Return of the Obra Dinn

【りたーんおぶじおぶらでぃん】

ジャンル ADV
対応機種 Windows
MacOS
発売元 3909
開発元 Lucas Pope
発売日 2018年10月19日
定価 2,050円
判定 良作
ポイント 過去を見られる懐中時計で乗客60人全員の末路を推理
古典コンピューターゲームリスペクトの白黒「1ビット」グラフィック
備考 日本語対応



「オブラ・ディン号」

情報、求む
1803年、航海中に消息を絶つ
竣工年・場所:1796年、ロンドン ~ 800トン、喫水18ft
船長:R. ウィッテレル ~ 船員数:51名
最終航海の目的地:東方 ~ 喜望峰に予定どおり到着せず
同船に関する証言および質問は
イギリス東インド会社まで

概要

入国審査官ゲーム「Papers,Please」で複数の賞を受賞したゲームクリエイターLucas Popeによる2作目の商業作品。発売当初から独特の雰囲気と緻密なゲームデザインによりSteamで高い評価を得た。
プレイヤーは東インド会社の保険金捜査官となり、数年前に消息を絶った後、突然戻ってきた幽霊船「オブラ・ディン号」を捜査し乗客たちの辿った運命を推理していく。
開発コンセプトの中心に古き良きコンピューターアドベンチャーゲームへのリスペクトがあり、白と黒の「1bit」で表現したグラフィックが特徴的。

特徴

  • 人物の死の瞬間の光景から乗客60人全員の安否(fate)を推理
    • 主人公は乗員の遺族に渡す保険金算定のためにオブラ・ディン号に乗り込んだ捜査官。正確な保険金の資料作成のためには船に乗っていた乗員・乗客60名全員の身元と安否を特定しなければならない。
    • プレイヤーは「メメント・モーテム」という不思議な懐中時計を使って、死体となった人物の最期の瞬間の光景を見ることができる。ゲームの最終目的はこの懐中時計を駆使して、人物の外見(スケッチ)と名前、死因を一致させ、オブラ・ディン号で起きた惨劇の記録である手記を完成させること。
    • 死亡直前の数秒間の会話も同時に再生されるが、直接登場人物の名前が呼ばれることは稀。そのためプレイヤーは、登場人物の服装、国籍、船員番号、などさまざまな情報を組み合わせて人物の特定を進めていく。乗員の中には最期の瞬間が明確に描かれず前後の流れで死因を推測する必要があるものや、公式に「消去法でしか特定できない」と明言されているキャラクターもいる。
    • 身元及び死因が正しく書き込まれた人数が3人増えるごとに情報確定の演出が挿入される。
    • 身元は最初の段階で全員分記入可能だが、確定する情報が出ていない段階ではまだ判別不可能という注意書きが表示される。既存の情報で身元の判明が可能になった人物はその注意書きが出なくなり、スケッチの顔がハッキリと表示されるようになる。
  • 死の瞬間のリンク
    • ある人物の死の瞬間の場面に他者の死体があった場合、その死体から別の死の瞬間にリンクすることができ、それを辿ることで見ることの出来る場面が連鎖的に増えていく。
    • このリンクは自動で行われるため、「死の瞬間の中をリンクを探して歩き回る」と言う面倒な作業を行う必要がない。*1
    • ただし、後述の様に長いリンクの連鎖は自分のペースで探索できないジレンマもある。
  • 1ビットグラフィック
    • 古き良きコンピュータアドベンチャーゲームへのリスペクトを込めた白と黒1bitのグラフィック。2つ以外の色は使わずグラデーションや影も白黒だけで表現している。
    • デフォルトはMacintosh風であるが、オプションからIBMやZenith、Commodore、LCDなど、様々なレトロPC風のグラフィックに変更することも可能。

評価点

  • 手ごたえのある謎解き
    • 保険捜査官である主人公の目的はオブラ・ディン号の乗員・乗客60人全員の名前とスケッチを一致させ、その安否を推理すること。
    • 最期の瞬間の会話において直接登場人物の名前が出てくることは少ないため、過去の光景や乗員名簿などの資料をヒントに一人ひとり推理していくことになる。
    • 基本的にはヒントは素直なものだが、たまにミスディレクションがある。最期の光景をしっかり見ないと死因を誤ることも。
    • 過去の映像を見るたびに特定可能な人物のスケッチがハッキリ表示されるようになるという仕様はあるが、推理する順番はプレイヤーの自由。全ての過去の映像を見た後に推理を開始してもいいし、まだ特定不可能な人物を決め打ちで推理することもできる。
    • 3人ずつの情報確定仕様もある種の救済措置になっており、これにより多少適当でも推理を進めることができちょうどいい難易度になっている。
  • グラフィック
    • 白黒1bitのレトロコンピュータ風グラフィックで描かれた独特の雰囲気。
    • 「最期の光景」で映し出される静止した景色は迫力と同時に美しさもあり、アートとしても評価されている。
  • 充実した補助機能
    • 過去の光景の中で人物に視点を合わせると背景に自動的に人物のスケッチが現れたり、手記の中で特定の人物が登場する回想すべてにブックマークを挟む機能があるなど、推理を助ける機能が充実している。60人分の推理は大変だが、これらの機能のおかげで煩わしさは少ない。

