LUNAR ザ・シルバースター

【るな ざ しるばーすたー】

ジャンル RPG
対応機種 メガCD
発売 ゲームアーツ
開発元 ゲームアーツ
スタジオアレックス
発売日 1992年6月26日
価格 7,800円(税別)
プレイ人数 1人
セーブデータ 3個
判定 良作
ポイント 王道RPG
豊富なビジュアルシーン
LUNARシリーズ
THE SILVER STAR (STORY / LEGEND / ハーモニー) /
ETERNAL BLUE (LUNAR2) / さんぽする学園 (魔法学園) / ジェネシス


概要

後に名作『グランディア』を生み出すゲームアーツが開発したRPGであり、LUNARシリーズの第1作目。
「青き星」を廻る魔法世界「ルナ」*1を舞台に、「ドラゴンマスター」に憧れて旅をする少年アレスと幼馴染の歌姫ルーナのドラマが展開する。


ストーリー

女神アルテナと彼女を支える4体のドラゴン、
そしてその庇護を受ける伝説の勇者ドラゴンマスターらによって治められてきた“魔法世界ルナ”。
しかし、いつの頃からか女神アルテナはその姿を現さなくなり、
先代のドラゴンマスターであるダインを最後に勇者も生まれなくなっていた。
そのルナを、魔法皇帝を名乗る男が手中に収めようとしていた。

15年前の戦争で活躍した四英雄の活躍がまだ記憶に新しい頃、
魔法皇帝の噂もろくに届かないほどの世界の片隅にあるダインの故郷、ブルク村に住む少年・アレスは、
ドラゴンマスターとなることを夢見て冒険の旅に憧れていた。
ある時、友人のラムスから白竜の洞窟への冒険へと誘われたアレスは、その小さな冒険に旅立っていった。
村の歌姫であり、彼の幼馴染でもある少女ルーナ、そして小さな謎の生物、ナルと共に。
彼の冒険はゆっくりとルナの世界を変えていくこととなる。

(Wikipedia参照)


特徴

  • 戦闘に「移動」と「距離」の概念を導入しており、味方であるちびキャラが敵に攻撃する時に移動する。
    • 距離が遠いと移動だけでターンを消費したり、移動する範囲によって攻撃できない事がある。単なるコマンドバトルに留まらない戦略性を備えている。
  • どこでもセーブができる。
    • これにより、いつでも好きなところでゲームを中断できるが、建物の中、ダンジョン内などといった特定の場所ではセーブできない。
      • 専用のカートリッジでセーブデータを増やせる。
  • 町の中に宿屋がない
    • 代わりにワールドマップ上の回復ポイントを調べたり、神殿で「体を休めさせてください」を選択するとパーティー全員のHP全回復する。無料なので宿代の心配がない。
  • イベントシーンの要所にビジュアルシーンが挿入される。
    • さらに、重要なイベントとビジュアルシーンには井上喜久子氏、納谷六朗氏、佐久間レイ氏、北村弘一氏の4名の豪華声優陣によるキャラクターボイスが対応されており、ゲームの楽しさを盛り上げてくれる。
      • 主人公アレスは喋らないタイプの主人公だが、エンディングの一部のシーンのみ声付きで叫ぶ。そのシーンの担当はエンディングのスタッフロールに公開されていないが、開発スタッフの折茂賢司氏(説明書に記載)。

