勇者のくせになまいきだ。

【ゆうしゃのくせになまいきだ。】

ジャンル ダンジョン・マネージメント
対応機種 プレイステーション・ポータブル
発売元 ソニー・コンピュータエンタテインメント
開発元 アクワイア
プレイ人数 1人
発売日 UMD版:2007年12月6日
ダウンロード版:2009年10月22日
価格 UMD版:3,980円(税込)
ダウンロード版:1,400円(税込)
判定 良作
バカゲー
ポイント 生態系管理による戦略の奥深さ
そこかしこにねじ込まれたネタやスラングの数々
難易度は結構高め
勇者のくせになまいきだシリーズ
SIEワールドワイド・スタジオ作品


概要

ファミコン風ドット絵の世界で、魔王の元へ侵攻してくる勇者を止めるためモンスターを配置して追い払ういわゆる「タワーディフェンス系」のゲーム。
このように書くと一見、昔懐かしき雰囲気のまともなゲームのように見える。しかしその実態は…
略称は「勇なま」。

システム

  • プレイヤーは魔王が勇者との戦いの為に召喚した「破壊神」となり、「ツルハシ」を操作してダンジョンを掘り進めたり魔物を生み出したりし、魔王を捕えようとする*1勇者を撃退していくことになる。
    • プレイヤーはゲーム中常にツルハシとして表示され、画面内に姿を現すことはない。魔王はダンジョン作りや勇者対策のアドバイスでよきパートナーとして章の合間に「破壊神」たるプレイヤーに時に優しく、時にコミカルに話しかけてくる。
  • プレイヤーは「掘パワー」という力を持ち、これを消費することでダンジョンを掘り進めることになる。ゼロになると当然何もできなくなる。
    • ステージクリア後には、掘パワーを消費して魔物を強化できる。魔物の戦闘力は大幅に向上するが、計画的に強化しないと掘パワー不足に悩むことになる。
    • 本作における唯一のリソース、掘パワーだが、この運用には高い計画性が求められる。
  • ストーリーモードでは、掘パワーはステージクリア後に供給される。3つの各ボーナスの評価が高いほど、貰える掘パワーが多くなる。
    • 掘ボーナス
      • ステージクリア時に残っていた掘パワーの量に応じて貰えるボーナス。
      • 余った掘パワーが多いほど、貰える掘ボーナスは増えていく。いわゆるフクリというやつである。
      • 魔物の強化に使う掘パワーの量が少なければ、ステージクリア時に残る掘パワーも増えるので、それもまた掘ボーナスの評価の対象になる。使わない魔物の安易な強化は、むしろピンチを招く。
    • 軍ボーナス
      • ステージクリア時のダンジョンの魔物の「軍力」の合計に応じて貰えるボーナス。
      • 最弱のコケは1匹につき軍力1だが、最強のドラゴン「しんりゅう」は1匹につき軍力4800も貰える。
      • ダンジョンに強力な魔物を多く生み出すほど、貰える軍ボーナスが多くなる。また、勇者に倒される魔物の数を最小限に抑えることで、クリア時に生き残る魔物が増え、結果的に軍ボーナスの増加に繋がる。
    • タイムボーナス
      • ステージを速くクリアするほど、たくさん貰えるボーナス。時間をかけすぎると0になってしまう。
      • 勇者を通常より早く呼び寄せるテクニックがある。このテクニックを駆使して勇者を早めに倒せば、貰えるタイムボーナスが増える。
      • だが、実際はバグがあるので、このタイムボーナスは正常に機能しないことが多い。詳しくは後述の問題点を参照。
  • 魔物は互いに捕食しあい、成長と繁殖を行う。掘るだけでは作れる魔物の量には限界があるので、ある程度は繁殖による増加を狙うことになる。
  • 勇者もまた、ダンジョン内の食物連鎖には欠かせない存在となる。
    • 勇者が死亡すると、勇者が持っていた養分と魔分が周囲の土にばらまかれる。勇者の「しかばね」も魔物の素材となる。
    • 特に魔分は、勇者が魔法を使うか死ぬかしないと、ダンジョン内には基本的に存在しないため、勇者にうまく魔法を使わせるための手段が求められる。
  • 魔物は「養分」もしくは「魔分」を含む土を掘ることで生まれる。基本的に溜まっていればいるほど強力な魔物が生まれる。以下魔物の紹介。

