実況パワフルプロ野球2000開幕版
【じっきょうぱわふるぷろやきゅう にせんかいまくばん】
実況パワフルプロ野球2000決定版
【じっきょうぱわふるぷろやきゅう にせんけっていばん】
ジャンル
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スポーツゲーム(野球)
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対応機種
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プレイステーション
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発売元
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コナミ
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開発元
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KCEO(ダイヤモンドヘッド)
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発売日
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開幕版:2000年7月19日 決定版:2000年12月21日
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定価
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5,980円
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判定
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良作
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ポイント
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サクセスのボリュームは減ったものの安定した出来栄え PSで『サクセス』が搭載された最後の作品
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実況パワフルプロ野球シリーズ
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概要
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人気野球ゲームのPS版5作目。
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同年は新ハード登場によりパワプロシリーズが非常に多く発売された。PS2の『パワプロ7』はタイトルを見てわかるとおりだが、ややこしいことにN64の『パワプロ2000』は前作『パワプロ'99』をベースとした作品であり、こちらも本作とは別物である。
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『7』とは互換性を持たないが、『7決定版』にパスワードで選手を登録出来た(開幕版・決定版共通)。
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収録されているシナリオも『2000』『7』『2000開幕版』でそれぞれ異なっている。
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本作のサクセスは『プロ野球二軍編』。
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その他、ドラマティックペナント、シナリオといったモードは引き続き搭載。
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『パワプロ2000』同様、能力に「弾道タイプ」が追加。能力の基準値がDに変更されたため、全体的な選手能力が低下している(ただし本作段階ではまだ全体的に高めの査定が目立つ)。
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年末には『決定版』が発売されているが、変更点はデータ更新、バグ修正、サクセスでの弾道・サブポジション関係の改善程度。開幕版→決定版のデータ移行も可能なので、基本的に決定版が開幕版の上位互換と見て差し支えない。
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上述の高めな選手査定が概ね修正され、近年の基準に近い査定に落ち着いている。
サクセス『プロ野球二軍編』
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ドラフト指名を受けた主人公が、1軍定着を目指し奮闘するサクセス。球団は実在12球団から選択できるが、シナリオに変化はない。
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ファンサービスを重んじるサイドA・実力主義を重んじるサイドBの2つのシナリオがあり、1軍定着を目指し3年間を戦うことになる。
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サイドA・サイドB両方を問わず基本的に主人公は2軍相応の選手として描かれ、サイドBで1軍昇格を勝ち取ることはあっても定着には至らない。基本的に3年間解雇されず、一定の評価を得ていればクリアは可能。
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頻繁にファンサービスを行うことが求められるサイドAと、実力でレギュラーを勝ち取ることが求められるサイドBでは後者の方が強い選手が作れるというイメージになりがちだが、実際はサイドAでは特殊能力を得られるイベントに恵まれ、一方のサイドBでは基礎能力が高い選手を育成しやすい、と差別化されている。もちろん難易度はサイドBの方が高い。
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おなじみのキャラは矢部、猪狩、ダイジョーブ博士が登場。本作初登場キャラで印象に残るのは酒癖は悪いが温厚で世話焼きな先輩選手の逆井、とにかく性悪な性格をした同じく先輩選手の伊沢、スランプながら主人公の関わりをきっかけに立ち直る機会を得ることになる助っ人外国人のリチャード、軟派なチャラ男だが腕は確かな坂崎。
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猪狩は早々に1軍昇格するため、特に主人公が1軍昇格する機会がないサイドAではほとんど出番がない。印象深い出番としては上記のリチャードの連続イベントで、主人公を罵倒した猪狩に対してリチャードが勝負を挑むシーン。
