穢翼のユースティア

【あいよくのゆーすてぃあ】

ジャンル アドベンチャー
対応機種 Windows XP~7
新装版:Windows:7/8.1/10/11*1
発売・開発元 AUGUST
発売日 初回版:2011年4月28日
通常版:2011年7月29日
定価 8,800円(税別)
レーティング アダルトゲーム
配信 【新装版】FANZA:2016年11月22日/8,424円
判定 良作
ポイント 意欲的なダークファンタジー
全体的に高水準


概要

  • FORTUNE ARTERIAL』『夜明け前より瑠璃色な』等の学園もので好評を博していたAUGUSTの6作目(ファンディスクや派生作品を除いてカウント)。
  • 本作は学園ものではなく、これまでと毛色が違う作風である。

ストーリー

悲劇は往々にして不条理なものだが、これほど不条理という形容がしっくりくる悲劇もなかった。

その日、この都市の一角が多くの人命と共に大地へと崩落した。
性別、年齢、人間性、地位、経済力……
犠牲者に一切の区別はなく、ただそこにいたという一事だけが、彼らの命を奪った。
なぜ死なねばならなかったのか。
無数の死に何の意味があったのか。
答えはなく、残された人々に与えられたのは、輪郭のない茫洋たる喪失感だけだった。
後に “大崩落(グラン・フォルテ)” と呼ばれる悲劇だ。
あれからずっと、この都市 『ノーヴァス・アイテル』 には不条理の雨が降り烟っている。
上層から下層へと、都市を濡らした水は低きへ流れ、やがて牢獄に聚まり澱む。
嵩を増す汚水を取り除く術もないまま、囚人たちはただ喘ぐ。

いつの日か、この都市に陽が差す時が来るのだろうか。
(公式サイトより抜粋)

特徴

  • 選択肢で展開が変わるアドベンチャー
    • 選択肢の数は普通程度で難易度は低め。
  • 構成
    • 事実上のトゥルーエンドとなるヒロインが存在する。
    • 途中でそれ以外のヒロインの個別ルートに入ることが可能で、入ると物語が終了する。
    • 基本的に一本道で、途中の分岐先は行き止まりのようなものである。
  • おまけ(APPENDIX STORY)
    • 本編の進行具合に応じて解禁される要素。
    • 17の短編があり、サブキャラのエロシーンはここで補完される。

評価点

  • 独特な舞台設定
    • 富裕に応じて、物理的に3層に分かれた異世界が舞台。
    • 「牢獄」と呼ばれる最下層は、暴力や娼婦も多いスラムのような有様。
    • そんな状況で何とか生きる術を見出すキャラクター達は実に魅力的。
  • ストーリー展開
    • ヒロインのティアが惨殺されるところから始まり、気を引かせるのに十分な冒頭。
    • その後、記憶を失うも謎の力により復活するティア。しかし発覚次第隔離される羽化病にかかっているため、復活した理由や記憶といった重要な情報を得たいカイムと共同生活を送ることとなる。
    • 隔離される羽化病患者の真実・ティアが復活した理由・舞台が形成されるまでの経緯など次々と謎が提示されては明らかになっていく展開は、読み手を飽きさせず、最後には大作映画を見終えたような感動を味わえる。
  • キャラクター
    • カイムに買われた娼婦エリス、治安を護る女隊長フィオネといった風変わりな立ち位置のヒロインが多く目新しい。
    • 各自目的はバラバラではあるが、精一杯生きる姿は見る者に勇気を与える。
    • 立ち絵のある男キャラも多く、舞台設定の根幹を支え、戦闘シーンを盛り上げている。
  • グラフィック
    • これまで同様AUGUSTを支えてきたべっかんこう氏によるキャラクター造形は評価が高い。
      万人受けしやすいデザインであり、本作のとっつきやすさに大きく貢献している。
    • ゆうろ氏による、細部の小物まできっちり描き込まれた背景も大きな魅力の一つであり、スラム街の空気を上手く描写できている。
    • CG鑑賞では裸を含む立ち絵や背景のみの鑑賞も行える。
  • 主人公のカイムも含んでフルボイス
    • ただし、エロシーンではカイムのボイスのみ消える。
    • 声優の熱演は場面を大きく盛り上げている。
  • BGM
    • アレンジを含むと全48曲存在し、場面にあったものが使われている。
    • 雰囲気に合わせてか、「Adagietta -アダジエッタ-」のように英語の曲名が多く、BGMが切り替わるたびに画面左上に曲名が表示される。
      設定で表示時間の切り替えが可能で、表示させないことも可能。
  • 非常に細かいコンフィグ
    • オートモード速度などの基本的な要素を揃えた上で、上級者向けの機能も充実している。
    • マウスジェスチャーやショートカットキーに対応しており、ボタン一つでセーブやスキップが可能になる。
    • 新装版はTwitter投稿機能もあり、エロシーン以外をツイートできる。
      • エロゲ慣れしていない人にとっては少々ややこしいが、これらの機能を活用せずとも十分快適に遊べる。