養分系

  • ニジリゴケ
    • いわゆるスライム。極めて単純な行動パターンを持ち、ダンジョン内の養分を運搬する最下層の生物。
    • 成長すると「ツボミ→ハナ」となり、ハナになると周囲の養分を吸い上げて新たなニジリゴケを生み出す。
      ハナになっている間は、勇者をマヒさせる遠距離攻撃が使える。
    • 基本的には最弱の魔物だが、質より量で迫るその戦闘力は決して侮れない。
      一か所に大量のニジリゴケを集め、勇者を圧殺する「コケ地獄」という戦術は、我々に「数の暴力」を実感させてくれる。
    • 魔王曰く、「ニジリゴケを制する者はダンジョンを制する」。戦力の充足のために、上手くコントロールできる事が攻略の要となる。
  • ガジガジムシ
    • ダンジョン内の一次消費者。ニジリゴケを食べて成長、繁殖する。トカゲおとこの卵や、トドメを刺した勇者も捕食する。
    • 「幼虫→サナギ→成虫」と段階的に成長する。成虫になると幼虫を産んで繁殖するだけでなく、戦闘力も幼虫に比べて高くなる。
    • コケよりはかなり格上な戦闘力を持つ。しかし行動パターンが気まぐれなため、うまく勇者に誘導できないこともある。
    • レベル3の「どくガジガジ」は特に強力で、その気になればトカゲを使わなくとも、こいつでストーリーを制覇できてしまうほど。
  • トカゲおとこ
    • 養分系最強のモンスター。オスしかいないにもかかわらず、普通に卵を産んで繁殖する。ガジガジムシを食べて栄養をとる。
    • 普段は鈍足だが、勇者を見つけると移動速度を上げて果敢に立ち向かっていく。
    • 戦闘力もムシの成虫より高く、頼りになる魔物。レベル4の「マスタートカーゲ」まで強化できれば、ストーリークリアは目前。
    • 反面、土から生み出すのに必要な養分が17と多め、強化に必要な掘パワーが多いなどの難点もある。

魔分系

  • エレメント
    • 魔分から生まれる最下級の魔物。行動パターンはニジリゴケと似ており、ダンジョン内の魔分を運搬する役割を持つ。
    • 戦闘能力はニジリゴケと同程度で、戦力としては期待できない。ただしこちらは特殊能力として、攻撃した勇者のMPを奪い取る力がある。
    • 近くに「しかばね」や「魔法陣」があると、それに吸収されて強化する特性を持つ。
  • リリス
    • ダンジョン内の紅一点。エレメントとガジガジムシを捕食する。
    • 魔弾を飛ばして遠距離攻撃が可能。数を増やして勇者を集中砲火すると、かなりの強さを発揮する。
    • 養分を消費して「フェロモン」というトラップを仕掛ける。フェロモンに嵌まった勇者はしばらく動けなくなる。
    • しかし接近戦には弱く、遠距離攻撃を活かすにはダンジョンの構造に工夫が必要。
  • ドラゴン
    • 魔分系最強のモンスター。あらゆる生物を捕食し、卵を残して転生する一子相伝型の繁殖方法を持つ。
    • 勇者を捕食して一定値以上の養分か魔分を得ると、上位のドラゴンに転生できる。*2
    • 最強のモンスターと呼ばれるのに相応しい戦闘能力を持ち、上手く発生させればドラゴンの上位種1体だけで序盤~中盤の勇者を倒してしまうことも可能。
    • だが横方向にしか移動できない、吹き出す炎は味方の魔物も焼き殺してしまうなど、難点も多い。その運用にはテクニックが必要。

