であり、貴族への恨みから必要以上に横暴な振舞いをした賊紛いの賤民と戦い彼らをあくまでも賊として処罰する、政治上のライバルを蹴落とすために皇帝への献上品を運ぶ密輸船を襲撃、口封じとして護衛と乗員を皆殺しにするシリアスなマップもあれば、休暇を過ごす自軍キャラに焦点を置いたり、私情から取り乱すヴェルマンに振り回されるような緩い雰囲気のマップも登場する。
    • 一部の会話では専用のCGが挿入され、臨場感を高めてくれる。
    • バイフー等、条件次第で仲間になるキャラクターがボイス付きで会話に混ざる機会も増えている為、彼らの存在感も決して薄くはない。
    • ただし、一部の会話には「マジレス」等の語源を考えれば世界観にそぐわない単語が出てきたり、仲間の死を茶化すような不快感のある物も存在している。
  • 強化されたキャラクター演出
    • 会話時に表示されるキャラクターの立ち絵は戦闘可能なキャラクターの場合1人につき基本5枚が感情別に用意され、会話の内容に応じてその都度切り替わる。
      • 前作でも戦闘キャラには1人4種類の表情差分が用意されていたが、基本の立ち絵以外は戦闘時にしか使われず、会話時は終始同じ表情で話すという少々勿体ない仕様になっていた。
    • 殆どの固有グラフィックを持つキャラクターには戦闘時・マップ上のグラフィックとその動作も専用の物が与えられ、一般兵の色変えではなくなった。
      • エイミやエレナ等の非戦闘キャラにも戦闘用のグラフィックが用意されており、会話時に使用される。
    • 中盤以降敵対するネームドユニットの大半には専用クラスが与えられており、独自の特性構成を持つ強敵として立ちはだかる。
    • 戦闘時のボイスも出撃準備確認時、移動選択時など種類が増え、各スキル発動時の詠唱や勝利・敗走時の台詞は全て読みあげられるようになった。敵キャラクターも例外ではなく、ボス敵が別の部隊のユニオンに巻き込まれた場合もしっかりとシールドバリア等の詠唱をする。
      • その一方で、ボイスが無かったりボイスと台詞を一致させていないがために前作では多数用意出来た戦闘勝利、敗走時に発生する台詞の数は非常に少なくなり、特定キャラと戦闘する場合の台詞に至ってはほぼ存在しない。相手の在り方を互いに否定するデュランとレオンのようにストーリー上では語られない因縁が窺える部分もあったため、残念なところである。
      • 特定キャラと戦闘する場合の台詞は種類自体は非常に増えており、特殊台詞が発生する状況下では戦闘時の台詞が全体的に差し替えられるうえにいずれもボイス付きとなっているのだが、そういった特殊な台詞が発生するキャラクターの組み合わせがとても少ないのであまり目立たない。
      • キャラクター1人あたりにつき最低限必要なボイスの種類が増加したためにおいそれとボイスパターンを増やせない事の弊害か、一般兵のボイスはバリエーションが少なくなっているので時折違和感が生じる。一例を挙げると、ナンパで絡んできた一般市民という設定の敵ネクロマンサーが戦闘時にはイベント時と打って変わって物騒な言葉遣いになってしまっている。
    • キャラクター図鑑では各キャラクターの全ての表情を選んで見る事が出来、ボイス再生で流れる台詞は表示中の表情に合わせて変わるという細かい演出もある。基本5種以外の表情は本編で見ていない場合表示されないという、ネタバレ防止用の措置もしっかりと施されている。
  • 多数の戦闘曲
    • 本作では最終的に自軍キャラクターの数が前作以上となるが、前作同様戦闘BGMは個別に与えられている。半分程のキャラクターは初登場時や自軍加入時の会話でもBGMが流れる他、エキストラコンテンツのBGM視聴ではキャラクターのイメージに沿った曲名も確認出来るため、キャラクターのテーマ曲としての色が一層強くなった。