賛否両論点

  • 自動化による弊害
    • 死の瞬間のシーンは、初めて開いた時は時間経過で自動的に一度終了し、手帳にサマリーが書き込まれる。
      • この際、死亡した人物の詳細を手帳に書き込めるのはサマリーが自動で書き込まれた後のため、早く書き込みたい時でも時間経過を待つ必要がある。
    • また、死の瞬間のリンクはサマリーが書き込まれた後に手帳を閉じると自動的に発生し他の場所に強制移動させられるため、死の瞬間の中で見落とした・もう少し確認したい場面があってもしばらく戻ることができない。
    • 手帳への記入を無理にいそがず、見ることができる死の瞬間を増やしていく方がゲーム的に有利であるが、場面場面で立ち止まってじっくり考えたい派のプレイヤーにとってはやきもきさせられる要素となっている。
  • 「答え合わせ」を前提とした一部の推理。
    • 死の場面だけでは判りづらいが前後の場面から推測しやすい「ナイフによる殺害」はともかく、「溺死」と「船外への転落」の違い*2、推理要素がまったくないある国籍の乗組員の名前など*3、答え合わせ機能を前提とした推理は王道ミステーリファンからは邪道と思われるかもしれない。
    • 公式として「使える知識は全て使う」(ゲーム外で仕入れた知識も含む。ただしゲームそのもののネタバレは除く)ことが推奨されている以上、ゲームシステムそのものを推理に組み込むのはゲームデザインとして想定されていると思われ、コンピュータゲームならではの新しい試みではある。

問題点

  • 白黒グラフィックにより分かりにくい死因
    • 一部のキャラクターの死因は白黒のグラフィックのせいでわかりにくいものがある。特に「焼死」の炎のエフェクトが分かりづらい。
  • やや消化不良なエンディング
    • 最終的に60人全員の安否は明らかになるが、事件の原因となった奇妙な宝物の正体や、それによって呼び出された化物、プレイヤーが使うメメント・モーテムの出自などは明らかにされない。主人公はあくまで保険調査官なのでそこは本来の目的ではないということなのかもしれないが、消化不良を感じる人も。
  • リアルの知識を前提とした人物特定
    • 一部のキャラクターの特定には現実の知識が必要になるものもいる。
      • ある国の伝統的タトゥーについて知らないと特定できない人物が存在し、序盤で特定可能になるにもかかわらず、タトゥーの知識がないと判別不可能。あからさまに目立つタトゥーを全身に入れている為、「どこかしら他の人間と違う国の出身」までは絞れなくはないが、そこまで行っても何択かで自動穴埋めに頼るか、終盤まで残って消去法で当てるかになってしまう。
  • 一部の実績の理不尽さ
    • 恐らく、大抵の人は残った1つの実績の解除に四苦八苦することになる。フルオートセーブのため、途中セーブを残しておいて条件を試行錯誤することができないので、ネタバレなしで実績解除にこだわる人は不毛な周回プレイをそれなりに繰り返すことになるだろう。
    • 通常プレイではありえない結末を迎える必要があり、ゲーム本編の謎にはまったく係わらないお遊び要素なので、ここだけはスポイラーもやむなしと割り切っても良いだろう。

総評

 プレイヤー自ら手掛かりを集め、資料を見比べながら人物を特定していくゲームプレイは自分が本当に探偵(保険捜査官)になったような没入感がある。60人分の安否を推理するというと難しそうに思えるが、数ある補助機能のおかげで煩わしさは少なく、出されるヒントも一部のミスディレクションを除けばフェアなものばかり。ちょっとした気づきで複数人分の手がかりを一度に得たり、一人の安否特定から連鎖的に人物の特定が進む快感もある。
 登場人物の死の瞬間の光景は「3Dの絵画」とも評され、迫力と美しさを兼ねたグラフィックは必見。
 グラフィックのせいで分かりにくい部分や、ちょっとしたミスディレクションもあるが、3人ごとに答え合わせするシステムのおかげで多少ゴリ押しでもクリアできる絶妙な難易度になっている。
 インディーミステリーアドベンチャーの名作。手ごたえのある謎解きゲームがやりたい人にはぜひ手にとってもらいたい。