その他

  • スケルトン
    • ダンジョン内で倒した勇者の「しかばね」を、ツルハシでつつくことによって出現。スケルトンとして蘇り、勇者と戦う魔物になる。
    • しかばねにエレメントを大量に吸収させると、色が赤い「まおうのしもべ」となり戦闘力が向上する。
  • デーもん
    • 最大まで養分、もしくは魔分を含んだ土の周囲をすべて掘り起し、最後に中心を掘ると「魔法陣」ができる。この魔法陣をノックすると出現。
    • 基本的にエレメントとスケルトンを捕食するが、飢えた時にはトカゲおとこやリリスも食べる。
    • ゴツい見た目の通り、そこそこの戦闘能力を持つ。しかも、「存在するだけで魔物全員の防御力を上げる」という特殊能力も持っている。
    • 上位種の「ハイサたーん」や「じゃしん」は防御力上昇効果を持たないが、彼らは終盤の勇者とも渡り合えるほどの戦闘能力を誇る。
    • ちなみに、「グータレーデーもん」の作成条件が次回作の『or2』以降と異なり、じゃしんの見た目も初代ではピンク色のデーもんである。
  • その他、「ヘラクレスガジガジ」や「ゲイシャトカゲ」など、特殊な条件を満たすことで生まれるモンスターもいる。

バカゲー要素

  • パロディネタが非常に豊富。まず、タイトルからして『ドラえもん』における有名なスネ夫の台詞、「のび太のくせになまいきだ」のパロディである*3
    • ステージ1のサブタイトルが「ぼくにそのてをよごせというのか」となっているのを筆頭に古今東西、種々雑多なもののパロディが存在する。
    • ネタ元もゲームが多いが、それ以外にも有名アニメ、ネット上で流行ったコピペ、古典映画など本当に節操なく使用している。
    • ゲーム外の発言でもパロディが存在する。本作がファミ通のプラチナ殿堂入りした際の、アクワイアの公式コメントが「バントがホームランになった気分です」。
  • 生み出した魔物や倒した勇者はずかんに登録されるのだが、これもネタ満載。
    • ガジガジムシの発展形の一つ、「デスガジガジ」が「デス様」の通り名で知られるとか、勇者の一人の断末魔がうぼぁーなど…。
    • その他、説明文が一連のストーリーとなっているキャラがいるなど、これだけで結構楽しめるおまけになっている。
  • 魔王のキャラクターが濃い。すさまじく濃い。
    • 本作においてまともに台詞がある唯一のキャラクターということもあり、とにかく喋る。(一応勇者も登場時に一言しゃべるが、独り言のようなものが多い)
      • その内容も、上記のようななんらかのパロディや単なる個人的なこと、あるいはプレイにおけるヒントなど多岐にわたる。
      • ゲームオーバー時には、なんらかのヒントを遺して逝くことが多い。
    • メタ発言も多く、プレイヤーの思考を読んだ発言ではっとさせられることも。
      • 具体例として、最初のステージで予習を終わらせたことについて質問し、否定すると「説明書も読んでないだろう」と突っ込まれる……等。
      • RPGの定石、お約束に対する常識的な目線でのブラックジョークも多く、 別世界で勇者として活躍する身 としては苦笑いするしかない。
    • 総じてヒーローとして描かれるべき“勇者”に対する敵役としての立場を人間臭く、馴染みやすい雰囲気で演出する主要人物。