賛否両論点

  • 良く言えば万人受け、悪く言えば中途半端な要素
+ ネタバレ
  • 娼館が存在するが、CGのあるエロシーンはカイムとの和姦しか存在しない。
    心機一転して舞台を変えたのに、日和っていると非難されることもある。
    • とはいえ、主人公以外とヒロインのエロシーンは敬遠されやすい要素であり、AUGUSTのユーザー層と相性が悪いのは言うまでもない
  • グロに関しても控え目で、血が多少出る程度。
  • カイムの性格
    • 最下層から努力で這い上がり、苦しい環境で生き抜く人物の一人。
    • しかしヒロインに説法するシーンなど一部の発言や行動に関しては賛否が分かれる。
+ ネタバレ
  • 中途半端な立ち位置
    • 物語が始まった時点で最下層にいるが、娼婦を身請けしており、酒場に通える程度には裕福である。
    • それまでが辛かった……という回想はあるが短いため、苦しんでいた期間を短く感じてしまいやすい。
    • そのため、やたら不条理を嘆く割に立場は悪くないので、中途半端に感じる人もいる。
  • 上位層との会話
    • 中盤以降、聖女や王女に説法をするシーンなどがあるが、あっさり話が通じてしまうのはご都合主義と言われることも。
    • もっとも、このあたりに説得力を持たせるのは相当難しいため、ある程度はファンタジーと許容できる範囲には収まっている。
  • 強気である理由なども理解出来るのだが、最終章でのみ一転してヘタレと化す(解決出来ない問題を前にしているのでそうなることは痛切なほど分かるのだが)。
    • 更にこのタイミングでここまでヘタれていなければ世界規模の問題が深刻になる前にどうにか解決出来たであろうというオチ付きなので、カイムも世界規模の問題も理由があるものではあるが何とも言えない感じが拭えなくなってしまった。

問題点

  • 一部の詰めの甘さ
    • 例として作中で宗教の多様性が示唆されるが、聖女以外の信仰対象が登場しないため不自然に映る。
      舞台が現代日本なら、キリスト教なり仏教なりが存在するが、本作の舞台は架空の都市である。
    • 前述の賛否両論点も含め、疑問点をきっちり潰したい人からは厳しい目で見られることもある。
  • 構成
    • ティア以外のルートはifのような扱いであり、謎が多く残ったまま終わる。
    • 深刻なのがエリスであり、性格の変化に納得しにくい。
+ ネタバレ
  • エリスはカイムに対する忠誠心が非常に高く、他のヒロインに嫉妬することも多い。
    • しかし、個別ルートに入らないとあっさりカイムへの依存が治ってしまう。
    • 病んでいるところまで含み魅力のあるキャラのため、この変化は受け入れにくい。
  • サブキャラのメルトのエロシーンがない
    • カイムとヒロインを取り巻く重要人物で、人気もあるため惜しまれた。
    • おまけには「不条理生物が吐き出す不条理光線により生まれる不条理空間」というギャグ導入のシナリオもあるため、それが許されるならおまけにメルトのシーンがあっても良かったのではないか。
  • ごく一部の環境で正常に起動しない不具合があった
    • 修正パッチが配布されたため、現在は問題視されていない。

総評

学園ものから一転した本作は別方向への魅力を生み出した。
挑戦的な舞台設定にした弊害もあるとは言え、AUGUSTらしく全方向に完成度の高いゲームであり、シナリオゲー初心者にもお勧めしやすい一作である。

移植・リメイク

  • 2014年6月26日にPS Vitaに『穢翼のユースティア Angel's blessing』のタイトルで移植された。移植担当は「dramatic create」。
    • 娼館が歓楽街になる等、一部の表現が修正されている。追加要素の類は特にない。
  • 2022年6月23日にNintendo Switch/プレイステーション4版が発売。タイトルは『穢翼のユースティア』に戻されている。移植担当は「エンターグラム」。
  • 2016年11月22日にFANZAでダウンロード専売で新装版が発売された。
    • 対応OSやメディアは違うが、ゲーム内容は微々たる修正のみである。
    • WinとAndroidのクロスセーブに対応しているが、オンラインでないと起動できない点に注意。
  • 2021年4月30日にFANZAGAMES PLAYカードが7,800円で販売された。

余談

  • タイトルが難読で変換しにくいからか、「ユースティア」と略されやすい。
  • 発売当時はこれまで毛色が違うことが、取り沙汰されがちだった。
    • 同年に発売されたKeyの『Rewrite』に近いものがある。
  • 2013年に発売された次回作『大図書館の羊飼い』は明るい学園ものへ回帰した。
    • 2016年に発売された『千の刃濤、桃花染の皇姫』は本作と同様に現実離れした世界観やルート構成のために本作と比較されやすい。
  • オーガストの基本無料ゲーム『あいりすミスティリア!』とコラボイベントを開催している。
  • オープニング曲「Asphodelus」、エンディング曲「親愛なる世界へ」はJOYSOUNDに収録されており、カラオケで歌える。
  • 演出担当者によると、効果音の半数は自家製とのこと。参考リンク

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最終更新:2024年02月27日 22:44

*1 2024年2月27日に追加対応。