音楽ツクール かなでーる

【おんがくつくーる かなでーる】

ジャンル 音楽制作ソフト
対応機種 スーパーファミコン
発売元 アスキー
開発元 サクセス、アークシステムワークス
発売日 1996年4月12日
定価 7,800円
プレイ人数 1人
判定 なし
ポイント 唯一無二のSFC用音楽制作専用ソフト
音楽データはRPGツクール2で使用可能
操作性に難ありも、DTMのハードルを下げる可能性を示した
ツクールシリーズリンク


概要

「アスキーツクールシリーズ」として『RPGツクール2』の約2ヶ月後に発売された、SFC唯一とも言える音楽制作専用ソフトである。
後に「サウンドノベルツクール」が発売され、同年発売のツクールはこの3製品の充実したラインナップとなった。
音楽制作ツールを内包したゲームソフト自体は『デザエモン』『マリオペイント』など従来より存在していたが、「音楽制作」に特化した単独ソフトとしては全SFCソフトの中でも唯一となる存在である。

  • 純粋に音楽の「打ち込み」を行うゲームソフトである。
    • そのため、楽譜や音楽の基本は理解していることが前提となっている。楽譜や音楽理論に関するチュートリアルは一切ない。
    • 「イメージと調(キー)を入力したら楽曲が浮かび上がる」「主旋律だけ入力してリズムパートは自動生成」などの機能はない。すべての音を自力で打ち込む必要がある。
  • RPGツクール2』『サウンドノベルツクール』への楽曲使用が可能である。
    • 本作で制作した楽曲は、本作より前に発売された『RPGツクール2』、後に発売された『サウンドノベルツクール』の各作品で使用可能である。ただし別売のメモリーパックが必要である。

特徴

  • 全8パート構成、1パートにおける同時発音は1音(よって全パートでの最大同時発音数は8音)
  • 分解能32分音符まで
  • 44音色(うちPSG系16音色)
  • 打ち込みはスコアエディタ(譜面入力)のみ。ピアノロール画面などはない。
  • エフェクトはパートごとの「エコー」の有無のみ
  • 歌詞入力が可能
    • 1枚絵の上に曲に合わせて歌詞を表示する「ジュークボックス」機能も装備。カラオケボックスのような雰囲気も可能。
  • 外部保存機器(メモリーパック、ターボファイル)対応
  • サテラビュー対応
    • ただしサンプル楽曲の配信にとどまり、『RPGツクール2』のような制作素材の追加は行われていない。

評価点

  • ツールとしての破綻がない
    • 前例のない専用ツールにもかかわらず、楽曲が再生できない、入力通りに再生されないといった重大なバグはなく、最低限のことをこなすことは十分に可能である。
  • 収録サンプル曲の質が高い
    • サンプルデータとして収録されている楽曲は大半がオリジナル曲となっている(同じ開発元のサクセスによるアーケードゲーム『コットン Fantastic Night Dreams』のテーマ曲*1、および童謡「ちょうちょ」を除く)。オリジナル曲は基本的にいずれも良質で好評を博している。
    • 中でも「永遠のLabyrinth」(ファイル名「ラビリンス」)、「20世紀最後のダイアモンド」(ファイル名「ダイヤモンド」)「Day Dream」(ファイル名「デイドリーム」)」などのフルコーラス曲は8和音かつ限られた音色という大きな制約がありながら貧弱さを感じさない作りであり、評価が高い。
      • サンプルデータは打ち込み画面にロード可能である。打ち込みデータを見ると同時発音1音の中でリズムパートなどに多くの音を盛り込む工夫がふんだんになされているのがわかる。SFC時代の楽曲制作の苦労、工夫自体が垣間見えるという点で貴重な資料でもある。
      • 「20世紀最後のダイアモンド」「Day Dream」はよほど好評だったのか、次作『音楽ツクール かなでーる2』にそのまま*2収録された。
  • ドラムキットの音色が充実している。
    • バンド用のドラムセットからラテン系パーカッションまで幅広く充実しており、音圧もそこそこあり、SFCレベルでは十分に実用的な音色である。