評価点

  • 非常に高い戦略性。
    • 食物連鎖を意識しなければダンジョン内のモンスターはなかなか増えない。
      • 例として、トカゲおとこを土から生み出しても、エサとなるガジガジムシがいないダンジョンでは上手く繁殖してくれない。食物連鎖の上位に位置する魔物を主力に据えるなら、エサとなる下位の魔物も十分に繁殖させる必要がある。
    • それだけでなく、ダンジョンの掘り方も考えなければならない。
      • ダンジョンはモンスターの生活の場であると同時に、勇者を葬り去る迷宮でもある。勇者はそれぞれ異なった移動、行動パターンを持つため、うまく誘導する必要がある。
      • モンスターの行動パターンも合わせて考える必要がある。特に非常にシンプルな思考パターンのニジリゴケ、エレメントを上手に運用できるようになると中級者。
    • たとえ魔王が捕まっても、地上に連れ去られない限りは負けではない。むしろ勇者の手からいかに魔王を奪い返すかこそが、破壊神の腕の見せ場とも言える。
      • 魔王を捕まえた勇者は魔法が使えなくなり、ガッツポーズを行うため隙が生じる。このため、総大将である魔王を囮にして、勇者が魔王をとらえた瞬間にフルボッコなどという非情な戦法もある(魔王軍だから間違ってないのかもしれないが)。というか、コケ地獄はこれを組み込んだ戦法である。
  • 初心者用のトレーニングが充実している。
    • 魔王直々に教鞭をとり、新米破壊神に基本から手取り足取りツルハシ取り教えてくれる。
      • 実地演習が中心ということもあり、初心者でもすんなりシステムを習得できる。そもそも基本の部分は非常にシンプルなゲームなのである。
    • さらに中級者以上向けに「チャレンジ」という項目もある。
      • 1ステージだけクリアすればよいが、特殊条件から始まる物が多く、攻略は一筋縄ではいかない。しかしこれもまた、実戦で役立つテクニックを習得できることも多い。
  • 上記したようにバカゲー要素が非常に豊富。ネタ元がわかるとさらに面白い。
    • 魔物の名前もユニークで、単なるスライムではなく「ニジリゴケ」、グレーターならぬ「グータレーデーもん」、名前の割にあまり黒くない「ブラックドラゴン」など、遊び心があり好感が持てる。
  • ファミコン風のグラフィックだが、いい感じにノスタルジックな一方、レベル自体は高い。
    • キャラクターの動きも実に滑らか。アクションパターンも結構多い。
  • BGMもリコーダーを中心とした、どこか懐かしさを感じさせる良曲揃い。
    • 小学校にありそうな楽器を使うというテーマで制作されたらしい。
  • 表ストーリーをクリアすることで、裏ストーリー「勇者のくせに超なまいきだ」が遊べる隠しコマンドを教えてくれる。
    • 裏ストーリーなだけに難易度が上がっており、最初のステージから勇者が最大数の3人パーティーでやってくるなど、その難易度は表よりやや高い。
    • そして最終ステージまで行くと、勇者「ああああ」が出現。過去のゲームで使い捨てられてきた全てのああああたちの恨みを晴らすためか、鬼神のような強さを誇る。
    • それだけに、倒せたときの達成感も他の勇者以上。裏エンディングの魔王のセリフには、ホロリときたプレイヤーも多いとされる。
    • ちなみに、この裏ステージに行くコマンドを後の作品(『or2』、『3D』)で入力しても何かが起こる。何が起こるのかはここでは割愛。