      • アイギナやガルカーサ等前作で専用曲を持っていたキャラクターのBGMは前作の物をアレンジした曲が使用されている。
    • 敵方にも専用曲が与えられているキャラクターは多いが、交戦回数の少ない相手が大半なので耳にする機会が少ない曲が多数を占める。
    • BGMに関する敵対勢力の区分は前作の「帝国軍・その他」の2種よりも細かく分けられた4種となっており、勢力毎に進軍・戦闘時のBGMが用意されている。その一方で、勢力毎の戦闘BGMはキャラ別の専用曲を除けば一つのみとなり、一般兵と隊長格の戦闘BGMは同じ曲が使用されるようになった。
  • 隠しマップ関連
    • 前作(PSP版)では難易度ノーマルでクリアした後に解放される難易度ハードで本編をもう一周してからようやく追加マップに進めるという手間と時間のかかる仕様であったが、本作では大幅に改善。条件を満たせるセーブデータ(最終マップの中断データでも可)を残しておけば難易度ノーマルのデータでも一度クリアした後にもう一度ロード、最終マップを改めてクリアするだけで隠しマップへと進めるようになった。
      • ただし、隠しマップでは難易度ノーマルでも前作の物以上に厳しい戦いを強いられるため、最終マップ付近で長持ちするアイテムを下手に装備させていると詰みかねない。
    • シナリオについても、あくまで本来のエンディングからごく僅かに先の展開を描いただけの前作と異なり、通常エンディングとは180度違う結末を迎える物となっている。
  • システム面に関する前作からの細かな改善点も多数存在
    • 出撃準備時に、何番目に選択したユニットがどのマスへ配置されるか確認出来るようになった。
    • マップ上でデュエルを仕掛ける際、選択中の敵ユニオンリーダーの簡易ステータスを同時に確認出来るようになった。
    • 撃破不能の無敵ユニットの出現頻度や、無敵ユニットと戦わされて数ターン耐える必要のあるマップ、大砲等で士気ダメージを延々と受けなければならないマップの数は大きく減り、そういったマップでも上手く敵を倒したり進軍すれば殆ど被害を出さずに済む物がそこそこあるため、ストレスが溜まりにくくなった。
    • 戦闘中、ヘッドの体力が表示されるようになり、倒れるタイミングやレヴォリューション等によるヘッドへのダメージが明確に分かるようになった。
    • ユニットのレベルアップ時に能力の成長を反映した全ステータスが表示されるようになり、現時点でのステータス確認を逐一手軽に行えるようになった。
    • 士気回復でアイテムを与える際、リスト上でアイテム名の横に並んでいる回復量の表示の背後に自軍キャラクター全員が表示され、回復量が0のキャラクターは黒色で映し出されるため、どのアイテムがどのキャラクターに回復効果を持つかが一目で分かるようになった。
      • しかし士気回復効果の段階は表示されなくなったため、そのキャラクターにアイテムを与える事が効果的な使い方なのかは分からなくなってしまった。
    • 地形攻撃を行うスキルは「相手が対象の地形にいなければ発動不能」から「常時発動可能・相手が対象の地形にいれば威力上昇」へと仕様が変更され、非常に使いやすくなった。
    • その戦闘中のみユニオンメンバー全員のLUKを最大値まで上昇させ、使用者の制限も無いスキル「ヴァイス」の登場により、スキルを用いた敵からのアイテム強奪は使用者が限定されるスティール以外でも可能となった。
      • しかしドーピングの制限から特定ユニットのLUKを目一杯強化してアイテム回収役にするという手が使いにくくなったため、一長一短である。中盤で加入するとある隠しキャラクターは加入時点でLUKが大星4つ、レベルアップすれば自力でカンストするので回収役として即座に使えるが、誰でも仲間に出来る訳ではない(余談参照)。