問題点

  • スコア入力の操作性が良くない
    • マウス非対応のためすべてコントローラーで行う必要があるが、音符の長さの変更や変音記号の入力には画面最下部下の操作パネルを経由しなければならず、手間が大きい。
    • ショートカットなどもほぼ用意されておらず、画面下のパネルと画面上の譜面を行ったり来たり。しかもカーソル移動も高速とは言えない。
      • 前例がない作品のため仕方がないと言えなくもないが、「操作性は『デザエモン』や『マリオペイント』の付属ツールに劣る」と評する声も少なくない。本作は専用ツールでありそれらより搭載する機能が多いとはいえ、もう少し改良の余地はあったであろう。
  • 1曲あたりの容量制限が厳しい。
    • 先に述べたサンプルの「フルコーラス曲」は、フルといっても「イントロ→Aメロ→Bメロ→サビ(→Bメロ)→サビ」の構成にとどまる。これを超えるサイズの曲を作ろうと思っても容量オーバーする(打ち込み中にアラートが表示され、それ以上入力できなくなる)。一般的な「フルサイズの歌唱曲」を作るのは難しい。
  • カセットへの保存可能容量が非常に少ない。
    • 先の「フルコーラス曲」サイズだと1~3曲で上限に達する。多くの曲を保存するには外部機器が必須。
  • カセットへのデータ保存時に容量オーバーとなった場合、何のアラートもなく保存に失敗する
    • 保存に成功した場合も同様に何のメッセージもなくセーブ画面が終了するのみであるため、「保存操作を完了したように見えて実は保存できていなかった」という事態が普通に生じる。制作ツールとしては大きな問題である。
      • 新規保存時なら保存操作後にファイルの有無を確認可能だが、上書き時は無理。
      • 実は保存時の「間」でもある程度判別可能。保存成功時はセーブ実行からセーブ画面終了までに書き込みを行う「間」が発生するが、容量オーバー時はそもそも保存処理自体がスキップされているのか「間」が一切なく直ちにセーブ画面が終了する。これに気づければ「異常に早く終了した」と保存失敗に気づけるようにはなる。しかし小さめのファイルだと正常な「間」も短く、判別に限界がある。
      • 確実な判別にはデータロードしてみるしかないが、もちろん失敗していれば編集画面が旧データで上書きされアウトである。
  • 音色のバリエーションが46種と少ない
    • 一般的なDTM用途に必要な音色がもれなく揃っているとは到底言いがたい。ギターのバリエーションが極めて少ない、ストリングスはアンサンブル2種類のみでヴァイオリンなど個々の楽器はない、金管楽器はブラスセクションのほかトランペットとサックス2種(なぜサックスだけ2種も?)のみ、など。
      • 例えば『デザエモン』は、シューティングゲームのBGMとしての汎用性の高い音色に絞りつつ、伴奏パートを用意することで質の高さと汎用性を両立していた。DTMレベルの自在な作曲はできなくなるにしても、そういった選択肢もあったのかもしれない。
    • 一方で、PSG系(FCやGBなどのいわゆる「ピコピコ音」)はたとえば矩形波だけでも8種類用意されているなどやたら充実している。にもかかわらず三角波、ホワイトノイズなどFCやGBの主要音色の一部は非搭載であり、PSG特化ツールとしては中途半端。
      • こういった制約の中でツクってこその醍醐味という意見もあるだろうが、もう少し取捨選択の余地があった印象は否めない。
  • 設定上、曲中の転調や変拍子が不可能。全体で一つの調、拍子となる。
    • あくまで表示上の話であり、変音記号(シャープやフラット)の入力を細かく調整すればサウンドとしての転調は表現可能である。ただし本来あるべき譜面から解離することになる。
    • ファイル作成時、デフォルトでオンになっている「自動休符」機能をオフにすると小説末尾に休符がない場合空白として認識されるため、これをうまく使えば曲中の変拍子はサウンドとしては表現可能ではある。
  • 楽曲プレビューが「曲頭から全パート再生」か「表示中の1小節のみ全パート再生」に限られる。
    • 制作の場で頻用する「曲途中から再生」「1パートのみワンタッチで再生」などの機能はない。
  • ジュークボックスの歌詞表示が「1文字ずつ、発音と同時に表示される」という独特な方法。
    • 「歌詞を見ながら歌う」用途には使いづらい。

総評

DTM/DAW*3は、今でこそPCおよびソフトウェアシンセサイザーの高性能化、VOCALOIDや動画共有サイトの普及などによりのハードルがかなり低くなっている。
しかし本作発売当時は「DTM」という概念自体普及しているとはいえず、PCでの音楽制作といえば「外付けのシンセサイザー類を特殊なケーブルでPCに繋ぎ、マニアックなソフトウェアで行う非常にニッチな趣味」というイメージであった。
そんな中、このソフトは一般家庭に普及していたスーパーファミコンだけでDTMを可能とする、SFCの持つ新たな可能性を示した意欲作と言える。
操作性など粗削りな部分も多く、1パート1音などハードウェア的制約は厳しかったが、データ容量に関する事項を除けば際立ったバグはなく、とにもかくにも唯一無二の存在として立場を確立した。
ニッチなジャンルでありながら、短期間で次作『音楽ツクール かなでーる2』が発売されたことも、本作が一定の支持を獲得した証拠と言えるだろう。