評価点

  • 王道で完成度の高いストーリー。
    • 英雄に憧れる少年が旅を通じて成長し、やがて世界の命運を賭けた戦いに巻き込まれ、好きな女の子を救うついでに世界も救ってしまうという極めてベタな王道ストーリー。しかしその完成度は高い。
      • 世界の存亡に関わる存在はヒロインの方であり、主人公は選ばれし勇者でも英雄でもない普通の少年に過ぎない。しかし普通に過ぎないからこそ、多くの人々と出会いによる成長や、仲間に支えられながら世界の危機に抗っていく過程がしっかり描けている。世界を救う為に戦う英雄ではなく、普通である主人公がヒロインの為に戦う等身大の物語は感情移入度が高い。この点は後の『グランディア』に通じる所がある。
    • 一つ一つのイベントが丁寧に描かれており、展開も起伏に富んでいる事で飽きさせない。王道の範疇ではあるが、時には意外な展開や壮大なイベントも入り、特に中盤以降は終始プレイヤーを惹きつける展開が続く。
    • 登場人物も皆キャラが立っている。仲間達には漏れなく見せ場が用意されており、感情移入しやすい。
      • 敵側もそこに至った過程が描かれるので、単なる悪の集団ではない独自の魅力を持っている。一方で作中ではかなり過激で大規模な事件を起こしており、しっかり悪の役割も果たしている。
    • そう言った物語を経たエンディングも、これまた王道だがそれ故に素直にプレイヤーの涙腺を刺激してくれる。クリア後には大きな満足感を得られるだろう。
  • 後に『アイドルマスター』のキャラデザインを手がける窪岡俊之氏によるキャラクター達も好評。
    • メインキャラはもちろんの事、街を歩くNPCも人間味溢れる作りになっている。
      • 向こうが一方的に話すのではなく、殆どの場合で主人公達が受け答えし、更に再度話しかけると台詞が変わる事も多い。そしてストーリー進行に応じて台詞が変わる事も。
    • この点も続編やグランディアシリーズに受け継がれていく。
  • ストーリー自体の良さに加え、豊富なビジュアルシーンが物語に没入させてくれる。
    • ヒロインが不思議な歌を持つ少女という設定を反映し、作中でも実際にヒロインの歌が流れるという演出も盛り込まれている。
    • オープニングには主題歌も流れ、ストーリーの内容を表現したビジュアルムービーによって宛らテレビアニメのOPのような演出になっている。
    • サブイベントとして、「せっけん」を持っていると見られる水浴びのビジュアルシーンまである。
      • 女の子達のサービスショットは当然ながら、野郎共の戯れも平等に用意されて御座います。
  • 岩垂徳行氏や溝口功氏の作曲したBGMの完成度もどの曲も非常に高い。*2
    • BGMはCD-DAで流れている関係からオーケストラ調の曲が主軸で、牧歌的な曲から荘厳で重厚な曲までバリエーションも豊富。
  • ゲーム中盤以降から入手できる重要アイテム「白竜の翼」が使いやすい。
    • このアイテムは一度行ったことのある町や村を消費MP0でワープできるので便利。
  • データの読み込み速度が速い
    • 戦闘、イベントなどでCDを読み込む速度が速いのでプレイヤーを苛立たせる事が少ない。
    • フィールド・ダンジョンのマップはかなり広いものの、移動速度も相応に早いため快適。
  • 敵のバリエーションは豊富で、同キャラの色違いなどによる使いまわしがほぼ皆無。
  • 全状態異常に持続するものが1つもない。
    • HP0の「戦闘不能」を含めた戦闘における全ての状態異常は戦闘終了後に回復するので、わざわざアイテムを使ったり治療しに行く必要が無い。

賛否両論点

  • ヒロイン「ルーナ」と、冒険の言い出しっぺである「ラムス」の出番が少ない。
    • この2人は序盤に仲間になるものの、ルーナの場合、序盤でアレスが故郷から船で旅立つところで別れる上、中盤で悪役にさらわれ、これ以降から永久離脱となる。ラムスの場合、船で旅立った後に最初に訪れる街のダンジョンをクリアすると以降は永久離脱という仕組みになっている。ルーナの方はヒロインなので以降もストーリーに絡む訳だが、ラムスはその後はメインストーリー上は出番は無い。
    • ラムスは途中で商人を志して離脱する流れだが、そもそも本人は「都会に出て大金持ちになる」という個人的な夢の為にアレス達を冒険に誘ったのであって、冒険自体にはさほど思い入れはなかった。当初からも台詞の節々にそれを窺わせている。
    • 一方、ルーナの方は物語の本筋が「ルーナを助ける為の旅」であるのに出番が少ない上に、別れてから攫われるまでの期間もそれなりにある為、少々思い入れが湧き辛い。
      • リメイク版ではルーナは永久離脱までパーティーに残るように展開が変更され*3、加入期間が延びた事で感情移入し易くなった。ラムスの方はリメイク前のままである。
  • 主人公が基本的に喋らない。
    • ナルという代弁者がいるのでストーリーが成立しないことは無い。感情移入し易いというドラクエタイプ故の利点もあり、エンディングで叫ぶシーンの印象を強めてもいる。
    • しかしストーリー重視のRPGとしてはやはり寂しい部分があるのも確かである。
    • リメイク版では喋るようになった。