賛否両論点

  • ストーリーモードの難易度が高い。やり応えがあるとも言えるが、人を選ぶことは間違いない。
    • 知識なしの初見プレイでは、ほぼ確実にステージ3か5あたりでゲームオーバーになる。完全制覇には、ステージ1から最終ステージの8まで通した綿密なダンジョン構築と、魔物強化計画が必要になる。
    • 勇者たちは恐ろしく強い。魔法も技も非常に強力で、苦心して作り上げた魔王軍がいともたやすく蹂躙されていく。
      • ちなみにこれは魔王曰く、「国産RPGだから調子に乗っている*4」ためらしい。つまりネタの一環なのだが、それにしてもイージーモードぐらいあってもよかったのではないだろうか。
    • 実際、見た目に反して難易度は「ダンジョンを構築して勇者を倒す」という似たようなコンセプトを持つ海外製『ダンジョンキーパー』シリーズを大きく上回る。
  • 表ストーリーは、特にステージ5が難関とされる。ステージ5は勇者が初めて3人組となるのも原因だが、この3人組(ロベルト・シャルロ・ナタリヤ)は物理防御力が極めて高いという点も厄介。ステージ6の2人組の勇者(げんぞう・さなえ)より明らかに強い。
    • 特にロベルトの防御力が非常に高く、こいつの物理防御は68もある。参考までに表ストーリーのラスボス「ユーテー」が物理防御67、裏ストーリーのラスボス「ああああ」は物理防御46である。表ステージ5の勇者のくせに、ストーリー全勇者中最も物理防御力が高い。
    • 本作は防御力の影響が大きく、例えば勇者の物理防御力が68あるならば、物理攻撃力68以下の魔物の攻撃は全て2ダメージにされてしまう。最強のコケ「ニジリゴケコマンド」が物理攻撃力65、最強のトカゲ「マスタートカーゲ」でさえ物理攻撃力86である。
    • ロベルトとシャルロはボルケーノと呼ばれる「炎魔法」を使うのだが、これも強力。唱えた場所から炎が前方に拡大していくので攻撃範囲が非常に広く、一度に数十匹のコケやムシが焼き払われる光景は悪夢。ステージ6の勇者が得意とする「風魔法」より明らかに強い。
    • 一応、ロベルトとシャルロは魔法防御力が0という弱点があり、実際に魔王からのアドバイスも「ステージ5は魔法攻撃で攻めた方が良い」というもの。しかし、魔法攻撃を得意とするリリス類は繁殖に魔分が必要なため、慣れないうちは数を揃えるのが難しい。
    • 裏ストーリーは後半の勇者の物理防御力が低めな傾向があるので、慣れれば表より簡単とまで言われる。特にコケ地獄は物理攻撃による戦法なので尚更。
  • 図鑑では、勇者のパラメータは攻撃力や防御力の具体的な数値まで表示されており参考になるが、魔物のステータスは「生命力:E」「破壊力:A」といったように、どこぞのスタンドのような曖昧なパラメータしか教えてくれない。
    • 次回作以降では、魔物のステータスも具体的な数値で表示されるようになった。
  • 掘パワーが少なくなってきても警告などは何も表示されず、うっかり掘りすぎていつの間にか掘パワー0、ということがよくある。
    • ストーリーモードでは掘パワー切れはほとんど起こらないが、一部のチャレンジモードは初期掘パワーが少ないので結構起こる。
    • 掘パワーは画面の右下に小さく表示されているだけなので見落としやすい。掘パワーが無いとほぼ何もできなくなってしまうゲームなので致命的。
    • 掘パワーが0になると魔王が「もう掘れない」と教えてくれるが、伝えてほしいタイミングはそこじゃない。
      • 例えば、掘パワーが100以下になったら掘パワーの数字の色が変わる、50を切ったら警告音が鳴る、といった仕様にするだけでだいぶ違ったはずである。
    • もっとも、プレイヤーの注意力が足りてないだけ、掘パワーを自分で管理するゲーム、と言われればそれまでなのだが。
  • VSモードが微妙。
    • 自分で勇者を作成し、その勇者と戦えるモード。エディットモードとも呼ばれる。
      • 勇者のパラメータだけでなく、名前や見た目やボイス、登場時の一言コメントまでカスタマイズできる。
      • 作った勇者はメモリースティックにセーブできるので、他人が作った勇者と戦うことも可能。
    • しかし全体的に、勇者のデータのセーブ機能に難がある。
      • ストーリーやトレーニングのやりこみ具合、図鑑の完成度に応じてエディットできる要素が増えていくのだが、その際に今まで作った勇者のデータが消えてしまう。勇者を作り直すのが嫌なら、全てのエディットパーツを揃えてからプレイする必要がある。
      • ゲームを起動した直後に、ストーリーやトレーニングをVSモードより先にプレイしセーブすると、やはり勇者のデータが消滅してしまう。ゲームを起動した直後は、このモードの勇者のデータが読み込まれていないのが原因である。勇者のデータを消したくなかったら、ゲームを起動したら毎回真っ先にこのモードのデータを読み込んでやる必要がある。
      • 最大で7人の勇者を作成できるのだが、データが消滅したらその苦労はパー。どうしても勇者を永久保存したいなら、別のセーブデータを作ってそこに保存しておくなどの工夫が必要。
    • VSモードは全3ステージしか作れず、ストーリーの全8ステージに比べてボリュームが物足りない。
      • ステージ数が少ないので、魔物を強化できる回数も限られてしまう。
    • エディットできるのは勇者本人だけで、魔物の初期レベルを変えたり、勇者が襲来してくる時間を変えることはできない。
    • 総じて痒い所に手が届かない仕様で、ストーリーやトレーニングと比べてプレイする人が少なく、あまり盛り上がらなかった。
      • VSモードのダンジョン自体は、ストーリーと比べて養分が多めで独自性があるため、残念である。
      • 続編では登場せず、代わりにダンジョンそのものを自由にカスタマイズできる「魔王の部屋」が新登場している。