賛否両論点

  • イラストレーターの変更
    • 光崎瑠衣氏が手掛けたイラストそのものにはほぼ問題が見られず*2、前作に登場したキャラクターも前作のイラストを踏襲した上でデザインされている。しかし、画風(主にキャラの頭身)が前作のイラストを担当したきゆづきさとこ氏の物と大きく異なるために、それを受け入れられないプレイヤーも存在する。また、前作に登場した殆どのキャラクターのイラストは前作よりも大人びているため、三年前の若かりし頃ではなく三年後の成長した姿のように見えてしまう。
  • 前作からあまり変化していないシステム
    • 根本的な部分は『ユグドラ・ユニオン(PSP版)』の時点で完成しているためか、UI等も含めてシステム面では前作から殆ど変わっていない。そのため、前作の良い点も悪い点も改変が加えられていない場合はそのまま引き継いでしまっている。良い点の代表例は「難易度設定としてノーマルとハードの区分を設け、ノーマルでは士気回復の手段が豊富」「マップ攻略中でも中断セーブとロードが自由に行える」、悪い点の代表例は「一度装備したアイテムは耐久値が0になるか破壊されるまで外せない」「クリティカルが強過ぎる」といった具合である。
    • 戦闘を織り成す大半の兵種やタクティクスカード等も前作と同じである。これについては前作からのプレイヤーが、前作と変わらない感覚で遊べるとも、単調に感じやすいとも取れる。
    • タクティクスカードに調整が入ったと言っても、全体的に見れば前作で弱かったカードがそこそこ強化されて使い道が増えた程度の物であり、シールドバリアやグラビティカオス等の強力なカードは軒並み強いままである。さらに、ジハードの弱体化により移動力12(最高値)である唯一のカードとなりエース指定も複数のレギュラーユニットが持つ武器に変わったスティール、特定状況下で使うと士気ダメージにボーナスが付くようになったブラッディクロー等、弱体化するどころか地味に強化されている物もあるため、相変わらずカードの優先度は「定番の強力なスキル持ち≧移動力の高い物>その他全般」となり、使用カードが固定化されやすい。
    • 登場するアイテムも大半が前作からの流用であるが、既存の武器が悪意を持って塵へ打ち直されるのではなく長年の実験の成果として自信満々に変えられるナマクラソード等、入手イベントが大きく異なる物は多い。
    • 戦闘前に地形や敵部隊の確認が行えないというのも相変わらずであるため、会話中にマップをよく見ておかないと敵陣の把握が出来ず、出撃させるユニットは増援も考慮して武器のバランスが良くなるように選びがち。殆どのマップで唯一の斧持ちユニットとなるメデューテや幅広く対応出来る杖持ちのユーディ、スティール要員のシスキア等が優先されやすい一方で、ほぼ全てのマップにおいて強制出撃するガーロットと武器や兵種が被るスレイプとレオン、突き抜けた長所が無く剣持ちのライバルも多いジェノンは選びにくいといったようなユニット毎の格差も再び生まれている。
      • とはいえ、マップの縮小やドーピングの制限を考慮した調整もあるためか、そこまで入念に効率や戦術を考えて戦わなければならない程本作の難易度は高くないのである程度は好きなように編成しても攻略出来る。また、前作同様リトライによって相手のステータスを下げる事も可能なので何度も負ける事が受け入れられればどんな編成でもいずれは勝てる。
    • スキルゲージやユニオンシステム等、ユニオンシリーズ独自の要素は最初は使えず、シナリオの進行に伴いチュートリアルと共に徐々に開放されていくという形式も前作同様。前作の経験者はじれったく感じるかもしれないが、マップの難易度や敵の配置は開放中のシステムに合わせて設定されているため、前作未体験のプレイヤーでもとっつきやすくなっている。