問題点

  • エンカウント率が高い。
    • 街にたどり着くまでの間やダンジョン内での探索で頻繫に敵と遭遇しやすい。
    • 戦闘がタクティカルバトル形式なのもあり、ゲームのテンポはあまり良くない。
  • ボイス入りのビジュアルシーンが少ない。
    • 参加声優は上述した四名のみで、それぞれが声優が担当したキャラ+エンディングの主人公以外には声がない。声付きのキャラが登場する重要なシーンやエンディングなどに限られており、それ以外は普通にテキストが表示されるのみ。
  • 船などの乗り物があるが、自動で目的地まで移動するため、手動で移動できない。
    • この仕様のためか、徒歩では行けない場所へ移動できない。
    • 中盤からは上述した白竜の翼が手に入る為、ゲームプレイ面での問題は無いが。
  • 「宿屋無しで回復」は逆に言えばそこでしか全回復が出来ないという事でもあり、いざという時に移動しなければならず面倒な事も。
  • メニュー画面、戦闘画面におけるアイテム、魔法の説明がない。
    • これのせいでアイテムの魔法の効果が分かりにくい。
  • 全滅すると最後にセーブした箇所からやり直しか最後に立ち寄った街に戻るかを選択する事になる。
    • しかし後者を選択すると経験値、お金などが全滅前の状態に戻されてしまう為、結局セーブした箇所からやり直しになることに変わりはない。ほぼ意味のない選択になっている。
  • 戦闘における敵味方キャラクターのアニメーションが少ない。
    • これらのアニメーションは攻撃、防御、状態異常の3つしかなく、臨場感が味わいにくくなっている。
  • 町から建物、ダンジョンの切り替え等の際に方向キーを入れ直さないと動かない。小さな事だがラストまで進んでも慣れる事がない。

総評

王道を突き詰めた秀逸なストーリー、魅力的なキャラ、抑え気味の難易度でとっつきやすいシステムなど数々の魅力から人気が高く、
今も尚、続編と共に多くのファンを持つ名作RPGである。
このストーリーとシステムを両立した丁寧な作りは続編や『グランディア』にも受け継がれていった。