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主人公が実力で1軍昇格を勝ち取ることが可能なサイドBでは出番が多く、時に主人公と直接対決を演じることも。
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逆井は気の良い先輩選手。金銭に困った主人公に出世払いでいいと金銭を工面してくれたり、アドバイスをくれたりする。
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伊沢は完全な悪役。車の洗車を強要するなどまだ可愛いもので、イライラしているからという理由だけで主人公と矢部に5時間も空気椅子をさせサボっているのを知るや暴行するわ、野球道具を破壊するわ、しまいには土下座を命令するも言う事を聞かなかった主人公を配下の選手を使って集団リンチするなど現実のプロ野球選手にありがちな悪い点ばかりを凝縮したような人物で、サクセスモードにおいては後の『13』の蛇島や『パワポケ10』の北乃にも劣らない全く救いのない外道キャラである。ただし、その悪事がフロントにバレたのかは不明だが2年目の冬に解雇される。
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リチャードはスランプに陥って2軍落ちした助っ人外国人。猪狩との対決イベントの結果次第で退団、現役続行、スランプを脱却した上で現役続行の3つのルートがある。
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坂崎は伊沢解雇後に入団する軟派な若手。女の子にモテたいという理由でプロ入りしたと豪語していたり主人公を合コンに誘うなどチャラ男だが、腕は確かな上、それに慢心せず神社で特訓するなど練習熱心な一面もある。また、ナックルボールを主人公に教えるイベントがある。
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試合において、監督からは特定のシチュエーションでの出番を命じる場面がある。投手の場合は「セーブのチャンス」「ピンチを1点以内で切り抜ける」、野手は「送りバントを決める」「押し出しや犠牲フライでもいいのでサヨナラを決める」など。サイドBの1軍戦で指示を成功した場合は大きく監督評価が上昇する。
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彼女候補は保育園に務める祥子、スナックのママのナオミ、アナウンサーのさやかの3名。今作の「威圧感」習得条件の1つに「彼女が居ない」があるためあえて攻略しないという手もある。
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なお、「サクセス」が搭載されたPSのパワプロは本作が最後。『2001』以降は「サクセスロード」というモードになっており、大幅にシステムが異なっている。
評価点
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サクセスのテンポが良い。
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今作はプロ野球編であるため、主人公が全員操作するというシチュエーションが存在しない。試合数自体もそこそこであり、順調にいけば1プレイ2時間足らずで終わる。
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特殊能力のサイドA・基本能力のサイドBという区分けが上手く機能している。
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サイドAでオールAクラスの選手を作るのは非常に難しい反面、有り余るイベント数で大量の特殊能力取得を狙うことが可能。一方のサイドBでは特殊能力こそ貧弱ながらも高い能力を狙うことができ、一長一短である。
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とはいえ、サイドBでも主要な特殊能力はちゃんと取れる。
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後述の通り顕著なボリュームダウンは問題点として挙げられるが、一方で選手育成面では方針がはっきりしており、全体的なテンポも良いため選手育成面ではなかなかにプレイしやすい作品。
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野球部分は概ね完成度が高かった『'99』のものそのままである。
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内野ゴロを積極的に取りに行くことを要求するバランスも概ね変わっていない。内野ゴロのダブルプレーは特に俊敏な操作が求められる。
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『'99』と比較してアベレージヒッター未所持でも若干ヒットが出やすくなっている等『64版2000』の良い部分も継承されている。
賛否両論点
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この時期のサクセスには多かったが、「出かける」コマンドの行き先次第で発生するイベントが優秀すぎるために「休む」コマンドや一部の練習の価値が著しく低くなっている。
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今作ではスナックが該当。体力50%回復+やる気上昇と強力。1万円掛かるという欠点はあるものの月1程度の利用ではほとんど影響はなく、しかもそれ自体が彼女攻略に直結。ナオミ自身も育成目的ではいちばんメリットが大きい彼女候補なのも追い風。威圧感目的で彼女を必要としない場合も選択肢で回避可能と隙がない。
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他にもスポーツジム→プールでタフ度大幅上昇+「ケガしにくい」取得、温泉で回復+タフ度上昇+爆弾除去、ゲームセンターのミニゲームでスコア次第ながらスタミナ(サイドAならファン人数も)大幅上昇、駅前→やや運が絡むが3000~4000円で日帰り旅行に行きやる気体力大幅回復(体力は全快もあり)など。
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多くの場合有料ではあるのだが、今作では野球道具屋で無謀買い物さえしなければ比較的資金に余裕が生まれやすい状況になる(特に順当に活躍できている2年・3年目)のでそこまで大きなデメリットにはならない。
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良くも悪くも『'99』に次ぐ作品であり、サクセス以外に変更点といえるものはほとんどない。完成度が高かった『'99』のいいところをきっちり引き継いでいるという点では評価点であり、代わり映えがないという意味では問題点とも言える。