問題点

  • フリーズが起きやすい。
    • 魔物が200匹前後いる状態でポーズ画面を開くとフリーズ、コケ地獄用にコケを増やしている最中でフリーズなど、普通にプレイしていてもそれなりに起こり得る。
    • 当然、フリーズしたらリセットするしかなく、ゲームオーバー扱いでステージ1からやり直しなので、プレイヤーのモチベーションが低下してしまう。
    • 狙ってやらないとまず起こらないが、魔物の数を1000匹以上に増殖させると、だんだん処理落ちが激しくなり、やはり最終的にはゲームがフリーズしてしまう。PSPのバッテリーが爆発してしまう恐れもあり危険。
  • 細かいバグが多い。
    • 魔王が捕まった瞬間に勇者を倒すと、BGMが止まる、魔王が縛られたまま放置されるといった怪現象が起こる。
    • 戦略に大きな影響を与えるものは少ないが、「デーもんの発展形のサたーん、ハイサたーんの特殊能力の『魔法防御強化』が実際には機能していない」というのは問題。特殊能力がないとなると、苦労して作る価値が薄くなってしまう。
      • 開発スタッフが気付かなかったのか、次回作の『or2』でも修正されずに放置されていたが、『:3D』でようやく修正された。
      • ただし、ハイサたーんはかなり強く、ステージ5の3人組をまとめて倒せるほどの戦闘能力があるので、魔法防御強化能力がなくともそこそこ使える。
      • サたーんの魔法陣は勇者に踏ませるとMPを減らす効果があり、何度か踏ませるとより強力な魔物「じゃしん」の魔法陣に変化するので、サたーんはむしろ魔法陣から出さない方が役立つ。
  • ステージクリア時にリザルト画面で得られる「タイムボーナス」にもバグがある。
    • ゲームを起動してからリザルト画面をスキップし続けると、タイムボーナスに使う計算式の「ステージ経過時間」の値が毎回0になり、結果的に貰えるタイムボーナスが理論上の最高値になる。
      • 例えば、ストーリーのステージ1を0秒でクリアした時のタイムボーナスは「260」。普通に考えれば0秒でステージをクリアするなど絶対に不可能なのだが、バグを利用するとタイムボーナスが260になってしまう。
    • 逆に、バグを把握せずにリザルト画面を最後まで見たりスキップしたりを繰り返すと、得られるタイムボーナスが不当に低くなってしまうこともある。
    • 「リザルトをスキップする」という何気ない動作の違いだけで、ストーリーで得られる掘パワーが100、下手したら1000単位で変わってしまうので、かなり重大なバグである。また実際の攻略時間が掘パワーに反映されないのであれば、勇者を早めに呼ぶメリットも無くなるし、チャレンジモードのハイスコア狙いも半ば形骸化してしまう。
      • 極端な場合、「中盤から掘パワー不足で魔物を満足に強化できずに終盤へ」が「中盤から過剰なほど掘パワーを得られ、多数の魔物を強化してから終盤へ」になるほどの差となる。
    • 仕様さえ理解すれば、プレイヤーに有利に働くバグなのが救い。むしろこのバグがなかったら、本作の難易度はさらに上昇していただろう。
  • セリフの誤記も多い。ネタ満載のゲームなので、わざとやっているのか誤記なのか判別しづらいが。
    • 裏エンディングの魔王の台詞が「せいかいせいふく」になっていたり、ある勇者の図鑑の説明文が「年齢:男」とおかしくなっている。
  • 土・魔物が保有する養分・魔分の表示量は99が限界で、100以上になると正確な保有量が分からなくなる。
    • 土の養分や魔分が99を超えることはそうそうないが、魔物が保有する魔分が99を超えることは結構ある。
    • 勇者を捕食したムシ類やドラゴン類は、その勇者が死亡時に持っていたMPを魔分として取り込む。つまり、MPが100以上残っている勇者を捕食させれば、魔分はあっさり99を超えてしまう。
    • ドラゴンが上位種に転生する条件は「保有している養分が140以上、または魔分が150以上」。表示上の限界を超えていることが前提なので、少々不便である。
    • 致命的な問題点と言う程でもないが、分かりにくいことは確か。「99が限界値だからそれ以上蓄えても無意味」と誤解するプレイヤーが出てしまうこともあり得る。