問題点

  • 一部アイテムの入手条件
    • 入手が二択となっているアイテム群の内、選択条件が勝率となっている類の物は入手がかなり厄介かつ難しい。というのも、この勝率はゲーム開始時からの通算で計算されているため、勝率60%未満が条件のアイテムであれば5回に2回は敗北しておかないと条件を満たせなくなる他、勝率が条件の選択アイテムが同じマップ内に複数個存在している場合だと勝率を操作して好きな組み合わせで入手するという事はターン制限のために非常に難しい。士気の回復が有限であり、意図的に負ける事も難しい本作ではストレスの溜まりやすい仕様である。
      • この勝率は前作のTNVに代わる条件として用いられているが、相性が不利な相手への突撃やキスオブデスによる自滅を用いれば意図的に数値を下げる事が容易なTNVと比べると明らかに扱いにくい。ちなみに、本作でキスオブデスを入手した後は勝率一定未満が入手条件のアイテムは登場しない。
    • わらしべ長者の要領でアイテムを交換していくイベントも前作同様に多数存在するが、選択マップで拾ったアイテムが別の選択マップや特定ルートへ分岐した後のマップで必要になるケースが多々あり、たとえノーヒントでなくともアイテム図鑑のコンプリートに要する時間や難易度は前作から跳ね上がっている。
    • インザーギやパンドラ等、複数の選択マップに出現する敵は装備してくるアイテムの種類が大量に存在するので、コンプリートを狙う場合にはこれらの敵と戦闘出来る全てのマップを一周で回る必要がある。
    • 無論、アイテムのコンプリートはやり込み要素でしかないため、回収が強制される事は無い。
  • 永久離脱ユニットの存在
    • 前作では物語の展開上最後まで王国軍に同行出来ないキャラクターは経験値を取得出来ず戦闘への参加が消極的になりがちなゲストユニットとして出撃していたが、今作ではそういった配慮や前振り、後に復帰するといった事も無く離脱してしまうキャラクターが多数存在する。
      • いずれも離脱タイミングは終盤の分岐発生~数マップ経過後でゲームクリアは目前、ルートによっては隠しマップでのみ不在となるユニットだけの場合もある。加えて離脱するユニットの数はルート毎に1、2人なので、少数のユニットに余程偏った成長をさせていなければそこまで被害は無い。ただし、離脱ユニットはユニットが持つ独自性や加入時期といった面から主力に据えている可能性の高いユニットが多いため、厄介な事に変わりは無い。
  • 前作との設定の食い違い
    • 出生が前作で語られた設定と異なるアイギナや、妹のエレナだけは自身の命や誇りよりも大切にしているレオン、想定外の事態に対して目に見えて取り乱すネシア等、前作と辻褄の合わない点、性格が変わっているキャラが存在する。
      • レオンに関しては、前作でエレナが語るようにユグドラまでの三年間に劇的な変化があったと考えられなくもない。
  • やや急ぎ足で物足りない正史ルート
    • 『ユグドラ・ユニオン』に繋がる正史ルートは分岐が発生してから僅か6マップで終了する。この間に諸々の事情からグラムブレイズが帝国から独立し、最終的に皇帝ソルティエを討ち倒すという急な展開が繰り広げられ、新生ブロンキア帝国が生まれて数日という所でエンディング、国の繁栄についてはエピローグで軽く語られる程度で済まされる。ガルカーサの人格やカリスマ性の形成、その筋書きを用意した者の暗躍、数多の仲間との離別等必要な部分は抑えてあるものの、このルートに入ってようやく語られるうえに大して掘り下げられないガルカーサの出生*3に代表される、他のルートよりもさらに巻き気味の展開のせいで今一つ物足りない。
    • そもそも、他のルートと比べるとマップ数が一つ少なく、序盤から倒すべき敵だと提示されていた帝国への攻城戦は2マップで終了し、最後のマップもラスボス一人との決戦だけなので攻略自体はイベント会話込みでも15分程度で終わる。最も重視されるであろうシナリオがifルートよりも短いというのは如何な物だろうか。
      • 補足しておくと、正史ルートでは無くても良いようなマップは一つも存在しない程に重要なイベントが連続して起こるが、他のルートには省略しても問題無さそうな箸休めのようなマップが存在する。これを含めて考えると、各々のルートの長さはあまり変わらないのかもしれない。
  • システム上の改悪点
    • アイテムを装備する際のソート機能が無くなった。効果別・装備可能順に分けて探す事が出来なくなり、常に五十音順で探す必要がある
      • 士気回復用のアイテムを選ぶ場合には何故かソート機能が残っており、五十音順と選択中のキャラクターに対する回復量順で分けて探せる。
    • 戦闘時に表示される背景は突撃時を除いて反撃側が滞在する地形だけとなっているため、戦闘中に突撃側が滞在する地形を確認出来なくなった。地形攻撃スキルや互いの滞在地形を入れ替えるスキル「ミラージュ」を使用する際に不便である。
    • マップ上でのユニットの簡易ステータス確認では大星の数しか見れなくなり、小星の数の確認を行う際には一々詳細画面を開く必要が出来た。

総評

『ユグドラ・ユニオン』の前日譚として見ると少し不十分に感じられる部分もあるが、作品単体で見れば個性と感情豊かな登場人物たちや、彼らの様々な戦いを描く緩急の付いたストーリーが魅力的なゲーム。
シミュレーションゲームとしても、既に完成している前作のシステムを大きく崩す事なく、より遊びやすいように改善されているため、前作のゲーム性を気に入っているプレイヤーやユニオンシリーズに興味のあるユーザーにもお薦めの一作である。


余談

  • 前作の『ユグドラ・ユニオン(PSP版)』とは連動要素があり、前作のセーブデータがある場合、条件を満たせば前作で活躍したとあるキャラクターを仲間にする事が出来る。
  • 本作が初登場となるキャラクターの一人は、次作『グロリア・ユニオン』にゲスト登場している。
  • 前作に存在していた沐浴イベントは入浴へと形を変えて続投。やたらと力が入っており、ヒロイン3人+その他1人×2、合計5種類も用意されている。
  • 2023年4月27日にHDリマスター版が発売。対応機種はNintendo Switch(DL専売)の他、iOS/Andoroid版も配信されている。価格は2,860円(税込)。
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最終更新:2023年07月30日 21:41

*1 『ユグドラ・ユニオン』のシステムにおける性別は、これひとつで陣形が変わる程に重要な要素。

*2 キーパーソンのエイミに限って、他のキャラと比べると頭身がおかしく浮いている。

*3 とある人物と決別する際に自分の本当の家族であって欲しかったとガルカーサが告白する会話があるが、彼の出生や家族関係が語られるのはその次のマップが初である。それまでは彼が孤児なのかさえも判明していないため、話の重みを損している。そしてその生い立ちが語られるマップでは彼にとって大切な人物を手にかける事となるが、その相手が登場するのもガルカーサがその存在を口にするのもそこが初めてなのでまるで感情移入出来ない。