問題点
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サクセスのボリュームが少ない。
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3年分フルで遊べるとはいえ、シナリオが実質2本しかないのは時期的に考えると少ない。
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方針が異なるだけで登場キャラもほぼ共通であり、社会人3本+冥球島のボリュームでなおボリューム減少が惜しまれた前作『'99』と比較しても更に顕著すぎるボリュームダウンである。
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しかし同時期に新ハードの『7』が開発されており、N64の『2000』がPS『'99』の使い回しになってしまった中、本作では使い回しではなく新規開発でサクセスが実装されたことは考慮に入れるべきだろう。
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リチャードの連続イベントを進行すると「ベストフレンド」になるが、主人公が投手の場合このあと特殊変化球「SFF」を取得できるランダムイベントが高確率で発生するようになる。
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これ自体はいいのだが、問題はイベントが発生してしまうと取得が強制なこと。本作はまだ1方向2球種をサポートしていないため、たとえ他の球種を既に習得済みでも上書きとなる。特に他のフォーク方向の特殊変化球を育てたい場合は大変困る。
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確実ではないものの阻止する手段はある。しかし、それが猪狩との対決イベントでわざと負けてリチャードを退団に追い込むという非常に後味が悪い方法となってしまうため、プレイヤーによっては心理的には抵抗があるだろう。
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サクセスの初期能力作成で「高卒」を選ぶメリットがほとんどない。
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「高卒」の場合初期能力が低く、更に入団時に未成年となるためスナックに行けない。自ずとナオミを攻略することもできなくなり、温泉を紹介してもらうこともできなくなる、更に一部能力の必要経験点が増える…と散々。
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一応「休む」コマンドで回復する量が増えるが、高卒以外はスナックで代用できてしまうので長所になっていない。特殊能力にも一部高卒でしか取得できないものはなくはないのだが、実用度は微妙。
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威圧感の取得が完全に運任せ。
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2軍監督が交代しないと威圧感取得へ向けたイベントが始まらないのだが、肝心の監督交代が発生するかは完全ランダムな上、発生確率は大して高くない。当然クリアまで監督が交代しないまま終わることも珍しいことではない。
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開幕版では「第2サブポジション」の取得ができない。
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サブポジションを新たに取得すると第1サブポジションに上書きされてしまう。不具合だったようで、決定版で修正された。
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なお、「弾道」もこのころは特殊能力に近い扱いであったため経験点で上昇させることができなかった。
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弾道4に至っては取得可能なイベントが「ナンパの失敗」のみ。内容自体もアレだが、おしゃれグッズの購入で隠しパラメータの「ルックス」が高い状態だとナンパに成功するため弾道4と両立できなかった。これに関しても決定版で特定のアイテムによって弾道を上昇させることができるようになり改善された。
総評
世間が新ハードPS2で沸き立つ中、PS1でも引き続きリリースされたパワプロの新作。
確かにサクセスのボリューム不足は気になるところではあるが、完成度は十分なものであり、パワプロの新作としては安定した出来栄えと言えよう。
翌年の『パワプロ2001』で登場したサクセスロードはあまりの変貌ぶりに落胆したプレイヤーが多く、この「安定した出来栄え」に泥を塗ることになるのだが……。
余談
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PS2の『7』(2000.07.06発売)の直後だったことから、本作の売上は約26万本と前作『'99開幕版』の約75万本から大きく落としている。
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『7決定版』にも共通するが、本作の決定版には当時不祥事を起こした松坂大輔選手のデータが収録されなかった。
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上述の通り『パワプロ2000』というタイトルはかなりややこしいことになっているが、『パワプロ2016』に本作のBGMがDLC配信された際には本作が『パワプロ2000』名義での配信となった(N64の『パワプロ2000』のBGMは「どすこい酒造」の楽曲のみしか配信されなかったためか)。
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更に後の『パワプロ2018』では『'99』と『2000』の楽曲がパック売りとなっている。試聴動画のゲームパッケージはPS版『'99』とN64版『2000』のみの記載であり、本作は含まれていないように見える……のだが、実際は本作の楽曲も含まれているという非常にややこしいことに。
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本作のメニューBGMはこの時期のパワプロに多かった『パワプロ4』のもののアレンジ。原曲準拠のアレンジは本作のみであり、他の作品に用いられたのはいずれも『パワプロ6』準拠のアレンジとなっている。
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サクセス試合BGMは、レギュラー参戦だと『6』『99冥球島』で使われた「アストロ球団」風、代打・リリーフからの参戦だと『パワプロ5』『99社会人編』と同じ「巨人の星」風な楽曲がそれぞれ使われる。
最終更新:2022年11月21日 10:01