総評

バカゲーとしての完成度は間違いなく水準以上であるが、同時にゲーム単体として見ても高い戦略性を持ち合わせている。
難易度の高さは人を選ぶが、それは同時にやり応えにもつながっており、単なる「パロディまみれのバカゲー」で本作を終わらせなかった要因の一つだろう。


続編

余談

  • コケ地獄
    • 本作の発売から間もなくして、とあるプレイヤーによって「コケ地獄」というテクニックが編み出された。
    • コケの「壁に当たるまで直進する」という単純な行動ルーチンを利用し、ダンジョン中のコケが一箇所にあつまるように誘導すると、5マス程度の範囲に100体以上のコケが蠢く「地獄」が形成されることを利用した戦術。
    • 最上位種の「ニジリゴケコマンド」でコケ地獄を完成させれば、ほぼ全員の勇者を瞬殺出来てしまう。魔王も一緒にコケ地獄の中に置けば、「勇者魔王発見→コケ地獄に飛び込む→魔王を捕らえた時に入るガッツポーズ中に死亡」というコンボが成立し、入口すぐ近くにコレを設置すればまず負けることはない。
    • 似たような技に「ムシ地獄」「エレメント地獄」もあるが、準備の手間はコケ地獄が圧倒的に楽。
    • 強すぎるため問題視されることもあるが、このような変わった攻略法を見つけるのも本作の醍醐味と言える。
    • また、コケ地獄を使わなくてもストーリーは様々な方法でクリア可能なバランスになっている。
  • 開発元の方針なのか、本シリーズには攻略本の類が一切存在しない。
    • 初代と『or2』で魔王自ら「まとめWiki、攻略Wiki云々」の発言をしているので、恐らく公式でもそちらを参照してほしいと考えているのだろう。
      • こうしたwikiには、チュートリアルでは習わないようなダンジョン構築のコツ・構築例は勿論、密度の高いパロディネタも集積され、高い充実度を持つ。
  • 『。』『or2』『:3D』とそれぞれ体験版が出ていたが、いちいち仕込んでいるネタが製品版と違うなど、こちらでもバカゲーぶりが徹底されていた。
    • 『。』の時点ではそれほどでもなかったのだが、新作に移行するにつれてどんどんネタ性が顕著に。
      • 現在はどれも配信終了済み。
  • 携帯にも『。』をベースに移植販売されている。
    • そしてこちらでも本編とは異なるネタがわざわざ仕込んである。
  • また、PS Vitaで本シリーズのキャラクターをベースにしたアプリ『勇者のきろく』、PS3にてミニゲーム『勇者のくせになまいきだwww』がそれぞれ配信されている。
    • あくまで本シリーズをベースにしたスピンオフであり、中身は全く別物である。
      • 『きろく』はスケジュール管理用ソフト。会話などは新録されているが勇者や魔物は『:3D』の使い回し。
      • 『www』は勇者視点のコマンド入力式RPG風ミニゲーム。と言うかだいぶせがれいじり。あるいはシャドウゲイト
  • ちなみに、海外版のタイトルは『What Did I Do to Deserve This, My Lord!?』。直訳すると「これに値するために私は何をしましたか、私の主よ!?」となる。
  • 2020年11月30日の「プレゼンZIP!」のコーナーにて、風間俊介氏が本作を紹介。その影響で本作がTwitterトレンド入りしたのだが、 トレンドワードが「勇者のくせ」で終わるという珍事 が発生した。
    • 尚、この時のトレンドの見出し画像にはお笑い芸人・千鳥大悟氏のドラクエウォークのCMが表示される可能性もあったため、千鳥ノブ氏の声で「勇者のくせがすごいんじゃ」と思わず脳内再生してしまった人も多数出現した。
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最終更新:2024年01月19日 07:58

*1 なぜか倒そうとはしない。

*2 ただし、下位種のドラゴンとドフゴンは上位種には転生できない。

*3 ちなみにシリーズ4作目『V!勇者のくせになまいきだR』で魔王の声を担当しているのは、2005年からスネ夫役を担当している関智一氏だったりする。

*4 日本のRPGは海外に比べて難易度が低いことが多い。「JRPG」などと揶揄される理由の一つである。