移植・リメイク

  • SS/PS/Win『LUNAR シルバースターストーリー』(1996年(SS)/1998年(PS)/1999年(Win)、角川書店)
    • セガサターン、プレイステーションで発売されたリメイク。
    • 声優が新たに多数起用され、既存のキャラの声優も変更されている。
      • オリジナル版ではエンディングでしか喋らなかった主人公アレス役には石田彰氏が起用され、オリジナルの四名の声優はそれぞれ氷上恭子氏、萩森侚子氏、梁田清之氏*4、屋良有作氏に交代した。
      • 更に仲間達は勿論の事、多くのキャラに声が付いた。男性キャラには大塚明夫氏や阪口大助氏、関智一氏が、女性キャラにも浅田葉子氏に池澤春菜氏などといった豪華声優陣が起用されており、ストーリーを更に盛り上げてくれる。
    • ビジュアルシーンはアニメ化され、合計50分にも及ぶハイクオリティなアニメシーンが収録された。尚、この『シルバースターストーリー』こそが日本初の長編フルデジタルアニメ作品である。
      • オープニングもムービー、主題歌共に一新された。新規主題歌「TSU・BA・SA」はMCD版の「LUNAR」とかなり雰囲気が異なるが、本作の世界観に非常にマッチした名曲である。
      • サターン版は後にムービーカード対応版も発売。ムービーがフルサイズで出力されるようになり、プロマイドも数点追加された。
    • ストーリーの大筋は変わっていないが細部は大幅に加筆修正されており、よりドラマチックな展開になっている。特に後半~終盤の展開はオリジナルとかなり様変わりしている。また、一部設定やキャラの性格にも変更があり、新キャラも追加されている。
      • 主人公アレスも普通に喋るようになった。また、ヒロインのルーナは中盤に攫われるシーンまでアレスと行動を共にするようになった。
        オリジナル版の名残なのかアレスの台詞は少なく、システム上無口なのではなく実際に無口な性格になってしまっている。ストーリー前半はドラクエタイプ主人公と言われても頷けるくらい殆ど喋らない。しかしここぞと言うイベントシーンではしっかり口を開き、ストーリーが進む毎に喋る機会も徐々に増えていく*5
      • また新キャラの追加によりMCD版には無かった魔族側の複雑な事情や葛藤という裏面も描かれており、ラストシーンでは魔族にも一応の救済がなされている。
      • スタッフロールでの仲間達の後日談を描いた背景イラストは無くなったものの、ラスボス撃破後のクライマックスシーンはよりドラマチックな展開に拡充されており、一連の流れがフルアニメで展開される事で感動を何倍にも引き上げている。更にはスタッフロール前に街を歩き回って今まで出会った人々と会話が出来るようになっており、感慨深いエンディングになっている。
      • しかし全体的にエピソードが強化されている一方、仲間の一人のナッシュは「裏切るフリをして敵の懐に入り込み、重傷を負わされながらも情報を得て戻ってくる」という見せ場が無くなり、終盤に「恐怖心から本当に裏切って主人公達と戦い、最後は説得を受けて戻ってくる」というエピソードが追加されるなど、キャラの下方修正の例も無い事も無い*6
    • システム面も幾つか変更が施されている。
      • 上記の「宿屋なしで回復」は各地の街やダンジョンに置かれたアルテナの女神像で手軽に行えるようになった。
      • エンカウントはシンボルエンカウント方式に変更され、更にフィールドでのエンカウントも無くなった。エンカウント率が高いという問題点が解決されている。
      • バトルもバランスや演出に調整が入っている。技や魔法を使った際のボイスも追加された。
    • どこでもセーブが強化された。
      • これにより、ダンジョン内、建物の中でもセーブが可能になっている。ボス戦前でももちろん可能だが、ラスボス撃破後も可能になってしまい、ラスボス撃破後にセーブすると後はEDを見るだけとなってしまう。
  • GBA『LUNAR ~レジェンド~』(2002年、メディアリング)
    • 上記リメイク版をベースにした新たなリメイク。
  • PSP『LUNAR ハーモニーオブシルバースター』(2009年、ガンホー・ワークス)
    • シナリオの追加や、描き下ろしグラフィックスの追加、既存ムービーやサウンドのリマスタリー等が行われている。
  • メガドライブミニ2収録版(2022年10月27日)
    • オリジナル版であるメガCD版『LUNAR ザ・シルバースター』を収録。

余談

  • 後半に差し掛かる頃、サブキャラクターで弓の使い手である「テムジン」が一時加入するのだが、彼の妻で鞭の使い手である「ピリア」も元々は共にパーティーに加わるキャラクターとなる予定であった。
    • しかし製品版ではオミットされてしまい*7、その後も数度のリメイク版が出たにもかかわらずにパーティー入りは叶わなかった。
    • その名残のように、オリジナル版のエンディングで仲間達が集合するシーンには、パーティーキャラに混じってテムジンとピリアが登場している。
  • 現在、続編の『LUNAR ETERNAL BLUE』はPS版(『LUNAR2 ETERNAL BLUE』)がゲームアーカイブスで配信されているが、本作のPS版はされていない。
    • PSP版『ハーモニーオブシルバースター』のDL版が既に配信されている関係と思われる。
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最終更新:2023年12月08日 23:25

*1 名前通り月をモチーフとしており、「青き星」は地球に相当する。

*2 本作が発売される半年ほど前、岩垂氏と溝口氏は当時所属していた音楽制作会社のCUBEから独立し、新たにツーファイブを立ち上げているが、岩垂氏の話では楽曲制作がちょうどその時期と重なっていたとのこと。

*3 ルーナが故郷に残ろうとするのは同じだが、MCD版では無言だったアレスが「一緒に行こう」と誘った事で急遽船に飛び乗る流れになった。

*4 当該キャラが続編に再登場した際にはMCD版の納谷氏に戻っている。

*5 特にラスボス撃破後のムービーで「ブルグに帰ろう」とアレスが喋る。

*6 それでいてラストダンジョン突入前に戦意喪失するシーンは健在なので、オリジナルに比べてとにかくヘタレなキャラになってしまった。勿論、改心や再起のシーンはしっかり描かれるが。

*7 そのためかテムジンは初作では実際にパーティに加入した際の装備は弓ではなく鞭であった。